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2012年2月18日土曜日

建設現場におけるヒューマンエラー

2011年9月6日夜、那覇発羽田行きの全日空140便(ボイング737−700/乗客乗員117名)が、浜松沖を飛行中、重大インシデントが発生した。機体は左に大きく傾いてほぼ背面飛行の状態になり、約30秒間にわたって約1900メートル急降下した。

原因は、副操縦士が、トイレから戻った機長のために操縦室のロックを解除するスイッチを操作しようとして、誤って尾翼の方向舵を調整するスイッチを操作したことによるヒューマンエラーであった。操作ボタンを間違って押したもので、何か考えことをしていたのか、あせっていたのか、確認を怠ったのか、詳しいことは我々には判らない。設備が簡単に間違って操作しないような人間工学的な配慮がなされていなかったことは事実である。

建設現場では、このような種類のヒューマンエラーは比較的少ない。ヒューマンエラーには、「意図しないもの」と「意図するもの」がある。前者には、人間の能力の限界や能力の特性があり、後者には、無関心行為・無視や規則違反などが含まれる。

その中でも建設現場で一番多いのは、規則違反である。「分かっているけどちょっとのことだから」とついやってしまうケースです。中には確信犯も多い。ビティ足場をよじ上ったり、脚立から飛び降りたりするなど、決められたことをしないで災害にあうことが多い。再発防止対策を検討する際に本人の過失を責めるのではなく、なぜ決められたことが守られないのかを考えなければならない。昇降口が少なくて遠回りしなければならない、早く終わって帰る支度をしたいなど作業者を規則違反に駆り立てる原因が潜在しているはずです。特にベテランほど今までの自分の力を過信し、横着をして災害にあうケースが多い。

また、建設業に従事する労働者の高齢化もヒューマンエラーの一つの要因として大きな影響がある。ヒューマンファクターの中の人間の能力の限界に当たる。

建設現場を対象にしたヒューマンエラー対策は、規則違反と高齢化に絞り込むと効果が上がるであろう。その対策は、このようなヒューマンエラーを起こす作業員の目線で解決策を立てる必要がある。ただ規則を守れというのではなく、作業しやすい環境を作って「わざわざ規則違反をしなくてもよい環境」を整備することである。どうしても設備的な対策が取れない場合は、なぜ規則どおりに行なければいけないのかを分かりやすく説明することが必要である。

さらに今後は、経験ある作業員が少なくなることから、知識不足や技量不足といった要素のヒューマンエラーも増えていくことにも注意を払わねばならない。

2011年5月25日水曜日

災害における正常化バイアス

東日本大震災では、テレビなどで盛んに大津波の警報を発していたが、地震の後、家の様子を見に戻って津波に巻き込まれて亡くなった人が多かった。予測を過小評価したか情報が伝わっていなかったと考えられる。

今まで何回か地震速報と津波警報が出されたが、結果が予想された値よりも低かったことが多く、今回も同じように大丈夫だろうと勝手に思い込む人が多かったのだろうと思われる。特に現代人は、情報が溢れているために、実際に危険に直面してもそれを認めようとせず、また危険に対する感受性も劣ってきている。例えば、台風が接近して大きなうねりが押し寄せていて波浪警報が出されていても、警報に従わずサーフィンをする人が多い。

これは、ヒューマンファクターの一つでもある。人間の心は、予期できない異常や危険に対して、ある程度鈍感にできている。人間は、常に入ってくる情報に対して過度の緊張とエネルギーを使うことによる心身の疲労を回避しようとする。ある範囲までの異常は、異常だと感じずに、正常の範囲のものとして処理するようになっている。これは正常化バイアスといわれるもので、本当に身に迫る危険を危険ととらえずに、危険回避行動をとらないようになってしまう。

最近は、携帯電話で緊急地震速報が流されるが、予測よりも小さいときや地震がこなかったりする。しかし、このような情報が連発されることによって、その後の地震災害のリスクを過小に評価してしまう傾向に陥っている。人々は、警報を受け取っても、自分たちに危険が迫っていることをなかなか信じようとしなくなる。正常化バイアスが情報の信頼性に対してマイナスに働き、リスクに対して鈍くさせてしまう。

建設現場においても、死亡災害が起きたときは反省して二度とこのような災害を起こさないと心の中に深く刻み込むが、その後、小さな災害が発生しているうちに、だんだんその気持ちも薄れて行く。人間は、緊張が長続きせず、自然に心の緊張を回避しようとする。いかにタイムリーに緊張を与え、それをリスクと認識させるかが重要になるであろう。
情報に質とタイミングは非常に重要になってくる。

2011年3月23日水曜日

スリーマイル島・原発事故

スリーマイル島原子力発電所の炉心溶融事故についてもう一度整理してみる。
この事故は、ヒューマンエラーが引き金になっている。

スリーマイル島原子力発電所は2つの原子炉を有し、事故を起こした2号炉は加圧水型原子炉(PWR)で電気出力は96万kWであった。東京電力の原子炉(沸騰水型原子炉 BWR)とは異なり、関西電力と同じ形式の原子炉である。

スリーマイル島原発の2号炉は、事故を起こすちょうど1年前に臨界に達して定格出力の97%で営業運転中であったが、当初から小さな故障が続発していた。
もともと原子炉を運営していた電力会社の経営状態が思わしくなく、いちいち小さな故障に対してその都度原子炉を停止するようなことは行わず、だましだまし運転し安全意識もかなり低下していた。その中で重大なのが、加圧器逃がし弁の不調である。この弁は、1次冷却系の圧力が高まったときに自動的に開いて冷却水を放出するものだが、圧力が低下した後も閉じないで「開固着」しやすい状態にあった。

さらに2次冷却系には万一に備えて冷却水を補給する装置が設置されているが、補助給水装置は非常時に直ぐに起動しなければならないものなので、そのバルブは常に開いていなければならない。ところが、数日前にこれを点検した際に、整備員が給水用のバルブを誤って閉じたままにしてしまったのである。

2次系の復水器の脱塩装置にあるフィルターが目詰まりを起こしため、当直のオペレーターは、圧搾空気を送り込んで解消しようとしたが、その作業の際に、溢れた水が弁を操作する部分に入ってしまい、2次冷却水を循環させる配管の弁が閉じたため、自動的に二次冷却水の主給水ポンプも停止することになった。この時点が、スリーマイル島原発事故の出発点と考えられる。

そのため蒸気発生器への二次冷却水の供給が行われず、除熱が出来ないことになり、一次冷却系を含む炉心の圧力が上昇し加圧器逃し安全弁が開いた。
このとき弁が開いたまま固着し圧力が下がってもなお弁が開いたままとなり、蒸気の形で大量の原子炉冷却材が失われていった。

このとき事態を決定的なものとする第一失策を行われる。オペレーターは、1次系が満水に近い状態にあると誤解してしまった。その原因として第一に加圧器に取り付けられていた水位計が誤って満水状態を指示していたこと、第二に、操作ボード上で加圧器逃がし弁に関する表示が、実際の状態を表すものではなく、開/閉の指令を指示するだけであった点が挙げられている。このため運転員が冷却水過剰と勘違いし、自動的に作動していたECCS(緊急炉心冷却装置)を手動で停止されてしまう。
その後も最も重大な加圧器逃がし弁の開固着には誰も気がつかず、オペレーターの意識は、最初にトラブルを起こした復水器や補助給水バルブのある2次系に集中してしまい、1次系の危機が認識されにくい状況になった。また、オペレーターには目の前のボードの操作に忙殺されて心理的余裕がなくなっていた。

次に事態を決定的なものとする第二の失策が行われる。2次系の主給水ポンプが停止してからほぼ1時間を経過した頃から、1次冷却水を循環させるポンプが音をたてて振動を始めた。これは、圧力低下と温度上昇の結果として水中に気泡が生じ、この泡がポンプ内部で破裂するために引き起こされた。オペレーターは、4基ある冷却水ポンプを手動で全部停止した。

この結果、冷却水が循環する過程でわずかに行われていた除熱がほとんど不可能になり、開きっぱなしになっていた安全弁から500トンの冷却水が流出し、燃料棒は炉心上部3分の2が蒸気中に露出してしまった。こうなると、熱の逃げ道がなくなって炉心が過熱し、最終的には溶融を始める(炉心溶融)。さらに、被覆材として用いられていたジルコニウムが溶け出し、これが水と化学反応を起こして水素ガスが発生して、水素爆発の危険が高くなる。もし、高熱や水素爆発によって原子炉の格納容器が破壊されると、放射性物質が大量に周辺にまき散らされることになり、もはや状況は大惨事の一歩手前まで差し迫っていた。ただし、1989年の調査では、圧力容器に亀裂が入っていたことが判明している。

このため周辺住民の大規模避難が行われた。その後、運転員による給水回復措置が取られ、事故は終息したが、炉心溶融で、燃料の45%、62トンが原子炉圧力容器の底に溜まった。給水回復の急激な冷却によって、炉心溶融が予想より大きかった。
放出された放射性物質はヨウ素555GBq(15キュリー)など、周辺住民の被曝は0.01 - 1mSv程度であり、住民や環境への影響はほとんど無かった。

スリーマイル島原発事故は、国際原子力事象評価尺度(INES)はレベル5としてIAEAに登録されている。現在の福島第一原子力発電所1〜3号機の事故について、経済産業省原子力安全・保安院は、暫定評価としてレベル5と報告している。ちなみにチェルノブイリ原発事故は最も深刻なレベル7であった。

2010年11月3日水曜日

ヒューマンエラーとエラーチェイン

作業員の予想も付かない行動によって起きるヒューマンエラーを、本人の責任で片付けてしまっても第二の異常行動がまた起きます。
とかく現場は、本人の責任にして自分達には責任がないという安易な気持ちになることがあるが、それはとんでもない間違いです。作業所長が、そのような気持ちを外に表すと、得意先や監督官庁から厳しい批判を受けます。

ヒューマンファクターによるミスは、工学技術が進んだ現在においても減らすことはかなりの努力を要します。むしろ、ストレス、高齢化、生活不安という新たなファクターが加わり、ヒューマンエラーは増える傾向にあると考えた方がよい。

ヒューマンエラーの対策は、作業員の安全教育ではなかなか効果が上がりません。災害分析ではよく「本人の安全意識が低い」、再発防止対策で「・・・・を徹底する」、「・・・・の教育を行う」などのことばがよくでるが、再発防止効果は低い。このような災害分析・再発防止策は務めて避けるべきである。

ヒューマンエラーの再発防止策の基本は、設備を改善して、間違った行動を起こしにくくする、間違った行動を起こしても設備側が安全に防御する(フールプルーフ)、突然機械が停止しても安全側に停止する設備(フェイルセーフ)が基本です。間違って通電された電気ケーブルにうっかり触れてしまっても、瞬間的に電源が切れるようなELCBが設備の対策に当たります。

次に管理面で対策を立てる。
これらの対策を立てる場合に、エラーチャインを作ってみると何が重要かということが明白になります。
災害は、いくつかの要因が連続して災害に至り、その中の一つでもなかったら事故に至らないという考え方です。ANAなど、航空業界が取り入れている手法です。

(管理者が正しく指示を出さなかった)−>(ケーブルの配線計画がなかった)−>(ELCBを取り付けていなかった)−>(本人の不安全行動)−>感電
これらの対策をきちっと採れば、大きな災害に至らずにすむ筈です。

本人の不安全行動だけでなく、それ以外の要素を重点対策としたほうが効果が上がることが明白です。
ヒューマンエラーの再発防止策としてエラーチェインは有効な手段といえます。

2010年9月15日水曜日

自らヒューマンエラー

最近、自分で大きなヒューマンエラーを起こしてしまった。

昨日は、山の中で自動車を運転中、横に川が流れていて抜群の魚釣りスポットだなと見た瞬間、道が若干カーブしていて、自動車の左側面をガードレールでこすってしまった。幸い物損だけで済んだが、もしガードレールがなければ、谷底に落ちて転落していたところであった。自動車を運転している時は、必ず前方を注意していなければならないことが分かっていながら、自分の興味を持つことに気を引かれると、一瞬の間、前方注意が頭から抜けてしまった。ヒューマンファクターの場面行動本能にあたります。

また数日前、風呂場の換気扇がおかしな音がするといって、ブレーカーを落としたりして確認し、家中で大騒ぎしましたが原因が分からず、翌日電気屋さんを呼んで調べてもらいました。電気屋さんも電気的な原因が分からず、風呂場をふと見回したところ、振動ひげ剃りのスイッチが入りっぱなしで、その音が風呂場で反響していたとのことでした。目の前に振動ひげ剃りが置いてあるのに気づかない。完全に思い込みと錯覚が作用しています。

以前は、電車に乗るとき急行と特急をよく間違えました。東急東横線渋谷駅は、電車が入線するとき、「急行」という表示のままはいってきます。関西では電車は入線するとき新しい種別の表示に変えて入ってきます。その感覚が残っていて、電車の入線したときの表示「急行」を自分の乗る電車の種類と思い込んでしまって、後で「特急」に変わり、ホームの種別表示や電車のアナウンスで「特急」といっても頭の中は変わらず、結局何回も止まると思っていた駅に止まらず通過する羽目にあいました。

ヒューマンエラーは、自分でもかなり気をつけておかないと、ついやってしまいそうです。
年を取るにつれこの傾向が強くなり、悲しいです。

2010年3月24日水曜日

テネリフェの悲劇

テネリフェの大惨事とは、ヒューマンファクターが連続して同時に現れ、その連鎖を最後まで断ち切ることができず、航空機のクルーたちの心理状態が悪化していって航空機史上最悪の大惨事となったものです。ヒューマンファクターの研修で必ず取り上げられる内容です。

「機長の真実 〜墜落の責任はどこにあるのか〜」(著者:デービッド・ビーティ、訳者:小西 進)でヒューマンファクターについて詳しく説明されています。
以下に内容を抜粋します。

  1977年3月27日、スペイン領グラン・カナリア島、ラス・パルマス空港乗客ターミナルで爆弾が爆発した。二つ目の爆破予告も受けていた。空港は直ちに閉鎖されたため、このとき、ラス・パルマスに向かっていたる航空機のなかにロサンゼルスからのパンアメリカン航空1736便とアムステルダムからのKLMオランダ航空4805便のボーイング747型機がいた。

  KLM4805便は13時38分、テネリフェの滑走路に着陸したが、空港は臨時着陸の飛行機でいっぱいになりはじめていた。天候は良好だった。その37分後にパンナム機が着陸したが、エプロンはすでにふさがっており、何機かは誘導路上に駐機していた。KLM4805便は滑走路の先端付近に駐機しており、その後ろにボーイング737、727、C8がいた。パンナム機はその後ろに駐機した。
すでにフラストレーションと疲労が重なっていた。時間に迫られ、早く出発したいという願いから、KLM機長は最初、乗客を機内にとどめていたが、その後乗客を降ろした。パンナム機長のほうは乗客を機内にとどめたままだった。

  ラス・パルマス空港が再開され、管制機関がパンナム機に出発許可を出したとき、クルーは滑走路に向かう通り道が、KLMジャンボ機にふさがれているのに気がついた。それ以上時間を無駄にしたくないので、副操縦士と航空機関士が飛行機を降り、KLMジャンボ機と他の飛行機の間隔距離を測りに行ったが、安全にすり抜けるのは無理だと認めざる得なかった。

  KLM機の乗客がターミナルからバスで戻りはじめたが時間がかかり、1時間後、KLM機が管制塔を呼び出し、出発予定時刻の確認と燃料を追加した。ラス・パルマス空港で燃料補給をせず、アムステルダムに折り返す時間を節約しようとした。

  KLM機はようやくエンジン始動の許可を取り、そして滑走路へ移動を開始した。やっと動きがとれるようになり、パンナム機もあとにつづいた。天候は悪化し、深い霧に覆われた。KLM機は滑走路を逆走する許可を求め、管制官もそれを認め、三つ目の誘導路で滑走路を開けるように指示した。副操縦士は聞き間違えて「最初の誘導路」と復唱してしまったが、管制官が指示を変更した。KLM機は滑走路を先端まで逆走し、先端で、180度旋回して機種を離陸方向に向けることになった。副操縦士は管制指示を復唱したが、機長は視界が悪く地上移動に集中するあまり、無線のやりとりはほとんど聞いていなかった。

  一方、パンナム機も同じ滑走路を逆走し、三つ目の誘導路で滑走路を出るように指示を受けていた。両機とも管制官の強烈なスペイン語なまりの英語の指示に手こずっていた。パンナム機は霧と疲れから3番目の誘導路を行き過ぎてしまった。

  KLM機は首席教官である機長と95時間しか飛行経験がない副操縦士の組み合わせであり、副操縦士は機長に対しものを申す環境ではなかった。機長が180度旋回の操作を完了したとき、副操縦士は航空路管制承認を取ろうとしているところであった。それにもかかわらず、機長はスロットルを開きはじめた。副操縦士がちょっと待つように機長に言ったが早く飛び立つことに気持ちが集中していた。依然視界が不良でパンナム機が見えない。副操縦士が管制承認を復唱途中で、機長は離陸を開始した。

  管制官が、「オーケー...(1秒間の沈黙)...離陸は待機されたい。後ほど指示する」と指示したが、その沈黙の瞬間、パンナム機が自分の所在を明らかにしようと割って入った。しかし、無線は混信してキーという雑音となってしまった。
管制官がパンナム機に「滑走路を明け渡したとき通報するように」というやり取りをしているのをKLM機の航空機関士が聞いて機長に疑問を投げかけたが、機長の思い込みに打ち消されてしまった。

  その後、KLM機は離陸決定速度に達し離陸したが、目の前に現れたパンナム機の後部胴体の上を滑って破壊し、150M先に落ち、爆発炎上した。KLM機は248名全員が死亡し、パンナム機は335名が死亡した。

  その後の調査で事故原因はヒューマンファクターに絞り込まれた。そのうち特定されたものは、疲労、重責、強迫観念、フラストレーション、時間の制約、操縦室内での権威、乗客を喜ばせたいという願望などがあげられた。
時間的予測ができないという要因、事態の展開が不確実という要因が加わり、そしてその他複数のヒューマンファクターが複合的に絡み合い、そのエラーチェーンを断ち切ることができなかったことが悲劇につながった。

  ヒューマンファクターを本人の問題で片付けては何の解決にもならない。エラーチェーンを断ち切るための設備や業務要領の改善が必要になるでしょう。

2009年12月26日土曜日

物忘れ・失念による事故

年をとると物忘れが激しくなります。

  しかし、あることに集中していると元のことをすっかり忘れてしまう場合があります。朝雨が打っていて傘をかけて出社したが、昼から晴れて帰るときにはすっかり傘のことを忘れてしまっていることは誰もが経験することです。

  先日、インドネシアのある現場で、場外ヤードからクローラクレーンをトレーラーで現場内に回送しているとき、現場に到着してオペレーターが降ろす準備をするためクローラクレーンの旋回ロックを解除した。しかし、現場内が混雑していて降ろすことができず、すぐに元の場所に戻すように指示された。トレーラーはすぐに方向転換してもと来た道を戻ったが、クレーンオペレーターは旋回ロックを忘れたため、途中のカーブでクレーンが旋回しトレーラの荷台からずれ落ちました。自分の考えていることと違うことを他人から急に言われると、最初に考えていたことを記憶の中から完全に外してしまいます。
典型的なヒューマンファクターの失念による事故(インシデント)です。

  安全管理をする上で、このようなケースは「本人の不注意」のヒューマンエラーで片づけてしまってはいけません。誰もが陥るヒューマンファクターを想定した対策を取る必要があります。戻るように指示した者も無責任にただ戻れというのではなく、その場で再度クレーンをトレーラーで回送する際の確認を自ら行うか、確認するように担当者に指示すべきです。

  対策は、鉄道等で採用されている「指差し確認」やお互いの「声掛け確認」などがありますが、建設工事ではあまり普及していません。出発時に使ったチェックリストを再度確認する習慣をつけ、「指差し確認」で確認を行ってから次の行動に移るのが最も良いと思います。また、指示を出す人も相手の身になって声を掛けることも必要です。思ってもいなかったことを急に指示されると、極度のストレスにもなり脳の反応が途切れてしまいます。

  年をとると自然に物忘れが多くなり、さらに瞬間的なストレスが加わると失念によるヒューマンエラーの確率が高くなります。周りの人たちのコミュニケーションとヒューマンファクターを考慮した安全管理の仕組みを作るしかありません。

2009年8月24日月曜日

電車運転中の盗撮行為

JR西日本の運転士が運転中に女性を盗撮したことがニュースで報じられました。

21日、JR西日本の姫路発敦賀行きの新快速電車で、湖西線のマキノと永原の間を時速120kmで走行中、イスに座ったまま後ろを向きカーテンの隙間から女性2人を携帯電話のカメラで盗撮していたことが判明しました。

JR湖西線は一般の在来線と違い、全線立体交差化され踏切が一切なく、最小半径1400km、最高速度130kmの規格となっています。また、ほくほく線のように高速信号システムやホームドアを導入すれば、特急サンダーバードを時速160kmで走行できるようになっています。
このような規格が通常の在来線と違って、安全装置に任せて運転すれば安全が確保でき運転の単調さが生じるのだと思います。

航空産業ではヒューマンエラーの分析が進んでいます。飛行機のパイロットほど単調な業務はありません。離陸と着陸の際は最も緊張しますが、巡航中は業務が極端に単調になります。人間の本来の特性として、攻撃性、同調性、好奇心があります。そのなかで好奇心は、あらゆる発明・発見、創造の根源をなすものです。しかし、パイロットや電車の運転士にとって好奇心は注意力を散漫にします。新快速電車の運転士は停車駅の間隔も長くずっと座りっぱなしで、退屈を紛らわせようとして働いた好奇心が大きな事故に発展する危険性があります。単調な業務そのものが不注意のもとになり、ちょっとした過ちが大惨事につながります。

JR西日本は、宝塚線脱線事故の再発防止対策として鉄道業界として始めてリスクアセスメントを導入すると発表しましたが、航空産業で取り入れているヒューマンエラー対策も導入すべきです。今回の事件は、単に運転士の規則違反で終わらせてはなりません。運転士の業務特性をヒューマンファクターの面から分析して、対策を立てる必要はあります。

強いストレスが続く時、セックスなどに気が散るのは人間本来の自然の姿かもしれません。根本原因のストレスの緩和方法や、運行本部との交信などで業務の単調性を改善する等、ヒューマンファクターへの対応が必要です。

2009年6月25日木曜日

ケータイ依存症に注意

最近携帯電話を手放せない人が多くなりました。

現代社会では、携帯電話は必需品になりました。しかし、常に携帯電話で会話をしメールに熱中するのは問題です。

電車の中で周りの乗客を見ると多くの人が携帯電話でメール交換をするか、ゲームに熱中しています。電話で喋りながら歩く人やメールをしながら道を歩いている人が多く歩くペースが違うので歩きづらくて仕方ありません。ましてや、メールしながら自転車や自動車を運転する人もいるのでコントロールを失った暴走車両と鉢合わせする可能性もあります。

いわゆる「携帯電話依存症、ケータイ依存症」と俗称されているものです。この症状は年齢に関係なく蔓延しているように思えます。 常に携帯電話を持ち歩き、あちこちに電話やメールをしてその返事が常に返ってくることで安心し、少しでも返事が遅かったり来なかったりすると不安感や仲間からの疎外感を抱くようになります。

常にケータイ画面に見入っていて、周りに誰がいおうと気に入らず、携帯電話の世界に没入している状態です。 この状態が次第に仕事中まで広がっていくと非常に危険な状態、不安全行動を起こす不安全な精神状態になります。 以前、携帯電話でしゃべりながら玉掛をしている職長がいました。その職長の行動をずっと観察していると、業務中ずっと携帯電話で誰かとしゃべっていて、その合間に玉掛をしている状態でした。 このような状態では作業員に対する安全配慮まで気が回りません。

建設現場では、喫煙と同様に休憩室以外では携帯電話の使用を禁止すべきです。最近では携帯電話を使えなくする専用電波を局部的に発信することができるそうです。

携帯電話が普及することで便利になりましたが、その反面ヒューマンファクターに起因する危険性もましてきました

2009年3月14日土曜日

疲労とヒューマンエラー

災害が起こるとよく被災者の個人的なミスを原因にあげることが多いです。

簡単にヒューマンエラーを原因にして、組織の管理は問題なかったとし片付けてしまうものです。
これはとんでもない間違いで、このような対応を取っても災害は無くなりません。
ヒューマンエラーの背後要因を見つけ出し、組織的な欠陥を是正しなければなりません。

また、ヒューマンエラーは、人間が本来持つ特性であるヒューマンファクターに起因しています。
また、疲労が蓄積したとき起こしやすくなります。そこで、一般的に人間はあるリズムで眠気を感じ、疲労を覚えます。一日のうちでは、15時頃が最大のピークになります。その他にも10時、深夜にもピークがあります。年間を通じると、8月が最大のピーク、そして4月のピークです。食後では、3時間経過した時に最大のピークを迎えます。

逆に言えば、このピークに一人作業や車の運転は絶対避けた方がよいでしょう。ここ数年、災害発生が安全週間の7月よりも8月に多く発生しています。このような人間の特性を作業計画に組み込むことにより災害を減らすことができます。

安全担当者は、一人で車を運転してパトロールにいくことが多くなりますが、現場で起きる災害のリスクより、車を運転して交通事故に合うリスクの方が高く感じます。
ひとごとではありません。

2009年3月5日木曜日

ナチュラル・キラー細胞

笑いがあると健康になり職場は活性化するといいます。
その理由の一つに、ナチュラル・キラー細胞があります。

ナチュラル・キラー細胞(以下NK細胞という)は、白血球を構成するリンパ球の一つです。若い人でも、健康な人でも身体の中では1日約3000~5000個のがん細胞が発生し、それらのがん細胞を破壊するのがNK細胞です。生まれついての殺し屋で、殺傷力が高く、常に体内をパトロールしてがん細胞やウイルス感染細胞を見つけると単独で直接やっつけてしまいます。

NK細胞の活性を高めるには
1) 喫煙を控える
2) 適度の飲酒を心がける
3) 質の良い睡眠を取る
4) 無理のない適度な運動をする
5) 笑う
6) 充分な休養などでストレスをためない
7) 体温を下げない
8) バランスの良い食事を心がける

ここで最も効果的なのが笑うことです。
職場において大声で笑える環境をつくることが、心身とも健康を保ち作業の能率向上に効果が上がります。そのための方法は、「声掛け運動」の推進が最適です。

明るく、楽しく、おもろい現場を目指しましょう。

2009年2月21日土曜日

エラーチェーンとSHELモデル

昨今、建設業ではリスクアセスメントを前面に出して安全管理を推進するところが多いようです。

確かにこれまでの後追い型安全管理から、先取り型の予防安全に方向転換する効果的な方法です。
しかし、リスクアセスメントではヒューマンエラーに関することをうまくフォローすることができにくいように感じます。これからの安全管理はリスクアセスメントとヒューマンエラー対策及び従来型の法令順守を両立させる方法が必要ではないでしょうか。

今までのヒューマンエラー対策の指導書は、錯覚や近道行為などの事象ばかり説明されていましたが、原因を背後要因まで掘り下げ対策を立てることが少なかったような気がします。

ヒューマンエラー対策で最も進んでいるのが航空業界です。ヒヤリ・ハットや不具合事象、事故などが起こった場合報告をしてそのデータを業界で共有する仕組みができているそうです。また、国際ルールでヒヤリ・ハット報告者に対して人事評価の対象としてはならないと言う決まりも明確になっています。

航空業界で採用しているヒューマンエラーの分析と再発防止対策の手法として、「エラーチェーン」と「SHELモデル」による分析があります。
詳しい内容を知りたい方は、ANAラーニング㈱(全日空の子会社)が主催する「ヒューマンエラー対策セミナー」を受講してください。

ANAラーニングのホームページ
http://www.analearning.com/