2011年10月12日水曜日
溶接ホルダーを握ったまま海に落ちると....
あり得ないようだが、いつ落ちてもおかしくないような足場や筏で鋼管杭の継ぎ手箇所の溶接や地盤改良船のケーシングパイプなどの修理をしているケースをよく見かける。
水中溶接ができるのだから、海に落ちても問題ないだろうと考えるのは大間違いである。水中溶接は、通常、直流電源を使用し電撃の危険性は交流電源の六分の一程度であり、溶接ホルダーも陸上用とは全く異なり絶縁性能もかなり高くなっている。しかし、陸上用溶接ホルダーは握り部分の直近が充電しており、ホルダーを握ったまま落水したとたんに感電死します。
そしたらどうしたらいいか、当然落ちないような足場や手すり、波を被らないような高さの足場にすること、絶縁手袋を着用して作業することなどです。
それでも溶接作業者が海に落ちてしまったら....そのときは運を天に任して溶接ホルダーを思い切り遠くへ放り投げるしかないであろう。人間は危険な状態に陥ると思いっきり何かを握ってしまう習性がある。それを離せというのは相当落ち着いてなければならない。水中部では充電部から同心円状に電圧が急激に降下し、50cmも離れると電圧はほとんどゼロに近くなる。そして接地の位置との関係により回路の中に入っていようと十分離れていれば問題がなくなる。
しかし、海に落ちたときのためにホルダーを遠くに投げる訓練をするのは愚の骨頂である。まずは、本質安全を図ること。すなわち溶接しなくてもよい工法を考えること、次に海中転落しないような安全な設備を設けることである。最悪のことを考える必要はあるが、まずは本質安全である。
2011年9月21日水曜日
野外作業は落雷のリスク
経過は以下の通りである。1996年8月、土佐高校サッカー部が大阪府高槻市体育協会主催のサッカー大会に出場した。午後から、上空には暗雲が立ち込めて暗くなり、時々雷が聞こえていたが3時過ぎには豪雨になった。試合が始まる直前に雨がやみ、上空は明るくなったが、依然雷鳴が聞こえ、稲光も確認できた。第二試合は午後4時30分に開始されたが、その直後に土佐高校のサッカー部員が頭部に落雷を受け、意識不明となり、その後重度の障害が残った。
2006年3月、最高裁は、事故当時、落雷事故を予防するための注意に関する文献上の記載が多く存在していたなどとして、指導教諭は落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であり、また、予見すべき注意義務を怠ったと判断し、高松高裁に差し戻した。
2008年9月、高松高裁は、指導教諭は試合中止や延期を申し入れたり、避難させたりして事故を回避できたのに、漠然と試合に出場させた過失があったとして、安全配慮義務の過失を認め、被告に賠償金の支払いを命じた。
対策は、雷鳴が聞こえたら、すぐに作業を中止して安全な場所に避難することである。そして、造成現場などで、高い木の下に逃げるのは危険である。落雷は高い木に生じることが多く、樹木よりも電気伝導率の高い人間の身体を通って電気が流れ感電死する可能性が高くなる。逃げる場合は、木の枝葉を含めて高い木から4m以上離れ、木の先端から45度の範囲外、かつ木が倒れても十分な距離に逃げなければならない。現実には、高い木は非常に危険で、早めに建物内や車の中に逃げることである。
建設工事に従事する職長や監理技術者は、落雷に対する予知と危険回避義務の責任を負い、稲光をただぼんやりと眺めていてはいけない。一刻も早く作業員を安全な場所に退避させる責任がある。
2011年5月18日水曜日
LOTO
国内の建設現場でも、このような簡単なカードと鍵で管理することを推奨します。
参考資料は、以下のとおりです。
http://www.geneseo.edu/~ehs/Lockout%20Tagout/Lockout%20Tagout%20Program.htm
2010年12月1日水曜日
溶接機の帰線
アーク溶接作業にはいろんな危険性がある。感電、火傷、火災、塵肺、目のダメージなど....
そしてそれらの危険性は災害の程度の重篤度がかなり大きいにもかかわらず、作業資格は特別講習のみでよい。だけど作業員の危険性の認識度は相当低いのではないかと思われる。
溶接機には直流方式と交流方式があるが、人体への危険度は交流式のほうがはるかに高い。その理由は、人体の心室細動電流は、直流電流は交流電流(60Hz)よりもおよそ4〜5倍になっており、交流電流のほうが直流電流に比較してはるかに危険であるからだ。
建設現場においても交流溶接機は広く使われている。交流溶接機には、電撃防止装置が内臓されなければならないことになっている。しかし、ごれで災害が全て防げるわけではない。
溶接機の帰線は、原則として母材の近くになることになっているが、かなり離れたところに取る事例を見かける。海上杭打ちの杭の溶接作業を行う場合、溶接機を台船上に設置し、帰線を台船に直接とっていることがある。この場合、杭も台船も海水を通してアースされているので問題なく作業ができる。しかし、溶接工の溶接ホルダーが台船上で台船に接していない鋼材に触れて、そのときその鋼材に他の作業員が素手で触れているとき、その作業員に電気が流れる恐れがある。

また、陸上のPHC杭の溶接作業を行う場合、溶接機を杭打機に搭載し、帰線を杭打機のボディーにとる場合も同じである。PHC杭も杭打機も地盤に接していてアースされているので作業はできる。しかし、母材近くに帰線をとっていないために、電流がいろんなを通って流れる。キャタピラと敷鉄板の間で火花が出たりする。近くに可燃性のものがあれば火災の危険性もある。
溶接機の帰線を母材の近くにとっていないと、感電、火災などのリスクが大きくなる。ただめんどくさいから行いことがあるが、これはきちっと教育して習慣づけを行うしかないであろう。
2010年9月22日水曜日
ベテランの感電災害
感電災害は、一般の作業員がうっかり触って感電するのではなく、意外と電気の知識が豊富な電気作業員が感電することが多い。
今回も同じケースでおこった。
被災者は、大学で電気工学を修め、民間企業で7年間も電気工事に従事したベテランであった。
しかし、なぜか220Vの電気ケーブルの接続部を軍手で直接ばらそうとして、充電ケーブルに触れて感電死した。夏のくそ暑い時期に、活きた電線を軍手で触るというのは、普通では考えられないことであるが、ベテランだからこそ犯す過ちであろう。意外とベテランは、低圧であれば、生きたケーブルを上手く処理することをたまにやるそうである。
今回は、分電盤はロックされていて勝手に触れないようになっていたが、ベテランが犯す「過信」というヒューマンファクターが働いて、さらに設備の不備が加わり災害に至った。
220Vの電線に1000Ωの抵抗の人間が触れると、220mAの電流が流れる。普通なら一瞬のうち弾き飛ばされ、流れる時間も一瞬でしに至ることは少ないが、握ってしまうと筋肉が硬直して離せなくなり、体内に電流が長い時間流れ死に至ってしまう。
感電は、体内を流れる電流の大きさと時間、経路によって被害の程度が大きく異なる。
人体に流れる交流電流の影響を下記のECの表で説明されている。
仮設電気作業の感電対策は、分電盤の出力部分に漏電遮断器を取り付けることです。日本国内ではIECの基準に準拠して感度電流30mAの漏電遮断器の取り付けを推奨されていますが、OSHAでは5mAを推奨しています。ただし、発展途上国では漏電遮断器はほとんど普及しておらず、入手も出来ないところがあります。
また発展途上国では、あってもかなり高価です。被災者の補償費用よりも高くなることが普及しない理由なのでしょう。
土木技術者は、電気についてあまり得意ではないことが多いです。でも最低限の知識は必要で、それが人の命、作業員の家族の幸せを確保することになるのです。決してお金で物事を測ってはいけない。
2009年11月6日金曜日
目に見えない電気の怖さ
私も電気とは? と聞かれて上手く答えることができません。電導体に電位差が生じ中を電子が流れることで、電子の流れと逆向きの流れを電流と呼ぶというところまでは分かるのですが、三相交流などはどのように説明したらよいのやらよく分かりません。
電流は目に見えないところに危険性が存在します。まず、この問題に対処するには、電気が流れる可能性のある箇所には絶対に近づかないようにする「隔離の原則」か、目に見えないものは目に見える形にする「可視化」必要があります。
東南アジアのある国のでことですが、市内の配電線の近くで鋼矢板を打設する作業がありました。電柱を使って流されている配電線は、日本では最高6,600Vですが、その国では15,000Vでした。配電線は絶縁被覆されているので原則触れても感電することがないはずですが、絶縁被覆の劣化や接続部分の絶縁不良が原因で、1m弱の離隔距離で放電を起こし作業員が被災しました。その国の規定では安全離隔距離は1mと定められていました。日本の電力会社では2mの離隔距離を取ることを指導されます。米国OSHAでは50kV未満は10フィートの離隔距離を取ることを要求しています。電線は完全に絶縁されているとは言い切れず、不測の事態に備えて余分に離隔距離を取ることが正しい考え方です。発展途上国では新品の完全な絶縁状態の条件の数値でしか指導しないケースがあり自己防衛のためにきっちりとリスクを見極めるべきです。
また、その国には工事を行う際に、配電線に保護ケースを施す習慣がありませんでした。保護ケースすらありません。しようがなく鋼矢板を短く切断して離隔距離を確保して作業することになりました。もちろん追加費用はみてもらえません。命には変えられないので泣き寝入り状態でした。
分電盤やキュービクル、電気機器の停電結線作業では必ず電源を切断するのが原則ですが、誰かが勝手に電源を投入し、結線作業している人が被災するケースがあります。結線作業をするときは、元の電源を切断し、かつ分電盤の鍵をかけ、停電中であることを表示しなければなりません。そして分電盤の鍵は結線作業をする人が持つことで、何も知らない人がうっかり電源を投入することが防げます。いわゆるLOCK OUT・TAG OUTの徹底です。
最後に、電機機器にはアース(グラウンディング)を取り付けるようになっています。アースを確実に取ることで漏電の被害を小さくすることができます。しかし、そのアースが有効に行われていないのが現実です。それはなぜアースが必要か理解していないからです。発電機のアースも設置方法を判っていないことが多いようです。ボディアース端子と機能アース端子の2カ所から取る必要があります。
電気災害に遭う件数は少ないかもしれませんが、感電した場合、死に至る確立は高いということを肝に銘じておかなければなりません。
2009年2月27日金曜日
土木屋は電気が苦手
しかし、建設工事現場で出力10kW以上の可搬式発電機を使用する場合、電気事業法の適用を受けるので、よく分らんではすまされません。
「電力会社から600Vを超える電圧で受電する設備」や「一定出力以上の発電設備」等は、「自家用電気工作物」として電気事業法の規制を受け、国への手続き等が必要となります。(電気事業法第38条)
また、自家用電気工作物に係る保安規制として、電気主任技術者の選任、届出が義務付けられています。(電気事業法第43条)
電気事業法では、電圧5万V未満の事業用電気工作物の工事、維持及び運用の保安の監督を行う者として第三種電気主任技術者となっていますが、電気科を卒業した者以外にとってこの資格は簡単に取れるものではありません。
そこで、移動用発電設備を使用する建設工事現場等又はこれを直接統括する事業場に対し、経済産業省の内規「主任技術者制度の解釈及び運用」(平成17・03・22原院第1号)2-(1)-②-トでは、法に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有する者として、(社)日本内燃力発電設備協会の定める自家用発電設備専門技術者又は可搬形発電設備専門技術者が認められています。(平成17・05・20原院第1号「建設工事現場等における移動用電気工作物の取扱いについて」)
この資格は2日間の講習(6時間)と試験で取れますが、毎年9~10月頃しか実施していません。
(ホームページhttp://www.nega.or.jp/)
ただし、届出は経済産業省の各産業保安監督部により若干認識が違うようです。
留意点として
1)選任する主任技術者の知識や技能に関する説明書の中でなるべく過去に資格を取得し経験を積んだ人を載せる。
2)事業所の名称及び所在地のところをあまり広い範囲にしない。"2時間以内に到達できる範囲"と言うのを強調される方がいる。
届出は1人でいいようですが、なるべく多くの有資格者を養成しておいた方がいいようです。
従来は、リース業者と建設業者の両者に電気事業法が運用されていたようですが、平成17年6月「建設工事現場等における移動用電気工作物の取扱い」の改訂により、「設置して使用する者」が手続きを行うこととされています。
受電設備等は、建設技術者の手に負えるものではないので、電気保安協会と委託契約をせざる得ないでしょう。
2009年2月8日日曜日
水中溶接は直流電源が有利
人が電撃を感覚する最小の電流を感知電流といい、その値は交流で0.5mA、直流で2mAといわれます。電流の値をさらに大きくしていくと、その電流値では直接生命の危険はないが、通電経路の筋肉の痙攣が激しくなり、神経が麻痺して運動の自由が利かなくなる。このような運動の自由が利かなくなる限界の電流値を不随電流といい、逆に運動の自由を失わない最大限度の電流値を離脱電流といいます。
まず,電撃に対しては離脱電流が目安となる。離脱電流以上の電流が流れると,水中での呼吸に問題が生じるため,手が自由に動かせなくなるという物理的な問題と心理的な要因が重なって危機的な状況に陥りやすい.
<人体(女性)の離脱電流>
直流 :50mA
交流60Hz :10.5mA
そして、直流における心室細動電流は、60Hzの交流よりもおよそ4~5倍になっており、交流のほうが直流に比較してはるかに危険です。
羊について、一方の前足から他の後ろ足に3秒間通電した結果(人では実験ができない)
<心室細動電流>
直流 :1300mA
交流60Hz :250mA
※心室細動電流:心室が細動を起こすような電流をいい、正常な脈動が打てなくなって血液の循環に支障が生じ、それが持続すると死亡する。
したがって、水中溶接では、直流溶接機を用いるほうが交流より危険性が低い。
参考ホームページ
http://www.mre.aist.go.jp/db-uwt1/DUCK/full/uwc2233.html
