2011年12月21日水曜日

原子力発電所の存廃

2011年3月11日の大津波に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故以来、世の中全体が原発廃止に傾きだした。東京電力や政府による当初の発表が混迷を極め、国民に正しいことが伝えられなかったことによる不安感が余計に原発不信感を増長させたのであろう。原子力安全保安院や原子力安全委員会の当事者意識にの無さには皆があきれかえった。政府の御用学者の解説も、情報管理されているようで説得力を欠いていた。その後の発表から、産官学の原子力村の人たちが利権確保のために原子力の安全神話を形成し、維持してきたのではないかと勘ぐることばかりであった。そのために原子力の安全対策の更なる改善が長年に渡りなおざりにされてきた。そして、現在の原子力発電所は、危険性のリスクが依然潜在している状態といえる。

原子力発電所の存続については、立地市町村の利益を享受している一部の人を除いて、国民の抵抗意識が強い。しかし、このまま、原子力発電所を廃止していっていいのだろうか。石油および天然ガスの可採年数には限り有り、毎年新たな油田やガス田が開発されていくものの、22世紀初頭には確保が極めて困難な状況に陥る。また、石油や天然ガスの価格が暴騰していくことが予想される。このまま、原子力発電を止めてLNG発電に切り替えればいいというわけにはいかない。もちろん水力や風力、太陽光などの自然エネルギの利用は、可能な限り推進すべきである。

どんな技術でも、過去にはいろんな失敗を繰り返し多大な犠牲を伴いながら改良しながら安全に使えるようにしてきた。そこに技術者のたゆまない努力が注がれてきた。蒸気機関のボイラーにしろ、爆発事故を繰り返し安全対策を確立してきた。原子力発電所の場合、リスク分析をもう少し掘り下げて検討し、更に改良していくことを怠っていたのではないか。電力会社の利益優先策と原子力保安院の安全意識の低さがこのような結果を生んだものと思われる。

22世紀のエネルギー確保の観点から、原子力発電所を今廃止すべきではないと考える。ただし、安全確保は最優先である。FMEAなどのリスク分析を行ない、国民が安心できるような安全技術を開発していくべきである。大幅なコストアップになるであろうが、さらに安全な新世代原子力発電所の開発を推進すべきである。

ただし、浜岡原子力発電所のような東海地震震源域のど真ん中に立地するような発電所は、即時廃炉にすべきことは、全ての人が同じ意見であろう。いくら電力会社の説明を受けても、東海地震が襲って想定外と言われてはどうしようもない。浜岡原発の東側の関東地方にとって、つねに脅威になることは避けたい。

2011年12月7日水曜日

労働安全コンサルタントの国際的認知レベル

日本の労働安全コンサルタントは、国際的にみて高いレベルなのだろうか?

米国と比べ労働安全コンサルタントの試験内容は、かなり難しく経験と基礎知識を要求することは同じであるが、日本の資格は一度取得すると永久資格であり更新制度が無いことが大きな差である。米国のCertified Safety Professional(CSP)は、5年ごとにCPDのポイントを一定基準以上取得することが条件になっている。労働安全コンサルタントは制度の上では継続研鑽としてCPDを取得することになっているが、更新制ではないためほとんどの資格者がCPDを行なっていないのが実態である。

資格更新ごとの力量の認定制度が無いこと、および大学において安全衛生、環境および技術者倫理についての認定を受けた講義が未だ整備されていないことが、米国がCSPと労働安全コンサルタントの相互認証を行ない理由だと考える。
米国の認定安全専門家委員会(BCSP:The Board of Certified Safety
Professionals)は、一部の米国以外の専門労働安全の対象者に対し、CSPの要求水準と同様の試験に合格している場合、CSP申請のプロセスでいくつかの信用を提供する協定を確立している。カナダのCanadian Registered Safety Professional (CRSP)、英国のChartered Member of the Institution of Occupational Safety and Health (CMIOSH)、シンガポールのSingapore Institute of Safety Officers(SISO)、オーストラリアのChartered Professional Member of the Safety Institute of Australia(CPMSIA)などがあげられる。

労働安全コンサルタント制度もCPDのポイントを250点以上取得すれば、CSP労働安全コンサルタントの称号を名乗ることができるという制度がある。しかし、なぜこの制度を資格者全員に義務づけ、5年ごとの更新制にしないのかが不思議でならない。

まだ労働安全の世界では、厚生労働省を頂点としたもたれ合いの古い体質が残っているのであろう。安全担当者は法の番人ではない。現場から離れた本社や支店にいて、たまに現場をまわって工事の問題点も理解せずに、ただ安衛法ではこうだから、とか社内基準だから守れと一方的に言うような安全屋はもういらない。現場の状況を理解した上でリスクマネジメントを技術者の立場で指導していくことが重要である。それには、安衛法だけでなく広い視野を持つことが重要であり、セーフティーエンジニアとして自立する必要がある。

労働安全コンサルタントはセーフティーエンジニアとして、自己研鑽を行い常に力量を向上させる必要があり、新規に更新制のあるAPECエンジニアの労働安全部門を新設してはどうかと考える。同様に労働衛生コンサルタントもAPECエンジニア(労働衛生)を新設することを提案する。