2010年12月29日水曜日

労働安全衛生コンサルタントの口述試験にむけて

12月24日、労働安全衛生コンサルタント一次試験の合格発表があった。一次試験合格の皆様おめでとうございます。

次は口述試験ですが、このコンサルタント試験は以外と口述試験で不合格になることが多いのでよく勉強しておく必要がある。

試験の対策として自分の経験から述べます。勉強の基本は、まず基本的な知識を再度復習し、自分の経歴を整理しておくことである。経験していないことを述べてもすぐにわかるので、知らないことについては今後勉強していくと謙虚に述べるのがよい。

自分の考えを整理する方法としては、想定問答の形にしてまとめるのがよい。そして基本は、コンサルタントは安全衛生について素人のお客様に判りやすく説明する能力を問われているということを理解しておかなければならない。従って、難しい専門用語を並べるのではなく、できるだけ簡潔に判りやすく説明することが第一条件である。

まず最初に質問されるのがコンサルタントの資格を取得しようとした動機です。この試験はコンサルタントを目指す人のための試験なので、コンサルタントになる意思がないと受けとめられると、その後の質問に大きく響くと思われる。
次に自分の経歴の中で苦労したことについて、そのとき取った対応策、現時点での評価、今後それについてどのように対応していくか、などを説明する。
もう一つ用意しておかなければならないことは、現在の労働安全衛生管理のおける課題について、行政や会社などで行われている内容と、それに対する自分の考えをまとめておく。特に、労働安全衛生マネジメントシステムやリスアセスメントについて、現状での問題点と課題が多くあるはずです。それに対して自分はどのように取り組むかを自分の考えで述べることがポイントと考えます。

最後に、労働安全衛生コンサルタントの義務や倫理について質問されます。倫理については技術士の技術者倫理を参考にすると良い。すなわち、資格取得できた後も引き続き勉強をしていきたいとCPDのことにも触れたほうが良い。

私が口述試験を受けた際も、このような組立てで、A4判7枚程度の想定問答集を作りました。1次試験の発表から時間をおかずに、自分の頭の中を整理することをおすすめします。

2010年12月22日水曜日

リスク適正評価のための情報

リスクアセスメントの中でリスク評価をする際、経験によって評価が大きく左右する。
全ての人が豊富な経験を積んでいる訳でないので、外部の情報を参考にすることも大いに役に立つ。

普段そんなに危険性を感じていない作業でも、以外と死亡災害が多かったりする。
その中で、「建設現場のリスク適正評価ガイド 重篤度評価編」(高木元也/編著)には、役に立つ情報がある。平成16年〜18年の死亡災害者数の作業が分類されている。

土木作業では
第1位 重機の移動(トラック等運搬作業を含む) 死亡災害67人
第2位 立木の伐採・伐倒、草刈作業 51
第3位 クレーン・バックホウ等による荷上げ・荷下ろし等作業 48
第4位 掘削作業(土砂運搬除く) 36
第5位 公道・公道近傍での作業 31
第6位 管布設工事関連作業(土工事を除く)26
第6位 舗装作業 26
第8位 聖地・敷き均し・盛り土作業 24
第9位 測量・写真撮影等 23
第10位 法面保護工関連作業 20
第10位 橋梁上部工工事関連作業 20
第12位 コンクリート二次製品設置・撤去作業 19
第13位 土止め支保工組立・解体作業 15
第14位 コンクリート打設作業 12
第15位 現場内・公道での人の移動(作業以外)12
第16位 重機等の点検・整備等作業 11
第16位 基礎工事関連作業 11

建築工事では
第1位 建物解体作業(部分撤去含む) 66
第2位 クレーン・バックホウ等による荷上げ・荷下ろし作業 44
第3位 屋根取付・撤去作業 41
第4位 鉄骨作業(デッキプレート敷込作業含む) 38
第5位 足場組立・解体作業 35
第6位 重機の移動等(トラック等による運搬作業含む) 21
第7位 現場での人の移動(各種作業以外の人の移動) 20
第8位 熱中症 20
第9位 塗装作業 19
第10位 脚立上での作業 14
第10位 台風被害に伴う復旧作業 14
第12位 ローリングタワー上での作業 11
第12位 掘削作業(土砂運搬作業除く) 11
第14位 現場での資材運搬(荷上げ・荷下ろし作業除く) 10
第14位 はしご上での作業 10
第14位 基礎工事関連作業 10
第14位 外壁取付作業 10

これらの情報から、意外な作業でも死亡災害が発生していることが分かる。過去の災害分析は、リスクアセスメントの中で、ハザードを洗い出し、リスクを評価する際に非常に役立つ資料となる。
詳細は、この本を参照して頂きたい。

2010年12月15日水曜日

シンガポールのSafety Officer

日本の労働安全衛生コンサルタントは、労働安全衛生について幅広く勉強し、難しい試験に合格に合格し登録して得られる資格である。
技術士と同様に業務独占資格ではなく、コンサルタントでないとできないという業務はない。また、労働安全コンサルタントでないと、ある規模以上の安全管理者になれないということはない。労働安全衛生コンサルタントは、国際認証されず、他国では認知もされていない。

アメリカのCSPをまねてCSP労働安全衛生コンサルタントという称号もできた。これはCDP(自己研鑽)の基準を達成した者が申請すると得ることができる。ただし、APECエンジニアのように国際認証はされていない。諸外国の資格は更新制度と高い倫理観を持ち合わせているが、日本の資格は一度取得すると永久に有効なものばかりである。

シンガポールにはSafety Officer制度があり、アメリカのASSE(アメリカ安全技術者協会)でも認知されている。シンガポールでは、工事金額がS$10million以上(US$7.2 million以上)はSafety OfficerとSafety supervisorの配置が義務付けられている。Safety Officerになるためには、Safety Officer Training Courseを受講し、試験に合格しなければならない。またcourseを受講するための数学と英語の試験と面接があり適正を確認される。courseを終えるには最低6ヶ月以上かかる。

Safety Officerは、業務独占資格であるが、反面責任も重い。重大災害が発生するとプロジェクトマネージャーとともにSafety Officerも責任を負う。また、6ヶ月毎にMinistry of ManpowerによるSafety Auditもあり、日頃から安全計画書や法令に従って管理しなければならない。そうしなければSafety Officerの資格を失い、仕事を失いかねない。

現在のシンガポールは、日本より厳しい安全管理を国をあげて進めている。日本もこのような業務独占資格制度を導入して、安全管理者の質を上げるべきと思う。

2010年12月8日水曜日

グリーンビルディング

先進国の温室効果ガス排出削減の目標を定めた京都議定書は、2012年で期限が切れる。メキシコで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)が始まったが、先進国と発展途上国の溝は埋まりそうにない。しかし、先進国においては低炭素社会への大きな流れは止まらない。

建設関係においてはグリーンビルディングの取り組みが始まっている。
グリーンビルディングとは、米国建築業界を中心とする民間企業によって組織・運営されている「米国グリーンビルディング協議会(US Green Building Council1)がすすめているもので、環境に配慮した建築物や不動産を指し、一般的に、「環境配慮型不動産」などと称される。
すなわち、環境も人間も健康でいられるべく、デザイン・施工・メンテナンスされた建物のことをあらわす。商業ビルでも住居ビルでも、新築でも中古物件をメンテナンスしたものでも、基準を満たせばグリーンビルとしてみなされる。

グリーンビルディングの認証は、LEED (The Leadership in Energy and Environmental Design)というグリーンビルディング格付け基準をパスしたビルのみである。
認証の基準は以下の6つの項目に分かれている。
 1. 敷地の持続可能性
 2. 水効率
 3. エネルギー
 4. 資材・資源
 5. 屋内環境基準
 6. 革新性と設計プロセス

日本には、独自の性能評価ツールである建築物 総合環境性能評価システム (CASBEE Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency) がある。いずれも建物のライフサイクルにわたって持続可能性能を審査し改善を図る環境性能評価ツールである。

これらの評価は、まだ日本では普及していないが、近い将来、投資家の関心の高まりから、CSR目標に環境負荷低減を掲げる企業にとってこのようなビルに入居することや、設計施工することが必須うになることが間違いない。すでにコンビニエンスストアでも太陽光発電やLED照明、ヒートポンプを採用したりするところが増えてきた。

日本は技術力では世界をリードするが、グリーンビルディングの認証システムでは米国に主導権を握られることが予想される。日本のしくみづくりの弱さが表面化しないうちに手を打つ必要がある。

2010年12月1日水曜日

溶接機の帰線

アーク溶接作業を見ていると、ぞぉーとすることがある。

アーク溶接作業にはいろんな危険性がある。感電、火傷、火災、塵肺、目のダメージなど....
そしてそれらの危険性は災害の程度の重篤度がかなり大きいにもかかわらず、作業資格は特別講習のみでよい。だけど作業員の危険性の認識度は相当低いのではないかと思われる。
溶接機には直流方式と交流方式があるが、人体への危険度は交流式のほうがはるかに高い。その理由は、人体の心室細動電流は、直流電流は交流電流(60Hz)よりもおよそ4〜5倍になっており、交流電流のほうが直流電流に比較してはるかに危険であるからだ。

建設現場においても交流溶接機は広く使われている。交流溶接機には、電撃防止装置が内臓されなければならないことになっている。しかし、ごれで災害が全て防げるわけではない。

溶接機の帰線は、原則として母材の近くになることになっているが、かなり離れたところに取る事例を見かける。海上杭打ちの杭の溶接作業を行う場合、溶接機を台船上に設置し、帰線を台船に直接とっていることがある。この場合、杭も台船も海水を通してアースされているので問題なく作業ができる。しかし、溶接工の溶接ホルダーが台船上で台船に接していない鋼材に触れて、そのときその鋼材に他の作業員が素手で触れているとき、その作業員に電気が流れる恐れがある。

また、陸上のPHC杭の溶接作業を行う場合、溶接機を杭打機に搭載し、帰線を杭打機のボディーにとる場合も同じである。PHC杭も杭打機も地盤に接していてアースされているので作業はできる。しかし、母材近くに帰線をとっていないために、電流がいろんなを通って流れる。キャタピラと敷鉄板の間で火花が出たりする。近くに可燃性のものがあれば火災の危険性もある。

溶接機の帰線を母材の近くにとっていないと、感電、火災などのリスクが大きくなる。ただめんどくさいから行いことがあるが、これはきちっと教育して習慣づけを行うしかないであろう。