2010年12月29日水曜日

労働安全衛生コンサルタントの口述試験にむけて

12月24日、労働安全衛生コンサルタント一次試験の合格発表があった。一次試験合格の皆様おめでとうございます。

次は口述試験ですが、このコンサルタント試験は以外と口述試験で不合格になることが多いのでよく勉強しておく必要がある。

試験の対策として自分の経験から述べます。勉強の基本は、まず基本的な知識を再度復習し、自分の経歴を整理しておくことである。経験していないことを述べてもすぐにわかるので、知らないことについては今後勉強していくと謙虚に述べるのがよい。

自分の考えを整理する方法としては、想定問答の形にしてまとめるのがよい。そして基本は、コンサルタントは安全衛生について素人のお客様に判りやすく説明する能力を問われているということを理解しておかなければならない。従って、難しい専門用語を並べるのではなく、できるだけ簡潔に判りやすく説明することが第一条件である。

まず最初に質問されるのがコンサルタントの資格を取得しようとした動機です。この試験はコンサルタントを目指す人のための試験なので、コンサルタントになる意思がないと受けとめられると、その後の質問に大きく響くと思われる。
次に自分の経歴の中で苦労したことについて、そのとき取った対応策、現時点での評価、今後それについてどのように対応していくか、などを説明する。
もう一つ用意しておかなければならないことは、現在の労働安全衛生管理のおける課題について、行政や会社などで行われている内容と、それに対する自分の考えをまとめておく。特に、労働安全衛生マネジメントシステムやリスアセスメントについて、現状での問題点と課題が多くあるはずです。それに対して自分はどのように取り組むかを自分の考えで述べることがポイントと考えます。

最後に、労働安全衛生コンサルタントの義務や倫理について質問されます。倫理については技術士の技術者倫理を参考にすると良い。すなわち、資格取得できた後も引き続き勉強をしていきたいとCPDのことにも触れたほうが良い。

私が口述試験を受けた際も、このような組立てで、A4判7枚程度の想定問答集を作りました。1次試験の発表から時間をおかずに、自分の頭の中を整理することをおすすめします。

2010年12月22日水曜日

リスク適正評価のための情報

リスクアセスメントの中でリスク評価をする際、経験によって評価が大きく左右する。
全ての人が豊富な経験を積んでいる訳でないので、外部の情報を参考にすることも大いに役に立つ。

普段そんなに危険性を感じていない作業でも、以外と死亡災害が多かったりする。
その中で、「建設現場のリスク適正評価ガイド 重篤度評価編」(高木元也/編著)には、役に立つ情報がある。平成16年〜18年の死亡災害者数の作業が分類されている。

土木作業では
第1位 重機の移動(トラック等運搬作業を含む) 死亡災害67人
第2位 立木の伐採・伐倒、草刈作業 51
第3位 クレーン・バックホウ等による荷上げ・荷下ろし等作業 48
第4位 掘削作業(土砂運搬除く) 36
第5位 公道・公道近傍での作業 31
第6位 管布設工事関連作業(土工事を除く)26
第6位 舗装作業 26
第8位 聖地・敷き均し・盛り土作業 24
第9位 測量・写真撮影等 23
第10位 法面保護工関連作業 20
第10位 橋梁上部工工事関連作業 20
第12位 コンクリート二次製品設置・撤去作業 19
第13位 土止め支保工組立・解体作業 15
第14位 コンクリート打設作業 12
第15位 現場内・公道での人の移動(作業以外)12
第16位 重機等の点検・整備等作業 11
第16位 基礎工事関連作業 11

建築工事では
第1位 建物解体作業(部分撤去含む) 66
第2位 クレーン・バックホウ等による荷上げ・荷下ろし作業 44
第3位 屋根取付・撤去作業 41
第4位 鉄骨作業(デッキプレート敷込作業含む) 38
第5位 足場組立・解体作業 35
第6位 重機の移動等(トラック等による運搬作業含む) 21
第7位 現場での人の移動(各種作業以外の人の移動) 20
第8位 熱中症 20
第9位 塗装作業 19
第10位 脚立上での作業 14
第10位 台風被害に伴う復旧作業 14
第12位 ローリングタワー上での作業 11
第12位 掘削作業(土砂運搬作業除く) 11
第14位 現場での資材運搬(荷上げ・荷下ろし作業除く) 10
第14位 はしご上での作業 10
第14位 基礎工事関連作業 10
第14位 外壁取付作業 10

これらの情報から、意外な作業でも死亡災害が発生していることが分かる。過去の災害分析は、リスクアセスメントの中で、ハザードを洗い出し、リスクを評価する際に非常に役立つ資料となる。
詳細は、この本を参照して頂きたい。

2010年12月15日水曜日

シンガポールのSafety Officer

日本の労働安全衛生コンサルタントは、労働安全衛生について幅広く勉強し、難しい試験に合格に合格し登録して得られる資格である。
技術士と同様に業務独占資格ではなく、コンサルタントでないとできないという業務はない。また、労働安全コンサルタントでないと、ある規模以上の安全管理者になれないということはない。労働安全衛生コンサルタントは、国際認証されず、他国では認知もされていない。

アメリカのCSPをまねてCSP労働安全衛生コンサルタントという称号もできた。これはCDP(自己研鑽)の基準を達成した者が申請すると得ることができる。ただし、APECエンジニアのように国際認証はされていない。諸外国の資格は更新制度と高い倫理観を持ち合わせているが、日本の資格は一度取得すると永久に有効なものばかりである。

シンガポールにはSafety Officer制度があり、アメリカのASSE(アメリカ安全技術者協会)でも認知されている。シンガポールでは、工事金額がS$10million以上(US$7.2 million以上)はSafety OfficerとSafety supervisorの配置が義務付けられている。Safety Officerになるためには、Safety Officer Training Courseを受講し、試験に合格しなければならない。またcourseを受講するための数学と英語の試験と面接があり適正を確認される。courseを終えるには最低6ヶ月以上かかる。

Safety Officerは、業務独占資格であるが、反面責任も重い。重大災害が発生するとプロジェクトマネージャーとともにSafety Officerも責任を負う。また、6ヶ月毎にMinistry of ManpowerによるSafety Auditもあり、日頃から安全計画書や法令に従って管理しなければならない。そうしなければSafety Officerの資格を失い、仕事を失いかねない。

現在のシンガポールは、日本より厳しい安全管理を国をあげて進めている。日本もこのような業務独占資格制度を導入して、安全管理者の質を上げるべきと思う。

2010年12月8日水曜日

グリーンビルディング

先進国の温室効果ガス排出削減の目標を定めた京都議定書は、2012年で期限が切れる。メキシコで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)が始まったが、先進国と発展途上国の溝は埋まりそうにない。しかし、先進国においては低炭素社会への大きな流れは止まらない。

建設関係においてはグリーンビルディングの取り組みが始まっている。
グリーンビルディングとは、米国建築業界を中心とする民間企業によって組織・運営されている「米国グリーンビルディング協議会(US Green Building Council1)がすすめているもので、環境に配慮した建築物や不動産を指し、一般的に、「環境配慮型不動産」などと称される。
すなわち、環境も人間も健康でいられるべく、デザイン・施工・メンテナンスされた建物のことをあらわす。商業ビルでも住居ビルでも、新築でも中古物件をメンテナンスしたものでも、基準を満たせばグリーンビルとしてみなされる。

グリーンビルディングの認証は、LEED (The Leadership in Energy and Environmental Design)というグリーンビルディング格付け基準をパスしたビルのみである。
認証の基準は以下の6つの項目に分かれている。
 1. 敷地の持続可能性
 2. 水効率
 3. エネルギー
 4. 資材・資源
 5. 屋内環境基準
 6. 革新性と設計プロセス

日本には、独自の性能評価ツールである建築物 総合環境性能評価システム (CASBEE Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency) がある。いずれも建物のライフサイクルにわたって持続可能性能を審査し改善を図る環境性能評価ツールである。

これらの評価は、まだ日本では普及していないが、近い将来、投資家の関心の高まりから、CSR目標に環境負荷低減を掲げる企業にとってこのようなビルに入居することや、設計施工することが必須うになることが間違いない。すでにコンビニエンスストアでも太陽光発電やLED照明、ヒートポンプを採用したりするところが増えてきた。

日本は技術力では世界をリードするが、グリーンビルディングの認証システムでは米国に主導権を握られることが予想される。日本のしくみづくりの弱さが表面化しないうちに手を打つ必要がある。

2010年12月1日水曜日

溶接機の帰線

アーク溶接作業を見ていると、ぞぉーとすることがある。

アーク溶接作業にはいろんな危険性がある。感電、火傷、火災、塵肺、目のダメージなど....
そしてそれらの危険性は災害の程度の重篤度がかなり大きいにもかかわらず、作業資格は特別講習のみでよい。だけど作業員の危険性の認識度は相当低いのではないかと思われる。
溶接機には直流方式と交流方式があるが、人体への危険度は交流式のほうがはるかに高い。その理由は、人体の心室細動電流は、直流電流は交流電流(60Hz)よりもおよそ4〜5倍になっており、交流電流のほうが直流電流に比較してはるかに危険であるからだ。

建設現場においても交流溶接機は広く使われている。交流溶接機には、電撃防止装置が内臓されなければならないことになっている。しかし、ごれで災害が全て防げるわけではない。

溶接機の帰線は、原則として母材の近くになることになっているが、かなり離れたところに取る事例を見かける。海上杭打ちの杭の溶接作業を行う場合、溶接機を台船上に設置し、帰線を台船に直接とっていることがある。この場合、杭も台船も海水を通してアースされているので問題なく作業ができる。しかし、溶接工の溶接ホルダーが台船上で台船に接していない鋼材に触れて、そのときその鋼材に他の作業員が素手で触れているとき、その作業員に電気が流れる恐れがある。

また、陸上のPHC杭の溶接作業を行う場合、溶接機を杭打機に搭載し、帰線を杭打機のボディーにとる場合も同じである。PHC杭も杭打機も地盤に接していてアースされているので作業はできる。しかし、母材近くに帰線をとっていないために、電流がいろんなを通って流れる。キャタピラと敷鉄板の間で火花が出たりする。近くに可燃性のものがあれば火災の危険性もある。

溶接機の帰線を母材の近くにとっていないと、感電、火災などのリスクが大きくなる。ただめんどくさいから行いことがあるが、これはきちっと教育して習慣づけを行うしかないであろう。

2010年11月24日水曜日

建設業の国際化

トヨタの車が世界中で走り回り、パナソニックの製品が世界中で販売されているため、日本企業はすでに国際化したように思ってしまうが、実はそうではないようだ。

日本企業の体質は完全に国際化に遅れてしまったいる。
特に、発展途上国が躍進するグローバル経済のなかで、日本企業の人材育成及び外国人の活用において国際化という面で完全に遅れをとってしまったことである。
「CE建設業界2010.10」のなかで成相修氏が「かすんでゆく日本の姿」として寄稿されていた。
今年の通商白書によれば、労働総人口に占める外国人の割合は、日本は1.1%と米国(16.3%)、ドイツ(9.4%)、英国(6.6%)に比べて圧倒的に低い。日本の企業はグローバルな人材活用が十分でないことを表している。もともと日本経済は基本的には内需に支えられ、国内経済だけで食っていくことができた。海外に進出する場合も、国内のやり方をそのまま持ち込み、ガラパコス的な文化を形成してきた。
また、社内で海外要員育成のための研修会を開いているが、そのアンケートにおいて若年層の海外志向の低下が顕著になってきている。通商白書で引用されている産能大学の調査によれば、新入社員のグローバル意識を2004年と2007年を比べると、「海外では働きたくない」とする割合が28.7%から36.2%へ増加している。さらに海外勤務を命じられても「拒否する」と回答する割合が21.8%から30.5%へ増加しており、この傾向は今日でも強まっている。

韓国企業は、金融危機により壊滅的になった国内需要では経済活動を続けることができず、海外に活路を見出した。特に日本が進出していない発展途上国で基盤を築いた。その際、欧米のシステムを取り入れ、外国人を活用し完全に国際企業として立ち直った。サムソンやLGなどの社内の共通語は英語だとも言われている。

日本企業はなぜ国際化に遅れてしまったのだろうか。それは国内需要だけで食っていけたからである。あえて欧米のシステムを取り入れる必要はなかった。いつの間にか日本は保守的になってしまった。
そして外国人は通訳でしか必要なかった。
建設業に関して言えば、これからは国内需要がさらに落ち込み、このままでは会社の経営を維持していくことが困難であることは明白である。かといって、いますぐに海外に進出しようにも、欧米のシステムになれていないため戦っていけないのである。

TPPへの日本の参加の是非が問われている。韓国はEUとFTAを締結し、欧州市場において日本は関税がかからない韓国に不利な戦いを強いられるようになった。このままいくと日本は世界経済から完全に後れを取るであろう。農業分野の打撃は多少あるかもしれない。農業の生産性改善に手をつけてこなかったことが問題である。自由貿易圏に加盟すると、当然、建設業にも他国から業者が入ってくる。欧州の先例を見るまでもなく、建設業界の再編淘汰が加速するであろう。

建設業の国際化は、早急に改善すべき課題なのである。

 

2010年11月17日水曜日

危険工種のPermit制度

PTWは、何の略かと言えば Permit To Work で作業許可制度のことです。

化学工場におけるアーク溶接(hot work)などの火気取り扱い作業の事前許可制度が該当します。海外工事では、その他にも密閉空間での作業(confined space)、潜水作業、深い掘削作業、重量物の吊り上げ作業、停電作業など危険を伴う作業はPTWとすることが一般的です。

PTWの該当作業は、リスクアセスメントによる危険度の高い作業ということができる。
従って、PTWのチェック内容はリスクアセスメントで挙げられている内容であり、連動していなければならない。

このPTWも内容をよく確認せずにチェックしていると、すぐ形骸化してしまう恐れがある。リスクアセスメントの結果をまとめたリスク評価表をよく目を通し、それに基づいてPTWのチェックリストをチェックして作業許可を出す。作業する時もそのチェック項目にに従ってTBMを行わなければ意味がない。PTWは、リスクアセスメントが基本になっている。

欧米の安全管理はすぐシステム化してしまう傾向にあるが、PTWも要領書(procedure)にまとめられ、PTW Coordinatorが管理するようなシステムが作り上げられてしまう。工場などではごく当たり前のことでも、建設業ではなかなかこのような制度を限られた職員でこなすのが大変である。

海外で工事する場合に、このようなシステムにすぐ対応できないのが日本の建設業である。
ごく簡単なことであるが、システム化されたときにまごまごせずに対応したいものである。

2010年11月10日水曜日

総持寺で安全祈願

最近、建設現場において死亡災害や重大災害が再び目立つようになってきたように感じる。現場力の低下や、社会環境の変化等、数々の原因が考えられる。
とにかく、安全祈願のため近所の総持寺に参拝した。

総持寺は、永平寺と並ぶ曹洞宗大本山で、元は石川県輪島市門前町にあったものが1911年に横浜市鶴見区に移転した。来年がご移転100年にあたり、現在境内のあっちこっちで改修工事が行われている。

境内に隣接して大学や高校があるため、学生が歩いている。

建物は、鉄筋コンクリート造りで比較的新しい。

なかなか凛々しい観音菩薩様です。

大祖堂は、開山堂と法堂を兼ね備えた本堂客殿で、歴代の諸禅師の頂相を安置し、あわせて諸尊牌を奉ひする霊場である。

安全祈願は、けっして仏様にお願いするものではない。
自分に誓うものである。その証人になってくださるのが仏様であろう。

2010年11月3日水曜日

ヒューマンエラーとエラーチェイン

作業員の予想も付かない行動によって起きるヒューマンエラーを、本人の責任で片付けてしまっても第二の異常行動がまた起きます。
とかく現場は、本人の責任にして自分達には責任がないという安易な気持ちになることがあるが、それはとんでもない間違いです。作業所長が、そのような気持ちを外に表すと、得意先や監督官庁から厳しい批判を受けます。

ヒューマンファクターによるミスは、工学技術が進んだ現在においても減らすことはかなりの努力を要します。むしろ、ストレス、高齢化、生活不安という新たなファクターが加わり、ヒューマンエラーは増える傾向にあると考えた方がよい。

ヒューマンエラーの対策は、作業員の安全教育ではなかなか効果が上がりません。災害分析ではよく「本人の安全意識が低い」、再発防止対策で「・・・・を徹底する」、「・・・・の教育を行う」などのことばがよくでるが、再発防止効果は低い。このような災害分析・再発防止策は務めて避けるべきである。

ヒューマンエラーの再発防止策の基本は、設備を改善して、間違った行動を起こしにくくする、間違った行動を起こしても設備側が安全に防御する(フールプルーフ)、突然機械が停止しても安全側に停止する設備(フェイルセーフ)が基本です。間違って通電された電気ケーブルにうっかり触れてしまっても、瞬間的に電源が切れるようなELCBが設備の対策に当たります。

次に管理面で対策を立てる。
これらの対策を立てる場合に、エラーチャインを作ってみると何が重要かということが明白になります。
災害は、いくつかの要因が連続して災害に至り、その中の一つでもなかったら事故に至らないという考え方です。ANAなど、航空業界が取り入れている手法です。

(管理者が正しく指示を出さなかった)−>(ケーブルの配線計画がなかった)−>(ELCBを取り付けていなかった)−>(本人の不安全行動)−>感電
これらの対策をきちっと採れば、大きな災害に至らずにすむ筈です。

本人の不安全行動だけでなく、それ以外の要素を重点対策としたほうが効果が上がることが明白です。
ヒューマンエラーの再発防止策としてエラーチェインは有効な手段といえます。

2010年10月27日水曜日

リスクアセスメントの再評価

労働安全衛生マネジメントシステムでは、最初にハザードを洗い出して評価し、リスク低減対策を立て、それに対する再評価を行い、リスクを受容可能なところまで下げることになっている。言い換えれば、ALARPの考え方に従ってリスクを低減させる手法である。

リスクアセスメントは業種に関係なく、全ての作業に行われなければならないが、業種によって進め方を工夫する必要がある。製造業においては、マネジメントシステムで述べられている通り行えば、かなり効果を上げることができる。なぜならば、労働者は固定していて教育が容易であり、設備の不具合、作業員の不安全行動を、リスクアセスメントを行うことによって随時見直して改善していけば、確実に安全レベルをアップすることができる。

ところが、建設業の場合、製造業のように効果を上げるには相当の労力が必要です。その原因として、個別請負産業であり、プロジェクトごとに場所は変わり、設備は変わり、時間とともに状況は常に変化し、かつ作業員は作業ごとに入れ替わる。作業員への教育も浸透せず、形骸化に陥りやすい。

リスクアセスメントにおいては、リスクを評価して危険度を判定するが、建設業では初期の評価が重要である。現場でリスクアセスメントを使用する場合、使いやすいようにA4用紙に収まる内容にすることが多い。その場合、初期評価欄と再評価欄の両方を表示するスペースがなく、初期評価と再評価を二段書きにしたり、再評価欄を省略したり、再評価欄のみを表示する場合がある。
建設業の場合、再評価したリスクは、状況が変化し時間とともにリスクが大きくなったり、作業員の技能レベルによって受容可能レベルがもとの受容不可能なレベルに戻ることもある。マネジメントシステムでは再評価後、リスクを受容可能なレベルに抑えるようにしないと作業を行ってはならないと決めているところが多く、ほとんどの再評価は、受容可能レベルを表示している。さらに、再評価のようなめんどくさいことをしなくても済むように、最初から恣意的に受容可能レベルと評価しているケースもある。再評価自体がかなり怪しいことが多い。
したがって、建設業ではリスクの初期評価を表示していないと、どんな危険が潜んでいて本来の危険度が何なのか分からなくなるのである。

マネジメントシステムの担当者の中には、建設業の実態を理解せず、ただ単に要求事項と違うと指摘する人がたまにいる。リスクアセスメントは、基本的には同じなのだが、運用面では製造業と建設業は違うことを認識した上で、創意工夫していかなければ効果があがらない。
それにはまずシステムを簡素化する必要がある。英国HSEの中小業者のための5ステップ・リスクアセスメントは建設業には適しているであろう。もう一つは、作業ごとの標準的なリスクの初期値をリスク評価表としてまとめておき、作業員レベルでは米国のJSAのような簡単に作業ステップごとのリスクとリスク低減対策のみを表記方法が良いかもしれない。

現在、建災防で進めているような細かい作業手順書のなかでリスク評価するやり方は、内容が細かくなりすぎて作業員レベルにはなじみにくく、事務所でファイルされるだけになっている。活用されないような手法は、いくら正しくても意味がない。

リスクアセスメントもあまり型にはまらずに柔軟な考え方が必要であろう。


2010年10月20日水曜日

たばこ値上げの効果

たばこが10月1日より値上げされた。
国民の喫煙による被害を下げることが目的であるが、世界的にみて日本のたばこの値段は、先進各国に比べてかなり安い水準にある。現時点でも、米国やシンガポール、香港などの半分の値段である。(シンガポールでは、2010年現在、たばこ一箱800円程度である)
中途半端な値上げで喫煙率が下がるとは思えない。どうせ値上げするなら一箱千円程度にするべきであろう。

紙巻たばこ1箱(20本)の価格(2002年5月31日現在、米ドル換算)

紙巻たばこ1箱(20本)の価格(2002年5月31日現在、米ドル換算)

国 名
米ドル
 
国 名
米ドル
ノルウェー
7.56
ベルギー
2.63
英国
6.33
オランダ
2.56
アイルランド
4.46
オーストリア
2.37
米国
4.30
日本
2.18
オーストラリア
4.02
ルクセンブルグ
1.94
シンガポール
3.99
イタリア
1.93
香港
3.97
ギリシャ
1.79
ニュージーランド
3.88
スペイン
1.66
カナダ
3.80
ポルトガル
1.63
デンマーク
3.77
韓国
1.02
スウェーデン
3.64
タイ
0.80
フィンラン
3.53
ブラジル
0.57
フランス
2.76
 フィリピン
0.44
ドイツ
2.76
 インドネシア
0.43

資料:カナダNon-Smokers' Rights Association , 英国Action on Smoking and Health

以上、厚生労働省のホームページより

厚生労働省の研究班が28日発表したところによると、他人のたばこの煙を吸わされる「受動喫煙」が原因で死亡する人は少なくとも年間約6800人に上る。また、2009年の交通事故による死者4914人を大きく上回っている。英国では、パブも禁煙にするように、各国は必死で受動喫煙による被害の低減に取り組んでいる。

日本は、未だに受動喫煙防止の対策が進んでおらず、歩きながらたばこを吸う人や、事務所の入り口等人が通行するところで煙草を吸う人が後を絶たない。受動喫煙の環境改善のため、交通取り締まり以上に厳しくする必要がある。今回の値上げは、税収増を目指しただけで、国民の健康を考えたものとは言えない。

2010年10月13日水曜日

COP10

CBDCOP101018日から日本で開催される。

正確にはConvention on Biological Diversity /Conference of the Parties(生物多様性条約第10回締約国会議)の略で、さまざまな生き物とその生息環境の保全や、生物資源の利用方法などについて議論される。この条約は、(1)生物多様性の保全、(2)生物資源の持続可能な利用、(3)遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な分配を目的としている。

生物多様性とは、三つの要素からなり、第一の「種の多様性」は、地球上にはたくさんの種の生き物がすんでおり、互いに関係しあって生態系をつくっている。第二は、「遺伝子の多様性」で、遺伝子の多様性が、病気などによる弱い固体の死滅を一部にとどめ、その種の絶滅を守っている。第三は、「生態系の多様性」で、地球にはさまざまな環境に適応したさまざまな生き物がすみ、独特の生態系をつくっている。

我々人類は、このような生物多様性の環境の中で生きている。人類は、生物多様性により、直接的にも間接的にも多くの恩恵を受けていることを理解しなければならない。しかし、生物多様性の保全は、簡単ではなく、既に開発を果たした先進国による規制推進と、規制によって思うような開発が行えなくなることを危惧する途上国の対立がある。また、先進国の会社による途上国の遺伝子資源による利益の独占など、途上国からの不満が噴出している。

生物多様性の保全は、経済活動にも影響を及ぼし、先進国による途上国への経済援助と人材育成、教育支援、利益の分配が鍵を握るであろう。

デフレスパイラルから抜け出せず不況に苦しむ日本が、議長国としてどのような結論を導き出すか、注目する国際会議になりそうだ。

2010年10月6日水曜日

衛生週間

今年の衛生週間のスローガンは、メンタルヘルスを取上げられました。

現代社会にとってメンタルヘルスは重要な問題です。しかし、メンタルな内容は個人がなるべく隠したい内容でもあり、どうしても盛り上がりに欠けてしまいます。無視できる問題ではないので、これはこれで地道に対応する必要があります。

衛生週間は、身近な健康問題も併せて進めるのが良いと思います。
人間は約60兆個の細胞から成っています。一方、人間の体の中に共生している菌の数は、100兆個と言われています。人体に共生している菌を、常在菌とよび、代表的なものとしてビフィズス菌や乳酸菌が有名です。特に大腸は、人体の中で常在菌が最も多く、未消化の食べ物を消化したり、ヒトの細胞の栄養源やエネルギー源を作り出している。ちなみにウンコの3分の1は、腸内細菌そのものといわれている。

秋は食中毒が多く、病原性大腸菌O-157による中毒が話題になります。ある種のビフィズス菌は有機酸をつくり、腸壁のバリア機能を増強して、O-157が出すシガ毒素が血液中に流れないように働いていることが発表されている。腸内細菌と上手く付き合うことが健康に繋がると考えられる。

現代人は、神経質に成りすぎるほど薬に頼っている。衛生週間を機に、もう少し健康的な生活リズムと食生活を送ることを見直すのがよかったのではないだろうか。

2010年9月29日水曜日

現場建設技術者のレベル低下

最近、東京で作業所長クラスに対する集合教育を行ったが、現場技術者のレベル低下が甚だしく嘆かわしい限りであった。
まず、現場における問題意識を常に持っていないことである。会社の経営の最前線にいるはずの当事者が、何も問題を感じていない。講習会の場で新たに考えて発表した問題点も、作業所長として考える内容でなく、一若手担当者と同じレベルである。日本の建設産業は、護送船団方式で国土交通省などの発注官庁の言うとおりにしていれば良かった。また現在は工事成績評価の項目にしたがって、点数が上がるように施工すればよい。いわばレールに乗ったことしか考えず、自分で何か新しい方法で切り開こうという意志がまるでない。
そして、自分の意志を表現するのがきわめて下手で、何を言おうとしているのかまるで分からない。自分の考えがないから自分の意志を表現することができないのかもしれないが、人に説明することが苦手になってきている。日頃はパソコン相手に仕事をしているため、雑談はできるが、物事を筋道立てて説明するという会話力が育たないのであろう。これほどまで自己表現力がなければ、協力会社にも自分の意志が伝わらないであろう。
草食男子が多くなったのと関係あるのだろうか。グループ討議になってもリーダーシップを発揮することができない。最悪なのは要領よく発表レポートをまとめあげてしまおうとすることである。討議するのではなく答えを先に考えてそれに旨く結びつくように発表を簡単に作ってしまおうとしてしまうことである。だから真剣に意見交換するのではなく、お互いにレポートを作ることに専念しているのである。
多分現場でも同じようなことをしているのであろう。現場全体で議論するようなことはせず、ひたすら答えを探し求め、それを部下や協力会社に旨く説明もせずに押し付け、結局内容が伝わらず手戻りが発生し、部下の責任にしたり協力会社の責任にしたりしているのではないだろうか。
大学学部生のレベル低下は以前から指摘されているが、今では大学院生のレベル低下、強いては社会人のレベル低下に波及してきている。このような状態が続く限り、日本の建設業に未来はないであろう。日本の建設会社の技術レベルも韓国に抜かれて久しいが、このままでは完全に国際社会からも取り残されるであろう。EUのように突然国境が無くなったとき、日本の建設技術者はどうするのだろうか......日本の建設産業にも黒船が必要だろう。

2010年9月22日水曜日

ベテランの感電災害

感電災害は、一般の作業員がうっかり触って感電するのではなく、意外と電気の知識が豊富な電気作業員が感電することが多い。

今回も同じケースでおこった。

被災者は、大学で電気工学を修め、民間企業で7年間も電気工事に従事したベテランであった。

しかし、なぜか220Vの電気ケーブルの接続部を軍手で直接ばらそうとして、充電ケーブルに触れて感電死した。夏のくそ暑い時期に、活きた電線を軍手で触るというのは、普通では考えられないことであるが、ベテランだからこそ犯す過ちであろう。意外とベテランは、低圧であれば、生きたケーブルを上手く処理することをたまにやるそうである。

今回は、分電盤はロックされていて勝手に触れないようになっていたが、ベテランが犯す「過信」というヒューマンファクターが働いて、さらに設備の不備が加わり災害に至った。

220Vの電線に1000Ωの抵抗の人間が触れると、220mAの電流が流れる。普通なら一瞬のうち弾き飛ばされ、流れる時間も一瞬でしに至ることは少ないが、握ってしまうと筋肉が硬直して離せなくなり、体内に電流が長い時間流れ死に至ってしまう。

感電は、体内を流れる電流の大きさと時間、経路によって被害の程度が大きく異なる。

人体に流れる交流電流の影響を下記のECの表で説明されている。


 AC-1(曲線a以下の領域): 通常無反応
 AC-2(曲線aとbの間の領域): 通常有害な生理的影響はない
 AC-3(曲線bと曲線c1の間の領域): 通常、器官の損傷は予期していない。電流が2秒より長く持続すると、痙攣性の筋収縮や呼吸困難の恐れがある。心房細動や一時的心停止を含む。

仮設電気作業の感電対策は、分電盤の出力部分に漏電遮断器を取り付けることです。日本国内ではIECの基準に準拠して感度電流30mAの漏電遮断器の取り付けを推奨されていますが、OSHAでは5mAを推奨しています。ただし、発展途上国では漏電遮断器はほとんど普及しておらず、入手も出来ないところがあります。

また発展途上国では、あってもかなり高価です。被災者の補償費用よりも高くなることが普及しない理由なのでしょう。

土木技術者は、電気についてあまり得意ではないことが多いです。でも最低限の知識は必要で、それが人の命、作業員の家族の幸せを確保することになるのです。決してお金で物事を測ってはいけない。

2010年9月15日水曜日

自らヒューマンエラー

最近、自分で大きなヒューマンエラーを起こしてしまった。

昨日は、山の中で自動車を運転中、横に川が流れていて抜群の魚釣りスポットだなと見た瞬間、道が若干カーブしていて、自動車の左側面をガードレールでこすってしまった。幸い物損だけで済んだが、もしガードレールがなければ、谷底に落ちて転落していたところであった。自動車を運転している時は、必ず前方を注意していなければならないことが分かっていながら、自分の興味を持つことに気を引かれると、一瞬の間、前方注意が頭から抜けてしまった。ヒューマンファクターの場面行動本能にあたります。

また数日前、風呂場の換気扇がおかしな音がするといって、ブレーカーを落としたりして確認し、家中で大騒ぎしましたが原因が分からず、翌日電気屋さんを呼んで調べてもらいました。電気屋さんも電気的な原因が分からず、風呂場をふと見回したところ、振動ひげ剃りのスイッチが入りっぱなしで、その音が風呂場で反響していたとのことでした。目の前に振動ひげ剃りが置いてあるのに気づかない。完全に思い込みと錯覚が作用しています。

以前は、電車に乗るとき急行と特急をよく間違えました。東急東横線渋谷駅は、電車が入線するとき、「急行」という表示のままはいってきます。関西では電車は入線するとき新しい種別の表示に変えて入ってきます。その感覚が残っていて、電車の入線したときの表示「急行」を自分の乗る電車の種類と思い込んでしまって、後で「特急」に変わり、ホームの種別表示や電車のアナウンスで「特急」といっても頭の中は変わらず、結局何回も止まると思っていた駅に止まらず通過する羽目にあいました。

ヒューマンエラーは、自分でもかなり気をつけておかないと、ついやってしまいそうです。
年を取るにつれこの傾向が強くなり、悲しいです。

2010年9月8日水曜日

登山用ストーブの危険性

キャンプや河原での焼き肉パーティなどでストーブ(コンロ)の爆発事故が多く発生しています。

ストーブの扱い方を知らない人が、知ったかぶりをして事故に遭うケースが多いです。
調理用のコンロには大きくガソリンストーブとカートリッジ式ガスストーブがあります。昔は灯油またはガソリンストーブが主流でしたがコンロが重いこと、バーナノズルがよく詰まりメンテナンスが大変であること、そして着火するために圧力をかけて予熱する手間がいることなど、扱いが大変であるため、今ではほとんど使われることがなくなりました。私は今でもホエブスを2台とコールマンストーブを1台持っていますが、もうしまい込んだままです。カヌーなどで車で出かける時ぐらいしか使いません。

今ではほとんどEPIのガスストーブに頼っています。カートリッジ式ガスストーブは軽くて着火が非常に簡単であることから広く普及しています。しかし正しい使用法を知らないことが多く爆発事故の発生が後を絶ちません。
ガスはノルマルブタン、イソブタン、プロパンの混合ガスが液化された状態です。ブタンが主です。液化ガスは気化した際、気化熱を奪いカートリッジが冷却され気化しにくくなります。したがって、高度登山になると気化温度が低いプロパンの割合が多くなります。

使用上、特に注意しないといけないことは次の点です。
・閉め切ったテント内で使用すると一酸化炭素中毒や火災の危険性があります。閉鎖空間で発電機を動かすのと同じです。知らぬ間に気が遠くなって倒れて、死に至ります。
・大きな金属鍋を上に載せてのんびりと鍋料理をしたり、二台並べて鉄板を置き、焼き肉などしていると、鉄板からの放射熱でガスカートリッジが暖まり爆発する危険性があります。一番多い事故です。
・網を載せて炭に火をおこしても、同じように炭の放射熱により爆発の危険性があります。
・熱がこもるようにとストーブの周りをアルミニウムの風防で覆っても同じようにカートリッジが暖まって爆発する危険性があります。
・海岸などで焼けた砂浜の上に置いて使用しても、砂の熱と直射日光とでカートリッジが暖まり爆発する可能性があります。
・閉め切った車の中に放置した場合もカートリッジが高温になるため爆発する危険性があります。
・ガスカートリッジはとにかく安定が悪く、鍋などを置くと転倒し、鍋の熱湯によるやけどや火災の危険性があります。
・バーナーとカートリッジの取り付けが悪い場合、ガスが漏れて火の気があると引火して爆発する危険性があります。
以上爆発の危険性は、寒冷地用カートリッジの方がプロパンの含有率が高く引火点が低くより危険性が高まります。夏場に寒冷地用を使用するのはあまり勧められません。

さらに危険な行為が、最近インターネット販売で出回っているニュージーランド製のガス詰め替え装置の使用です。アダプターを取り付けて家庭用ガスボンベを登山用ガスカートリッジに詰め替えるものです。もちろん違法行為で危険極まる行為です。

ガソリンストーブでもパッキングからのガソリン漏れへの引火や、圧不足や圧過多により火柱が上がったりする事故がありました。またホワイトガソリンをポリタンクに入れて運んでいたため、飲料水と間違えて飲みかける事故もありました。ただタンクの加熱による爆発の危険性はなく、いまでも鍋料理や焼き肉の場合は使います。

危険性を知らないで使うこと程、恐ろしいことはありません。

2010年9月1日水曜日

紙の大量消費

アメリカ人はハンカチを持たないということを聞いたことがある。

北米のある国のトイレに入るとペーパータオルが備え付けてあり、濡れた手をそれで拭いてゴミ箱に捨てている。お尻を紙で拭き手も紙で拭く。紙を消費しまくっている。
東南アジアでは、トイレにお尻を洗うビデを備えているところがあるが、意外と紙がないところが多い。ましてや手を拭くための紙などほとんど備えていない。アメリカはパルプを輸入して他国の森林資源を大量に消費しているのである。

トイレットペーパーも桁違いの大きさだ

手を拭くのもロールペーパー

ハンカチ一枚あればこんなに紙を使わなくて済む。

アメリカ人はなぜハンカチを使って、紙の消費を押さえようとしないのだろうか。
日本はほとんどの人がハンカチを持っているのでまだ健全なのであろう。ただし、企業におけるコピーの紙の使用量は凄まじいものがある。

電子化された文書は、画面上でミスを見つけることが難しく、つい印刷してしまう。また、日本の社会ではまだ書類に印鑑が必要な場合が多く、紙が必要となる。印鑑を電子認証することが、紙の使用量削減に不可欠であろう。

森林を大切にしない文明は必ず滅びる。ギリシャがそうであった。さらに、自国の森林を保護して他国の森林を消費するのは最低の文明である。

2010年8月25日水曜日

溶接棒のMSDS

労働安全衛生マネジメントシステムの外部監査で溶接棒のMSDSの不備を指摘された。

建設業においてMSDSは、化学合成の塗料や溶剤などしか思い浮かばず、溶接棒は頭の中から完全に外れていた。

溶接ヒュームによるじん肺障害は、今まで見過ごされがちであったが、粉じん障害防止規則の一部が改正され、対策が強化されています。
そのなかに、屋内において、金属を溶断し、又はアーク溶接する作業のうち、自動溶断し、又は自動溶接する作業という項目が追加されています。

この項目に該当しなくても、溶接ヒュームは人体に悪影響を与えることに間違いなく、溶接メーカーはMSDSを発行しています。

KOBELCOの製品安全情報シート(MSDS)では
粉じん、金属ヒューム及びガスによる急性毒性、感作性、慢性毒性、発がん性などが記されています。

建設業では野外で作業することが多く、防じんマスク着用の対象とならないケースが多いですが、MSDSを提示してこれらの内容を労働者に周知する必要があります。

我々建設技術者は、今まで溶接作業における有害性を甘く見ていたようです。

2010年8月18日水曜日

自動車アセスメント

高速道路のサービスエリアに「自動車アセスメント」という耳慣れない言葉のリーフレットがあった。

国土交通省と自動車事故対策機構が、安全な自動車がつくられ、消費者に選ばれることを目的に自動車の安全性能についてさまざまな試験を行い評価している。いわば自動車のリスクアセスメントといえる。

試験の内容は
I 衝突安全性能試験
 ・オフセット全面衝突試験
 ・側面衝突試験
 ・後面衝突頚部保護性能試験
II 歩行者頭部保護性能試験
III ブレーキ性能試験
IV 後席シートベルト使用性能評価試験
V 座席ベルトの非着用時警報装置評価試験

以上の試験の評価結果は公表されているが、自動車を購入する際、ディーラーから説明されたことはない。
衝突安全性総合評価は6段階で表され、事故に遭遇した場合に重症になる確率を表している。例えばBMWのMINI COOPERやホンダ
バモスは総合評価3、脳挫傷や大腿骨骨折などになる確率が60〜70%、ほとんどの自動車は総合評価5〜6で確率が50%以下になる。ただし、試験の条件がフルラップ全面衝突試験の場合、時速55kmであり、安全を確保するのであればもう少し厳しくした方が良いと思われる。

自動車のリスクアセスメントとしてある程度の評価はできるが、残留リスクのリスク低減対策が、まだ運転者の安全運転に委ねられ、メーカーの努力義務が明確でないところが問題である。

評価報告書の最後に、普及が望まれる安全装置の一覧が示されている。
 ・横滑り防止装置(ESC)
 ・衝突被害軽減ブレーキ
 ・車線維持支援装置
 ・全車速ACC(車速及び車間距離を自動制御)

交通事故による死傷者を減少させるには、道路交通法を強化するばかりでなく、自動車そのものをさらに安全なものにする法制化も必要であろう。

2010年8月11日水曜日

iPODナノの不具合

私も通勤でiPODナノを愛用し、毎日Podcastを聞いている。小さなボディながら数多くの機能が詰まっているのには驚く。iPodcastはテレビニュースを放映後、インターネット上で公開するもので、時間のずれはあるものの海外のニュースは録画したものを翌日見るような感覚で見ることができる。

このようなすばらしい機能があるのだが、肝心の安全性に若干問題があることが、マスコミで報じられている。
iPodナノの初代モデルが充電中に加熱・焼損する問題である。一部でケガ人が出ているようだが、経済産業省製品安全課はメーカーに対し報告を求めただけでリコールなどの行政手続きを行っていない。相変わらず遅い対応で、アメリカにおけるトヨタ車のリコール問題の時と違って、日本では役所の対応が常に後手に回るようである。

また、アップル社も経済産業省の自主的なリコールの求めに全く応じる姿勢を示していない。
何か変なのである。問題があるのならなぜ強く行政処分を行わないのか、メーカーもなぜ部品交換を行おうとしないのか。お互いに責任の所在を回避するための時間稼ぎをしているしか考えられない。

私が使用しているiPodナノは最新モデルなので、今のところ充電中の不具合は発生していないが、夜中充電中に火事になるようなことはあまり想像したくない。

2010年8月4日水曜日

熱中症がなぜ日本で多いのか

今年は、梅雨が明けてから熱中症が急増している。

タイやインドネシア、ベトナムのような暑い国でも熱中症の危険性があるのだが、日本のように大騒ぎになることはない。
なぜ、日本は熱中症が多いのだろうか。

暑さの対策に対して無頓着なのではないだろうか。
日本は物が豊富で好きな物を好きなだけ飲み食いし、事務所や家はエアコンが完備しているところで夜遅くまでどんちゃん騒ぎをする。
一方東南アジアの諸国では、農村部では食べる物も質素で、エアコンなどあまりなく、自然の風で涼をとっている。暑さに対する耐性が自然と備わっている。そして昼休みはゆっくり昼寝をする。

東南アジアの現場では、現場にウォーターステーションを設置して冷たい水を誰もがいつでも飲めるように工夫していか、各自が常に水筒を携帯するようにしている。

熱中症の対策には以下のものがある。
1.睡眠を十分にとり、十分休養をとる。
2.必ず朝食を採るなどして、栄養をとる。
3. 水分を補給する。できれば体液に近い成分であるスポーツドリンクなどをこまめに接種する。
4.気分が悪くなったら早めに休憩をとる。

日本で熱中症がこれほど多く発生するのは、日本人の健康状態が悪化しているのが原因の一つにあげられないだろうか。すなわち精神的な弱さ、成人病、肥満などである。
熱中症にかかりやすい要因として以下のことがいわれている。
1.体力の弱い者(新規入場者や新入社員)
2.肥満の者
3.体調不良者
4.暑熱馴化のできていない(暑さになれていない)者
5.風邪など発熱している者.
6.怪我や故障している者
7.暑熱障害になったことがある者
8.鬱発症脆弱性のある人

学生時代に新人が錬成訓練で熱中症にかかり病院に運び込まれた。命は助かったのだが、その後肝臓に障害が残り不自由な生活をしている。
熱中症は業務上疾病であり、労働災害(事故)ではないが、命に関わる問題であり馬鹿にしてはいけない。

2010年7月28日水曜日

旅の安全祈願

ベトナムのブンタウ省フーミーに出張し、最終日の早朝、旅の安全祈願にお寺にお参りに行った。

ベトナムは中国の影響を大きく受け、宗教は仏教、儒教、道教、キリスト教、イスラム教、カオダイ教などである。9割が仏教といわれているがタイのように日常生活に溶け込んでいるようには見えない。
比較的新しい寺が多く、まだ建築中のものをよく見かける。
ホテルに近くに、大叢林寺(DAY TONG LAM TU)という比較的伽藍の大きなお仏教寺院があった。歴史はそんなに古くなさそうだ。
いきなりキンピかな建物で少し日本と雰囲気が違う。
しかし、ベトナムは中国の影響を受けているので、日本と同じ大乗仏教である。
お寺か、それとも宮廷なのか見間違うぐらいです。
仏塔も中国式でかつ金ぴかです。
この寺は、僧の修業も行っているのか、講堂のような建物が多くあった。
線香を焚いて、お賽銭をあげ、安全を祈願した。
そのあと、門前の屋台でバインミー(フランスパンのサンドイッチ)を食べて、宿舎に戻った。

2010年7月21日水曜日

移動式クレーンによる吊り走行

移動式クレーンによる吊り走行は、たとえ荷重が小さくても吊り荷が振れ、機体やワイヤーロープに衝撃力や遠心力が加わり非常に危険です。

吊り走行は、昭和50年4月10日付基発第218号により原則禁止となっています。

しかし、作業によってはどうしても行わざる得ない場合があります。
たとえば、狭い場所でのクレーン仕様バックホウによるヒューム管や敷鉄板の移動やクローラクレーンによる杭の移動、起重機船によるケーソンの吊り移動、レッカー車による車の移動などです。造船所の中では、意外とよく移動式クレーンによる鋼製ブロックの吊り移動を見かけます。

また、ラフタークレーンやクローラクレーン、起重機船はある条件の下で吊り走行が可能な構造になっています。
法令違反ではありませんが、他に方法がなく、どうしても吊り走行しなければならない状態でない限り、厳しく禁止すべきです。

他に代替方法がなく、どうしても吊り荷走行しなければならない場合は、「ホイールクレーン及びクローラクレーンの吊荷走行時の安定に関する指針(JCA規格)」を参考に対策を立てる必要があります。以下に抜粋すると
1.吊り荷走行姿勢の移動式クレーンは、前方、側方、後方の性能が大きく異なる。機体正面に荷がない場合は、アウトリガを一旦張り出すか、クレーンを移動させて機体の正面で荷を吊る。
2. タイヤの空気圧を規定圧力にし、かつ、サスペンションロックシリンダを最も縮小した状態にしする。
3. ジブを縮小状態にする。(補助ジブは使用禁止)
4. 走行は、できるだけ低速(2Km/h以下)で、直進のみで走行する。移動式クレーンを走行させる時は、旋回ブレーキ、ドラムロック、巻上げレバーロックを掛ける。
5. 走行する地盤が水平で、タイヤの接地圧に耐えられることを確認する。地盤が軟弱な場合や傾斜又は凸凹がある場合は、つり荷走行は行ってはならない。
6. メーカが示す吊り荷走行の前方領域のジブ角度や定格総荷重は、水平堅土において使用した時の数値であるため、吊り荷の質量は前方領域のジブ角度を超えないような余裕のある荷重でなければならない。
7. 吊り荷は、地切り程度の高さを保持し、添えロープ等で荷を機体側に引き寄せるかフロントバンパで支える等して荷振れを起こさないようにする。
8. アウトリガを有するものは、アウトリガを張出し、アウトリガフロートを地上から少し上げた状態で走行する。
9. 急ハンドル、急発進、急ブレーキ、変速操作、吊り荷走行中のクレーン操作、つり荷の自由降下等は行ってはならない。
これ以外にも、ワイヤーロープの損耗度、吊り荷の定格荷重に対する余裕、玉掛者の退避措置などの確認が必要になります。そして実施する場合は、KYK(危険予知活動)を実施し危険性を労働者に周知する必要があります。

かつて、私が消波ブロックの製作に従事したとき、吊り走行を認めるかどうかの議論しましたが、吊り走行ではなく吊って仮置きしクローラを移動させて再度吊り上げ転地する方法を指導しました。時間と費用のロスは当然発生しますが、安全第一です。

2010年7月14日水曜日

同調化の問題

最近マスコミで草食男子という言葉が使われだした。
草食男子が多くなり、若い男性職員の覇気がなくなってきたといわれている。

Wikipediaによると
草食系男子の定義は論者によって異なる。深澤は、「草食男子」を、『恋愛やセックスに「縁がない」わけではないのに「積極的」ではない、「肉」欲に淡々とした「草食子」』と定義した。森岡は、「草食系男子」を、「新世代の優しい男性のことで、異性をがつがつと求める肉食系ではない。異性と肩を並べて優しく草を食べることを願う草食系の男性のこと」と定義した。牛窪の定義は深澤の『平成男子図鑑』の論旨とほぼ同様。森岡は、その後、「草食系男子とは、心が優しく、男らしさに縛られておらず男女関係のことが定義されている。

草食男子は、これからの日本にとっては大きな弱点となりうる。
まず、積極的にかかわろうとせず、ただ回りにあわせて同調し保身を図ることばかり考えている。そして新しいことにあえて冒険しようとしない。
同調も非積極的な活動に同調しようとする。これでは、なかなか現状を改善し、組織を発展させていくには重荷になる。

日本は明治維新以降海外列強に負けじと、野心的な活動をしてこれまで海外市場に進出してきた。しかし、ここにきて日本は世界の流れら取り残されようとしている。そして経済活動は不活発になる。

一方、韓国の男性は挑戦的であり物事への取り組み方が実に熱い。そして少々の失敗を恐れずどんどん新たな世界に挑戦している。今、日本の男子にこの熱い思いが全くない。むしろ、若い女性の方が熱い。

同調化傾向は、業務が活性化せず、災害が発生したり、品質の問題が発生しても、何となく有耶無耶に終わってしまう傾向がある。草食男子に対していくら声高に叫んでも無反応なのである。周りが反応しないので自分も周りに同調し無反応になる。

熱く燃える若者が増えることを望みます。

2010年7月7日水曜日

OHSAS18001とCOHSMSの違い

OHSAS18001とCOHSMSはどのような違いがあるのか。

OHSASは、BS及びISOの流れとして規格化されたものであるのに対し、COHSMSは、ILOのガイドラインに基づき、各国がOHSMSの指針を策定し、建設業災害防止協会が建設業に合うようにマネジメントシステムを構築したものです。

特徴としては、OHSASは国際規格に準拠したものであるためにISOのように仕組みや形をより重視する傾向にある。一方、COHSMSは、労働者の安全確保を鮮明にしておりパフォーマンスをより重視し、実質を伴わなければならないとしています。
アプローチは規格要求からはいるか、従来の安全管理の発展的延長から入るかの違いであり、一言で言えば「QMSは顧客満足が目的である」という言い方をすれば、「OHSMSは労働者の安全が目的である」と言える。

その中で、大きく違う点は、OHSASは、第三者の認証を必要としているのに対し、ILO-OHSMSは認証は必要としないとしている点です。前者は欧州を中心とした認証機関の思惑が感じられ、後者は、安全管理は従来から官民で高度な管理を行ってきたものであり、それを自主管理できるように整理しただけであるからとしています。今後、企業が国際舞台に進出する場合は、第三者認証を要求されるケースが増えてくると考えられます。

また、細かいところに差はあります。OHSAS18001では、各国の法律に従うことが、「4.3.2
法的その他要求事項」として明文化されています。対象はすべての職場であり、事務所業務のリスクアセスメントも必要になってきます。
国内において建設業は、建前と実情の乖離があり労働者にも当然「法令を守るべき義務」があるのに、災害が発生すると管理責任のみが追及されます。マネジメントシステムの限界性も見えてきます。
また、監視なども明文化されています。EMSの規格要求がそのまま労働安全衛生に適用しています。

一方、COHSMSには、「5.1.2
労働者の意見の反映」が明文化され、労働者の参加を不可欠としています。OHSAS18001も2007年版からは、「4.4.3.2参加及び協議」として労働者の参加を取り入れています。
これらの時間的な差は、OHSAS18001は、ISO14000をベースに規格化されたものであるのに対し、COHSMSは、政府機関・労働組合の代表・事業者がこれまで蓄積してきたノウハウをマネジメント化した生い立ちの差から生じています。両者の差は改訂されるたびにより近づいてきています。
したがって、基本的な内容の差はないと考えてよい。

労働安全衛生マネジメントシステムは、労働環境の改善の問題であり、いくら立派な文書が整っていても災害を起こしてはなんの意味もありません。どちらのマネジメントシステムを採用しようと、文書を整備するだけでなく実際に災害を起こさないようにすることが第一の目的です。

2010年6月30日水曜日

健康的飛行旅程

飛行機に長距離乗っていて体調を壊す人がいます。その対処法が機内説明書にありました。

乗物酔い :まず、飛行機に乗っていて体調が悪くなるものに「乗物酔い」があります。最近の飛行機は乱気流を避けるため高い位置を飛び機内の気圧も幾分下がります。乗物酔いにかかると吐き気を催します。その対処方法は、飛行機に乗る前に香辛料の利いた食べ物を控え、機内では脱水症を防ぐため十分水分をとる。吐き気を催し始めたら、できるだけ頭を揺すらないように静止し、座席を後方に倒して目を閉じます。

飛行中のストレス :ストレスを和らげる方法は、まず呼吸を整えることです。ゆっくり3つ数えながら、しっかりと息を吸い込み、15〜10分間、継続します。バイオフィードバック(自己制御)も効果的です。自分がリラックスしている状態を思い浮かべます。神経を集中させ足元、足、腿、腹部、胸部などの身体の各部を順番にリラックスさせる。数分後には脈拍と呼吸の回数は減少し、緊張が徐々に解消されます。

客室内の気圧変化 :客室内の気圧が低下するとまれに、小腸内の空気が膨張し軽症鼓しんによる不快感を引き起こします。長時間フライトの間は、適切な間隔で必ず飲食を取ります。また、常に水分を取り体内の水分量を十分に維持することが重要です。

深在静脈血栓症(DVT):いわゆるエコノミー症候群と言われているものです。DVTとは、ふくらはぎ及び足筋の深部静脈で発生する凝血です。この自然発生的な症状は通常、心疾患または老齢のようなリスクに面している人に、また、継続した一定のあいだ足を動かさなかった場合など、非常に高い確率で発生します。初期症状として、足筋の痛み及び圧痛、皮膚の発赤及び膨潤などがあげられます。凝血塊が肺に転移した場合は、呼吸困難が起こる場合があります。
対策は、フライトの間、継続して足筋の運動を行うことです。できれば、客席内を定期的に歩き回ることです。着席している間は、簡単な体操をします。

推奨する簡単な機内体操
2時間毎に以下の軽い体操をすることを勧めています。
① 首 :頭を右肩の方へゆっくりと傾けて止めます。同じように左肩の方に傾けて止めます。胸部の方へゆっくりと頭部を倒し、そのまま止めてゆっくりと息をします。この動作を3回繰り返します。
② 腕 :腕を伸ばして、肘のところでゆっくり曲げながら胸部に当てます。それを5回繰り返します。
③ 肩 :両肩をすくめて、そのまま止めてから、ゆっくりと、リラックスします。それを5回繰り返します。

以上の資料は、シンガポール航空の機内資料より抜粋しました。

2010年6月23日水曜日

ヒヤリハット報告の普及しない訳

製造業では活発に行われているヒヤリハット報告活動が建設業では、ほとんど板についていない。
その理由はなぜなのか?

建設業の特殊性が考えられる。事業場がプロジェクトごとの特定期間に、下請け業者の寄せ集め組織で、場所もその都度変わる。労働者が自分の大事な職場だという意識が希薄であり、わざわだしんどい目をして職場の労働環境を改善しようとする意欲が湧かないからである。
COHSMS(建設業の労働安全衛生マネジメントシステム)もそのことを踏まえてシステムがされているが、どうしても形式的な書類のみに終わっている。

ヒヤリハットは、リスクアセスメントを行ううえで、労働者の危険感受性を高める方法として非常に有効であり、安全に限らず職場に潜む問題を早期に解決する方法として有効な手段である。
ヒヤリハット報告活動を阻害する要因は以下のことが考えられる。

1.ヒヤリハット報告した者をマイナス評価してしまうこと。
2.ヒヤリハット報告の結果をうまく活用していないこと。
3.労働者にわずらわしい手間が増えること。

その対策として
1.ヒヤリハット報告をしたものをプラス評価し、表彰制度に組み入れること。そして、なぜ表彰に値するかの理由を説明すること。すなわち、問題が小さいうちに発見し、職場全体にその問題が再発しないように水平展開することができ、職場の改善に大いなる貢献をしたことを説明するのです。
2.ヒヤリハット報告をすぐその場で改善するような小集団活動を展開する。元請工事担当者を長とした担当部署の改善をしていく。
3.それぞれの部署で行ったヒヤリハット報告活動を作業所または支店全体でまとめ特定の固有名詞は省き、分析・分類して各現場にフィードバックし、リスクアセスメントやツールボックスミーティング、危険予知活動に活用する。
4.報告する書式はなるだけ簡略なものとする。報告されたヒヤリハットのうち、特に水平展開すべきと思われるものについてのみ、再度ヒヤリングを行い、詳しく原因分析と再発防止対策を立てる。
5.データベースは畑村洋太郎氏の失敗学データベースのような形でまとめ、水平展開の資料とする。
また、せっかく行うのであれば安全の問題だけでなく、環境、品質、工程上の問題など、現場に潜むあらゆる問題をすべて取り上げるのが良い。意外と根本問題は同じであることが多いからです。

形式的な労働安全衛生マネジメントシステムに陥らないようにするためには、かつてのTQCのような小集団活動をより簡略にして導入するのが良いかもしれない。

2010年6月16日水曜日

登山における危険源(Hazard)

ごく一般的な初心者向きの登山コースでも事故になる危険源(Hazard)は潜在しています。

低い山での事故原因は、落石、転落、落雷、道迷いからくる疲労、熱中症、降雨による低体温症、倒木、熊等の動物に襲われる、マムシに咬まれるなどがあります。事故現場を見ると、なぜこんな所で起こったのかと疑問に思いますが、逆に言えば、どんな所でも事故は起こりうるということです。

先日、丹沢の大山に登ったとき、死亡事故現場を2箇所確認しました。ここは、尾根筋にある見晴台ですが、1992年11月1日に木造四阿に落雷し、雨宿りしていた約25人の内、1人死亡、10人負傷しました。晴れている時は、大山を見ながらお弁当を食べてのんびりと休憩する所です。落雷の危険がある場合、平らな所にぽつんと建つ四阿や高い木の下は非常に危険であるということを知っていなければなりません。高い木の先端から45度の範囲の中から対比すべきです。ここの場合は林の中に逃げ込めば助かったと思われます。

ここは、おなじ大山の登山ルートで、見晴台からケーブル駅への道ですが、転落死した現場です。普通に歩いていればまず落ちることはありません。話に夢中になっていてよそ見していたか、写真を撮っていて足を踏み外したか、あるいは気分が悪くなってめまいをして転落したといか考えられません。登山ルートにすべて転落防止策を設けるのは不可能で、事故で責任を負うしかありません。

これは尾瀬の木道です。木道が雨で濡れて、その上に落ち葉が落ちている場合、歩きながらちょっとよそ見すると、ステンと見事に転びます。しかし、転んだときに両脇の杭に頭をぶつけると大事故になります。環境省の人から毎年何人かそのような人がいてヘリコプターで運ばれるそうです。何でもない安全そうな道にも危険源があります。

冬の武奈が岳です。京都の近郊にあり晴れた日は快適な雪登山を楽しめますが、吹雪になりガスに覆われると、踏み跡が識別できず方向を見失って遭難する可能性があります。最近は地図とコンパスを持たずに登る中高年登山者が多く、深田百名山の気分で登っている登山者の遭難が増えています。

登山にもリスクアセスメントは必要でしょう。安全登山の教育を受けずに登って遭難した場合、登山保険には加入できないようにする、捜索費用は全額遺族が負担するとすることも必要と考えます。

2010年6月9日水曜日

起重機船の安定度

移動式クレーンは本当にいとも簡単にひっくり返ります。
移動式クレーンは、水平で堅固な地盤に設置することを大前提として、安定度を十分確保する範囲で定格荷重が定められています。そして移動式クレーンの検査では、定格荷重の1.27倍の荷重を吊り上げ、機械そのものの強度と安定性と確認することになっています。
しかし、クローラクレーンを台船に搭載した場合はどうなるのか。
クローラクレーンを台船に搭載し、台船と固定して一体とした場合、「浮きクレーン」になり、あらたに「浮きクレーン」(起重機船)としての検査を受け安定性を確認する必要があります。

作業船設計基準「第4編港湾工事用起重機船」に起重機船の安定性が決められていて、それを抜粋すると
4.2.1 起重機船の安定度
起重機船は、静穏な水面で定格荷重に相当する荷重を吊った状態において、転倒端に置ける乾舷(上甲板から水面までの垂直距離をいう。)が、0.3m以上となるものでなければならない。
(1) 「静穏な水面」とは、波立たない平水面をいう。
(2) 「乾舷」とは、右図に示す距離をいう。
(3) 移動式クレーン構造規格第15条(浮クレーンの安定度)は、起重機船の安定度について以上のとおり規定している。
(4) 移動式クレーンの荷重試験及び安定度試験について、クレーン等安全規則第3章移動式クレーン第55条に以下のとおり規定されている。
 (a) 荷重試験は、移動式クレーンに定格荷重の1.25倍に相当する荷重(定格荷重が200トンをこえる場合は、定格荷重に50トンを加えた荷重)の荷を吊って、吊り上げ、旋回、走行等の作動を行うものとする。
 (b) 安定度試験は、移動式クレーンに定格荷重の1.27倍に相当する荷重の荷を吊って、当該移動式クレーンの安定に関し最も不利な条件で地切りすることにより行うものとする。
(5) 起重機船の転倒に対する要素は、陸上の移動式クレーンとはまったく異質のものである。

起重機船の安定度は、陸上の場合に比べ十分にあり、試験荷重時に喫水を計測して確認すれば十分です。
船の安定度については、船体の乾舷及び船体の傾斜角などを確認することでよい。そして船体傾斜角の許容範囲を以下のようにすることを推奨しています。
4.2.2 船体の傾斜角
非自航起重機船作業時の船体傾斜角の許容範囲は次のとおりとすることが望ましい。
(1) 縦傾斜角(トリム角)
   ・荷重吊り上げ直前(船尾に)  3°
   ・荷重吊り上げ時(船首に)  3°
(2) 横傾斜角(ヒール角)
   ・荷重吊り上げ直前(反対側に)  3°
   ・荷重吊り上げ時(荷重側に)  3°
ただし、いずれの場合においても最小乾舷300mmは満足されていなければならない。
台船にクローラクレーンを搭載し固定しない場合も、滑動防止措置をとり、台船が傾斜しない措置が必要です。そして安衛法(法38条、令2条3号、クレーン則85条)により変更届(変更検査)が必要です。変更検査には安定計算が必要になります。
ちなみに、私もクウートで起重機船転倒の経験があります。そのときは、台船の舷側に穴が開いていて、海水が中に入ってバランスを失い転倒しました。

2010年6月2日水曜日

監理技術者講習及び監理技術者証の廃止

政府行の行政刷新会議は、5月21日の事業仕分けで、建設業法で定める監理技術者制度の見直しの提言が出した。

その結論は、資格者証の交付は「廃止」、講習は「受講の義務付けを廃止」とする内容であった。監理技術者資格の認定に絡む2つの財団法人、「建設業技術者センター」と「全国建設研修センター」の公益法人にメスを入れた。

監理技術者資格者証の交付については、建設現場の安全・環境、品質管理の適性確保が重要であることは重要であり、不適格業者の排除も重要だとしているが、現在行われている内容が資格者証の交付に効果があるとは認められないとして廃止と結論付けた。さらに、「建設業には資格が様々ある。

また、監理技術者講習については、実施主体や手数料などの利用者負担を見直としており、義務としての監理技術者講習は廃止とするという結論を出した。

なぜこのようになったのか。監理技術者講習自体の考え方は正しいが、運営主体が国土交通省の天下りの受け皿となり、法外な手続き料を取ったため、OBの給料を捻出するための制度ではないかという批判が広がったため、実態にメスが入ったと思われる。
また、講習内容のレベルが低く、5年に一度ただ一日我慢して座っているだけで修了証がもらえるというのにも批判があった。
功のような状態が、技術者のレベル向上に役に立っていないという評価につながったと思う。技術者の能力向上教育には、CPD制度もあり、監理技術者講習だけに法的インセンティブを与える必要はないと考える。

さらに、総合評価方式の入札にCPDの実績を加点対象となるが、これも技術者を駄目にする制度である。点数稼ぎのために受講しているものが多く、施工管理技師会のCPDs講習の技術レベルは高くないものもある。本来の目的である技術の向上に結びついていない。これにもメスを入れるべきであるが、そこまでは手が回らなかったのであろう。

これらの制度は、日本の技術者を国際競争からかけ離れてガラパゴス化してしまう恐れがある。すでに韓国の技術者には大きく水をあけられている。国内市場はさらに縮小していく中で、もう少し技術者の能力を高め、国際市場でも戦える技術者を養成する必要がある。
それには、国土交通省のOBの受け皿機関ではなく、純民間機関がCPDの質の向上に努め第三者認証を受けながら、技術者自身の技術の向上に資するように行うべきです。

2010年5月26日水曜日

全国労働安全週間のマンネリ化を防ごう

全国労働安全週間は、もはやマンネリに陥っていないだろうか。

毎年同じように、今年は第何回目の全国安全週間で「みんなで〜しよう、職場の安全・安心」などのスローガンを掲げ、毎年ほぼ同じような実施要領を作成する。そして、現場はこれrもお決まりの実施計画を立て報告する。実施する前から報告書が作成できるような内容ばかりです。
もはやマンネリとしか言いようがない。

厚生労働省主導でこのような運動を実施するのは間違ってはいないが、実際にこの運動を展開する事業者は、もう少し独自色を出す必要がある。
安全法令や規則を基準にして、そこから逸脱していないかということしか管理することが出来ないいわゆる規則屋さんは、実施要領にあれもこれもとてんこ盛りになりがちで、結局いつもと代わり映えしないものになってしまう。すべて重要なことはわかるが、せっかくのキャンペーンなので、何かに絞り込んだほうが効果が上がります。

今回のスローガンはリスクアセスメントを進めようということなので、リスクアセスメント後のリスク低減対策の考え方である優先度を重視して、実施要領を決めるのが良いです。

海外では、International Worker's Memorial Day
(4/28)が有名です。全世界一斉に、労働災害で亡くなった人を追悼し、安全意識向上のキャンペーンを行っています。日本では労働組合の連合が参加していますが、あまり知られていません。

日本の会社が海外の事業所で日本と同じように全国労働安全週間を展開するには、現地労働者にとって違和感があり少し工夫しないとうまく展開することができません。逆に海外の現地労働者にもわかるような内容で展開するような内容を、日本国内で展開すると今までより効果が上がると思われます。

2010年5月19日水曜日

パロマ工業、企業の社会責任を重視

パロマ工業元社長の有罪判決が東京地方裁判所から下された。

パロマ工業製のガス湯沸かし器を使用した人が一酸化炭素中毒で死亡した事故で、メーカの責任の重大さを問い、業務上過失死傷罪で、5月11日、東京地裁は元社長に禁固1年6ヶ月執行猶予3年、共犯の罪で元品質管理部長を禁固1年執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。

この事件は、同社が1980年から89年に製造した湯沸かし器で1985年〜2005年に事故が28件起き、死者21人、重軽傷者36人を出した。この事故は、表面上パロマ工業とは資本関係のない契約修理業者が不正改造したために引き起こされたものですが、消費者の生命にかかわる重要な機器ということで、メーカの安全配慮義務が問われたものです。

従来の概念では、不正改造した職人だけが責任を問われると思ってしまうが、今回、重視された点は、メーカーの安全配慮義務であり、元社長が死傷事故の発生を事前に予見できたか(危険の予見可能性)、死傷者が出る結果を避ける対策を取ることができたのか(結果回避義務)であった。
「安全配慮義務の実行」とは、「災害を起こす可能性」すなわち「危険」を事前に発見し、その防止対策を講じることであり、それを怠った責任を問われている。

危険の予見の方法の一つとして、リスクアセスメントがあり、「機械の包括的安全基準に関する指針」が関係する。絶対に安全な製品を作ることは不可能であるということが基本的な考えとなっています。したがって、製品の設計をする際に予見される危険性をすべて洗い出して対策を取るリスクアセスメントを行い、かつ残留するリスクを使用者に知らさなければならない。今回、容易に不法改造できることは予見できたはずであり、実際に行われていたことを知りながら対策を怠ったことが危険配慮義務を怠ったことになります。

建設業において、危険の予見可能性についての対応は、リスクアセスメントやKY活動などが、それに当たります。したがって、リスクアセスメントは法律の面からも重要な活動といえる。

2010年5月12日水曜日

クレーンメーカーの各種技術提供サービス

重機メーカーが提供しているサービスに現場で有効に活用できるものがあります。

その一つが、クレーンメーカーが行っている各種情報提供サービスです。移動式クレーンの転倒事故が相次いでいますが、その一つに地耐力不足による転倒があります。
原因としては、もともと地盤の地耐力が不足している、地盤の転圧不足、敷鉄板が過小、敷鉄板への荷重が偏っているなどありますが、事前に「接地圧がどれぐらいかかるからどのような準備をしよう」という計画がなされていないことがあります。

法令では移動式クレーンの作業計画書を事前に作成し関係者に周知することになっていますが、それすらなかったり、あっても移動式クレーンの転倒やワイヤーロープの選定について何も検討されていないことがあります。

移動式クレーン計画書を作成するとき、メーカーの技術情報は参考になります。
以下のサービスには、それぞれ会員登録が必要です。

(株)タダノ
https://www.tadano.co.jp/service/data/register.asp
・アウトリガー反力の計算
・事故事例
・CADデータの提供

コベルコ(株)
https://www.kobelco-kenki.com/cris/top/home2.htm
・各条件におけるクレーン接地圧(LBCC)やアウトリガー反力(RTC)計算のサービス
・RTC走行軌跡図の提供
・CADデータの提供

日立住友重機械建機クレーン
http://www.hsc-crane.com/j/technical/
・各条件に置けるクレーン接地圧の計算のサービス
・CADデータの提供

2010年5月5日水曜日

高知県は資源王国

石油鉱業連盟が5年に1度発表する2007年の資料で、世界の石油は、あと約68年ぐらいで枯渇するとしています。世界の石油埋蔵量は調査の進展と採掘技術の進歩により毎年変化する。その結果予測値は、未発見資源の減少による可採資源量と経済成長の著しい中国などの需要増とのバランスにより想定されている。
一方、天然ガスの枯渇年数は、約98年と予想しています。この結果、石油の不足分は徐々に天然ガスに置き換えられると考えられる。

石油の需要増と供給不足は、更なる石油価格の高騰が予想されます。そして石油価格の高騰は、天然ガスの価格上昇と連動して電気料金や化学肥料や工業製品価格が上昇し、資源の乏しい日本経済を圧迫します。

しかし日本には、海洋に今まで手をつけていない資源が豊富に眠っています。
その一つがメタンハイデレードです。メタンが高圧力下で水の分子の籠に入って圧縮されたメタンで、太平洋の南海トラフ溝沿いに豊富に埋蔵している。日本周辺海域には約6兆m3のとメタンハイドレードがあるとされ、この資源量は、日本の天然ガス年間使用量の約百倍程度に相当するとされているが、まだ採掘技術が確立されていないのとコストがかかりすぎるので、実用化の目処が立っていません。
メタンハイデレードから取り出すメタンから燃料や化学材料の合成が可能になり、石油の代替になることが予想されます。

もう一つは海水に無尽蔵に含まれる酸化マグネシウムです。金属マグネシウムの微粉末を水と反応すると水素が発生する。この水素を燃焼することにより燃料として使えます。酸化マグネシウムを太陽光レーザーを使って金属マグネシウムに精錬する技術が開発され、にわかに期待が集まっています。

高知県は、産業が乏しく県民所得も全国で最も低いグループに属しています。しかし、目の前に豊富な海洋資源が眠っています。特に高知県沖の南海トラフは、メタンハイドレードの埋蔵域の中心に位置し、開発が進めば世界一のエネルギー生産基地になる可能性を持っています。
おまけに、森林資源や太陽光も豊富です。現在の中東のようなエネルギーのイニシアチブをとるのも、やり方によっては夢ではなくなります。

エネルギー確保は国家の生命線であり、バラマキ予算で国民のご機嫌をとるのもいいが、30年〜50年先の将来を見据えた技術開発に、国の予算をつぎ込んでもらいたいものです。

2010年4月28日水曜日

技術者の国際化

日本の建設技術者や労働安全コンサルタントは、海外市場で本当に戦っていけるのだろうか?

かつてイラク・イラン戦争やイラン革命以前のオイルマネー特需による開発プロジェクトに多くの日本の建設会社が中東に進出して大損害を蒙ったケースが目立った。そして、現在も多くの日本の会社が海外に進出しているが、各地で苦戦を強いられている。その原因は、リーマンショックに代表される米国金融危機などの影響が大きいが、根本原因の根は深く、日本の建設会社は海外で堂々と戦っていく実力があるのかと疑わざる得ない問題を多く抱えています。

製造業は、当初国内市場が小さかったために、会社の生き残りをかけていち早く海外市場に進出し、海外市場で高い評価が得られるようになりました。海外の市場を調査し、海外スペックを取り入れ、契約社会にも順応していったからこそ、海外メーカーと互角に戦えたのだと思います。製造業でも国内市場が大きく、国内のメーカー同士で競争している業界、例えば携帯電話やパソコンメーカーなどは、国内市場に甘んじていたために、もはや海外で戦える力を備えていません。

同じように建設業も、国内市場で政府と建設会社の蜜月な関係を築き、政府主導の公共事業のパイを分け合って成長してきた。そこには、国際的な契約社会では考えられないような阿吽の呼吸が存在し、海外市場に本格的に取り組むことはなかった。
一方、欧州は近年に経済体制が劇的に変化した。EU諸国は、国境が取り払われ自由に経済活動ができるようになるとともに、政府は公共事業の執行に際しても自国以外の企業に開放した。そのため、建設会社も自国以外で活動することができるように体質を変えていった。隣の韓国は、自国の市場が小さいために活動の範囲を海外に置くようになり、今では日本を凌いでいる。

まず、日本の建設会社のハンディキャップとしてあげられるのが英語力です。しかし、これはコミュニケーションの一つの手段であり、お互いに理解し合う意思があればなんとか克服できます。しかし、日本語文書を英語に訳したりする手間は、余分な労力を強いられハンディには違いありません。

しかし、技術者として専門技術力がないと発注者やレジデント・エンジニアやセーフティ・エンジニアと対等に議論することができません。日本人技術者は大学卒業以来、技術力を切磋琢磨することよりも段取り師として下請けのケツを追い回すことに力を入れて会社で過ごしてきた。その結果専門的知識どころか基礎知識も保持していない技術者が多くなった。工事を下請けに外注することにより、技術者の「技術の空洞化」とが進んでいます。

さらに、日本の公共事業が契約に忠実に行われることがなく、契約とは関係なく受注業者無理を強いるような、国際契約約款とは程遠い環境に慣らされてきた。このような習慣が染み付いた技術者が欧米の契約社会になかなか追従することができないでいる。

日本人建設技術者は、特に安全衛生(OH&S)、環境(E)、品質(QC)、契約管理(QS)が苦手である。労働安全コンサルタントは、欧米のセーフティ・エンジニアと遜色ない安全衛生の知識を持っているがシステマチックなマネジメント力や契約に基づいた安全管理、レターのやり取りなどに慣れていないため、なかなかリーダーシップをとることができない。

日本の労働安全衛生コンサルタントを欧米と対等に渡り合えるように、国際水準の安全管理を目指して全世界に情報は発信をしていきたい。そのためにはCPDを活用した資格登録の更新制や海外諸国の資格との相互承認が必要であろう。

2010年4月21日水曜日

安全を最優先する航空業界

アイスランドのエイヤフィヤットラヨークトル火山が噴火して、欧州の航空管制機関ユーロコントロールによる航空制限で各国の空港に混乱が生じています。

その原因は、火山の噴火により火山灰が航空機の飛行ルートである高層まで達し、危険性が生じているからです。その危険性とは、火山灰が機体に高速でぶつかり、ちょうどサンドブラストのような状態で操縦席の窓ガラスをすりガラスのように磨耗してしまうこと、さらに最も危険な要素として、火山灰がジェットエンジンの中に吸い込まれ、中で熔けて排気口で冷却され付着し、排気口が塞がれて出力を低下させる恐れがあるからです。また、航空機の速度を計測するピトー管に火山灰が詰まって計測不能に陥る恐れも指摘されています。電磁波が生じて無線も通じにくくなります。

過去に火山灰によるインシデントも発生しています。1982年6月24日、マレーシアのクアラルンプールから
オーストラリアのパースに向かっていた英国航空9便のボーイング747-200は、
乗客247名乗員16名を乗せ、インドネシア・スマトラ島の南を巡航中、ジャワ島西部のグヌングン火山噴火の際に撒き散らされた火山灰により、高度11470mで
4基のエンジンが停止するという事態に見舞われた。同機は機長の冷静な判断により危機一髪でエンジンの再始動に成功し、ジャカルタ空港に緊急着陸した。

日本でも大規模噴火が懸念されている火山があり、航空機のトラブルが起こる可能性があります。気象庁によると関東の浅間山、鹿児島・桜島、口永量良部島が噴火警戒レベル3です。レベル3は、大きな噴火が発生する一ランクした下のレベルです。浅間山が大規模噴火すると、航空機の安全を確保するため、関東地区の空港は閉鎖され、日本経済に与えるインパクトは計り知れないものがあります。桜島が大噴火を起こすと関東以西は完全にマヒします。

今回の措置は、過去のインシデントを活かした判断で、止む得ない措置と思います。しっかりした安全確保に対する思想がないと、これほどまでの経済損失を被ってまで安全確保を優先することは出来ません。安全確保には一本筋が通ったポリシーが必要なのでしょう。

2010年4月14日水曜日

安全施工サイクルの工夫

安全施工サイクルは日本が誇るすばらしい安全管理手法です。

安全管理を施工管理とは別個のものとせず、施工管理の中で協力会社と一体となって安全管理を一日、週間及び月間のサイクルとして活動するものです。

1日のサイクルとしては、始業前の体操から始まり、安全朝礼、ツールボックスミーティング(TBM)、危険予知活動(KYK)、始業点検で作業が始まり、作業と途中の安全巡視、安全打合せで午前中の実績報告と反省及び翌日の予定と安全指示事項の確認、再び安全巡視、後片付け、就労確認、終了報告で終わり、翌日も同じことを繰り返します。

ただ、それぞれの目的を理解せずに行っているとマンネリ化に陥ります。朝礼やTBMでは元請けや職長からの一方的な発言に終わり、KYKでは作業員から意見はでず職長が事前にKYボードに記入しておいてそれを復唱するだけに終わってしまいます。また安全巡視とは名ばかりで、不安全設備や不安全行動を見てもその場では何も言わず、朝礼の場で突然発言するような対話がないことが多いようです。

海外の現場でも同じようなサイクルがあります。日本的な学校教育を思い起こすような一斉に整列してのラジオ体操や朝礼は少ないですが、まずTBMまたはSTARRT(Safety
Task Analysis and Risk Reduction Talk)ミーティングとJSA(Job Safety
Analysis)あるいはJHA(Job Hazard Analysis)を行います。
STARRTは、当該工事に該当するリスクや対応すべき事項をチェックリスト形式で、作業員に対し問いかけながら確認していくものです。
JSAは、簡単な作業手順とそれに対して予め行われているリスクアセスメントから危険性・有害性を抽出して確認するものです。
これらは、KYKに良く似ていますが、KYKは作業員から発言が出てこないことが多いのに対し、こちらは対話形式で行います。
作業中は幹部やSafety OfficerによるSafety Walk ThroughまたはSafety Walk
Aroundを行い、その場で是正指示をしていきます。
作業打合せにおいても安全指示を行なうのは日本と同じです。

どのような方法であれ、その手法を理解していないと形骸化してしまい、時間の浪費です。安全施工サイクルも形にとらわれるのではなく、本来の目的を理解したうえでその現場に合ったやり方で工夫する必要があります。

これからの安全は、「規則を何が何でも守らせる」という押し付けでなく、自分たちで「何が危ないか見つけて対策を立てさせる」方向でコミュニケーションを深めることではないでしょうか。

2010年4月11日日曜日

高尾の森植樹祭

我々の会社の仲間6人で、日本山岳会が主催する「高尾の森植樹祭」に参加した。
約700人に近い人が参加し盛況であった。


高尾山は我々のホームゲレンデでもあり、荒廃した森林の再生する活動に賛同し協力することにした。


English version are here.


植林作業にあたり、安全のためヘルメットと手袋の着用が徹底される
現場に行くにも、とにかく長い列だ

植樹する木は、広葉樹だ
カツラ、トチノキ、ムクノキなど、29種、1600本

植える場所はすごい傾斜地で、作業に苦労する

降りるのも危険だ

ちょうど目の前に、いつもの景信山が見える
いつもはあの上で酒を飲んでいる
でも今日は労働だ

English versuion are here.

2010年4月7日水曜日

神奈川県の受動喫煙防止条例

全国初の試みとして、神奈川県で受動喫煙防止条例が4月1日より施行された。

まずは第一歩として評価できますが、まだ既得権益者の保護が現れており、労働者の安全確保という面からはきわめて中途半端といわざる得ない。依然、喫煙可能な箇所が条件付で認められており、その中に入室する職員や従業員は、受動喫煙にさらされてしまうことが避けられない。

神奈川県の条例は、以下のとおりです。
1.禁煙の施設(第一種施設) :学校や病院、福祉施設、映画館・劇場、金融機関、百貨店、公官庁など公共性の高い施設。煙が外に流れない喫煙所を設けることができる。
 禁止区域でたばこを吸うと2万円以下の罰金、禁煙の対策を取らない施設の管理者には5万円以下の過料

2.禁煙か完全分煙を選べる施設(第2種施設)
:大規模な宿泊施設(延べ床面積700平方メートル超)や飲食店(100平方メートル超)、カラオケボックスをはじめとする娯楽施設。座席を単純に分けるだけでは不十分。煙が禁煙区域に流れないような仕切や空調を工夫しないといけない。
 禁煙か分煙の対策を取らない施設の管理者には5万円以下の過料

3.規制が「努力義務」の施設 :小規模な宿泊施設(700平方メートル以下)や飲食店(100平方メートル以下)、パチンコ店やマージャン店などの風営法の対象施設。

実際には、違反者には個人2千円、管理者には2万円が徴収されます。(朝日新聞の記事より)

厚生労働省の基本的な方向性は、今のところ「受動喫煙による健康への影響は明確であることから、多数の者が利用する公共的空間については原則として全面禁煙であるべきである。」という程度にとどまっています。しかし、従業員の受動喫煙防止のため、一般的なオフィスの禁煙化の義務付けは労働安全衛生法を改正して推進されるそうですが、飲食店・宿泊施設のような商業施設の禁煙化については利害調整が難しそうです。

一方、たばこを吸えなくなった人は野外でたばこを吸い、側溝にポイ捨てをするようになります。この行為は環境への影響がきわめて深刻です。吸殻が雨水とともに海に流れ、海洋生物や鳥が摂取して死に至る被害が増えています。海岸清掃を行っていて最も多いのが吸殻です。
まず最初に屋外での喫煙について、条件を設けて罰則を設けるべきです。
シンガポールでは、禁煙区域でのたばこの喫煙や投げ捨てはS$1000以下(約7万円)の罰金です。

受動喫煙防止は、労働者保護のために公共施設や商業施設での全面禁煙を実施し、環境保全のために路上喫煙禁止及び吸殻の投げ捨て禁止を同時に行うべきです。

2010年4月4日日曜日

池上本門寺の春詣

4月は花祭り、お釈迦様の生誕を祝う祭りです。

東京大田区の池上本門寺では、「春詣」と称して参拝者を迎えていた。
池上本門寺は、日蓮聖人が1282年10月13日に61歳で入滅された霊場です。

境内の桜は満開で多くの人が桜を見ながらお酒を飲んで花祭りを楽しんでいました。

東京は平坦なところと思っていたが大間違い
池上本門寺は一つの小山がお寺になっていました

大きなお堂です。
人によって祈願することは違います。
しかし、これは神頼みではなく、自分に誓うことでしょう。そうすることに、仏様もバックアップしてくれるものと思います。
努力しないことには、誰も味方しないでしょう。

般若心経 南無大師遍照金剛
為無事故無災害
(日蓮宗徒ではなくてすみません)

五重塔は開帳され、お釈迦様の誕生を祝う大法要が行われていました。
満開の桜の中で、まさに花祭りです。

2010年3月31日水曜日

労働安全衛生コンサルタントの合格発表

3月24日に、労働安全衛生コンサルタント試験の合格者が発表されました。

合格された方々は、毎日の勉強と安全衛生の指導が、合格に結びついたとものと思います。

次は登録手続きがあります。
労働安全コンサルタントは、技術士と同様に登録しないとコンサルタントの名称を使用することはできません。
まず最初に、日本労働安全衛生コンサルタント会のホームページの「労働安全衛生コンサルタントの登録」の項目に従って登録手続きを行ってください。ただし、企業に勤めている人は、企業内コンサルタントになります。事務所の場所は会社の所在地、事務所名は会社名にするか、または自宅を事務所にすればよいです。現在コンサルタントの多くが企業内コンサルタントなので特に問題ありません。
企業にいながら更に勉強して独立するのも一つの方法です。

日本労働安全衛生コンサルタント会への入会は、弁護士や医師のように義務づけられていません。だけど入会することを勧めます。
コンサルタント登録と日本労働安全衛生コンサルタント会への入会は、まったく別の手続きです。入会する場合は、新たにコンサルタント会へ入会手続きをしなければなりません。
労働安全コンサルタントは名刺に資格名称を印刷するだけでは何の意味もありません。医師と同じように労働者の命を預かるエンジニアです。日本労働安全衛生コンサルタント会へ入会し経験を積むとともに自己研鑽し、コンサルタントの社会的地位を高める必要があります。また、退職後独立するのであれば今のうちから入会しておいたほうが得策です。

特に地方では組織が小さいのでいろんなことに参加する機会が多く、他業種の安全衛生担当者と交流することができたいへん有益です。少々会費は高いですが、自分への投資と思って入会することをお勧めします。

入会したら、登録時研修を必ず受けてください。それと大阪と東京で開催される安全研修は業務にも有益です。労働安全コンサルタントも国際に認証されうる資格を目指してCPDを行っています。規定CPD単位を修得するとCSP労働安全コンサルタント(Certified Safety Professional Consultant)の称号が与えられます。これはアメリカなどの資格を意識したものです。

わたしは、アメリカの安全技術者協会(American Society of Safety Engineer)にも入会しました。色んな文化の安全衛生の考え方に接すると、今まで行っていたことが単なる基準屋に過ぎなかったことを感じます。型にはまった安全管理ばかりでなく、異業種の人と交流すると自らの業務の改善にも役立ちます。

試験の合格は、セーフティー・エンジニアーとして出発点にたったに過ぎません。
今回の合格者のこれからの発展と活躍を応援します。

2010年3月24日水曜日

テネリフェの悲劇

テネリフェの大惨事とは、ヒューマンファクターが連続して同時に現れ、その連鎖を最後まで断ち切ることができず、航空機のクルーたちの心理状態が悪化していって航空機史上最悪の大惨事となったものです。ヒューマンファクターの研修で必ず取り上げられる内容です。

「機長の真実 〜墜落の責任はどこにあるのか〜」(著者:デービッド・ビーティ、訳者:小西 進)でヒューマンファクターについて詳しく説明されています。
以下に内容を抜粋します。

  1977年3月27日、スペイン領グラン・カナリア島、ラス・パルマス空港乗客ターミナルで爆弾が爆発した。二つ目の爆破予告も受けていた。空港は直ちに閉鎖されたため、このとき、ラス・パルマスに向かっていたる航空機のなかにロサンゼルスからのパンアメリカン航空1736便とアムステルダムからのKLMオランダ航空4805便のボーイング747型機がいた。

  KLM4805便は13時38分、テネリフェの滑走路に着陸したが、空港は臨時着陸の飛行機でいっぱいになりはじめていた。天候は良好だった。その37分後にパンナム機が着陸したが、エプロンはすでにふさがっており、何機かは誘導路上に駐機していた。KLM4805便は滑走路の先端付近に駐機しており、その後ろにボーイング737、727、C8がいた。パンナム機はその後ろに駐機した。
すでにフラストレーションと疲労が重なっていた。時間に迫られ、早く出発したいという願いから、KLM機長は最初、乗客を機内にとどめていたが、その後乗客を降ろした。パンナム機長のほうは乗客を機内にとどめたままだった。

  ラス・パルマス空港が再開され、管制機関がパンナム機に出発許可を出したとき、クルーは滑走路に向かう通り道が、KLMジャンボ機にふさがれているのに気がついた。それ以上時間を無駄にしたくないので、副操縦士と航空機関士が飛行機を降り、KLMジャンボ機と他の飛行機の間隔距離を測りに行ったが、安全にすり抜けるのは無理だと認めざる得なかった。

  KLM機の乗客がターミナルからバスで戻りはじめたが時間がかかり、1時間後、KLM機が管制塔を呼び出し、出発予定時刻の確認と燃料を追加した。ラス・パルマス空港で燃料補給をせず、アムステルダムに折り返す時間を節約しようとした。

  KLM機はようやくエンジン始動の許可を取り、そして滑走路へ移動を開始した。やっと動きがとれるようになり、パンナム機もあとにつづいた。天候は悪化し、深い霧に覆われた。KLM機は滑走路を逆走する許可を求め、管制官もそれを認め、三つ目の誘導路で滑走路を開けるように指示した。副操縦士は聞き間違えて「最初の誘導路」と復唱してしまったが、管制官が指示を変更した。KLM機は滑走路を先端まで逆走し、先端で、180度旋回して機種を離陸方向に向けることになった。副操縦士は管制指示を復唱したが、機長は視界が悪く地上移動に集中するあまり、無線のやりとりはほとんど聞いていなかった。

  一方、パンナム機も同じ滑走路を逆走し、三つ目の誘導路で滑走路を出るように指示を受けていた。両機とも管制官の強烈なスペイン語なまりの英語の指示に手こずっていた。パンナム機は霧と疲れから3番目の誘導路を行き過ぎてしまった。

  KLM機は首席教官である機長と95時間しか飛行経験がない副操縦士の組み合わせであり、副操縦士は機長に対しものを申す環境ではなかった。機長が180度旋回の操作を完了したとき、副操縦士は航空路管制承認を取ろうとしているところであった。それにもかかわらず、機長はスロットルを開きはじめた。副操縦士がちょっと待つように機長に言ったが早く飛び立つことに気持ちが集中していた。依然視界が不良でパンナム機が見えない。副操縦士が管制承認を復唱途中で、機長は離陸を開始した。

  管制官が、「オーケー...(1秒間の沈黙)...離陸は待機されたい。後ほど指示する」と指示したが、その沈黙の瞬間、パンナム機が自分の所在を明らかにしようと割って入った。しかし、無線は混信してキーという雑音となってしまった。
管制官がパンナム機に「滑走路を明け渡したとき通報するように」というやり取りをしているのをKLM機の航空機関士が聞いて機長に疑問を投げかけたが、機長の思い込みに打ち消されてしまった。

  その後、KLM機は離陸決定速度に達し離陸したが、目の前に現れたパンナム機の後部胴体の上を滑って破壊し、150M先に落ち、爆発炎上した。KLM機は248名全員が死亡し、パンナム機は335名が死亡した。

  その後の調査で事故原因はヒューマンファクターに絞り込まれた。そのうち特定されたものは、疲労、重責、強迫観念、フラストレーション、時間の制約、操縦室内での権威、乗客を喜ばせたいという願望などがあげられた。
時間的予測ができないという要因、事態の展開が不確実という要因が加わり、そしてその他複数のヒューマンファクターが複合的に絡み合い、そのエラーチェーンを断ち切ることができなかったことが悲劇につながった。

  ヒューマンファクターを本人の問題で片付けては何の解決にもならない。エラーチェーンを断ち切るための設備や業務要領の改善が必要になるでしょう。

2010年3月17日水曜日

技術者の自己研鑽

先週、技術士会主催のCPDに関するセミナーがあった。

CPDを如何に発展し有効あるものにするかと、いわゆる「実質化」がテーマであった。現状はどうかというと、国土交通省の技術評価制度への加点のためのCPDポイント獲得という流れと、技術者が本来の自己研鑽のために行うCPDとがあり、前者は技術レベルは非常に低いが多くの参加者がいる。しかし、後者の技術者本来の自己研鑽は技術レベルが高いが参加者がまだかなり低い。資格を取得した以後、何もしていない一般の技術者がほとんどを占めると思われます。

なぜそうなるのか。
まずあげられるのが、日本の資格は永久資格で更新の必要がないものが多いことです。このことが欧米から同等資格としてお互いに承認できない原因になっています。
そこで日本技術士会や日本労働安全衛生コンサルタント会は、継続研鑽(CPD)制度を導入しているわけですが、更新制というハードルがないために、多くの技術者が理解を示さないのが現状です。言い換えれば国土交通省の総合評価の対象者でなく、資格の更新制度がなければ、何も苦労して自腹を切ってまで講習会などいく必要がないということです。CPDを行わなくても実害がないと思うのが本音でしょう。

今、技術者の技術力の低下が懸念されています。今後国内の社会基盤整備のための投資がさらに減少し、技術者の活躍の場が狭くなってきます。質の高い技術者しか残っていけなくなります。また海外に出て業務をする機会も増えてきますが、技術者として胸を張って出て行けるでしょうか。

今の現状の技術力では、欧米の技術者と対等に勝負できません。

この現状を打破するには、技術士や労働安全衛生コンサルタントの資格登録の更新制へ移行し、再登録審査にCPDを活用し、実質的に技術者の室を高めることです。そのためには組織を充実させる必要があり、弁護士や医師制度のように、全員が協会に所属し、社会の認知を高める必要があります。そして米国のPEやSafety Engineer協会、英国のCEなどと連携を図り、全世界で認められる資格にするべきです。

技術者が技術の勉強を行わなくなったら、もう技術者ではありません。

2010年3月10日水曜日

感染症の脅威

世界経済がグローバル化し、人と物が瞬時に行き交うようになると、人類に影響を及ぼす感染症が瞬く間に世界中に広がる危険性があります。

したがって、アフリカの遠い国で流行している出来事と傍観していると、いつの間にか我々の足元に迫ってくるかもししれません。
そのなかでもウイルスの脅威は深刻で、まだ治療法が確立していないものもあります。

代表的なものは、
1.エボラ出血熱 :フィロウイルス科エボラウイルスによる感染症。自然宿主は不明で、ザイール、スーダンで流行し、致死率は50〜89%

2.マールブルグ病 :同じくフィロウイルス科のマールブルグウイルスによる感染症。アンゴラ、コンゴ、ケニア、ジンバブエで流行。

3.ラッサ熱 :アレナウイルス科ラッサウイルスによる感染症。西アフリカに生息するマストミスが自然宿主で、西アフリカで流行している。潜伏期間は5〜21日で致死率は感染者の1-2%。

4.クリミア・コンゴ出血熱 :ブニヤウイルス科ナイロウイルス属に属するクリミア・コンゴウイルスによる感染症。
これらは厚生労働省の第1類感染症に分類されており、対処療法以外に今のところ治療法が確立されていません。

そのほかにも依然恐ろしい感染症があります。
5.狂犬病 :ラブドウイルスによる感染症で、多くの哺乳動物が自然宿主になっています。依然、世界中に広がっていて、動物に咬まれ発症した場合、致死率は100%といわれています。世界で年間5万5千人の人が死亡しています。しかし、咬まれた直後にワクチンを投与すると回復する可能性が高くなります。
東南アジアで野犬を多く見かけますが、絶対に近寄ってはいけません。

6.インフルエザ:インフルエンザウイルスはカモからいろんな動物に媒介されたといわれており、カモの体内には全ての型のウイルスが発見されています。インフルエンザは風邪と似た症状ですが、新たな新型インフルエンザウイルスが出現し、突然重篤な症状を示し、人類にとって危険なウイルスです。
今回のインフルエンザウイルスA/H1N1/Pandemic2009は、感染力は強いですが病原性が季節性インフルエンザと同程度であったため、人類に取って深刻な問題にまで発展しいと思われがちです。

今一番危惧されているのが、高病原性の鳥のインフルエンザウイルスの変異による人から人への感染です。
鳥にしか発症しなかったインフルエンザウイルスが変異して人へ感染する過程は次のように考えられています。
インフルエンザウイルスを腸管内に保有したカモが中国南部に飛来し、そこでウイルスを含んだ糞を排泄します。
   ↓↓↓
豚は、鳥のインフルエンザウイルスと人のインフルエンザウイルスの両方に感染します。
インフルエンザウイルスは8本のRNAを持っており、同じ豚の体内に2種類のインフルエンザウイルスが感染することになり、これら2つのウィルス間でRNAの組換えが起こり、人に容易に感染する新しいタイプのウイルスが誕生します。
   ↓↓↓
新型のインフルエンザウイルスが人へ感染します。これまでに以下のヒトの鳥インフルエンザ感染事例が確認されており、次の段階のヒトからヒトの感染が危惧されています。

私も先週、インフルエンザウイルスA/H1N1/Pandemic2009のワクチンを接種しました。まだ遅くはありません。少しでも基礎免疫を高める方が良いと思われます。

2010年3月3日水曜日

リスクアセスメントとKYの違い

建災防はKY(危険予知)活動にリスクアセスメントの手法を取り入れています。

では、KYはリスクアセスメントの一種などでしょうか。
どちらも事前に危険を洗い出して対策をとろうとする安全活動です。そのなかで、リスクアセスメントは労働安全衛生法で事業者が実施することと定められていますが、KYは労働安全衛生法に定められてなく、あくまで自主的な活動です。

リスクアセスメントの目的は、工事着手前にある程度時間をかけて危険性及び有害性を徹底的に洗い出してリスク低減対策を作業手順に反映させることです。それに対してKYは今からすぐ始まる作業や行動途中にその作業の中でどんな危険があるか特に重要なものを取り上げ直ぐに対策を立て実行することにあります。したがって、リスクアセスメントのように徹底的に危険性及び有害性を洗い出して対策を立てる時間的余裕はありません。どちらも重要な活動ですがリスクアセスメントとは手法が別物と考えるべきです。

KYはJAFの雑誌に毎回取り上げられています。たとえば自動車を運転している途中で信号にさしかかり歩行者がヨロヨロと歩いている。それに対して車道に飛び出すかもしれないから徐行しよう、今日は長距離を走るので眠くなるかもしれないので、早めに休憩を取るようにしよう、差し迫った危険性を考えるもので、リスクアセスメントのようにあれやこれや洗い出してリスクの見積もりをしている時間はありません。経験的にこの作業ではこういう危険があるということが判らなければなりません。その手助けとなるものがリスク評価表です。KYで危険性を発表するときに、前もってこの作業のために行ったリスクアセスメントを利用すべきです。せっかくリスクアセスメントを行っていてもKYや作業打ち合わせに利用されていないのが現状です。

KYにリスクアセスメントの見積もり手法を導入するのは良いと思いますが、逆にリスクアセスメントをKYのように簡単に終わらせては行けません。いろんな人の経験より危険性と有害性を徹底的に洗い出すことが最も重要です。リスクの見積もりは最も重要な要素ではありません。メンバー全体の経験レベルの違いにより見積もりも大きく変わります。ただし、見積もりは時間が解決することですが、洗い出しを十分行っていないと見積もりの意味がなくなってしまいます。

リスクアセスメントの普及はまだこれからです。

2010年2月28日日曜日

チリ地震による津波

昨日、チリ中部コンセプシオンの北東90kmでマグニチュード8.8の地震が発生し、首都サンチアゴでも甚大な被害が発生しました。

この地震に伴い津波が発生し、ハワイにある米国太平洋津波情報センターは太平洋沿岸一帯に津波警報を出しました。
気象庁も青森、岩手、宮城の太平洋沿岸に大津波警報、それ以外の太平洋沿岸に津波警報、津波注意報を発令しました。そして15時に岩手県久慈港で1.2mの津波を観測しましたが、事前に避難勧告などが出されていたため、人的被害はまだ報道されていません。

50年前の1960年のチリ地震では東北の太平洋沿岸に甚大な被害が出ました。しかし、50年前と今回とでは状況が大きく違います。それは情報量の差です。地震と津波の解析が進んで瞬時に各国に伝わることと、インターネットの普及により個人ベースで情報がリアルタイムに伝わることです。今回も地震発生からTwitterで世界各地からリアルタイムに伝わってきます。日本の公的機関の発表は常に遅れがちですが、現地の生の情報がTwitterならどんどん入ってきます。欧米の公的機関は最近、Twitterを情報提供の手段として積極的に利用していますが、日本は情報のスピードからいってもとにかく遅れています。結果、警報を安全側に出す傾向にあります。

国内は幸い人的被害が少なく済みましたが、チリは依然大変な状況にあると思います。政府の初動はいつも遅いですが、とにかく一日でも早く人と物資を派遣して災害復旧の支援をしてもらいたいものです。派遣する人も自衛隊を主体に、民間の建設会社社員や病院の医師、看護士なども加えた混成部隊にすべきと考えます。地方の技術士会では県と災害支援協定を結び災害時には県の活動に協力する体制がとられていましたが、その国際版を創成してはどうかと考えます。

2010年2月24日水曜日

モーメントリミッターの謎

最近、移動式クレーンや杭打杭抜機の転倒事故が多発しています。
一昨日も、長野県駒ヶ根市にある県立病院立替工事で移動式クレーンが前方に転倒し1人死亡、3人重軽傷の災害が発生しています。
移動式クレーン転倒の原因は、定格荷重を超えた過負荷の状態になるか、地耐力がアウトリガーの接地圧に対して過小又は埋設菅を突き破ったりして機体のバランスを崩す、急旋回や埋設物を引き抜くなどしてなど反動が加わり転倒するなどが考えられます。
移動式クレーンには安全装置が装備されており、正しく使えば多くの事故を低減することができます。安全装置には
1)巻過防止装置(オーバーホイスト)
2)過負荷防止装置(モーメントリミット)
3)旋回ロック
4)安全弁
5)フックの外れ止め
などがあります。
このなかで最も転倒防止にかかわる安全装置は、過負荷防止装置です。これは吊上げ実荷重によるモーメント、ブーム自重によるモーメントなどを実際にブームに作用している総合モーメントを検出し、この負荷が記憶されている定格荷重を超えると直ちにブームの伸長、ブーム下げ、ウインチ巻上げなどの危険側への作動が自動停止するほか、または定格荷重を超える前に警報を発するものです。
しかし、過負荷防止装置のスイッチを切って作業するケースが多いようです。元請けから作業限界を超えた指示を強要されたり、オペレーターが定格荷重には多少余裕があるはずだからこのくらいなら大丈夫であろうという安易な気持ちで行う場合があります。その結果が転倒事故になります。長野の事故の正確な原因は分かりませんが、モーメントリミッターが正常に働いていたのかどうか疑問が残るところです。
現場では、過負荷防止装置のスイッチを勝手に切れないように鍵を事務所で預かっておく措置をしていますが、オペレータが機械内部の配線を付け替えたりする悪質な手口も発覚しています。
メーカーはオペレータが過負荷防止装置を切ることができないような移動式クレーンを製造すればいいのですが、いまのところタダノだけしか発売されていません。
また、オペレータが過去に過負荷防止装置を切って無理な作業を行なっていたかどうかも、過負荷防止装置に記憶されており、メーカーのサービスマンに依頼すれば調べることができます。
元請けはオペレータに無理な指示をしてはならないし、オペレータに対し安全指導もしなければならない。そのためには、元請け職員も移動式クレーンの仕組みをよく理解しておく必要があります。

2010年2月20日土曜日

坂東観音霊場第一番札所

鎌倉の二階堂にある杉本寺は、鎌倉最古の寺で天平6年(734年)に行基により建立されたといわれています。
正式名は大蔵山杉本寺で、天台宗の寺院です。御本尊は十一面観音で、坂東三十三箇所観音霊場第一番札所であるとともに鎌倉三十三観音霊場第一番札所でもあります。

由来は、江戸時代中期から末期にかけて観音巡礼が盛んになり、鎌倉を中心に幅広い地域にお寺が点在していましたが、明治維新の廃仏毀釈により一時廃れましたが、大正から昭和の初めに新たに鎌倉三十三観音霊場が設定されました。

昨年の今頃は、四国八十八ヶ所霊場札所のお遍路をしていて、まだ高知あたりのお寺をお参りしていました。杉本寺は観光地化されておらず静かなお寺です。鎌倉観音霊場は鎌倉市内に集まっており、観光地されていない鎌倉を再発見することができ、あわせてお参りすることができるかなと考えています。
長谷寺のように観光バスからオバハンたちがぞろぞろ歩く光景を見ることはありません。
さすがに階段も古そうで苔むしていて通行禁止になっていました。
本堂は茅葺きでなかなか趣があります。 以上、杉本寺

   四国お遍路、最御崎寺にて 2008年2月
昨年の今頃はまだ、阿波の薬王寺から土佐室戸岬の第二十四番札所最御崎寺をお参りしていました。

2010年2月17日水曜日

受動喫煙防止の法制化

いよいよ受動喫煙による健康被害を防止するための法制強化が進められようとしています。

欧州ではすでに公共の場所での喫煙は全面的に禁止されています。いくらパブといえど一切喫煙ができませんが、まだ日本では健康増進法があるものの単なる努力義務のみで強制力がなく、分煙さえ進んでいないのが実情です。

やっと厚生労働省が重い腰を上げ、職場の禁煙のための労働安全衛生法改正案を来年の通常国会に出す方針であることが明らかになりました。

しかし、日本では建物全体を禁煙にするところが少なく、喫煙室を設けて分煙にする譲歩案が濃厚で、空気調和設備を別系統にしないと汚染した空気が漏れることにもなりかねません。また、飲食店や宿泊施設で分煙にした場合は、従業員の受動喫煙によるリスクが残ります。せっかく労働安全衛生法を改正するのであれば、全面禁煙にしないと労働者の健康を守ることになりません。

建物内での喫煙禁止と同時に、路上喫煙禁止を強化しないと歩きながらの喫煙や側溝の「吸い殻入れ化」が進みます。側溝に捨てられた吸い殻は一旦川に流れ、そして海に流れて海洋生物の生存に大きな影響を与えます。先日も湘南海岸で行われた海岸清掃で、吸い殻があまりにも多いのに驚きました。吸い殻のほとんどが海岸で吸った人の吸い殻ではなく、都市の側溝から流れ出た吸い殻ということでした。

プラットホームの全面禁煙化も必要で、どうしても乗車したい位置に喫煙場所があると煙草の煙を避けることができません。「煙草を吸う権利」を主張する人がいますが、多くの人に迷惑がかかるのを無視して自分の欲望を満たそうとしているのに過ぎません。もうそろその日本の社会も喫煙者に対する寛容さを捨てても良いと思います。

日本もいち早く先進国並みに社会の禁煙化を進めるべきです。

2010年2月10日水曜日

自転車運転者の無知

自転車は道路交通法の区分で軽車両に当たります。しかし、あまりにも法律を無視した運転が多いのと、それを容認してきた実態が交通事故の原因にもなっています。

自転車交通は道路交通法や地方自治体の条例で定められていますが、欧米のようにきちんと運用されていません。

代表的な法令遵守事項(カッコ内は罰則)をあげると
1.自転車は車道の左側を走行する (3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金)
  ただし「自転車通行可」の標識のある歩道及び13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者、身体障害者が運転している場合や、交通状況から見てやむ得ない場合だけ通行が認められています。
  したがって、適用外の歩道を走行した場合はこの罰則が適用され、通行可の歩道を走行した場合でも歩行者に迷惑をかけるような通行した場合は、2万円以下の罰金または科料が課せられます。

2.飲酒運転の禁止は自転車にも適用 (5年以下の懲役または100万円以下の罰金(酒酔い運転の場合))
  自転車の飲酒運転では、溝に転落する事故が多いです。私も経験があり、その時めがねを 壊してしまい高い酒代になってしまいました。

3.二人乗り運転の禁止 (2万円以下の罰金または科料)
  ただし、6歳未満の幼児を、幼児用座席に乗せるかひも等で背負った状態で、16歳以上の人が運転する場合は認められています。最近では幼児2人を乗せた3人乗りも車体強度やブレーキ力が十分であれば認められるようになりました。
 しかし、この項目は実態を追認した内容で、本来の安全確保の意味からすれば相反します。

4.夜間の無灯火運転の禁止 (5万円以下の罰金)
  無灯火は非常に多いです。車を運転している時、正面から自転車が現れても急に識別できないことがあり非常に危険です。従来の発電タイプだと体力に負荷がかかり嫌がる人がいます。今ではLEDライトが普及してきたので、負荷がかかりません。ただし盗難には注意した方がよいです。

5.信号無視及び交差点での一時停止違反の禁止 (3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金)
  自転車は歩行者と同じという感覚の人が多く、信号無視は大いに取り締まるべきです。このような違反が当たり前になってしまったのは、大人がきちっとルールを守らないので子どももそれに習う、そしてみんながやっているので何が悪いという開き直りが社会に広がってしまったからです。

日本の都会には自転車専用道路が非常に少ないのも原因の一つです。一方オランダでは自転車で通勤できるぐらい自転車専用道路が発達しています。自転車がこれだけ普及しているので、それなりのルールもあり、当然、自転車は「車両」なので、当然歩道を走ることはできません。「車両通行止」の標識があったら、「自転車を除く」の補助標識がない限り自転車も入ってはいけない。右折する時には右腕を水平に延ばし、左折する時には左手を水平に延ばします。小学校の交通教育では習ったような気がしますが、日本では腕で合図をしている人は見たことありません。

省エネルギー対策として自転車は有効な手段であるため、まず最初に自転車を利用できるような社会資本を整備してもらいたいものです。

2010年2月3日水曜日

TOYOTAのリコール

昔語られた「販売のトヨタ、技術の日産」という言葉を想い浮かばせるニュースが発表されました。

トヨタが昨年末のフロアマットの取り付け不良に続いて、アクセルペダルの不具合によるリコールを発表しました。日本車の品質の高さの代名詞であったトヨタは、やはり販売のトヨタであったのかと思わざる得ません。ABCなど米国の放送局は連日トップニュースで流しています。

ABC World News(1月27日)では、トヨタ車の高速道路での暴走事故が2000件に達し、死者は16名と報じていました。正確な原因についてはトヨタから発表されていませんが、アクセルペダル(ガスペダル)の不具合、フロアマットによる支障、エンジン制御コンピュータの問題などがあがっていて複数の原因によるものと報道されています。リコールは更に追加され、北米、欧州、中国に広がり400万台を超えるそうです。米国運輸省の要求により、トヨタは一時的な販売・生産の停止に及んだと米国では報じられていますが、相変わらず日本では自主的な判断と発表していて、大企業の隠蔽体質が見えます。以前から報告されていたにもかかわらず「構造には問題ない」、「操作上の問題」と簡単に片付けしてまうのはガス瞬間湯沸かし器の問題と何ら変わりません。

16名も死者が出るような自動車を販売するようでは、生産停止を要求されてもおかしくありません。トヨタはものづくりの原点を忘れているかもしれません。リスクは協力会社に押し付けてジャスト・イン・タイムという自分さえよければいいような生産効率ばかり追求し、肝心の安全確保を二の次にしてしまったのでしょう。

これからの市場は、安全・安心と環境がキーワードになります。安全・安心を疎かにする会社は、いくら大企業でも何れ市場から消えざる得ません。生産販売世界第一位を目標にするのではなく、世界一安全な車を安く提供する会社になってもらいたいものです。

日本のもの造りの信用を失墜させてしまったTOYOTAの責任は重大です。

参考意見
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1411178949&owner_id=8083074&mailmagazine=1

2010年1月27日水曜日

温暖化の影響

地球温暖化の防止が叫ばれていますが、人類が増加し、生活を維持させるために経済を拡大させる上で、地球温暖化は完全に止めることができません。むしろ地球温暖化を最低限に食い止めて、いくらか地球温暖化を許容していくしかありません。
文部科学省と気象庁、環境省がまとめた資料(2009年10月9日発表)によると、この100年で1.1度上昇した日本の平均気温は、今世紀末までの100年間で4.0〜2.1度上昇し、高緯度ほどその影響が大きく、世界平均より0.6〜0.3度も上昇幅が大きい。今世紀末に気温が3.2度上昇した場合、洪水や土砂災害、ブナ林や砂浜の喪失、熱中症などによる日本の被害額は年間約17兆円増えると試算しています。
温暖化によって良くなる面もあります。たとえば北極海の石油資源開発、いままで流氷や海氷に阻まれて開発できなかったノルウェー沖やロシア沿岸は新たな石油の採掘が可能になります。またシベリアやカナダにおける農業生産が更に北へ拡大します。北極海航路が年中通行可能になり極東アジアから欧州への物資輸送が短縮できコストも安くなります。
逆に悪影響を及ぼす内容はその何倍も多いです。場所によっては砂漠化が拡大し、一方では洪水による自然災害が増え、食糧生産が減少します。食料不足の深刻さが増し熱帯性の病気が広がり、健康被害が増大します。北極海及び南極大陸の氷塊が解けて海水面が上昇し、高緯度地方では永久凍土層が融解して、多くの土地が水没します。中には水没してしまう国も現れます。日本は食料を輸入に頼っているのでまず食料不足に陥るでしょう。
温暖化によって逆に富む地域ができる反面、貧しくなる地域が多くなります。貧富の格差が更に広がります。貧しい国は益々貧しくなり、環境対策に費用をかける余裕がなくなります。
全世界が共通に温暖化防止に協力しようとしないのは、富の重心が移動し利害関係が生じるためかもしれません。これはある程度仕方のないことで、先進国が発展途上国をカバーするしかありません。

2010年1月23日土曜日

一年の登山の安全を祈願、高尾山薬王院

一年の登山の安全祈願に高尾山薬王院にお参りに行きました。1月は工事安全祈願や家内安全、商売繁盛、大願成就などいろんな願いを込めて祈願に寺院や神社にお参りに行きます。今年は既に奈良・長谷寺、奈良・春日大社、鎌倉・鶴岡八幡宮、横浜・熊野神社、新宿・熊野神社などに祈願をしています。
登山口は石の錫杖が建っています。高尾山は真言宗智山派の大本山であるとともに、密教の行場でもあります。 
道端の菩薩たちも新しい赤い帽子を着せてもらっていました。
薬王院はいつも大勢の人でにぎわっています。
本堂の左右には天狗が建っているのですが、冬の装いで笠をかぶっていました。
お寺ですが注連縄を飾ってありました。神仏習合の名残だと思います。
南無飯縄大権現

2010年1月21日木曜日

クレーンワイヤーロープの終端処理方法



 東南アジア諸国の建設機械のほとんどが日本製や韓国製の中古であり、かなり老朽化しているものを使い続けています。機械の現場持ち込み時、セーフティ・スタッフによる検査を行っていることが多いようですが、セーフティ・スタッフは機械に熟知していないため、見落としが多いです。移動式クレーンには、荷重計やモーメントリミッターがないものまであります。

 補助フックのワイヤーロープの終端処理は、日本の中古車が多いためか、日本のクレーン構造規格に準拠したものが多いですが、この規格はASME(米国機械協会)を代表とする国際標準とは異なっているので注意が必要です。

クレーン構造規格第22条ではコッタ止めの場合は下記のようにしなければならないとされています。ワイヤーロープの終端処理を玉掛ワイヤーロープのクリップ止めの考え方を適用しています。

しかし、ASME B30.26-2004 (Rigging hardware) では、日本のクレーン構造規格のような方法は間違った方法であると示しています。理由は、ウェッジソケットを通したワイヤーロープはクサビに力がかかることによってワイヤーロープが抜けない工になっている。ワイヤーロープの端部側には荷重がかからず、クレーン本体に繋がっているワーヤーロープのみに荷重がかかる。ワイヤーロープは荷重がかかると絞られて細くなりクリップが緩む可能性があること、そして荷重のかかっているワイヤーロープをクリップで固縛すると応力的に弱点になることなどから、ASMEでは荷重のかかるワイヤーロープとワイヤーロープの端部をクリップで止めてはいけないとしています。

考え方の違いであり、どちらもおかしくない内容だと考えますが、それぞれの地域で採用する基準に従えばよいと思います。むしろ、ワイヤーロープの消耗度を確認する方が重要でしょう。中古機械の場合は、クレーンのワイヤーロープがかなり磨り減っていることが多いです。

2010年1月17日日曜日

1.17から15年

阪神淡路大震災から15年過ぎました。

  現在、あのときの経験は活かされているのでしょうか。構造物の耐震設計は見直されましたが、古い建物は依然阪神淡路大震災クラスの地震に未対応のものが多いようです。そのなかでも、避難場所に指定されている学校の耐震補強は依然進んでいません。

  阪神淡路大震災は直下型の地震で激しい縦揺れを引き起こしましたが、今後予想される南海・東南海地震や東海地震は海溝近辺では発生する地震で、地震の揺れによる被害とともに津波の被害も予想されます。太平洋岸では最低でも6m以上、高知県須崎港では12mの津波が押し寄せ、スマトラ島インド洋大津波並みの被害も想定されています。しかし、津波を防ぐ防波堤を作るとなると、万里の長城のようなものを作る必要があり、不可能に近い状況です。東海地区は東海道新幹線や東名高速道路が寸断され、トヨタやスズキ、ヤマハの工場が操業停止になるだけでなく、東西の物流が分断され日本経済そのものがマヒしてしまいます。

  地震に対して少しでも被害を少なくする対策「減災」が必要ですが、災害になった後、いち早く復旧するための対策も必要です。そのためには広域防災基地を設けて即応体制を設ける必要があります。道路が寸断されることを考えると、空と海から対応する体制を整えるのが最も効果的です。関西三空港のあり方が議論されていますが、国内線の主要路線を関西空港に集約し、伊丹空港は小型機による羽田及び福岡シャトル便を維持しつつ、東アジアの防災拠点空港として整備することを提案します。伊丹空港には防災支援センターを設け、普段から各組織の教育訓練を行い、救援物資・食料・生活支援設備の備蓄倉庫、救急救命センターを設けます。災害時には防災支援センターに指揮所を設け、伊丹空港から高知・和歌山・三重沿岸ほか全国の被災地にすばやくヘリコプターを飛ばして救援にあたります。ケガ人は防災センター内の病院に収容します。また、海上からの支援に際しては、ヘリコプター搭載空母をさらに増備し、被災地での活動基地とする必要があります。
これらの防災基地は、日本のみならずインドネシアや南太平洋で災害が発生したときでも即応体制が取れるように活用すべきです。今回のハイチの地震では、日本の初動が遅いと批判されていますが、このような基地と初動体制を整えていれば国際貢献できたはずです。

  予算を削減することは財政を健全化するために重要なことです。しかし、常に自然災害に見舞われる日本にとって、防災対策にある程度予算をとって対応しないと、日本経済が立ち直れない状況に陥る可能性もあります。目先の政権維持を考えるのではなく、未来の日本のためにきっちりと対策をとってもらいたいものです。

関連ホームページ
http://tomstar-korpokkur.blogspot.com/2010/01/hanshinawaji-disaster-in-1995.html

2010年1月12日火曜日

駅プラットホームのリスク

駅のプラットホームには転落防止策がなく転落の危険性が非常に高いですが、現実には転落防止策の設置している駅はごく僅かです。
その結果、酔っぱらって線路に転落したり、突き飛ばされて転落したり、プラットホームを歩行していて電車に接触するなどの災害が絶えません。リスクアセスメントを実施すれば、これほど災害の可能性と危険の重篤度の高いものはありません。しかし、転落防止策はなく、「白線まで下がってください」と構内放送流されるだけです。
なぜ、転落防止策が設置されないのか。
一つには、駅のプラットホームは明らかに危険であることをほとんどの人が理解しているとされているからです。道路の交差点は目の前を車が高速で通過しますが柵はありません。危険性が明確なことと、柵を設けることが費用がかかり過ぎて運用上も現実的でないことです。いわゆる受容可能な危険です。
受容可能な危険は社会の環境や時代によって変化します。以前は受容可能であったものが、人々の価値観の変化により受容可能な範囲も変化します。
現在は、列車本数が増え、ワンマン運転により監視の目が低くなることや、身体障害者にも配慮する必要があります。目の不自由な人にとって点字タイルだけでは十分でありません。また、プラットホームに傾斜があると車椅子の人が転がり落ちて電車にひかれる危険性があります。都会の列車本数の多い駅のプラットホームは受容できない危険になりつつあります。やはり鉄道会社には安全配慮義務が生じると考えるべきです。
プラットホームからの転落に対するリスク低減策としては
(1)プラットホームの転落防止柵の設置
(2)プラットホーム下の待避スペースの確保
(3)非常停止押しボタン又は転落検知マットの整備
(4)旅客に対する注意喚起の徹底等
(5)警備員の増員
などがあります。

東急池上線旗の台駅の転落防止策

東急目黒線元住吉駅の転落防止策
やればできるんですね。


対策をしていないところでは、このような人身事故が後を絶たない。

2010年1月7日木曜日

ディーセントワークと安全文化

「安全文化」という言葉が良く使われるようになりました。

「安全文化」は、チェルノブイリ原子力発電所の事故に対して1986年国際原子力機関IAEAが行なった報告書の中で提唱されています。
それには、「安全文化とは個人の態度を表すものであると同時に、組織的なもの、すなわち機関と個人の双方を含めて、安全問題に関し適切に対処することを求めるもの」であるとしています。

一方、ILOの「労働安全衛生マネジメントシステムに関するマネジメントシステム」ILO-OHS2001において、冒頭挨拶でJuan Somavia事務局長が「労働安全衛生マネジメントシステムが、企業の内外に持続可能な安全文化を構築する際に、またとない強力な手段を提供するものである」述べられています。
Consequently, the Guidelines provide a unique and powerful instrument for the development of a sustainable safety culture within enterprises and beyond.

このなかでさらに重要な言葉が使われています。それは「ディーセントワーク」です。
「ディーセントワーク」は、日本語に適当な訳がなく、ILOの本来の目的は、男女が、自由で、公平で、安全で、人間の尊厳を保つ条件のもとに、良質で生産的な仕事に就く機会を増進することであり、このことをディーセントワークと名付けたとしています。さらに、ディーセントワークは、安全な仕事であり、安全な仕事は、同時に、生産性と経済成長を積極的に促進する要素であるとしています。
Decent work is safe work. And safe work is also a positive factor for productivity and economic growth.

安全目標とそれに対する具体的施策に「安全文化の醸成」という言葉を使うことがありますが、いきなり安全文化を醸成することはできません。まずは、会社のトップがスローガンばかり言いまくるのではなく、自らが率先して地道に安全を全てに優先することを実践することが必要です。「安全文化」を築くには労働安全衛生マネジメントシステムを形だけでなく地道に内容を伴って行っていくことにより、達成できるといえます。

2010年1月3日日曜日

恒例の長谷寺参拝

今年も初詣に奈良県桜井市にある長谷寺に参りました。長谷寺は真言宗豊山派総本山の寺で、西国三十三箇所観音霊場の第八番札所でもあります。御本尊は十一面観音です。平城京遷都1300年祭に合わせ、西国三十三所結縁御開帳として特別に本堂の中に入れていただき、十一面観音(重要文化財)に直接祈願することができました。 

元旦は、拝観料も無料です。
左の本堂に入って直に十一面観音と対面しました。
観音様に安全と健康をお願いしました。
なかなかすばらしい景色です。
門前の食堂で食べるにゅうめんは、体が温まります。

長谷寺について詳しい資料は、長谷寺ホームページ参照