まず海上で使用するクレーンには、(1)浮きクレーン(起重機船)、(2)「浮きクレーンのように使う」ケース、(3)通常の陸上クレーンと同じケースおよび(4)船舶に装備されてクレーンがある。
よく平台船にクローラクレーンを搭載して作業を行っている場合があるが、それぞれ法的手続きを取る必要がある。(1)〜(3)は労働安全衛生法ならびクレーン則に規定されており、移動式クレーンに該当する。
(1) 浮きクレーンはクレーン部分が台船(台車部分)と一体として製造されており、浮きクレーン製造許可、設置届の手続きが必要になる。また、浮きクレーンの安定度は、移動式クレーン構造規格第15条に規定されており、後方安定、前方安定によらず、静穏な水面で定格荷重を吊った状態において、転倒端における乾舷が0.3m以上となることが要求されている。
また、日本海上起重機船協会ではさらに細かく台船の傾斜角の制限値を作業船設計基準「第4編港湾工事用起重機船」の項目で規定している。
非自航起重機船作業時の船体傾斜角の許容範囲は次のとおりとすることが望ましいとされています。
1) 縦傾斜角(トリム角)
・荷重吊り上げ直前(船尾に) 3°
・荷重吊り上げ時(船首に) 3°
2) 横傾斜角(ヒール角)
・荷重吊り上げ直前(反対側に) 3°
・荷重吊り上げ時(荷重側に) 3°
(2) 現に検査証の交付を受けて使用中のクローラクレーンを台船に搭載し、アンカーを使ってこれを固定し、機能的には浮きクレーンと等しく使用する場合は、昭54.1.26基収894号の例が示されている。台船に搭載したクローラクレーンを再び陸上に戻して使用するものについては、クレーン等安全規則第85条第1項による「台車の変更届(変更検査)」を要する。移動式クレーンの搭載に際し、移動式クレーンの滑り止めを施すことおよび浮きクレーンの規定である転倒端における乾舷が0.3m以上となることが必要である。
また、クローラクレーンを半永久的に台船に固定した状態で使用する場合は、クレーン等安全規則による浮きクレーンとして使用検査が必要になる。(昭54.1.26基発894号)
なお、変更検査には(1)の場合と同様に台船の安定計算書が必要である。
(3)のケースはSEPに搭載したクローラクレーンや巨大な4000t吊り起重機船などに搭載されているラフタレーンクレーンのケースです。台船部分が搭載した移動式クレーンの作業により傾斜することがないようなケースで、陸上の移動式クレーンと変わらない。
(4) 揚錨船本体は船舶法の対象であるが、揚錨船に設置されているクレーンはジブを有し、本来の使用目的以外の用途(荷を吊り上げ運搬する)に供されることが多く、浮きクレーンとしての製造許可、設置届等の手続きが必要である。
海外で移動式クレーンを台船に搭載して使用する場合は、日本と同じような許認可が必要でないケースがあるが、それぞれの場合の設計基準の趣旨を理解しないで使用すると危険である。
移動式クレーンを台船に固定して使用すると、台船の復元力が大きいので転倒しにくくなる。しかし、無理して荷重をかけると逆にクレーン本体の強度が耐えられなくなり、ブームが折れ曲がる危険性があります。常に浮きクレーンとしての作業限界を理解しておく必要があります。
1 件のコメント:
このような海上工場が建設され、クレーンが月、台船部分が歪んでいます。 今から法律を勉強するつもりですが、アドバイスいただけたら幸いです。
http://blogs.yahoo.co.jp/hayatef24/15929590.html
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