2010年10月27日水曜日

リスクアセスメントの再評価

労働安全衛生マネジメントシステムでは、最初にハザードを洗い出して評価し、リスク低減対策を立て、それに対する再評価を行い、リスクを受容可能なところまで下げることになっている。言い換えれば、ALARPの考え方に従ってリスクを低減させる手法である。

リスクアセスメントは業種に関係なく、全ての作業に行われなければならないが、業種によって進め方を工夫する必要がある。製造業においては、マネジメントシステムで述べられている通り行えば、かなり効果を上げることができる。なぜならば、労働者は固定していて教育が容易であり、設備の不具合、作業員の不安全行動を、リスクアセスメントを行うことによって随時見直して改善していけば、確実に安全レベルをアップすることができる。

ところが、建設業の場合、製造業のように効果を上げるには相当の労力が必要です。その原因として、個別請負産業であり、プロジェクトごとに場所は変わり、設備は変わり、時間とともに状況は常に変化し、かつ作業員は作業ごとに入れ替わる。作業員への教育も浸透せず、形骸化に陥りやすい。

リスクアセスメントにおいては、リスクを評価して危険度を判定するが、建設業では初期の評価が重要である。現場でリスクアセスメントを使用する場合、使いやすいようにA4用紙に収まる内容にすることが多い。その場合、初期評価欄と再評価欄の両方を表示するスペースがなく、初期評価と再評価を二段書きにしたり、再評価欄を省略したり、再評価欄のみを表示する場合がある。
建設業の場合、再評価したリスクは、状況が変化し時間とともにリスクが大きくなったり、作業員の技能レベルによって受容可能レベルがもとの受容不可能なレベルに戻ることもある。マネジメントシステムでは再評価後、リスクを受容可能なレベルに抑えるようにしないと作業を行ってはならないと決めているところが多く、ほとんどの再評価は、受容可能レベルを表示している。さらに、再評価のようなめんどくさいことをしなくても済むように、最初から恣意的に受容可能レベルと評価しているケースもある。再評価自体がかなり怪しいことが多い。
したがって、建設業ではリスクの初期評価を表示していないと、どんな危険が潜んでいて本来の危険度が何なのか分からなくなるのである。

マネジメントシステムの担当者の中には、建設業の実態を理解せず、ただ単に要求事項と違うと指摘する人がたまにいる。リスクアセスメントは、基本的には同じなのだが、運用面では製造業と建設業は違うことを認識した上で、創意工夫していかなければ効果があがらない。
それにはまずシステムを簡素化する必要がある。英国HSEの中小業者のための5ステップ・リスクアセスメントは建設業には適しているであろう。もう一つは、作業ごとの標準的なリスクの初期値をリスク評価表としてまとめておき、作業員レベルでは米国のJSAのような簡単に作業ステップごとのリスクとリスク低減対策のみを表記方法が良いかもしれない。

現在、建災防で進めているような細かい作業手順書のなかでリスク評価するやり方は、内容が細かくなりすぎて作業員レベルにはなじみにくく、事務所でファイルされるだけになっている。活用されないような手法は、いくら正しくても意味がない。

リスクアセスメントもあまり型にはまらずに柔軟な考え方が必要であろう。


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