2011年7月27日水曜日

防衛運転と危険予知運転

建設現場で、災害リスクの最も高いのは何か?

もちろん墜落転落災害が多い。しかし、目を離してはならないのが交通災害である。なぜならば、交通災害は工事現場の外の一般道路で発生し、補償も労災保険より自動車損害賠償責任保険が優先されるため、工事とは関係ないと思われがちである。

厚生労働省の災害統計は労災保険を使った場合の統計資料であり、全ての災害の統計をあらわしているとは言えない。よく社内の災害統計に交通災害を入れずその他災害としている場合があるが、業務中の災害であることはあきらかである。

海外工事においては、交通災害のリスクはさらに高くなる。交通災害にあう可能性は、現場内の災害よりも高いのではないだろうか。

特に発展途上国においては、道路が十分整備されておらず、運転者の交通マナーも悪い。一方で、経済発展の影響で交通量が大幅に伸び交通事故が多発している。建設工事のダンプトラックがバイクと衝突したり、バイクと人の接触事故などが後を絶たない。法令にしたがって正しい運転をしていても、相手の無謀な運転のために事故に巻き込まれてしまうこともある。
交通事故を減らすためには、その国の国民全員に安全交通教育をしなければならず、そんなことは不可能である。道路交通では常に高いリスクが存在しているという前提で、建設工事に従事する運転者に「Defensive Driving」 (防衛運転又は危険予知運転)の安全教育を繰り返し行うしかない。

「危険予知運転」とは、車を運転する上で起こりうる事故を予知して運転することです。
自分が正しい運転をしていても、他の運転者や歩行者の過失や故意によって事故に巻き込まれてしまう。危険予知の例として、
・前を走る自動車が急ブレーキをかけるかもしれない。
・道路わきから子供が飛び出してくるかもしれない。
・交差点で一時停止不停車の自動車が飛び出してくるかもしれない。
・右折車のかげからバイクが飛び出してくるかもしれない。
・路上駐車中のドアが突然開くかもしれない。
・隣の車線を走る自動車が突然目の前に車線変更してくるかもしれない。
などがある。

一方、「防衛運転」とは、事故に遭遇する確率を減らすような走り方をいう。
防衛運転は、自動車を運転するにあたり、安全な行動パターンを習慣にすることで交通事故にあう確率を低くしていくことである。
防衛運転の方法には、以下のものがある。
・安全な車間距離を維持する。(大原則)
・ミラーや目視のまめな確認による自車の周囲を把握する。
・交差点は交通事故が多いところです。左折時の巻き込み確認を毎回忘れずにする。
・右折中、対向車線のバイクの速度は遅く感じてしまうので通り過ぎるまで待つ
・自分の意志を明確に、あいまいな合図や動作は避ける。
・右左折、横断歩道を走ってくる歩行者に注意する。
・一時停止の標識があるところでは、必ず一時停止をする。
・側方を走る自動車、バイク、歩行者などとの距離を取る。
・後続車が続く場合、ブレーキを早めに緩やかにかける。
・夕暮れ時、雨天時はライトをつける。
・夜間走行中、見通しの悪い交差点の手前でヘッドライトの上下を何度か切り替える。
・対向車がはみ出してきたときは、速度を落として路側へ避ける。(特に海外)

これらの運転を運転者に習慣付けるためには、長い時間がかかることも考慮し、繰り返し新しい刺激を与えながら教育していくしかない。一般道路における交通事故の低減に勤めることは、企業の社会的責任(CSR)でもある。

2011年7月20日水曜日

春日大社


春日大社は、個人的にずっとお参りしている神社である。今回、現場で交通事故が多く発生しているため、春日大明神にお願いして交通事故撲滅を祈願した。

春日大社の御由緒は、今からおよそ1300年前、奈良に都ができた頃、日本の国の繁栄と国民の幸せを願って、遠く鹿島神宮から武甕槌命(たけみかづちのみこと)を、御蓋山にお迎えしたのが始まりで、768年に今の地に社殿を造営して香取神宮から経津主命(ふつぬしのみこと)、枚岡神社から天児屋根命(あめのこやねのみこと)、比売神(ひめがみ)をお招きして祀ったのが始まりである。
出雲系や伊勢系と違い、何となく、大和朝廷の成立に東方勢力が強く関わったことが想像できる。

今回は、社殿の周りでは親子写生大会が開かれていて、多くの子供達が絵を描いていた。


神殿の中にはイブキの大木があり、樹齢は1000年以上といわれている。


毎年、中元万灯籠に寄進をしている。8月の奈良燈花会には奈良公園を中心にロウソクの火がともされる。最後の8月14日・15日(中元)は、春日大社の全ての燈籠に浄火を献じ、諸願成就を始め、祖先の冥福向上が祈願される。


海外にも、交通安全の安全祈願が届いてもらいたいものだ。

2011年7月13日水曜日

登山の保険

リスクマネジメントにおいて、リスクの対策には、回避、転嫁、 軽減、受容の4つの手段がある。

基本の第一は、リスクを回避することであるが、建設工事ではなかなか回避することが難しく、リスクの軽減、受容の対策をとっている。一方で、工事保険などによるリスク転嫁も平行しておこなっている。

登山においても、リスク回避することが基本である。危険な場所には近づかない、悪天候では無理をしないというのがリスク回避である。登山でリスクの軽減は、個人の学習と経験に頼るしかなく、リスク転嫁が手っ取り早い。

登山におけるリスク転嫁は、登山保険であるが、登山保険に入っている人は極めて少ない。一方、高齢登山者の増加とともに、山での災害が増えている。マスコミに煽動された深田百山登山者の多くは、基礎訓練もできておらず、添乗員に連れられて山に押しかけるが、不測事態になると大量遭難を発生してしまう。山には、安全通路や手すり等なく、自分の身体は自分で守るしかない。

そして、社会に迷惑をかけないためにも登山保険には加入するべきである。
私も、登山保険には加入している。
モンベル山岳保険(運動危険割増付傷害総合保険)のスタンダードプラン E023 就業中対象外コースである。補償金額は、死亡・後遺障害100万円、個人賠償責任1億円のほか、救援者費用等補償500万円、遭難捜索費用100万円、遭難追加費用30万円であり、掛け金12,440円、アイゼンやピッケルなどを使う本格的な山岳登はんにも適用される。

救難用のヘリコプターは、警察の場合は無料であるが、一般ヘリコプターの場合は高額の費用を請求される。この保険ではヘリコプターによる捜索も補償される。ただし、スタンダードプランでは、地震・噴火・津波による事故に遭ったときは、対象外となる。

山では無理をしないことが原則であるが、保険に加入することは、登山者としての社会的責任であろう。

2011年7月6日水曜日

海外派遣者帰国時検診

最近、海外派遣者帰国時健診で、病原性寄生虫を指摘されるケースが増えてきた。

具体的には、東南アジアからの帰国者の中で検便の結果、アメーバ赤痢とジアルジア症の原因となる原虫のシストが検出されている。アメーバ赤痢およびジアルジア症は、感染症新法において第四類に分類され、全数把握することになっている。世界的には感染者数が多く、日本でも戦後の一時期まで広く蔓延していたものである。

アメーバ赤痢の原因となる赤痢アメーバは原虫であり、卵に相当するシスト(嚢子)を介して人間に感染する。この原虫の生活史は、栄養型とシストからなり、シストは、直径10-16ミクロンで、卵の殻に相当する外壁に守られて水や食物の中でも数日から数週間は生き延びることができ、水や食物などと一緒に赤痢アメーバのシストが摂取される。症状は赤痢または下痢症状を呈し、イチゴゼリー状の粘血便を排泄することがある。

一方の、ジアルジア症は、ランブル鞭毛虫という原虫の感染が原因で、赤痢アメーバと同様にシストを介して感染する。この栄養型虫体は、長径10〜15μm、短径6〜10 μmの大きさである。シストは外界の環境に強く、水中で3カ月以上生存といわれている。主な症状は、非血性で水様の下痢、衰弱感、体重減少、腹痛、悪心や脂肪便などが挙げられる。

どちらも、経口感染で、水、食品およびシストが付着した手から感染する。東南アジアでは、まだ水道の水が安全とはいえず、水の中に含まれている可能性もある。熱帯地方では生ものを食べないのが普通であるが、ベトナムのフォーなど生野菜(パクチーなど)を麺のなかに入れて食べるので、生野菜に付着しているケースもある。

対策は、生ものを食べない、水道の水を直接飲まない、手を良く洗うことに尽きる。経済がグローバル化してくると、今まで日本であまり見かけなかった病気が簡単に入ってくるようになる。業務に伴って発症する感染症なので、衛生管理者は、つねに海外の感染症について勉強する必要がある。