吊り走行は、昭和50年4月10日付基発第218号により原則禁止となっています。
しかし、作業によってはどうしても行わざる得ない場合があります。
たとえば、狭い場所でのクレーン仕様バックホウによるヒューム管や敷鉄板の移動やクローラクレーンによる杭の移動、起重機船によるケーソンの吊り移動、レッカー車による車の移動などです。造船所の中では、意外とよく移動式クレーンによる鋼製ブロックの吊り移動を見かけます。
また、ラフタークレーンやクローラクレーン、起重機船はある条件の下で吊り走行が可能な構造になっています。
法令違反ではありませんが、他に方法がなく、どうしても吊り走行しなければならない状態でない限り、厳しく禁止すべきです。
他に代替方法がなく、どうしても吊り荷走行しなければならない場合は、「ホイールクレーン及びクローラクレーンの吊荷走行時の安定に関する指針(JCA規格)」を参考に対策を立てる必要があります。以下に抜粋すると
1.吊り荷走行姿勢の移動式クレーンは、前方、側方、後方の性能が大きく異なる。機体正面に荷がない場合は、アウトリガを一旦張り出すか、クレーンを移動させて機体の正面で荷を吊る。
2. タイヤの空気圧を規定圧力にし、かつ、サスペンションロックシリンダを最も縮小した状態にしする。
3. ジブを縮小状態にする。(補助ジブは使用禁止)
4. 走行は、できるだけ低速(2Km/h以下)で、直進のみで走行する。移動式クレーンを走行させる時は、旋回ブレーキ、ドラムロック、巻上げレバーロックを掛ける。
5. 走行する地盤が水平で、タイヤの接地圧に耐えられることを確認する。地盤が軟弱な場合や傾斜又は凸凹がある場合は、つり荷走行は行ってはならない。
6. メーカが示す吊り荷走行の前方領域のジブ角度や定格総荷重は、水平堅土において使用した時の数値であるため、吊り荷の質量は前方領域のジブ角度を超えないような余裕のある荷重でなければならない。
7. 吊り荷は、地切り程度の高さを保持し、添えロープ等で荷を機体側に引き寄せるかフロントバンパで支える等して荷振れを起こさないようにする。
8. アウトリガを有するものは、アウトリガを張出し、アウトリガフロートを地上から少し上げた状態で走行する。
9. 急ハンドル、急発進、急ブレーキ、変速操作、吊り荷走行中のクレーン操作、つり荷の自由降下等は行ってはならない。
これ以外にも、ワイヤーロープの損耗度、吊り荷の定格荷重に対する余裕、玉掛者の退避措置などの確認が必要になります。そして実施する場合は、KYK(危険予知活動)を実施し危険性を労働者に周知する必要があります。
かつて、私が消波ブロックの製作に従事したとき、吊り走行を認めるかどうかの議論しましたが、吊り走行ではなく吊って仮置きしクローラを移動させて再度吊り上げ転地する方法を指導しました。時間と費用のロスは当然発生しますが、安全第一です。
0 件のコメント:
コメントを投稿