一日も早く、安心して住める本格的な住環境が求められている。
復興事業を行う際、まず基本方針を策定すべきです。安全安心の確保および環境の保全、雇用の確保、新産業の育成がキーワードとなる。
(1)永遠に安心して住むことができること: 当たりまえのようで一番困難を伴うことである。三陸海岸は過去から何回も大津波の被害にあってきた。869年の貞観大地震は、大陸プレートが連続的に破壊し大津波が襲い日本史上最大の地震と言われている。その後何度も大地震と津波が発生していて1896年の明治大津波は高さ38.2mで大被害を出した。人々は震災にあった時は海岸付近には住んではいけないことを知るが、時間を経るにつれて震災の意識が薄れ便利な海岸付近に住みだす。
しかし、今度こそは都市計画をする上で、公共建物や復興住宅などの市街区域を高台に配置する必要がある。高台を造成するためには、土地を国家が買い上げて地権者の財産を保護するとともに地権者も供出に協力しなければならない。高台は、付近の丘陵地を造成するか、海岸部を浚渫してその土砂で高さ40〜50mの土地を造成する。山を削る場合は、土砂崩壊を起こすようであってはならない。
(2)環境に配慮した実験都市をつくり、将来の日本経済を牽引するような産業を育成する。それには、以下のような技術を導入する。
・自立的な電力供給: すべての復興アパートには太陽光発電(ソーラーパネル/蓄電池型)と太陽熱利用温水器(集熱板/貯湯槽分離型)および外部電力(東北電力)のハイブリッドシステムを装備する。海岸部分及び造成地法面にはソーラーパネルを設置し、メガソーラー発電所を設置する。また、沿岸の山間部に風力発電を配置する。
・先端配電網の整備: スマートグリッドシステムの導入し電気を効率的に配電する。また、送配電線網を利用した通信システムを各戸に導入するとともに、スカイプシステムを各戸に導入し、画像によるコミュニケーションを通して、民生委員が画像を見ながら高齢者の健康状態を把握し生活指導を行う。
・亜臨界水による木材分解プラントとバイオ醗酵によるエタノール製造プラントの設置: 現在、小規模の亜臨界水による有機物分解プラントはある。震災で発生した木材殻を分解して、それをさらにバクテリアで分解してエタノールに変える大規模なプラントを海岸低部区域に建設する。全ての木材が片付いた後は、間伐材や籾殻、生ゴミなどを分解してエタノールにする。エタノールは自動車の燃料や小型発電機の燃料として利用する。海岸底部区域には等間隔に津波スクリーンを設置する。
・低炭素社会を構築: 公用車や公共交通に使用する車は電気自動車とする。復興住宅をはじめ公共建物には急速充電装置を設置して、町中何処でも充電できるようにする。また、電気自動車を緊急時の予備電源として利用する。
・ヒートポンプによる熱交換: 公共建物や道路の融雪装置においては、ヒートポンプによる冷暖房設備を導入する。投入した電気エネルギーの数倍のエネルギーとして取り出すことができ、CO2の排出を抑えることができる。さらに、冷媒としてCO2を利用する。
これらのシステムはすべて既存の技術であるが、まだコストがかかるという理由で普及していない。これらの技術を全面的に採用することにより、コストを下げ日本経済を牽引する産業に育てることに、この復興事業を活用してもらいたい。
(3)原子力発電所の安全性能の見直し: 全国の原子力発電所は安全性能を見直し、定期点検時に改修工事を実施する。また、40年を経過する原子力発電所は廃炉とする。当然、福島第一原子力発電所は、廃炉にしなければならないが、東海・東南海・南海地震の震源域に極めて近い中部電力の浜岡原子力発電所は速やかに廃炉とすべきである。
安全性を見直す際、技術者は「想定外」という言葉を安易に使ってはならない。それは政治家のみが言い訳のために使う言葉だ。
安全性を見直す際、技術者は「想定外」という言葉を安易に使ってはならない。それは政治家のみが言い訳のために使う言葉だ。
復興地域に新設したLNGまたは石炭火力発電所にはCCS(二酸化炭素回収・貯蔵システム)を装備し、二酸化炭素を排出しない発電所にする。
(4)雇用の確保: 東北各県土木部と国土交通省東北地方整備局を統合した東北復興庁を設け、資金は国から拠出するが運営は地元を主導で行う。そして、復興に動員する技術者や作業員は、積極的に被災者を雇用する。また、復興後の地方分権の先導役となるように、各県の連携を強めた広域連合会議を設ける。
(5)海外への情報発信基地: 復興都市は海外からお手本となるような、環境を考慮した安全な都市とする。神戸のようにただ単に以前にあった施設を復元するというものであってはならない。復興都市を魅力あるものにして他の地域からも住んでみたいというものになればもっとよい。
現在の財政状態では被災したすべての街を以上のような復興都市にすることはできない。拠点都市を決めて、地域ごとに都市を集約する必要がある。それには政治的な軋轢が予想されるが、将来の日本が引き続き世界経済の中で戦って行くことができるには、大きな決断をしなければならない。
日本の未来は、安全安心・雇用の確保、新産業の育成にある。
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