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2009年5月21日木曜日

法人故殺法

英国には法人を殺人罪で処罰する法律があります。

法人故殺法(Corporate Manslaughter and Corporate Homicide Act
2007)で、2007年7月26日に成立し、2008年8月に発効しています。

この法律は、企業が業務上関連する注意義務の重大な違反に該当し、かつ人が死亡した場合に適用されます。すなわち健康及び安全に関する違反、それが死亡災害に関わる可能性を予見できた、または予見するべきであった、加えて違反によって利潤を追求しようとした場合です。

日本では刑法第211条1項の業務上過失致死傷罪に相当しますが、日本の場合は自然人(個人)の責任が対象であり、法人は対象になっていません。

また、労働安全衛生法では第20条「事業主の講ずべき措置」に違反した場合は両罰規定として法人も罰せられますが刑法にまで及ぶことはありません。

最近は企業の社会的責任が問われ、公衆に対し注意義務を怠り大きな災害を発生させた場合、企業そのものの責任が問われる傾向にあります。

社会に影響を及ぼすような災害が発生すると、いずれ日本でもこのような法律ができるかもしれません。

2009年3月23日月曜日

巻き上げ機の事故報告の必要性

先日、事故報告の義務について教育を行ったところ、巻上げ機の事故についてうまく質問に答えることができませんでした。

そこで労働安全衛生規則を調べてみました。すると以下のような条文があります。
(事故報告)
第九十六条 事業者は、次の場合は、遅滞なく、様式第二十二号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
一 事業場又はその附属建設物内で、次の事故が発生したとき
イ 火災又は爆発の事故(次号の事故を除く。)
ロ 遠心機械、研削といしその他高速回転体の破裂の事故
ハ 機械集材装置、巻上げ機又は索道の鎖又は索の切断の事故
ニ 建設物、附属建設物又は機械集材装置、煙突、高架そう等の倒壊の事故

その中で、巻上げ機(ウィンチ)のワイヤーやチェーンが切れた事故が報告義務になっていますが、作業船(船舶法対象外のもの)のアンカーワイヤーの切断事故はこれに該当するのかどうかということです。揚錨船や潜水士船の揚重装置のワイヤー切断事故は船舶法との関係でどのような取扱いになるのかという質問でした。

いろいろ調べた結果、明確に説明している条文はありませんが、荷を吊っている状態の巻上げ機が該当するらしい。したがってアンカーを巻上げ機を使って緊張するような場合は該当しません。

また、揚錨船や潜水士船の揚重装置の巻上げ機は、船舶の付属物であるため船舶法ではなく安衛法の対象となり、この条文に引っかかってくるという見解です。二股のシアがついている場合はクレーン則にも該当します。

どちらにせよ、労働災害のなる危険性に及ぶ恐れがあるものは対象になると考えて間違いないようです。

2009年3月16日月曜日

労働安全衛生法の用語の定義

「事業場」や「労働者」の定義は、基本中の基本であるにもかかわらず、曖昧である場合が多いようです。

 つい最近、現場の作業員が自分が労働者なのか事業者なのか全く理解していないケースがありました。自分で営業して人も使って稼いでいる人は事業主として認識しているはずですが、営業もせず長年指示を請けながら仕事をして「請け取り」でお金をもらっていたために、世の中これが通常の支払い方法だと思っていたというのだから無知というしかありません。その人は自分は従業員と思い事業主保険や一人親方の保険に加入していませんでした。

 事業場についても建設業では重層下請構造が定着し、1社で従業員を50人以上も抱える現場はほとんどなくなり、法律の条文に定められている「労働者を50人以上の事業場は安全管理者を選任しなければならない」というような実態が合わない部分が多く、建設業は独自に体制を整え対応しています。建設業は現状に合わせて労働安全衛生法の用語の定義を修正していくべきでしょう。

我々の周りでは、曖昧なまま物事が進んでいることが多く、基本用語の定義はとことん議論して、現状に合わせた対応を考えていくべきです。

2009年3月14日土曜日

安衛則の一部改正は現状の追認

平成21年6月22日に労働安全衛生規則のうち足場関係が一部改正されます。

この改正は今更という面もあります。
「枠組足場以外の足場にあっては、高さ85cm以上の手摺及び高さ30cm以上50cm以下の中桟を設けること」となっていますが、なぜ85cmなのかという疑問が沸きます。多くの建設会社の社内基準では手摺の高さが90cm以上または95cm以上になっています。

また、アメリカにおいてはOHSA安全規則で墜落・転落防止の規制が定められており、高さ6ft(1.8m)以上の高さで作業を行なう場合は防護柵、安全ネット、落下防止システムなどで防護する必要があるとされています。防護柵の高さは、床面から42±3in(110±8cm)としています。今回の改正である85cmはいかにも中途半端と言わざる得ません。

一方、中桟と幅木の設置義務ですが、足場の外側と躯体側の両方設けないといけないかどうかという疑問が生じますが、法的には外側も躯体側も区別はないと思います。転落の危険性はどちらも同じだからです。
すなわち転落防止措置ですから内側に安全ネットや開口蓋のような転落防止措置が取れて、転落の危険性が極めて低ければ中さんや幅木は必要ないと考えます。

国土交通省のケーソン建設現場では各社とも既に行なっていので新たな対応をとる必要はありませんが、民間建築現場では安全ネットなどをよく指導しないといけないと思います。

2009年1月19日月曜日

建設業における事業場の範囲

労働安全衛生法では
「労働者数50人以上の事業場では安全管理者及び衛生管理者を選任しなければならない」(法第11条、第12条)
また、
「労働者数50人以上の事業場では安全衛生委員会を毎月1回開催しなければならない」(法第17条)
となっていますが、この事業場の範囲が建設業の場合はっきりしない。

★安衛法では全産業を対象としているため、支店は支店だけ(その他業種)、作業所は作業所(建設業)だけで、事業場となります。

ただし、このような解釈は、建設業においては、いかにも実情に合いません。そこで、一部の基準監督署で、支店は支店全体を一つの事業場とみなすべきだという指摘・指導をしている例もあるそうです。

現在、日本中を探して自社の労働者数が50人以上もいる事業場(工事現場)は、どれくらいあるでしょうか。探すのが大変なくらいです。今では重層下 請の構造が更に進み、細かい単純作業までが請負契約というケースが多くなっています。この条項に該当する事業所が少ないということは、法律が実態と乖離し ているということです。

「建設業固有の特性」として以下のものがあげられます。
1.工事が有期であること
2.元請業者と協力業者の協力体制のもとに工事が進められること
3.建設事業場の店社と作業所が一体となり工事管理が行われること
4.契約形態の重層化が進んでいる。

労働安全衛生規則の第87条の十では
法28条第2項の計画の届出の義務が免除される場合の認定で、「事業者は、認定を受けようとする事業場ごとに申請する」となっていますが、建設業 の特例として当該事業場において締結した請負契約に係る仕事を行う事業場(店社)が認定を受け、事業場を店社に読み替えています。したがって法律でも建設 業の特殊性を考慮して法改正部分から軌道修正しているのでしょう。

また、建設事業を行う事業者が、自らの意思において自主的に取り組む「建設業労働安全マネジメントシステム」や社内の制度では、支店を一つの事業場とみなして、システム運営をしているため、安衛法の現状に合わない部分を補完するようになっています。

以上のことから建設業では、労災の手続きは本社や支店はその他業種で行うものの、実際の運用上は店社と現場を一体的に事業場とみなした安全衛生管理体制で進めるのが現実的であり、実情に合っていると考えるべきです。また、店社と作業所を合わせて労働者数が50人以上の場合、安全管理者及び衛生管理者を選任し届け出を行い、50人未満の場合でも届出はしないものの選任を行うのがこれからの自主的な安全管理として適切であると考える。

法律と現状と合わない部分をどのように対応していくかが、我々安全担当者の役目でしょう。

※参考資料 「建設の安全」改正 建設労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン