2009年10月30日金曜日

太陽光発電の買取り制度

新たな太陽光発電の買取り制度が11月1日よりスタートします。
経済産業省資源エネルギー庁は太陽発電を使って家庭で作られた電力のうち自宅で使わないで余った電力を、1キロワット時あたり48円で10年間電力会社に売ることができるようにします。買取りにかかった費用は、電気を利用する人全員で負担する、「全員参加型」の制度となっています。
この制度により日本の太陽光発電導入量を拡大することで、エネルギー源の多様化に加えて、温暖化対策や経済発展にも大きく貢献できるものと期待されます。
ただし、当初は住宅用48円/kWh、非住宅用は24円/kWhです。以前制度の倍額になりましたが、ドイツのような思い切った制度とは言えません。どうせ全員参加型とするのであれば、ドイツ以上の買い取り価格にして、新しい産業を育てることを考えた方が得策です。
太陽光発電パネルは以前は日本が生産量世界一であったものが、今ではドイツに大きく抜かれています。原因は太陽光発電の余剰電力の買取価格を市場価格に委ねずに、発電コストを上回る価格で買い取らせることを保証したためです。その結果、家庭での導入が進み、太陽光発電パネルの販売量が増えたため製造コストが下がり、新たな需要を生んだためです。
ドイツの太陽光発電余剰電力の買い取り価格は、基本は45.7セント、屋上または外壁一体型の場合には,30kW以下なら57.4セント、30〜150kWは54.6セント、150kWを超えると54.0セントとなります。
とにかく、新たな太陽光発電の買取制度は、環境負荷低減と新たな産業の育成の第一歩と考えます。中国や米国も同様のことを考えており、世界戦略を考えてもう少し制度を補強してもらいたいものです。
詳しくは、資源エネルギー庁ホームページを参照
http://www.enecho.meti.go.jp/kaitori/index.html

2009年10月26日月曜日

海外での危険予知活動 



KYKは一見海外のシステムのようですが、危険予知活動(Kiken Yochi Katsudou)のアルファベットの頭文字であり、日本独自の安全管理システムです。

東南アジアでもこのシステムを取り入れているところがあり、中災防では各国語に訳した資料をホームページに掲載しています。
http://www.jniosh.go.jp/icpro/jicosh-old/japanese/topics/safety/zeroaccident/zero-sai/index.html

KYKは、朝礼に引き続いて行われるツールボックス・ミーティングの中で今日の作業についての危険性を揚げそのリスク低減対策を立て、最後にみんなでスローガンを唱和するものです。ボトムアップ型の小集団活動の一つで、安全施工サイクルの重要な要素になっています。

欧米に於いてもKYKに似た安全活動があります。JSA(Job Safety Analysis)とSTARRT(Safety Task Analysis Risk Reduction Talk)です。この安全活動は前日のミーティングで、翌日の作業手順とその作業における危険性の洗い出しを簡潔に書き出します。そして当日の朝礼でSTARRTチェックシートに基づいて職長が作業員に話しかけながら資格やリスク低減対策の確認と周知を行うものです。KYKは作業員から意見を引き出して安全意識の高揚を図ることを意図していますが、STARRTは、各組織のトップからの問いかけによる意識漬けを図ろうとしています。

JSAの例

STARRTの例

どちらも良いシステムですが、職長が主旨を良く理解していないと直ぐに形骸化する恐れがあります。それを防ぐには元請職員の参加と参加者相互のコミュニケーションが不可欠です。

2009年10月22日木曜日

後を絶たない偽装事件

イオンのMAXVALUEでも消費期限の偽装が行われていました。
相変わらず食品業界の老舗企業による商品偽装が目立ちます。

建設業界でもやはり偽装が続きました。特に注目しなければならないのは、信頼されるべき老舗企業や大手企業による偽装工作です。
非上場のある建築専門の老舗スーパーゼネコンが、重大災害を起こしたにもかかわらず他の現場の災害であったかのように労働者死傷病報告の偽装をおこなったこと、世界一の自動車会社系列の部品工場であった労働災害を作業所長が自らもみ消したことなど、いわゆる労災かくしがありました。
さらにマンションで設計強度より低い生コンクリートを打設し、販売してから設計変更をやり直して補強措置をするなど老舗企業とは思えないことが明るみになりました。

長寿企業は、顧客の信頼、社会への正義を大切にする。目先の利益ばかり追求するようなところは、これから残っていけないのではないだろうか。

以前、NHKで「知るを楽しむ」この人この世界、「長寿企業は日本にあり」が放送されました。拓殖大学の野村さんがナレーターで、長寿企業の「長寿」の秘訣を、物づくりの本業重視と時代に適応する柔軟な発想にあると語っていました。そして、長寿企業の知恵にこそ、今の時代を生き抜く手がかりがあると述べています。

老舗企業や大手企業こそ目先の利益にとらわれるのではなく、市民の信頼を得て堅実な利益を出す道を選んでもらいたいものです。

2009年10月19日月曜日

対面通行高速道路の危険性

補正予算で、地方の高速道路6カ所の4車線化が決まっていましたが、民主党政権に変わったことから国土交通省が事業凍結を決めました。

無駄の削減ということで、不必要な補助金や公共投資を見直すことは大賛成です。しかし、ただマニュフェストに無駄を削減すると掲げ、その成果を出すために金額をひねり出すために事業を停止することは問題あります。本当に必要かどうか公平に評価する必要があります。

例えば、4車線化が凍結になった高松道の高松〜鳴門間は京阪神から近く、週末には渋滞が多発しています。京阪神から直通する鉄道がないため、高速バスが1日あたり50往復以上走っている経済の生命線となっています。しかし、対面通行だと非常に危険な状態で、運転者も緊張とイライラが続きます。

政治的に高速道路の延長を延ばすことを優先されていますが、対面通行の高速道路が伸びれば、それだけ危険な道路が延びるだけです。今回のように政治的に無駄という名目で凍結して他の予算に回すというのは、危険性を放置したままなので本当の意味での国民の福祉を確保したことにはなりません。安全を確保してこそ福祉です。高速道路の安全化を図ってから無料化を導入してもらいたいものです。

2009年10月15日木曜日

安全祈願を込めて薬師寺へ納経

Safety Managerとして再びインドネシアの現場に行くことになりました。
火力発電所の土建工事の山場を迎えるため、安全対策の強化のための短期間応援です。
工事の安全祈願のため「般若心経」の写経を奈良・薬師寺に納めました。インドネシアは世界最大のイスラム教国ですが、それぞれ工事従事者の気持ちの問題です。アッラーの神も応援してくださると思います。
「般若心経」はもともとサンスクリット語で書かれ、支謙、鳩摩羅什、玄奘三蔵らの漢訳が奈良時代、日本に伝えられたとされるが確かなことは判らない。般若心経は大般若経600巻から抜粋されたもので、262文字に凝縮されているため、簡単に現代語に訳すことはできません。

摩訶般若波羅蜜多心経
玄奘三蔵訳の流布版心経
觀自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。
舍利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。
舍利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不淨不增不減。
是故空中。無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色聲香味觸法。無眼界。乃至無意識界。
無無明。亦無無明盡。乃至無老死。亦無老死盡。無苦集滅道。無智亦無得。
以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罣礙。無罣礙故。無有恐怖。遠離顛倒夢想。究竟涅槃。
三世諸佛。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。
故知般若波羅蜜多。是大神咒。是大明咒是無上咒。是無等等咒。能除一切苦。真實不虛故。
說般若波羅蜜多咒即說咒曰
揭帝揭帝 般羅揭帝 般羅僧揭帝菩提僧莎訶
般若波羅蜜多心經

Prajna Paramita Hrdaya Sutram
Aryalokiteshvara Bodhisattva gambhiram Prajna Paramita caryam caramano,
vyavalokiti sma panca-skanda asatta sca svabhava sunyam pasyati sma.
Iha Sariputra, rupam sunyam, sunyata lva rupam,
rupa na vrtta sunyata. Sunyataya na vrtta sa-rupam,
yad rupam sa-sunyata, yad sunyata sa-rupam.
Evam eva vedana, samjna, sam-skara vijnanam.
Iha sariputra, sarva dharma sunyata laksana.
Anutpanna, aniruddha, amala, a-vimala, anuna a-paripurna.
Tasmat Sariputra, sunyatayam na rupam.
na vedana, na samjna, na sam-skara, na vijnanam.
na caksu, srotra, ghrana, jihva kaya, manasa.
na rupam, sabda, ghandha, rasa, sparstavya, dharma.
Na caksur-dhatu, yavat na manovijnanam-dhatu
Na avidya, na avidya ksayo,
yavat na jara-maranam, na jara-marana ksayo.
Na dukha, samudaya, nirodha, marga.
na jnana, na prapti, na abhi-samaya.
Tasmat na prapti tva Bodhisattvanam,
prajna-paramitam a-sritya vi-haratya citta avarana,
citta avarana na sthitva, na trasto.
vi-paryasa ati-kranta nistha nirvanam.
Try-adhva vyavasthita sarva Buddha Prajna-Paramitam
A-sritya Annutara-Samyak-Sambodhim, Abhi-sambuddha.
Tasmat, jnatavyam Prajna-Paramita Maha-Mantra,
Maha-vidya Mantra, Anuttara Mantra, asama-samati Mantra.
sarva duhkha pra-samana satyam amithyatva.
Prajna Paramita mukha Mantra
Tadyatha, Gate Gate Para-gate Para-samgate Bodhi Svaha
工事無事故無災害
南無大師遍照金剛金剛

2009年10月12日月曜日

山のトイレ事情

山で一番気になるのはトイレです。通常は登山口や山小屋で大便を済ませるのですが、どうしても山行途中で行きたくなることがあります。緊急事態の場合はどうしても野外で用を足すしかありません。以前は大便のことを「キジ撃ち」、小便のことを「ハト撃ち」、女の人の用足しを「お花摘み」と呼びました。

しかし、今、登山道から林の中に入ると白いものが散乱していて異様な状態です。ティッシュペーパーが分解されずに残っているのです。高い山ではバクテリヤが少なく、自然浄化作用が働きません。昔は山の水を美味しく飲んでいたのですが、もう大腸菌に汚染されていてほとんど飲むことができません。

高山の山小屋にはトイレが備えられています。今まで、ほとんどのトイレが地下浸透式でトイレットペーパーは別の箱の中に入れる方式でした。登山客が少ない間は、自然浄化作用で自然界に対する負荷も大きくはなかったのですが、深田百名山を利用したツアー登山のおかげで、あまり訪れる人が少なかった山にも、ただピークを踏みたいだけの人が押し寄せ、自然浄化では処理できなくなっています。

山に囲まれた尾瀬では地下浸透方式だと長い年月の間に汚染が蓄積されてしまう恐れがあります。そこで尾瀬のトイレには全て合併処理浄化槽が設置され、汚水を湿原に流れ込まないように配慮されています。トイレットペーパーなどの固形物は脱水・乾燥した後にヘリコプターで域外に搬出しています。しかし、その維持管理に多大な経費がかかり、1回100円の協力金を支払う仕組みになっています。したがって、尾瀬では絶対に「お花摘み」や「キジ撃ち」をやってはいけません。


尾瀬沼の公衆トイレで合併浄化槽で浄化して放流しています。ちなみに、屋根の妻部に付いているカメラは、尾瀬のホームページで有名なライブ映像のカメラです。

沼尻にあるトイレですが下のタンクにためて、ヘリコプターで搬出しているようです。

尾瀬の関連情報は、こちら

米国のグランド・キャニオン河川管理事務所では携帯トイレとして十分な容量の容器と知識、そしてすべて持ち帰るという誓約なしにはどんな川旅も許可されません。犬の散歩ではビニール袋を持って生暖かい犬のウンコをつかんで持ち帰っていますが、山でも自分のウンコは自分で持ち帰るのが当然であると思います。犬のためにできることは自分に対してもできないといけません。このことが当たり前になると、野外でのびのびとウンコする方が気持ちがいいかもしれません。ただし、それをザックに入れて持ち歩くことに抵抗感が残るかもしれません。

「山でウンコする方法」の著者であるキャサリン・メイヤーも「しかりと安全に処理すれば臭いがもれれることもないのだから、自分の大腸からビニール袋に移動した程度のことじゃないかという発想の転換をして欲しい」と述べています。

2009年10月10日土曜日

危機管理意識の欠如

台風18号(Typhoon-0918 Melor)が日本に上陸し、久しぶりに関東が台風の暴風圏に巻き込まれました。

朝からJRは運転ストップし、多くの人が混乱に巻き込まれました。
しかし、東京はこのところ自然災害に巻き込まれることが少なく、人身事故がない限り、常に電車は次から次へと走り続けるものと思っている人が多いのではないでしょうか。

地方都市では台風がくれば電車は止まる、じゃ、仕方ないなで済むのですが、東京では危機意識が全く感じられません。台風接近というのは都市にとって危機到来です。その危機対応としてJRが事前に運航を見合わせたというのは、危機管理として当たり前のことです。しかし、市民にその心の準備ができていなかったと感じました。駅員になぜ電車が動かないんだと詰め寄るオバさんもいました。このオバハン、ちょとアホちゃうかとあきれてしまいました。

台風が接近する場合は前日から鉄道の運行を見合わせるPRが必要かもしれません。早く広報すれば諦めがつくし、企業もそれなりに対応すると思います。東京直撃の台風や東京直下型地震がきたらどうなるのでしょうか。せめて事前に判る危機に対しては冷静に対応してほしいものです。

2009年10月8日木曜日

インフルエンザワクチン

新型インフルエンザウィルスH1N1で、ウィルスという言葉が日常生活に使われるようになりましたが、ウィルスと細菌はどう違うのか知らないことが多くあります。

  ウィルスは、20-100nm程度と非常に小さく、必ず他の生物(細菌、カビ、植物、動物)の細胞に入り込み、その細胞に自分のコピーを作らせます。細胞の中で自分のコピーが大量に作られると、やがてその細胞は破裂します。破裂したときに細胞の中から大量のウィルスが飛び出し、他の細胞に入り込みます。構造は、蛋白質の外壁と内部に核酸(DNA、RNA、つまり遺伝子)を持った単純な構造、すなわちコートたんぱく質で覆われ、自分の殻を作っているコートたんぱく質、自分を他から区別表する抗原たんぱく質、そしてそれらの遺伝情報を読み出すための複製酵素以外の遺伝子を持ちません。細胞の中に入り込んで細胞の内側から作用して、発熱などの症状をひき起こします。
主なウィルスに、インフルエンザウィルス、ノロウィルス、ロタウィルス、アデノウィルス、コロナウィルス、麻疹ウィルス、風疹ウィルス、肝炎ウィルス、ヘルペスウィルス、HIVなどがあります。

  一方、細菌は、1-5μmとウィルスの10-200倍程度の大きさで、体内で定着して細胞分裂で自己増殖しながら人菜細胞に侵入するか、毒素を出して細胞を傷害します。表層は脂質でできた柔らかい細胞脂質で覆われ、増殖するために必要な遺伝子情報を持っています。毒素を作ったり、細胞を溶かすなど、細胞の外側から作用して様々な症状をひき起こします。「抗生物質」は、細胞の構造を利用して作用させるため、細胞がないウィルスには効果がありません。
主な最近にブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌などがあります。

  さらに、細菌より大きい真菌(カビ)は、人の細胞に定着し、菌糸が成長と枝分かれによって発育していく酵母細胞では出芽や分裂によって増殖します。真菌には、白癬菌、カンジダ、アスペルギルスなどがあります。

  細菌は栄養と水があればいくらでも増殖しますが、ウィルスは栄養や水があったとしても、ウィルスには細胞がない抗生物質が有効に働きませんが、ワクチンは予防に効果があるようです。そのワクチンが不足しています。特に発展途上国のワクチン不足は深刻で、先進国のエゴで自国のワクチンを優先させることではなく、各国平等にワクチンが渡るように協力すべきです。

  かつての新型インフルエンザの感染は数年間続き、数波のピークを迎えました。感染者数は第一波が大きいですが、後になるに従い感染者数が減る変わりに重篤者数が増え致死率が高くなる傾向がありました。新型インフルエンザH1N1は今のところ軽症ですが、これから徐々に重症になると思われ注意が必要です。

2009年10月4日日曜日

自動車のフロアマットが危険源に

トヨタ自動車が米国で計380万台ものリコールを発表しました。

その原因は、運転席に敷かれているフロアマットが運転中に外れてアクセルペダルを押え続ける状態になり、アクセルペダルを放してもスピードが落ちず大きな事故につながるというものです。

10月1日の朝日新聞に米国ABCニュースで報道された被災者からの緊急通報の内容が掲載されていました。その部分を転載すると。

 通信指令係「こちら緊急電話番号。どうしましたか」
 通報者「アクセルが動かない。トラブルが発生した。ブレーキも利かない」
 通信指令係「分かりました。車を止めることができないんですね」
 通報者「交差点が迫っている。交差点が迫っている。つかまって。祈って……」
 緊急通報があったのは8月28日。米カリフォルニア州サンディエゴ郊外を走行中のトヨタの高級車「レクサスES350」からだった。
 運転者は州警察の高速隊員で、妻と13歳の娘、親族の男性の3人が同乗していた。事故直前には、操縦不能の状態で、時速は120マイル(約190キロ)に達していたとみられる。そのまま交差点に突入し、他車と衝突して大破し炎上。この4人が亡くなったという。通報がなければ、原因は何一つ分からずじまいになった可能性がある。

全く、悲痛な通報です。
この通報の原因究明の中でフロアマットが危険源になったことが明らかになりました。ごくありふれたフロアマットがずれることによって、重大災害に直結する可能性があることを意外と理解されていなかったと思われます。

よく純正のフロアマットの上に、カー用品屋で購入したフロアマットを敷いている人がいます。このような場合、直ぐにずれて今回と同じような災害になりかねません。

万が一、アクセルペダルが戻らない場合やブレーキペダルが利かない場合どうしたらいいのか、異常事態対応についてよく理解しておいた方がよいです。落ち着いてエンジンを切る、ただしキーは絶対に抜かない。もし抜いてしまうとハンドルロックが係ってしまいます。車を路肩に寄せてサイドブレーキを引く、高い部分へ乗り上げるなどして減速するしかありません。

普段から頭の中に入れておかないとパニックになって何もできなくなるでしょう。

2009年10月1日木曜日

低山登山に用いる装備のリスク

低山登山に用いる装備は、使い方によって高い危険性が潜在するものがあります。
夏山登山といえど、雨に打たれると凍死することを、先日のトムラウシ岳登山ツアーで災害となって現れました。

登山用具別に危険性を分析してみました。
リスク(怪我をした場合の重篤度と怪我をする可能性の掛け合わせた危険性の度合い)の順にあげると、まず下着が一番危険度が高いです。

1.下着
 下着の選択次第で生死を分けるほど重要です。少し気温が低い状態で雨やみぞれに打たれ、さらに風が吹くと急速に体温を奪われ低体温症に陥り危険です。特に綿製品は、綿が水分を蓄える性質があり、どんどん体温が奪われ、最悪は凍死に至ります。
 昔は、山で使用する下着や靴下、手袋は純毛製品がよいと教えられてきました。最近では乾式アクリルやポリエステル素材のものが多く使用されています。羊毛や乾湿アクリルは濡れた場合でも保湿力がゼロになりません。

2.レインウエア
 雨具は、雨に濡れても中までしみ込んでこないものですが、逆に通気性が悪く体温が上がり汗で中が濡れてしまうのが欠点です。最近ではゴアテックスコーティンが内側に使用されており、雨の水分はしみ込んでこないが、体内の汗は発散するということになっていますが、運動量の多い人は汗の発散が追いつかず、結局びっしょり濡れてしまいます。通気をよくしたり、汗をこまめに拭いたりしたりして、自己管理しないと汗が冷えて体温を奪うことにもなりかねません。

3.登山靴
 登山靴はリスクを抱えたまま履かざる得ないので深刻です。問題は、最近、靴底に使われているポリウレタン製ミッドソールの剥離問題です。ポリウレタンは、軽量で耐摩耗性にすぐれ、適度な衝撃緩衝性を持つ特性から、登山靴のミッドソール(靴底)に使用されています。昔は堅くて重い革靴製の靴を履いていましたが、中高年登山者に最適の柔らかくてクッション性に富み、軽い靴が主流になってきました。
 ポリウレタンの劣化原因は、第一に考えられるのが加水分解で、水分がある状態の下では劣化速度が進みます。第二に熱(酸化)があり、高温下では劣化が急速に進みます。第三はカビやバクテリヤによる微生物劣化、第四に紫外線による光(酸化)劣化です。使用しなくても劣化は進行し、登山お後靴を手入れせず、濡れたまま風通しの悪い場所で放置したままにしておくと劣化の進行が早くなります。
 メーカーの説明では、一般的に製造後5年程度が寿命となっています。しかし保管状態が悪いと5年以内に突然靴底が突然剥がれるかもしれないリスクが潜んでいます。少々品質を落としてでも、なぜ劣化しない材料に置き換えないのか、メーカーは「消費者に安全な製品を提供する」という基本的な精神に欠けると思います。
 現在履いている登山靴は自己防衛するしかありません。まず濡れた靴は、ストーブなどで乾かさず、新聞紙に包んで水分を吸収させる。乾いたらブラシで汚れを落とし、メーカー推薦の養分補給剤をスプレーして陽の当たらない風通しの良いところに保管する。そしてなるべく履く機会を増やして新鮮な空気に触れさせることです。
 私は登山中、万が一靴底が剥がれたときのために針金とビニールテープ、靴紐の予備を持っています。

4.ガスストーブ
 ガスストーブによる事故も多いです。最近ではガスカートリッジ式のものが主流になっています。一般的にガスカートリッジにはブタンが充填されており、気化熱によりガスカートリッジが冷たくなるので、冬季用はより沸点の低いイソブタンまたはプロパンの混合が使われています。いろんなガスカートリッジが流通していて、LPGカートリッジを携帯ストーブに使用すると爆発の危険があります。
 また、大鍋や鉄板を長時間かけて使用していると、輻射熱でガスカートリッジが熱せられ爆発する危険があります。このような場合は五徳とガスカートリッジが分離したタイプを使う方がよいです。
 テントの中で使用する場合は、テントの中の酸素が少なくなり不完全燃焼による一酸化炭素中毒の危険もあります。テントの中では火災の危険もあるのでどうしても使わざる得ない時は、換気を十分取るべきです。
 最後に、ガスカートリッジを処分する際、中のガスを完全に抜いて廃棄しなければなりません。廃棄処分中に、爆発する事故も多発しています。

5.ガソリンストーブ
 昔は、ホワイトガソリンを使用するガソリンストーブ、「ホエブス」が主流でした。しかし、余熱と加圧が必要でメンテナンスが大変なこと、かさばって重いことで敬遠されました。ガソリンストーブの場合は、余熱と加圧不足による異常燃焼、過加圧によるパッキングからの出火などにより火災の危険がありました。よく問題になったのが、ガソリンを入れたポリタンクを水と間違えて飲む事故や、水と間違えて鍋にガソリンを入れる事故がありました。もう山にホエブスを持っていくこともないので、ひとまずリスクは低いといえます。

6.アイゼン
 雪渓や降雪期の低山では、滑り止めとしてアイゼンが必須です。しかし、慣れていないと爪が石等に引っかかって転倒することがあります。一番良くやる失敗が、片方の足で他方のアイゼンを引っ掛けてしまい転倒するというものです。高齢になると足が上がらなくなり、アイゼンを履いていなくてもちょっとした段差に引っかかってしまいます。足を上げるように心がけるしかありません。
 面倒くさくなって、アイゼンなしで歩行するのはもっと危険です。かっこつけてアイゼンなしで歩いて雪渓の割れ目に落ち込んで冷凍人間になるのが落ちです。

7.ストック、ピッケル
 ストックは、歩行時の左右への振れを極力する少なくするのに効果的な道具です。岩場をよじ上るようなときは邪魔になるのでザックに格納しないと、手のホールドをしっかり取ることができなくなるので危険です。
 また、電車の中では他人にけがさせる恐れがあるので、邪魔にならないように格納しなければなりません。
 ストックの使い方は、登山中は先端の保護キャップを必ずはめておくことも重要です。なぜならば、尖った先で土を突くと登山道がどんどん浸食されます。また、軟弱地盤に突き刺すと、先端部分が抜けてしまうこともあります。ゴムキャップをしていても滑ることはありません。

8.傘
 傘は、低山では役に立つでしょう。しかし、高山では風が強く役に立たないどころか、風に飛ばされる原因にもなります。また、落雷の原因にもなり使用は避けるべきです。

9.地図
 最近は、高度計やGPSが普及し、地図とコンパスを持って山に登る人は少なくなりました。しかし、これは登山の基本なの必ず実行してください。普段から地図を読む練習をして、現在地がどこか把握するように心がけることを進めます。昔は、地図の折り方を見ただけ山屋かどうか見分けがつきました。
 自分で、現在地が判らなくなり遭難する登山者は相変わらず多いです。
 また、地図の紙で手を切るといったリスクも小さいながらあります。

まだこれ以外にも低山登山におけるリスクはあるとおもいます。