建設現場で、災害リスクの最も高いのは何か?
もちろん墜落転落災害が多い。しかし、目を離してはならないのが交通災害である。なぜならば、交通災害は工事現場の外の一般道路で発生し、補償も労災保険より自動車損害賠償責任保険が優先されるため、工事とは関係ないと思われがちである。
厚生労働省の災害統計は労災保険を使った場合の統計資料であり、全ての災害の統計をあらわしているとは言えない。よく社内の災害統計に交通災害を入れずその他災害としている場合があるが、業務中の災害であることはあきらかである。
海外工事においては、交通災害のリスクはさらに高くなる。交通災害にあう可能性は、現場内の災害よりも高いのではないだろうか。
特に発展途上国においては、道路が十分整備されておらず、運転者の交通マナーも悪い。一方で、経済発展の影響で交通量が大幅に伸び交通事故が多発している。建設工事のダンプトラックがバイクと衝突したり、バイクと人の接触事故などが後を絶たない。法令にしたがって正しい運転をしていても、相手の無謀な運転のために事故に巻き込まれてしまうこともある。
交通事故を減らすためには、その国の国民全員に安全交通教育をしなければならず、そんなことは不可能である。道路交通では常に高いリスクが存在しているという前提で、建設工事に従事する運転者に「Defensive Driving」 (防衛運転又は危険予知運転)の安全教育を繰り返し行うしかない。
「危険予知運転」とは、車を運転する上で起こりうる事故を予知して運転することです。
自分が正しい運転をしていても、他の運転者や歩行者の過失や故意によって事故に巻き込まれてしまう。危険予知の例として、
・前を走る自動車が急ブレーキをかけるかもしれない。
・道路わきから子供が飛び出してくるかもしれない。
・交差点で一時停止不停車の自動車が飛び出してくるかもしれない。
・右折車のかげからバイクが飛び出してくるかもしれない。
・路上駐車中のドアが突然開くかもしれない。
・隣の車線を走る自動車が突然目の前に車線変更してくるかもしれない。
などがある。
一方、「防衛運転」とは、事故に遭遇する確率を減らすような走り方をいう。
防衛運転は、自動車を運転するにあたり、安全な行動パターンを習慣にすることで交通事故にあう確率を低くしていくことである。
防衛運転の方法には、以下のものがある。
・安全な車間距離を維持する。(大原則)
・ミラーや目視のまめな確認による自車の周囲を把握する。
・交差点は交通事故が多いところです。左折時の巻き込み確認を毎回忘れずにする。
・右折中、対向車線のバイクの速度は遅く感じてしまうので通り過ぎるまで待つ
・自分の意志を明確に、あいまいな合図や動作は避ける。
・右左折、横断歩道を走ってくる歩行者に注意する。
・一時停止の標識があるところでは、必ず一時停止をする。
・側方を走る自動車、バイク、歩行者などとの距離を取る。
・後続車が続く場合、ブレーキを早めに緩やかにかける。
・夕暮れ時、雨天時はライトをつける。
・夜間走行中、見通しの悪い交差点の手前でヘッドライトの上下を何度か切り替える。
・対向車がはみ出してきたときは、速度を落として路側へ避ける。(特に海外)
これらの運転を運転者に習慣付けるためには、長い時間がかかることも考慮し、繰り返し新しい刺激を与えながら教育していくしかない。一般道路における交通事故の低減に勤めることは、企業の社会的責任(CSR)でもある。
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