2009年12月29日火曜日

飛行機の爆破未遂

再びアメリカで飛行機の爆破未遂事件が発生しました。

アムステルダム発デトロイト行きのノースウエスト機で、犯人が躰に巻き付けた爆薬を点火しようとしたが発火しただけで爆発に至らずに取り押さえられました。

空港の検査は何処も厳しいはずですが、それでもすり抜けることができるのが現状です。各地の空港を利用して日本の空港は管理が非常に甘いのがよくわかります。手荷物検査や身分確認は日本では一カ所だけです。チェックインを済まして出国審査を受ける前だけです。インドネシアの空港だと、空港の建物に入るのにチケットと身分証明書(またはパスポート)を提示し、荷物の検査をします。チェックインの後出国審査の前にまた同じように検査があります。そして搭乗口はウエイティング・ルームになっていてまた同じ検査があります。ここでは液体もすべて取り上げられます。一旦ウエイティング・ルームに入ってしまうとトランジットエリアに戻ることはできません。シンガポールの空港でも同様にウエイティング・ルームで厳しい検査があります。

検査でペットボトル入りの水を取り上げられるのは非常に辛いです。だけど、水は爆弾の原料にもなります。金属ナトリウムや微粉末アルミニウムは水和反応を起こして爆発します。このような組み合わせは他にも沢山あり、爆発物を作るのは比較的簡単だと思われます。

このような爆弾テロは根本原因を絶たなければ絶対に亡くなりません。アメリカによるアフガニスタン攻撃やユダヤ資本によるパレスチナ攻撃をまず止めなければ、恨みが恨みを生み続けテロはなくなりません。

飛行機に乗るたびに怖い思いをするのは残念です。

関西国際空港にて 

2009年12月26日土曜日

物忘れ・失念による事故

年をとると物忘れが激しくなります。

  しかし、あることに集中していると元のことをすっかり忘れてしまう場合があります。朝雨が打っていて傘をかけて出社したが、昼から晴れて帰るときにはすっかり傘のことを忘れてしまっていることは誰もが経験することです。

  先日、インドネシアのある現場で、場外ヤードからクローラクレーンをトレーラーで現場内に回送しているとき、現場に到着してオペレーターが降ろす準備をするためクローラクレーンの旋回ロックを解除した。しかし、現場内が混雑していて降ろすことができず、すぐに元の場所に戻すように指示された。トレーラーはすぐに方向転換してもと来た道を戻ったが、クレーンオペレーターは旋回ロックを忘れたため、途中のカーブでクレーンが旋回しトレーラの荷台からずれ落ちました。自分の考えていることと違うことを他人から急に言われると、最初に考えていたことを記憶の中から完全に外してしまいます。
典型的なヒューマンファクターの失念による事故(インシデント)です。

  安全管理をする上で、このようなケースは「本人の不注意」のヒューマンエラーで片づけてしまってはいけません。誰もが陥るヒューマンファクターを想定した対策を取る必要があります。戻るように指示した者も無責任にただ戻れというのではなく、その場で再度クレーンをトレーラーで回送する際の確認を自ら行うか、確認するように担当者に指示すべきです。

  対策は、鉄道等で採用されている「指差し確認」やお互いの「声掛け確認」などがありますが、建設工事ではあまり普及していません。出発時に使ったチェックリストを再度確認する習慣をつけ、「指差し確認」で確認を行ってから次の行動に移るのが最も良いと思います。また、指示を出す人も相手の身になって声を掛けることも必要です。思ってもいなかったことを急に指示されると、極度のストレスにもなり脳の反応が途切れてしまいます。

  年をとると自然に物忘れが多くなり、さらに瞬間的なストレスが加わると失念によるヒューマンエラーの確率が高くなります。周りの人たちのコミュニケーションとヒューマンファクターを考慮した安全管理の仕組みを作るしかありません。

2009年12月22日火曜日

安全帯使用の訓練

危険感受性訓練として安全帯の使い方の実地訓練があります。

二丁掛ランヤードは、慣れないとなかなか上手く使えません。慣れるために現場に訓練施設を作り、一人ひとり実際に安全帯を使用するのが効果的です。胸のD環にリクラクティング・ライフライン(セフティブロック)のフックを掛け垂直ラダーを登り、水平ライフラインにランヤードのフックを掛け、リクラクティング・ライフラインのフックを外して、残りのランヤードのフックを水平ライフラインに掛ける。そして水平移動して元に戻る訓練を何回も行います。 我々安全担当者も言うのは簡単ですが、いざ自分が行うとなると、なかなか身体がついてきません。

  今後さらに改造を加え、ロリップを使った昇降や、フルボディ・ハーネスでぶら下がってみる訓練、人形を落としてみるなど行って、危険感受性を高める必要があります。
フルボディ・ハーネスの場合、ランヤードを使わない場合の収納に工夫が要ります。だらんと垂れ下げると足に絡まったり、突起に引っ掛かったりします。実地訓練をすると足に絡みそうになったりする失敗も見受けられます。
広い場所がない場合、入り口に単管パイプを水平に連結して、ランヤードをそこに掛ながら入り口を通過して安全帯に慣れるようにしているところもあります。当たり前のようでも、基礎からもう一度使い方を確認するのは、安全意識を高める上で非常に効果が上がると思います。

2009年12月18日金曜日

現場で窃盗団に出くわしたら

建設現場では、深夜事務所荒らしに会うことがよくあります。しかし、そのとき窃盗犯人と出くわしたらどうすればよいか、危機管理として対策を立てておく必要があります。

最近、ある海外の現場で深夜に鉄筋の盗難がありました。しかし、ちょうどその時職員が現場を巡回していて不審な行動を発見し、注意をしたのですが、逆に窃盗団に殴られて負傷しました。現場の出入り口には守衛がいるのですが、警備員と窃盗団が繋がっていて、堂々とトラックに積み込んで持ち出そうとしたようです。

ここで危機対応として問題なのは、職員が一人で深夜に現場を巡回したこと、職員が正義感で注意したこと、警備員が信用できなかったことがあげられます。命があったことだけでも幸運というしかありません。銃や刀を自由に持ち歩いている国では、まず命を奪われていたと思われます。

対策としては、自分の命を守ることを最優先として、深夜は絶対に一人で行動しないことです。もし襲われそうになったら抵抗しないこと。不審な現場を発見したら、仲間の職員と警備員を呼んで大勢で対応することです。

以前、大手電機メーカーの工場建設現場で、白昼堂々と敷鉄板を盗んで持去る事件が発生しました。大勢の業者が入っていてお互いに隣の業者が何をしているのか把握できない状態であったと思われます。統括管理と業者間の連絡調整がしっかりしておればこのようなことが起きないはずです。

日ごろから、現場内のコミュニケーションを良くすることや、整理整頓、下請会社の教育をしっかりしておくことも、少しでもスキを作らないことにつながります。

2009年12月14日月曜日

発展途上国における中古機械の安全確保

発展途上国では、日本や韓国の中古建設機械が多く使われています。

しかし、クレーンの安全装置がほとんど付いていないか壊れています。
一応現場への持ち込み時には、持ち込み検査をしていますが、現地の安全担当者のチェックは可成り甘いようです。さらに、地元政府機関が行うクレーン検査など、クレーンについてほとんど知識のないものが行うので全く安心できません。その国自体に安全法令が整備されていない、新しい機械を下請けが買う資金的余裕がない、機械自体がない、修理のための部品が手に入らない等、どうしても安全装置のない古い機械を使わざる得ません。

先日見たクローラクレーンは、荷重計がない、過負荷防止装置がない、巻過防止装置がない、警報機がないような状態で、オペレーターがキャタピラの後部が上がるまで大丈夫というような勘で操作していました。このような状態において、何があろうと日本と同じような安全基準を守れと言っても仕事はできません。ある程度彼らの経済状態や機材の調達状態を考慮して、最低限の安全管理をしていかなくてはなりません。

まず、重機の基本性能を点検確認することです。いくらクレーンでもブームが折れそうな状態やメインのワイヤロープが切れそうな状態ではクレーンとしての機能を満足しません。また、車両系建設機械は、ブレーキがきかないと危なくて作業できません。
次に能力を落として作業計画を立てること。例えばクレーンなどは定格荷重を80%以下にして計画するなどの対策が必要です。

次に怖いのは老朽ダンプトラックやトレーラーです。ダンプトラックはあおりを高くして積載量を増やしていますが、車体フレームに亀裂が走り、荷台を上げたとたんにフレームが切断して横転する事故が耐えません。サイドブレーキが利かない車も多く、坂道で暴走したりします。なかなか細かな検査までできず、とにかく車に近づかないように徹底するしかありません。

日本では労働安全衛生法に従って作業をすれば最低限の安全は確保できますが、発展途上国では、守ってくれる法律もなく基本に戻って安全確保を考えていかなければなりません。

2009年12月10日木曜日

Karoshi

Karoshiは、日本語から派生した英単語です。

  なぜならば、「過労死」に対応する英単語が欧米社会には存在しません。しいて直訳すれば"death from overworks"または"work oneself to death"です。欧米社会ではあまりない現象で、日本の状況が特異な目で見られ報道されたため、そのまま"Karoshi"が単語として使われるようになったようです。
仕事のやりすぎで病気になって死ぬなんて、欧米人の人生観ではありえないのです。

  過労死とは、長時間残業や休日出勤などにより過重労働のため、精神的・肉体的な負担の結果、虚血性心疾患や脳血管疾患など致死的職業性疾病が発症したと判断されて労災認定がなされたものをいいます。厚生労働省のマニュアルでは、「過労死とは過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動脈硬化などの基礎疾患が悪化し、脳血管疾患や虚血性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働不能または死に至った状態をいう」と定義されています。最近では過労による自殺も増えています。

  欧米社会は、個人主義が基本であり、技術者もプロフェッショナルとして個人が労働契約を交わし責任と権限を持って活動しています。日本人は、帰属意識と同調性が強く、立場を維持するために必死で働こうとします。それは悪いことではありませんが、身体を壊しては何もなりません。

  日本以外の発展途上国でも過重労働は多く発生し災害や疾病に至る事例が多いと思われますが、日本のように取り上げられることはありません。それだけ日本社会が欧米社会から異常な目で見られているということでしょう。ベトナムやインドネシアの日本の建設会社の工事現場は、欧米人と現地人スタッフが定時に帰り、日本人職員だけが夜遅くまで残って残業をしている光景を良く見かけます。よく働くのは美徳ですが、自分の健康を省みず働きすぎるのも問題です。原因として日本人特有の責任分担と部下のコントロール、契約社会の不慣れ、会話力の低さ、趣味の無さ等が障害になっていると思われます。

 海外の建設プロジェクトで働く場合、日本の労働基準法の対象外となるため、時間制限は自主的に設定するしかありません。月200時間以上の残業が連続するケースもめずらしくなく、言葉のハンディを越えて仕事をこなしつつ、労働時間を短縮するのは並大抵のことではできません。常に思わぬトラブルや労働災害が発生し、日本の会社の今後の大きな課題です。

  Karoshiを商売にする人までがいます。ニンテンドーDSのソフトで「Karoshi Suicide Salaryman」で、サラリーマンが働き続けて最後自殺するパズルゲームです。このようなゲームをなぜ許すのか、この国のやることはよく分かりません。

2009年12月7日月曜日

安全の契り

毎朝、ゲートに立って作業員と挨拶を交わすのが日課になりました。
スラマッ パギー(インドネシア語)、グッド モーニング(英語)、お早う(日本語) と人によって使い分けます。

きっかけは、8月に災害が発生したことです。一日1500人前後の作業員、200人の職員が働く現場ではどうしてもコミュニケーションが悪くなり、安全方針や現場ルール、作業手順などがうまく伝わりません。8月の災害も作業手順が勝手に変わり、それを職員が良く確認していなかったことが起因しています。まず、コミュニケーションを改善することが安全管理業務の改善策として最優先事項でした。
作業員と職員の距離を縮めること、それにはまず、朝の挨拶、そして朝のツール・ボックス・ミーティングへの参加、ホワイトボードを使った目で見て判る説明などを行っています。

朝の挨拶は安全活動の第一歩です。しかし、この挨拶が日本人の若者は苦手なようです。日本でも「声掛け運動」を呼びかけても、なかなか普及しません。それは安全スローガンとして掲げるだけで、作業所長自らが実践しないからです。
挨拶は、職員が作業員から挨拶される前に、先に作業員に声を掛けた方がより効果が高いです。

海外では、声を掛けると握手を求めてくる習慣があります。今では毎朝作業員と握手をしています。握手をすると、やはり気持ちがこもってきて、「今日一日安全に事故を起こさずに終わってくれよ」と心の中で安全の「安全の契り」を結びます。我々は絶対に怪我させずに夕方家に帰してやるぞという気持ちになり、なんとなくその気持ちが作業員にも伝わるのでしょう。

おかげで一時暗いムードになっていた現場が明るくなってきました。また、ヘルメットの前の部分に名前のシールを張っているために、作業員が名前を覚えてくれます。休みの日に村の中を歩いていても多くの人が名前で呼んでくれます。今のところ、不安全行動が相変わらず発生しますが、なんとか災害に至らず踏みとどまっています。

次はコミュニケーションを良くするとともに指導・教育に効果を発揮することでしょうか。

2009年12月3日木曜日

危険感受性向上教育に玉掛実技訓練が有効

現場で室内での安全教育のほかに、野外で実機を使った玉掛の実技教育訓練を行いました。
もちろん、訓練する職員は無資格者ですが当該国にしかるべき資格保有者を配置しての訓練です。
実施したのは、シンガポール、ベトナム、インドネシアの現場で、使用した移動式クレーンはトラッククレーン25t吊り〜クローラクレーン150t吊りです。吊り荷は鋼管500kg、L=3.0mなどです。
ここで共通した現象が現れました。それは、
1)職員がその現場またはその国の玉掛け合図を理解していないこと。
2)玉掛け合図がみんなバラバラであること。
3)玉掛合図者が指示をしないのに勝手に吊り荷に手を出してしまうこと。
4)補助者が勝手にオペレーターに合図を出してしまうこと。
5)退避指示および確認を省略してしまうこと
などがあげられ、なかなか吊り荷の重心にフックをあわせることができず苦心している状態でした。
この現象が人間がつい無意識のうちに行ってしまう減少で、実際の作業においても現れています。
職員が実際に自分が行ってみて、何が危険で、何が問題か実感することが目的で、危険感受性向上教育の一環です。
玉掛でのもう一つの課題は、ワイヤロープの良否を職員が目で見て判断できないことが多いことです。玉掛と台付けの違い、ワーヤロープの廃棄基準、ワイヤロープの選定方法など目で見て教育することが効果的です。
リスクアセスメントを推進しているが、どこも形骸化していて有効に活用されていません。監査のために用意する書類になってしまっていて、せっかく労力が無駄です。原因は作業標準などから抽出して内容も分からないまま書類を作ったり、協力会社が作成した作業手順書をそのままファイルするだけで、何が危険か分かっていないことです。
危険感受性が備わっていないと、本来のリスクアセスメントができるはずがありません。これからは、リスクアセスメントと危険感受性向上の教育を同時に進めていく必要があるでしょう。

2009年11月30日月曜日

立体曼荼羅、ボロブドゥール

休暇を利用してジョグジャカルタ近郊にある世界遺産ボロブドゥールを訪れました。
ボロブドゥールは、寺院であったのか、王家の墓だったのかよくわかっていません。しかし、大乗仏教の大遺跡には違いありません。
ボロブドゥール一帯は史跡公園になっていて緑の中にあるすばらしい環境です。 構造は、下部が基壇と方形の5段、上部は円形の3段からなっており、地下に隠れた旧基壇と地上部の回廊には全部で1,460面もの浮き彫りが施されています。 第1回廊上段「佛伝記」の第13面に描かれている摩耶夫人が夢で白象を見て受胎した絵です。
ボロブドゥールには第1段から第5段に合計432体の仏像が配置されていて、それぞれの方向に印相が異なっています。写真は北向きで、不空成就如来(施無畏印)です。 仏様はすべて外を向いて座ってられますが、「金剛頂経」の金剛界如来の会座によっていると思われています。 私は、その前で般若心経を読経しました。 まさに、ボロブドゥールは立体曼荼羅です。
すぐ近くのムンドゥッ寺院には非常に美しいお姿の如来様と左右に観音菩薩、文殊菩薩様が配置されており、今でもジャワの仏教徒が熱心に読経している姿を見ることができました。

ボロブドゥールについて、さらに詳しい情報は
http://tomstar-mount.blogspot.com/2009/11/borobudur.html

2009年11月25日水曜日

セーフティ・スタッフの身の危険

海外の工事現場では、安全文化の違いから身の危険が生じることがあります。
仕事に熱心なあまり仕事の相手から殺されたらたまりません。

  以前、中部国際空港建設工事に絡み、某スーパーゼネコンの購買担当者が、下請工事の清算を厳しく査定したために、その下請会社の社長があまりにもひどい支払いをしたことに腹を立て、その購買担当者を殺し、その死体が名古屋港に浮かんだ事件がありました。購買担当者は会社の目標利益のため自分の業務を遂行したつもりが恨みを買ったのでしょう。

  海外工事では、安全文化が大きく違い、「安全をすべてに優先させる」の理念にしたがって、日本の労働安全衛生法や米国のOSHAを現地の人たちに何があろうと遵守させようとすると、必ず摩擦が生じます。 インドネシアでよく起こるトラブルは、足場工や鉄筋工にフルボディハーネスを使わせる場合です。彼らは今まで畑で仕事をしていたところ、近くでプロジェクトがあると建設作業員として集まってくるので、フルボディハーネスを着けるということを慣れていません。普段はスリッパで丸太をよじ登って作業しています。なぜ今まで通りやってはいけないのか、という疑問を持って作業しています。
だから、高所においてフルボディハーネスの使用をあまり強くし指導すると、場合によっては鉄筋棒を持って殴りかかろうとします。取っ組み合いのけんかになることもしばしばあります。
鉄筋出荷の鉄のプレートも剃刀代わりの凶器になります。バイオレ-ション(暴行)も現場におけるリスクであり、命あってのSafety Managerです。

  これは、安全文化の違いから起こる問題です。明らかに安全文化の違いがある場合、どちらかの安全文化に合わせた指導を行うのは間違いです。リスク低減対策遂行の厳しさと場合によっては安全ルールに対する寛容さが必要です。 また、安全文化のギャップを埋めるのはコミュニケーションしかありません。コミュニケーションなしになぜやらないんだ、ボーっと突っ立っているだけで何しているのだと言って怒鳴っても何の解決策にもなりません。フラストレーションが増すばかりです。

  それには日ごろから「声掛け」を通してコミュニケーションを図り、時間を掛けて、「やって見せ、言って聞かせて、ほめてやらねば人は動かず」(山本五十六)を繰り返すしかありません。それでもどうしても言うことを聞かなかったら、さらにごり押しするのではなく、身の危険を考えて一旦引き下がり、お互いに妥協できるラインを探るべきです。

いくら正しいと思うことでも、自分の命を失ってまで押し通すのは、もともこうもありません。

2009年11月21日土曜日

山で野生動物と遭遇したら

先日、乗鞍岳駐車場内で熊に教われる災害が発生しました。

乗鞍岳には2005年夏に名鉄バス日帰りツアーで登りました。バスが沢山並んで大勢の人で賑わっていた所でした。
本州に生息するのはツキノワグマ、北海道には一回り大きいヒグマです。大雪山や羅臼岳などではヒグマの被害も多発しています。
登山中に熊に出くわしたらどうしたらよいか、その場に遭遇したら誰もが冷静に行動できないと思います。色んな文献で対処法を調べてみると、まず絶対に走って逃げてはいけないそうです。熊は好奇心が旺盛で逃げたら追いかけてきます。熊は走るのが早く。100mを7秒台で走るそうです。また、大声を出すと驚いて向かってくるそうです。昔から言われている「死んだふり」はかえって興味を持つので絶対にしてはならないそうです。対処方法は、第一に熊が人間に興味を持たないように、ゆっくりと熊から離れることが一番だそうです。そして第二に大きな声を出さない。写真撮影をしない。特にストロボの光は刺激を与えます。第三に走って逃げないことです。第四に小熊を見かけたらすみやかにその場から遠ざかることです。

次に山でよく出くわすのがイノシシです。イノシシは子育て時期が一番危険で、ウリンボウを可愛いからといって手を出すと、親が突進してきます。牙もあるから非常に危険です。イノシシも相手にしなければ全くおとなしい者です。六甲山のロックガーデンには一日中イノシシの家族が群れをなしています。でも手を出さない限り非常におとなしいです。

サルは人間に近い野生動物ですが、種が近いがために目と目を合わせるとプライドを傷つけられたと思って歯を剥いて威嚇してきます。食べ物を見せたら飛びかかってきます。近年山の開発が進み、餌を十分に確保できず里山に降りて餌の確保に必死になっているようです。サルの悪業に対して対策をとるのではなく、サルが餌を確保できなくした環境破壊の行為を制限し、サルとの共存を模索すべきです。ニホンザルは世界中で最も北の地域に住んでいます。熱帯ジャングルのサルと違って生活が大変です。

ヘビは出くわすというより、踏みつけることが最も危険です。登山道がほど良い日光浴の場所になっていて寝そべっているところに人間がやってくる。ヘビもびっくりして反射的に踏んだ人を襲うことになります。ヘビに噛まれたら携帯電話で1分でも早く病院へ行くべきです。マムシの血清をおいている病院は限られているので、救急隊に応急処置をしてもらうことをすすめます。日本ではマムシ、ハブが危険です。インドネシアやタイではキングコブラやグリーンスネークがいて迂闊に山の中を歩けません。

夏の暑い日に低山ハイキングして襲われるのがススメバチです。ハチは黒いものにより反応するため、黒い服や防止は避けた方が良さそうです。気を付けなければならないのはハチの毒に対してアレルギーを持っている人です。刺されて数分後には、アレルギー反応によって、意識障害や呼吸困難といった症状が現れ、最悪の場合は死ぬこともあります。また、二度目や三度目の人は抗体が過敏に反応し重症になることがあるので注意が必要です。

夏山でやっかいなものにヒルがあります。特に鈴鹿山脈、大台ケ原、丹沢が有名ですが、地空温暖化で生息域と活動期間が広がっています。以前、鈴鹿の藤原岳に登ったとき、最初は気がつかなかったのですが足がかゆいのでズボンをめくってみるとヒルがピンポン球のようになっていました。登山道をよく見ると登山道にぎっちりとヒルがいるのにはびっくりしました。常に足を動かしていなければならず休憩等できません。登山用具店でヒルよけスプレーを売っていました。まだ使ったことがありませんが試してみる価値はありそうです。

最後に、最も恐ろしくやっかいな動物がオバハンです。周りのことはかまわず大きな声で吠えます。避難小屋では夜遅く避難する人間がいても意に介さず自分たちのテリトリーを守ります。一日中餌を食い散らかし林の中のいたるで小便をして白い紙を撒き散らしています。凶暴性はないが集団で吠えまくるのでなるべく近寄らないようにすることをお勧めします。

山の中で野生動物に遭遇したときはそおっとしてあげること、そして絶対餌を与えないようにすることです。

2009年11月17日火曜日

ヘルメットのあごひも

  現場では必ずヘルメット着用とともにあご紐を締めることときつく指導されます。しかし、米国の映画などで出てくる場面では、あごひもをせずにヘルメットをかぶって作業しています。

欧米のヘルメットはラチェット式で後ろの部分でネジをまわして締め付けて固定するようになっています。一度被るとグラグラしません。欧米ではこのラチェット式が主流になっていて、あご紐はオプション販売になっているようです。

  なぜこのような違いがでてきたのかというと、日本ではヘルメットの目的は飛来落下、墜落・転落及び感電災害の危険に対する頭部の保護が目的であり、内装だけでは安定して被れないということと、墜落時もヘルメットで危険から頭部を守るという考えからあご紐をしっかり締めるということです。しかし、欧米では飛来落下に対する防護に重みをおき、ヘルメットで墜落・転落時の危険から頭部を完全には守ることができないという考え方の違いによるようです。したがって、欧米のラチェット式ヘルメットはかなりしっかり作られて、ラチェット部のネジをまわすとかなり固定されます。

  ヘルメットは個人の頭に合わせて調整して使うということになっていますが、日本のヘルメットは頭の形状に上手くフィットせず、使用中前にずれたりして困ることがあります。欧米のラチェット式ヘルメットのオプションのあご紐を装着すると、あごの先端に引っ掛けて固定するため、もうびくともしなくなります。
一方、あご紐がある方が安全なのかという疑問も一部にあります。野球のヘルメットはボールが当たったとき衝撃を吸収するためにあご紐はありません。 ただし、あご紐により墜落したときにヘルメットのお陰で頭部の損傷が軽くなり命が助かった例もあるので、あご紐は有効と考えるべきです。

  インドネシアの現場では、クライエント、日本人職員、ワーカーほとんどの人があご紐を締めていません。よく見るとラチェット式はわずかで、日本と同様のものが多いです。日本人職員は日本から持ってきたものを使用しています。これはヘルメットの機能に合わせて対応しているのではなく、ただ楽な方に流れているだけです。

  ヘルメットは個人用保護具(PPE)です。リスク低減措置の優先順位は、①危険な作業の廃止・変更、②代替措置、③設備的な対策、④管理的措置で、個人用保護具は⑤一番最後です。欧米の考え方はこの優先順位の高い者から対策をとることを徹底するのに対し、日本では相変わらず個人用保護具に頼ることが多いです。したがって個人用保護具に重点をおかれるのだと考えます。やたらとどこでも安全帯着用と言いまくる様子が端的に表しています。本来は安全帯を使わずに安心して作業できる環境を作らなければならないのに...

  ヘルメットの規格は旧労働省告知第66号で定められています。第4条で、飛来・落下による危険を防止するための保護帽は、帽体、装着帯及びあご紐を有し、かつ、次の各号に適合するものでなければならない。
1)装着帯のヘッドバンドは、着用者の頭部に適合するように調節することができること
2)装着帯の環ひもは、環の大きさを調整できないこと
3)帽体と装着帯のヘッドバンドとの間げきは5mm以上であること
また、5条では墜落による危険を防止するための保護帽は、帽体、衝撃吸収ライナー及びあご紐を有し、かつ、リベットその他突起物が帽体の外面から6mm以上突出していないものでなければならないとなっています。

とにかく、日本国内では法令で定められた場所ではヘルメットを正しく被りあご紐を締めなければなりません。

2009年11月13日金曜日

作業用足場

  東南アジアでは、シンガポールを除いて規格品の足場材料が自由に入手できるところは少ないようです。日本製中古の枠組み足場が手に入るのですが、ブレース止めが錆びて取れていたりして安心して使えません。民間の建築では未だに自然の木材や竹などを使っているところを見かけます。
  到底足場とはいえないような設備でも、立派な建物が完成します。(インドネシア)
  民間建築工事では、ヘルメットなし、安全帯なしなんて当たり前のようです。したがって公共性のある工事で足場には手すりを設けろ、ヘルメットをかぶれ、フルボディハーネスを着用しろ、と指示しても、もともと慣れていないのでなかなか徹底できません。(インドネシア)
  竹製の足場もまだ健在です。竹は弾力性があり優れた材料ですが、裸足で登っていく様はかなり原始的です。(ミャンマー)
   ここまで足場を組ませるのは大変です。日本では安衛則が改正され中桟(middle rail)や幅木(toeboard)の取り付けが義務化されましたが、OSHAでは細かく規定されていて後追いをしているようです。発電所や化学プラントの建設現場では当該国の基準ではなくOSHAを採用するところが多く、写真のようにインドネシアの片田舎でも中桟、幅木の取り付けを義務付けられ、普段は竹製の足場を組んでいる足場工(scaffolder)でもなんとか組むことができます。
  日本では「足場の組立等作業主任者」が選任され現場で指導していますが、インドネシアでは国家資格であるscaffolding Inspectorがいて、組立て後の検査を行っています。検査合格の場合は緑色タグ、不合格の場合は赤色タグを取り付け使用禁止にします。
  Scaffollding Inspectorもいい加減なことをすると首になるので、結構真剣にやっています。しかし、肝心の足場計画がしっかりしていないと後追いの管理でしかありません。エンジニアがしっかりと安全も含めた計画を立てなければなりません。ここに問題の本質があるようです。

2009年11月10日火曜日

リスクアセスメントの実効性

リスクアセスメントは大手企業では取り入れられてきているが、まだ普及しているとはいえない。

そして、導入している大手企業でさえ、リスクアセスメントが有効に機能しているか、かなり疑問です。経営の要として品質、環境の次に労働安全衛生マネジメントシステムを導入していますが、マニュアルに記載されているので、外部監査のために体裁を整えて作成しているというケースがほとんどです。
要するに、リスクアセスメントが現場の安全衛生活動に有効に活用されていません。

マネジメントシステムの外部監査員が、現場に監査に来て、ただリスクアセスメントが揃っているかとか、リスク低減措置を策定した後の再リスクアセスメントはあるか、などだけをチェックして、実際にどのように活用され、どのような効果があったのかなど確認しないこと、さらにリスクアセスメントの書式がマニュアルと違うなど、現実的でない指摘をすることにも起因していると思われます。

また、一般的に経営者幹部も品質、環境、労働安全衛生マネジメントシステムに更なる資源を注ぎ込もうとはしません。なぜなら品質マネジメントシステムを導入したとき社員が疲弊したけれど、未だに生産の品質や環境、労働安全衛生が改善されたとはいいがたい。ISOは経営改善のためにあるといわれますが、相変わらずの不良品、環境汚染、災害の多発と改善されず、契約のための最低限必要な項目と考え、外部監査をクリアする以上のことにあまり力を注ぎたがらない。

ISOの失敗が労働安全衛生マネジメントシステムにも影響し、ISOとの違いを説明してもなかなか理解されません。早くもリスクアセスメントの形骸化が始まっています。労働安全衛生はマニュアルやいくら安全書類がしっかり整っていても、最終目的の災害発生が減少しないと意味がありません。形よりも実効性のあるリスクアセスメントが必要です。

建設業では、リスクアセスメントの必要性を理解させ、簡易な方法で効果を上げる方法を模索しなければなりません。

2009年11月6日金曜日

目に見えない電気の怖さ

土木屋は、とにかく電気に弱い。

  私も電気とは? と聞かれて上手く答えることができません。電導体に電位差が生じ中を電子が流れることで、電子の流れと逆向きの流れを電流と呼ぶというところまでは分かるのですが、三相交流などはどのように説明したらよいのやらよく分かりません。
電流は目に見えないところに危険性が存在します。まず、この問題に対処するには、電気が流れる可能性のある箇所には絶対に近づかないようにする「隔離の原則」か、目に見えないものは目に見える形にする「可視化」必要があります。

  東南アジアのある国のでことですが、市内の配電線の近くで鋼矢板を打設する作業がありました。電柱を使って流されている配電線は、日本では最高6,600Vですが、その国では15,000Vでした。配電線は絶縁被覆されているので原則触れても感電することがないはずですが、絶縁被覆の劣化や接続部分の絶縁不良が原因で、1m弱の離隔距離で放電を起こし作業員が被災しました。その国の規定では安全離隔距離は1mと定められていました。日本の電力会社では2mの離隔距離を取ることを指導されます。米国OSHAでは50kV未満は10フィートの離隔距離を取ることを要求しています。電線は完全に絶縁されているとは言い切れず、不測の事態に備えて余分に離隔距離を取ることが正しい考え方です。発展途上国では新品の完全な絶縁状態の条件の数値でしか指導しないケースがあり自己防衛のためにきっちりとリスクを見極めるべきです。

また、その国には工事を行う際に、配電線に保護ケースを施す習慣がありませんでした。保護ケースすらありません。しようがなく鋼矢板を短く切断して離隔距離を確保して作業することになりました。もちろん追加費用はみてもらえません。命には変えられないので泣き寝入り状態でした。

  分電盤やキュービクル、電気機器の停電結線作業では必ず電源を切断するのが原則ですが、誰かが勝手に電源を投入し、結線作業している人が被災するケースがあります。結線作業をするときは、元の電源を切断し、かつ分電盤の鍵をかけ、停電中であることを表示しなければなりません。そして分電盤の鍵は結線作業をする人が持つことで、何も知らない人がうっかり電源を投入することが防げます。いわゆるLOCK OUT・TAG OUTの徹底です。

  最後に、電機機器にはアース(グラウンディング)を取り付けるようになっています。アースを確実に取ることで漏電の被害を小さくすることができます。しかし、そのアースが有効に行われていないのが現実です。それはなぜアースが必要か理解していないからです。発電機のアースも設置方法を判っていないことが多いようです。ボディアース端子と機能アース端子の2カ所から取る必要があります。

電気災害に遭う件数は少ないかもしれませんが、感電した場合、死に至る確立は高いということを肝に銘じておかなければなりません。

2009年11月2日月曜日

フルハーネス型安全帯の普及

安全帯には大きく分けて胴ベルト型安全帯とハーネス型安全帯があります。

日本では胴ベルト型安全帯が広く普及していますが、欧米ではハーネス型安全帯が主流です。さらに欧米では胴ベルト型を禁止している国もあり、シンガポールでも胴ベルト型安全帯の使用を禁止していて、フルハーネス型でないと使用できません。


胴ベルト型安全帯が禁止されている理由は、落下阻止時にかかる身体にかかる負荷が大きすぎるため、内臓を圧迫し重大な傷害を負うことがあります。実験でも数kNの衝撃荷重がかかるそうです。


自動車のシートベルトも当初は腰ベルト方式(2点式)でしたが内臓を圧迫して傷害を受ける危険性が大きいので、今では3点式シートベルトに変更されています。

最近、各地で体験型安全教育設備ができ、その中で胴ベルト型安全帯を装着してぶら下がってみることができるようになっていますが、実際にぶら下がってみると苦しくて長い間ぶら下がっていることができません。静止状態でぶら下がっても苦しいので、墜落したときなど相当な衝撃だと実感します。

人の命を救うための安全帯であれば、無傷で救ってあげなければなりません。

なぜ、フルハーネス型安全帯が普及しないのか、それは安全帯着用の運用方法にも問題があるかもしれません。建築工事現場の外周足場ではどこもかしこも「ここでは安全帯着用」の表示がありますが、ほとんどが安全帯を腰に着けているだけで使用していません。安全帯は個人用保護具でありリスク低減策としては最後の手段です。それを前面に出すため安易に考えてしまっています。

リスク低減の最終手段として使う場合は、安全な足場が確保できないときであり、フルハーネス型安全帯を着用させて作業をさせるべきです。
現場の中で、何が重要か、メリハリがついていないところからくるのだと思います。

危険性を伴う胴ベルト型安全帯には、たばこや酒と同じように「使用方法によっては、あなたを殺すことがあります」と大きく表示すべきです。ただし、二丁掛けフルボディハーネスは、重量が3kgもあり、慣れないと腰が痛くなります。

安全帯に関しては、シンガポールやインドネシアのほうが日本より先進性があると思います。

2009年10月30日金曜日

太陽光発電の買取り制度

新たな太陽光発電の買取り制度が11月1日よりスタートします。
経済産業省資源エネルギー庁は太陽発電を使って家庭で作られた電力のうち自宅で使わないで余った電力を、1キロワット時あたり48円で10年間電力会社に売ることができるようにします。買取りにかかった費用は、電気を利用する人全員で負担する、「全員参加型」の制度となっています。
この制度により日本の太陽光発電導入量を拡大することで、エネルギー源の多様化に加えて、温暖化対策や経済発展にも大きく貢献できるものと期待されます。
ただし、当初は住宅用48円/kWh、非住宅用は24円/kWhです。以前制度の倍額になりましたが、ドイツのような思い切った制度とは言えません。どうせ全員参加型とするのであれば、ドイツ以上の買い取り価格にして、新しい産業を育てることを考えた方が得策です。
太陽光発電パネルは以前は日本が生産量世界一であったものが、今ではドイツに大きく抜かれています。原因は太陽光発電の余剰電力の買取価格を市場価格に委ねずに、発電コストを上回る価格で買い取らせることを保証したためです。その結果、家庭での導入が進み、太陽光発電パネルの販売量が増えたため製造コストが下がり、新たな需要を生んだためです。
ドイツの太陽光発電余剰電力の買い取り価格は、基本は45.7セント、屋上または外壁一体型の場合には,30kW以下なら57.4セント、30〜150kWは54.6セント、150kWを超えると54.0セントとなります。
とにかく、新たな太陽光発電の買取制度は、環境負荷低減と新たな産業の育成の第一歩と考えます。中国や米国も同様のことを考えており、世界戦略を考えてもう少し制度を補強してもらいたいものです。
詳しくは、資源エネルギー庁ホームページを参照
http://www.enecho.meti.go.jp/kaitori/index.html

2009年10月26日月曜日

海外での危険予知活動 



KYKは一見海外のシステムのようですが、危険予知活動(Kiken Yochi Katsudou)のアルファベットの頭文字であり、日本独自の安全管理システムです。

東南アジアでもこのシステムを取り入れているところがあり、中災防では各国語に訳した資料をホームページに掲載しています。
http://www.jniosh.go.jp/icpro/jicosh-old/japanese/topics/safety/zeroaccident/zero-sai/index.html

KYKは、朝礼に引き続いて行われるツールボックス・ミーティングの中で今日の作業についての危険性を揚げそのリスク低減対策を立て、最後にみんなでスローガンを唱和するものです。ボトムアップ型の小集団活動の一つで、安全施工サイクルの重要な要素になっています。

欧米に於いてもKYKに似た安全活動があります。JSA(Job Safety Analysis)とSTARRT(Safety Task Analysis Risk Reduction Talk)です。この安全活動は前日のミーティングで、翌日の作業手順とその作業における危険性の洗い出しを簡潔に書き出します。そして当日の朝礼でSTARRTチェックシートに基づいて職長が作業員に話しかけながら資格やリスク低減対策の確認と周知を行うものです。KYKは作業員から意見を引き出して安全意識の高揚を図ることを意図していますが、STARRTは、各組織のトップからの問いかけによる意識漬けを図ろうとしています。

JSAの例

STARRTの例

どちらも良いシステムですが、職長が主旨を良く理解していないと直ぐに形骸化する恐れがあります。それを防ぐには元請職員の参加と参加者相互のコミュニケーションが不可欠です。

2009年10月22日木曜日

後を絶たない偽装事件

イオンのMAXVALUEでも消費期限の偽装が行われていました。
相変わらず食品業界の老舗企業による商品偽装が目立ちます。

建設業界でもやはり偽装が続きました。特に注目しなければならないのは、信頼されるべき老舗企業や大手企業による偽装工作です。
非上場のある建築専門の老舗スーパーゼネコンが、重大災害を起こしたにもかかわらず他の現場の災害であったかのように労働者死傷病報告の偽装をおこなったこと、世界一の自動車会社系列の部品工場であった労働災害を作業所長が自らもみ消したことなど、いわゆる労災かくしがありました。
さらにマンションで設計強度より低い生コンクリートを打設し、販売してから設計変更をやり直して補強措置をするなど老舗企業とは思えないことが明るみになりました。

長寿企業は、顧客の信頼、社会への正義を大切にする。目先の利益ばかり追求するようなところは、これから残っていけないのではないだろうか。

以前、NHKで「知るを楽しむ」この人この世界、「長寿企業は日本にあり」が放送されました。拓殖大学の野村さんがナレーターで、長寿企業の「長寿」の秘訣を、物づくりの本業重視と時代に適応する柔軟な発想にあると語っていました。そして、長寿企業の知恵にこそ、今の時代を生き抜く手がかりがあると述べています。

老舗企業や大手企業こそ目先の利益にとらわれるのではなく、市民の信頼を得て堅実な利益を出す道を選んでもらいたいものです。

2009年10月19日月曜日

対面通行高速道路の危険性

補正予算で、地方の高速道路6カ所の4車線化が決まっていましたが、民主党政権に変わったことから国土交通省が事業凍結を決めました。

無駄の削減ということで、不必要な補助金や公共投資を見直すことは大賛成です。しかし、ただマニュフェストに無駄を削減すると掲げ、その成果を出すために金額をひねり出すために事業を停止することは問題あります。本当に必要かどうか公平に評価する必要があります。

例えば、4車線化が凍結になった高松道の高松〜鳴門間は京阪神から近く、週末には渋滞が多発しています。京阪神から直通する鉄道がないため、高速バスが1日あたり50往復以上走っている経済の生命線となっています。しかし、対面通行だと非常に危険な状態で、運転者も緊張とイライラが続きます。

政治的に高速道路の延長を延ばすことを優先されていますが、対面通行の高速道路が伸びれば、それだけ危険な道路が延びるだけです。今回のように政治的に無駄という名目で凍結して他の予算に回すというのは、危険性を放置したままなので本当の意味での国民の福祉を確保したことにはなりません。安全を確保してこそ福祉です。高速道路の安全化を図ってから無料化を導入してもらいたいものです。

2009年10月15日木曜日

安全祈願を込めて薬師寺へ納経

Safety Managerとして再びインドネシアの現場に行くことになりました。
火力発電所の土建工事の山場を迎えるため、安全対策の強化のための短期間応援です。
工事の安全祈願のため「般若心経」の写経を奈良・薬師寺に納めました。インドネシアは世界最大のイスラム教国ですが、それぞれ工事従事者の気持ちの問題です。アッラーの神も応援してくださると思います。
「般若心経」はもともとサンスクリット語で書かれ、支謙、鳩摩羅什、玄奘三蔵らの漢訳が奈良時代、日本に伝えられたとされるが確かなことは判らない。般若心経は大般若経600巻から抜粋されたもので、262文字に凝縮されているため、簡単に現代語に訳すことはできません。

摩訶般若波羅蜜多心経
玄奘三蔵訳の流布版心経
觀自在菩薩。行深般若波羅蜜多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄。
舍利子。色不異空。空不異色。色即是空。空即是色。受想行識亦復如是。
舍利子。是諸法空相。不生不滅。不垢不淨不增不減。
是故空中。無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色聲香味觸法。無眼界。乃至無意識界。
無無明。亦無無明盡。乃至無老死。亦無老死盡。無苦集滅道。無智亦無得。
以無所得故。菩提薩埵。依般若波羅蜜多故。心無罣礙。無罣礙故。無有恐怖。遠離顛倒夢想。究竟涅槃。
三世諸佛。依般若波羅蜜多故。得阿耨多羅三藐三菩提。
故知般若波羅蜜多。是大神咒。是大明咒是無上咒。是無等等咒。能除一切苦。真實不虛故。
說般若波羅蜜多咒即說咒曰
揭帝揭帝 般羅揭帝 般羅僧揭帝菩提僧莎訶
般若波羅蜜多心經

Prajna Paramita Hrdaya Sutram
Aryalokiteshvara Bodhisattva gambhiram Prajna Paramita caryam caramano,
vyavalokiti sma panca-skanda asatta sca svabhava sunyam pasyati sma.
Iha Sariputra, rupam sunyam, sunyata lva rupam,
rupa na vrtta sunyata. Sunyataya na vrtta sa-rupam,
yad rupam sa-sunyata, yad sunyata sa-rupam.
Evam eva vedana, samjna, sam-skara vijnanam.
Iha sariputra, sarva dharma sunyata laksana.
Anutpanna, aniruddha, amala, a-vimala, anuna a-paripurna.
Tasmat Sariputra, sunyatayam na rupam.
na vedana, na samjna, na sam-skara, na vijnanam.
na caksu, srotra, ghrana, jihva kaya, manasa.
na rupam, sabda, ghandha, rasa, sparstavya, dharma.
Na caksur-dhatu, yavat na manovijnanam-dhatu
Na avidya, na avidya ksayo,
yavat na jara-maranam, na jara-marana ksayo.
Na dukha, samudaya, nirodha, marga.
na jnana, na prapti, na abhi-samaya.
Tasmat na prapti tva Bodhisattvanam,
prajna-paramitam a-sritya vi-haratya citta avarana,
citta avarana na sthitva, na trasto.
vi-paryasa ati-kranta nistha nirvanam.
Try-adhva vyavasthita sarva Buddha Prajna-Paramitam
A-sritya Annutara-Samyak-Sambodhim, Abhi-sambuddha.
Tasmat, jnatavyam Prajna-Paramita Maha-Mantra,
Maha-vidya Mantra, Anuttara Mantra, asama-samati Mantra.
sarva duhkha pra-samana satyam amithyatva.
Prajna Paramita mukha Mantra
Tadyatha, Gate Gate Para-gate Para-samgate Bodhi Svaha
工事無事故無災害
南無大師遍照金剛金剛

2009年10月12日月曜日

山のトイレ事情

山で一番気になるのはトイレです。通常は登山口や山小屋で大便を済ませるのですが、どうしても山行途中で行きたくなることがあります。緊急事態の場合はどうしても野外で用を足すしかありません。以前は大便のことを「キジ撃ち」、小便のことを「ハト撃ち」、女の人の用足しを「お花摘み」と呼びました。

しかし、今、登山道から林の中に入ると白いものが散乱していて異様な状態です。ティッシュペーパーが分解されずに残っているのです。高い山ではバクテリヤが少なく、自然浄化作用が働きません。昔は山の水を美味しく飲んでいたのですが、もう大腸菌に汚染されていてほとんど飲むことができません。

高山の山小屋にはトイレが備えられています。今まで、ほとんどのトイレが地下浸透式でトイレットペーパーは別の箱の中に入れる方式でした。登山客が少ない間は、自然浄化作用で自然界に対する負荷も大きくはなかったのですが、深田百名山を利用したツアー登山のおかげで、あまり訪れる人が少なかった山にも、ただピークを踏みたいだけの人が押し寄せ、自然浄化では処理できなくなっています。

山に囲まれた尾瀬では地下浸透方式だと長い年月の間に汚染が蓄積されてしまう恐れがあります。そこで尾瀬のトイレには全て合併処理浄化槽が設置され、汚水を湿原に流れ込まないように配慮されています。トイレットペーパーなどの固形物は脱水・乾燥した後にヘリコプターで域外に搬出しています。しかし、その維持管理に多大な経費がかかり、1回100円の協力金を支払う仕組みになっています。したがって、尾瀬では絶対に「お花摘み」や「キジ撃ち」をやってはいけません。


尾瀬沼の公衆トイレで合併浄化槽で浄化して放流しています。ちなみに、屋根の妻部に付いているカメラは、尾瀬のホームページで有名なライブ映像のカメラです。

沼尻にあるトイレですが下のタンクにためて、ヘリコプターで搬出しているようです。

尾瀬の関連情報は、こちら

米国のグランド・キャニオン河川管理事務所では携帯トイレとして十分な容量の容器と知識、そしてすべて持ち帰るという誓約なしにはどんな川旅も許可されません。犬の散歩ではビニール袋を持って生暖かい犬のウンコをつかんで持ち帰っていますが、山でも自分のウンコは自分で持ち帰るのが当然であると思います。犬のためにできることは自分に対してもできないといけません。このことが当たり前になると、野外でのびのびとウンコする方が気持ちがいいかもしれません。ただし、それをザックに入れて持ち歩くことに抵抗感が残るかもしれません。

「山でウンコする方法」の著者であるキャサリン・メイヤーも「しかりと安全に処理すれば臭いがもれれることもないのだから、自分の大腸からビニール袋に移動した程度のことじゃないかという発想の転換をして欲しい」と述べています。

2009年10月10日土曜日

危機管理意識の欠如

台風18号(Typhoon-0918 Melor)が日本に上陸し、久しぶりに関東が台風の暴風圏に巻き込まれました。

朝からJRは運転ストップし、多くの人が混乱に巻き込まれました。
しかし、東京はこのところ自然災害に巻き込まれることが少なく、人身事故がない限り、常に電車は次から次へと走り続けるものと思っている人が多いのではないでしょうか。

地方都市では台風がくれば電車は止まる、じゃ、仕方ないなで済むのですが、東京では危機意識が全く感じられません。台風接近というのは都市にとって危機到来です。その危機対応としてJRが事前に運航を見合わせたというのは、危機管理として当たり前のことです。しかし、市民にその心の準備ができていなかったと感じました。駅員になぜ電車が動かないんだと詰め寄るオバさんもいました。このオバハン、ちょとアホちゃうかとあきれてしまいました。

台風が接近する場合は前日から鉄道の運行を見合わせるPRが必要かもしれません。早く広報すれば諦めがつくし、企業もそれなりに対応すると思います。東京直撃の台風や東京直下型地震がきたらどうなるのでしょうか。せめて事前に判る危機に対しては冷静に対応してほしいものです。

2009年10月8日木曜日

インフルエンザワクチン

新型インフルエンザウィルスH1N1で、ウィルスという言葉が日常生活に使われるようになりましたが、ウィルスと細菌はどう違うのか知らないことが多くあります。

  ウィルスは、20-100nm程度と非常に小さく、必ず他の生物(細菌、カビ、植物、動物)の細胞に入り込み、その細胞に自分のコピーを作らせます。細胞の中で自分のコピーが大量に作られると、やがてその細胞は破裂します。破裂したときに細胞の中から大量のウィルスが飛び出し、他の細胞に入り込みます。構造は、蛋白質の外壁と内部に核酸(DNA、RNA、つまり遺伝子)を持った単純な構造、すなわちコートたんぱく質で覆われ、自分の殻を作っているコートたんぱく質、自分を他から区別表する抗原たんぱく質、そしてそれらの遺伝情報を読み出すための複製酵素以外の遺伝子を持ちません。細胞の中に入り込んで細胞の内側から作用して、発熱などの症状をひき起こします。
主なウィルスに、インフルエンザウィルス、ノロウィルス、ロタウィルス、アデノウィルス、コロナウィルス、麻疹ウィルス、風疹ウィルス、肝炎ウィルス、ヘルペスウィルス、HIVなどがあります。

  一方、細菌は、1-5μmとウィルスの10-200倍程度の大きさで、体内で定着して細胞分裂で自己増殖しながら人菜細胞に侵入するか、毒素を出して細胞を傷害します。表層は脂質でできた柔らかい細胞脂質で覆われ、増殖するために必要な遺伝子情報を持っています。毒素を作ったり、細胞を溶かすなど、細胞の外側から作用して様々な症状をひき起こします。「抗生物質」は、細胞の構造を利用して作用させるため、細胞がないウィルスには効果がありません。
主な最近にブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌などがあります。

  さらに、細菌より大きい真菌(カビ)は、人の細胞に定着し、菌糸が成長と枝分かれによって発育していく酵母細胞では出芽や分裂によって増殖します。真菌には、白癬菌、カンジダ、アスペルギルスなどがあります。

  細菌は栄養と水があればいくらでも増殖しますが、ウィルスは栄養や水があったとしても、ウィルスには細胞がない抗生物質が有効に働きませんが、ワクチンは予防に効果があるようです。そのワクチンが不足しています。特に発展途上国のワクチン不足は深刻で、先進国のエゴで自国のワクチンを優先させることではなく、各国平等にワクチンが渡るように協力すべきです。

  かつての新型インフルエンザの感染は数年間続き、数波のピークを迎えました。感染者数は第一波が大きいですが、後になるに従い感染者数が減る変わりに重篤者数が増え致死率が高くなる傾向がありました。新型インフルエンザH1N1は今のところ軽症ですが、これから徐々に重症になると思われ注意が必要です。

2009年10月4日日曜日

自動車のフロアマットが危険源に

トヨタ自動車が米国で計380万台ものリコールを発表しました。

その原因は、運転席に敷かれているフロアマットが運転中に外れてアクセルペダルを押え続ける状態になり、アクセルペダルを放してもスピードが落ちず大きな事故につながるというものです。

10月1日の朝日新聞に米国ABCニュースで報道された被災者からの緊急通報の内容が掲載されていました。その部分を転載すると。

 通信指令係「こちら緊急電話番号。どうしましたか」
 通報者「アクセルが動かない。トラブルが発生した。ブレーキも利かない」
 通信指令係「分かりました。車を止めることができないんですね」
 通報者「交差点が迫っている。交差点が迫っている。つかまって。祈って……」
 緊急通報があったのは8月28日。米カリフォルニア州サンディエゴ郊外を走行中のトヨタの高級車「レクサスES350」からだった。
 運転者は州警察の高速隊員で、妻と13歳の娘、親族の男性の3人が同乗していた。事故直前には、操縦不能の状態で、時速は120マイル(約190キロ)に達していたとみられる。そのまま交差点に突入し、他車と衝突して大破し炎上。この4人が亡くなったという。通報がなければ、原因は何一つ分からずじまいになった可能性がある。

全く、悲痛な通報です。
この通報の原因究明の中でフロアマットが危険源になったことが明らかになりました。ごくありふれたフロアマットがずれることによって、重大災害に直結する可能性があることを意外と理解されていなかったと思われます。

よく純正のフロアマットの上に、カー用品屋で購入したフロアマットを敷いている人がいます。このような場合、直ぐにずれて今回と同じような災害になりかねません。

万が一、アクセルペダルが戻らない場合やブレーキペダルが利かない場合どうしたらいいのか、異常事態対応についてよく理解しておいた方がよいです。落ち着いてエンジンを切る、ただしキーは絶対に抜かない。もし抜いてしまうとハンドルロックが係ってしまいます。車を路肩に寄せてサイドブレーキを引く、高い部分へ乗り上げるなどして減速するしかありません。

普段から頭の中に入れておかないとパニックになって何もできなくなるでしょう。

2009年10月1日木曜日

低山登山に用いる装備のリスク

低山登山に用いる装備は、使い方によって高い危険性が潜在するものがあります。
夏山登山といえど、雨に打たれると凍死することを、先日のトムラウシ岳登山ツアーで災害となって現れました。

登山用具別に危険性を分析してみました。
リスク(怪我をした場合の重篤度と怪我をする可能性の掛け合わせた危険性の度合い)の順にあげると、まず下着が一番危険度が高いです。

1.下着
 下着の選択次第で生死を分けるほど重要です。少し気温が低い状態で雨やみぞれに打たれ、さらに風が吹くと急速に体温を奪われ低体温症に陥り危険です。特に綿製品は、綿が水分を蓄える性質があり、どんどん体温が奪われ、最悪は凍死に至ります。
 昔は、山で使用する下着や靴下、手袋は純毛製品がよいと教えられてきました。最近では乾式アクリルやポリエステル素材のものが多く使用されています。羊毛や乾湿アクリルは濡れた場合でも保湿力がゼロになりません。

2.レインウエア
 雨具は、雨に濡れても中までしみ込んでこないものですが、逆に通気性が悪く体温が上がり汗で中が濡れてしまうのが欠点です。最近ではゴアテックスコーティンが内側に使用されており、雨の水分はしみ込んでこないが、体内の汗は発散するということになっていますが、運動量の多い人は汗の発散が追いつかず、結局びっしょり濡れてしまいます。通気をよくしたり、汗をこまめに拭いたりしたりして、自己管理しないと汗が冷えて体温を奪うことにもなりかねません。

3.登山靴
 登山靴はリスクを抱えたまま履かざる得ないので深刻です。問題は、最近、靴底に使われているポリウレタン製ミッドソールの剥離問題です。ポリウレタンは、軽量で耐摩耗性にすぐれ、適度な衝撃緩衝性を持つ特性から、登山靴のミッドソール(靴底)に使用されています。昔は堅くて重い革靴製の靴を履いていましたが、中高年登山者に最適の柔らかくてクッション性に富み、軽い靴が主流になってきました。
 ポリウレタンの劣化原因は、第一に考えられるのが加水分解で、水分がある状態の下では劣化速度が進みます。第二に熱(酸化)があり、高温下では劣化が急速に進みます。第三はカビやバクテリヤによる微生物劣化、第四に紫外線による光(酸化)劣化です。使用しなくても劣化は進行し、登山お後靴を手入れせず、濡れたまま風通しの悪い場所で放置したままにしておくと劣化の進行が早くなります。
 メーカーの説明では、一般的に製造後5年程度が寿命となっています。しかし保管状態が悪いと5年以内に突然靴底が突然剥がれるかもしれないリスクが潜んでいます。少々品質を落としてでも、なぜ劣化しない材料に置き換えないのか、メーカーは「消費者に安全な製品を提供する」という基本的な精神に欠けると思います。
 現在履いている登山靴は自己防衛するしかありません。まず濡れた靴は、ストーブなどで乾かさず、新聞紙に包んで水分を吸収させる。乾いたらブラシで汚れを落とし、メーカー推薦の養分補給剤をスプレーして陽の当たらない風通しの良いところに保管する。そしてなるべく履く機会を増やして新鮮な空気に触れさせることです。
 私は登山中、万が一靴底が剥がれたときのために針金とビニールテープ、靴紐の予備を持っています。

4.ガスストーブ
 ガスストーブによる事故も多いです。最近ではガスカートリッジ式のものが主流になっています。一般的にガスカートリッジにはブタンが充填されており、気化熱によりガスカートリッジが冷たくなるので、冬季用はより沸点の低いイソブタンまたはプロパンの混合が使われています。いろんなガスカートリッジが流通していて、LPGカートリッジを携帯ストーブに使用すると爆発の危険があります。
 また、大鍋や鉄板を長時間かけて使用していると、輻射熱でガスカートリッジが熱せられ爆発する危険があります。このような場合は五徳とガスカートリッジが分離したタイプを使う方がよいです。
 テントの中で使用する場合は、テントの中の酸素が少なくなり不完全燃焼による一酸化炭素中毒の危険もあります。テントの中では火災の危険もあるのでどうしても使わざる得ない時は、換気を十分取るべきです。
 最後に、ガスカートリッジを処分する際、中のガスを完全に抜いて廃棄しなければなりません。廃棄処分中に、爆発する事故も多発しています。

5.ガソリンストーブ
 昔は、ホワイトガソリンを使用するガソリンストーブ、「ホエブス」が主流でした。しかし、余熱と加圧が必要でメンテナンスが大変なこと、かさばって重いことで敬遠されました。ガソリンストーブの場合は、余熱と加圧不足による異常燃焼、過加圧によるパッキングからの出火などにより火災の危険がありました。よく問題になったのが、ガソリンを入れたポリタンクを水と間違えて飲む事故や、水と間違えて鍋にガソリンを入れる事故がありました。もう山にホエブスを持っていくこともないので、ひとまずリスクは低いといえます。

6.アイゼン
 雪渓や降雪期の低山では、滑り止めとしてアイゼンが必須です。しかし、慣れていないと爪が石等に引っかかって転倒することがあります。一番良くやる失敗が、片方の足で他方のアイゼンを引っ掛けてしまい転倒するというものです。高齢になると足が上がらなくなり、アイゼンを履いていなくてもちょっとした段差に引っかかってしまいます。足を上げるように心がけるしかありません。
 面倒くさくなって、アイゼンなしで歩行するのはもっと危険です。かっこつけてアイゼンなしで歩いて雪渓の割れ目に落ち込んで冷凍人間になるのが落ちです。

7.ストック、ピッケル
 ストックは、歩行時の左右への振れを極力する少なくするのに効果的な道具です。岩場をよじ上るようなときは邪魔になるのでザックに格納しないと、手のホールドをしっかり取ることができなくなるので危険です。
 また、電車の中では他人にけがさせる恐れがあるので、邪魔にならないように格納しなければなりません。
 ストックの使い方は、登山中は先端の保護キャップを必ずはめておくことも重要です。なぜならば、尖った先で土を突くと登山道がどんどん浸食されます。また、軟弱地盤に突き刺すと、先端部分が抜けてしまうこともあります。ゴムキャップをしていても滑ることはありません。

8.傘
 傘は、低山では役に立つでしょう。しかし、高山では風が強く役に立たないどころか、風に飛ばされる原因にもなります。また、落雷の原因にもなり使用は避けるべきです。

9.地図
 最近は、高度計やGPSが普及し、地図とコンパスを持って山に登る人は少なくなりました。しかし、これは登山の基本なの必ず実行してください。普段から地図を読む練習をして、現在地がどこか把握するように心がけることを進めます。昔は、地図の折り方を見ただけ山屋かどうか見分けがつきました。
 自分で、現在地が判らなくなり遭難する登山者は相変わらず多いです。
 また、地図の紙で手を切るといったリスクも小さいながらあります。

まだこれ以外にも低山登山におけるリスクはあるとおもいます。

2009年9月28日月曜日

守秘義務違反

 技術士及び労働安全コンサルタントには、コンサルタント業務上で知り得た情報の守秘義務があります。これは単なる精神論ではなく法律で定められてこれを厳格に護ることによって技術士や労働安全コンサルタントの信用が成り立っています。
公平性を保たなければならない組織で、その守秘義務を犯した重大な事件が発覚しました。

 前原国土交通大臣から、JR西日本の宝塚線脱線事故に関して当時の国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の委員が調査・分析情報を当事者であるJR西日本前社長に渡していたという、倫理規範に違反する事実が発表されました。
 新聞等マスコミニュケーションは、山崎JR西日本前社長の不適切な行動に対して糾弾していますが、事故当事者に取って調査情報を入手したいというのは自然な行動と考えます。もちろん不適切な行動には違いありません。しかし、守秘義務を課せられている山口浩一元委員の情報漏洩及び委員会での当事者に有利になるような発言はあってはならないことです。また、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の佐藤泰生元鉄道部会長も数回、JR西日本幹部と会食し情報交換していたという信じられないことも発覚しています。倫理意識がない者が第三者的立場の委員会で活動することは間違いです。いくら罰則規定がないからとか、発言内容が取り入れられなかったので結果的に問題なかったという発言は問題です。

 メディアもこの山口浩一元委員の倫理違反についてもっと追求すべきです。山崎社長が詫びる写真ばかり掲載していますが、問題の本質は守秘義務違反です。守秘義務を堅持しなければ、せっかく一所懸命にまとめあげた資料や他の委員まで信用失墜します。守秘義務を護ってこそ社会から信用される存在となります。

 他にも国家公務員、裁判官、医師、弁護士、ISO外部監査員など守秘義務が課せられていますが、情報漏洩が後を絶ちません。技術士や労働安全コンサルタントには法律で守秘義務を規定され、遵守する義務を負います。

技術士法 第45条
「技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなつた後においても、同様とする。」と定められています。違反者は最高1年の懲役又は最高50万円の罰金に処せられます。

労働安全衛生法 第86条
「コンサルタントは、コンサルタントの信用を傷つけ、又はコンサルタント全体の不名誉となるような行為をしてはならない。(2)コンサルタントは、その業務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。コンサルタントでなくなつた後においても、同様とする。」と定められています。違反者に対し、第85条の(2)において労働大臣は、コンサルタントが第86条の規定に違反したときは、その登録を取り消すことができるとなっています。

技術士や労働安全コンサルタントの中から、このような不祥事を絶対に出したくありません。

2009年9月24日木曜日

労働安全コンサルタントを目指す人に

労働安全コンサルタント試験(10月20日)まであと1ヶ月です。

「新しい時代の安全管理の全て」大関親著
を熟読されたでしょうか。最低3回読む必要があります。最初の1回目は堅苦しくてほとんど頭に入りません。2回目呼んだ時に、なるほど良い事が書いてあるとその部分にマーカーで印をつけます。3回目は重要と思われるところを重点的に内容を理解するようにします。労働安全コンサルタントは偏った知識では公平で説得力のある判断ができません。基礎知識と幅広い見聞が必要不可欠です。

過去問題集に頼った勉強方法や、自分の専門分野を過信した勉強方法ではまず受からないでしょう。また、常日頃から問題意識を持つことも重要です。今現場で何が問題になっているのか、世の中では何に関心が集まっているのか、それに対して自分はどう対応すればよいのか。そのような目で受験勉強する必要があります。

特に法令ではどのような問題に対して強化しようとしているのか。当然出題者はそのような意図で問題を作るはずです。したがって、過去の問題集
ではなく、今後の課題を想定した問題を意識してください。
厚生労働省が最近発表した安全統計や通達に対する分析や考えを求めておくことをすすめます。

また、衛生に関連することも目を通すことも必要です。もし、まだ準備が十分でない場合、少なくとも「新しい時代の安全管理のすべて」と「安全の指標」に目を通すことをお勧めします。

2009年9月21日月曜日

京都東寺で四国八十八カ所巡礼は一区切り

我が家のお墓が京都市下京区にあり、お墓参りの後、東寺に参拝しました。

東寺はJR京都駅八条口から南へ15分ほどのところにあり、新幹線の窓からも五重塔がよく見えます。正式名は金光明四天王教王護国寺秘密伝法院です。真言宗総本山で、御本尊は薬師如来です。


東寺は、平安遷都とともに建立された官寺です。桓武天皇の後に即位した嵯峨天皇は、唐で新しい仏教である密教を学んで帰国した弘法大師空海にこの寺を託し、日本で初めての密教寺院です。弘法大師空海は、密教の主尊である大日如来を境内の中心にすえ、広大な寺域そのものを曼荼羅として表現しています。



「身は高野、心は東寺に納めておく」という御詠歌があります。弘法大師空海は、高野山奥の院に入定になりましたが、心は、東寺にあるとうたっています。昔から、四国八十八箇所巡礼は、東寺で出発のご挨拶をして、高野山奥の院で巡礼修了のお礼をすると伝えられています。東寺にはこれまで何度も訪れていますが、この春に四国八十八ヶ所巡礼を終え、お盆休みに高野山奥の院へお礼のお参りをしたことを、再度東寺に報告に訪れました。御影堂の前は弘法大師に報告する人でいっぱいです。


御朱印は食堂(じきどう)で頂きます。お堂の中では四国八十八ヶ所の版画展が開かれていました。また、宝物館では国宝の両界曼荼羅図(伝真言院曼荼羅)の胎蔵界と金剛界が展示されていました。


なお、曼荼羅(Mandala)は仏の本質を得ることと解釈されています。真言密教において曼荼羅は、主として法会の本尊として、また聖なる空間を構成するものとして位置づけられています。(東寺のパンフレットより)

 今日は21日で、ちょうど弘法市が開かれていました。弘法大師空海は3月21日に高野山奥の院に入定になり、東寺では毎月21日に御影堂で行われる御影供にちなんで市が開かれます。「弘法市」、「弘法さん」は、京都・東寺だけでなく、大阪・四天王寺や名古屋・日泰寺も毎月21日に開かれています。


境内は骨董品や布地、食料品等で覆い尽くされていました。




東寺のシンボルの五重塔です。
東寺のパンフレットより

2009年9月19日土曜日

国際海岸クリーンアップ

毎年、アメリカの環境NGO「オーシャン・コンサーバンシー Ocean Conservancy」の呼びかけで、世界の80カ国以上と地域で、9月19日前後に、海岸の清掃や海底ゴミを回収して調べる「国際海岸クリーンアップICC ;International Coastal Cleanup」のキャンペーンが展開されています。

 オーシャン・コンサーバンシーは、人間の出す廃棄物によって犠牲となる海洋生物が近年増加しているという報告を受け、1986年に海岸ゴミを拾いながらゴミの実態を調査するクリーンアップをはじめました。何がいくつあるのか、どんな材質のものか、それがどこから来たのかなどを突き止め、結果を集計分析して海の汚染物を元から絶つための方策を企業や行政に低減しています。
 このクリーンアップ・キャンペーンはボランティア活動が主体で、海上に投棄されるゴミの撲滅を、市民の協力を得て海洋環境の改善に少しでも役立てようとする第一歩にすぎません。少しでも多くの人に関心を持ってもらえるように、地道な活動を進めています。(一部、JEANホームページより転載)

 日本では全国クリーンナップ事務局(JEAN ;Japan Envioronmental Action Network)
が中心となり、国内の多く会場でキャンペーンが予定されています。
私は、JEANが主催する神奈川県の鵠沼海岸会場(9月12日)に行ってきました。

環境に関する関連記事は、ここを参照してください

English page is as follow :http://tomstar-mount.blogspot.com/2009/09/icc-at-kugenuma-kaigan.html

  通常の海岸清掃とは異なり、海岸を清掃することはもちろんのこと、そのゴミの発生源を特定して、発生源に働きかけてゴミを減らすことを目的としています。そのため、全世界を同じ時期に同じ方法でゴミを集め、そのゴミを分類調査し、アメリカの本部にデータを集積して、ゴミの発生源に対策を取ることを働きかけています。

  清掃・調査方法は、ある決められた面積を20分かけて清掃し、集めたゴミを40分かけて分類、計測します。グループ毎に分かれてみんなでゴミをプラスチック類、タバコの吸い殻、ペットボトルなどに分類します。

今回は、約400人ぐらいの参加でした。団体や個人の参加等さまざまです。

  そのなかで、タバコのフィルターの多さに驚かされました。サーファーが沢山いましたが、みんなが海岸にタバコを投げ捨てているとは思えません。事務局の話では、市中の排水溝に投げ捨てられたタバコの吸い殻が、雨水とともに海に流れ、それが海岸に打ち上げられたそうです。JTの職員に見せたいぐらいです。このフィルターを海亀や鳥が間違って食べて、腸閉塞等を起こして死に至ることを.....

  恐ろしい注射針等も発見されました。海外から流れ着いたゴミも沢山あります。海洋ゴミは一国だけでは対応が難しく、周辺国との連携が必要です。また海とは関係のなさそうな町中の排水溝なども関係しているので、多くの人に関心を持ってもらいたいものです。

Ocean Conservacyホームページ :
http://www.oceanconservancy.org/site/PageServer?pagename=icc_home

JEANホームページ :http://www.jean.jp/common.html

ICCキャンペーンの情報は海守からも頂いています。海守ブログは、以下の通り http://blog.canpan.info/umimori/archive/412


2009年9月15日火曜日

食の安全

餃子への農薬混入に始まり、事故米の食品への転売や、汚染牛乳による食品の国内流入など、食の安全を脅かす事件が後を立ちません。つい最近、ステーキレストラン「ペッパーランチ」のO157による食中毒が発生しました。
どこもかもが何らかの形で食品の信用を疑うような行為をやっているのではないでしょうか。何を信じて良いのか分からない状態です。

成型肉とは、タンパク質等の粘着剤で肉の端材や内蔵肉などを混ぜ合わせてブロック肉のように形を成型したものや、輸入肉に和牛の脂肪を注入して味を良くして圧力を加えて成型し直したものです。O157は筋肉内部には存在せず、たとえ表面に菌がいたとしても食べるときに表面を焼き、熱で菌を殺すので、レアで肉を食べることができます。しかし、成型肉は菌が内部に混入しており内部まで熱を加える必要があります。技術が進み、一見したところ消費者には成型肉かブロック肉か見分けがつきににくくなっています。成型肉である場合ははっきりと表示と注意を促すべきです。

販売者は人を騙して儲けることばかり考えているのではないでしょか。
中国も日本もあくどい商売人のやっていることは同じです。

餃子や事故米の問題は、いつの間にか有耶無耶になってしまいました。このような土壌にしてしまった農林水産省の体質も問われなければならない。事故米事件では、農林水産省の職員が自分達の責任を回避しようと躍起になったと思われます。うやむやな返答をしているうちに、内部の倫理違反や、業務の不正処理の事実を封印してしまったに違いありません。

食の問題は、国の安全保障の問題でもあります。新しく新設された消費者庁が各省庁の既得権益の壁を打ち破り、かつ官僚の不正を正し、消費者の職の安全を護っていけるか、これからが勝負です。

2009年9月11日金曜日

「海の森」、「瀬戸内オリーブ基金」プロジェクト

昨日、東京有楽町で全国建設業災害防止大会が開かれ、安藤忠雄先生が「建設業の責任」という題目で特別公演をされました。

そのなかで、東京湾にあるゴミ投棄でできた埋立地を「海の森」にするプロッジェクと提唱されていました。安藤忠雄先生は、本音を独特の声で述べられる関西人らしい人です。関西ではアンタダさんと親しみを込めて呼ばれています。「海の森」プロジェクトも「瀬戸内オリーブ基金」と同じ趣旨で提唱されています。

昨年、直島の直島美術館(アートサイトベネッセ)で学芸員の方から解説を聞き終わって解散したとき、すぐ横の椅子にどうも見たことのあるオッサンが座っていると思ったら、アンタダさんでした。まさか本人がすぐ横にいらっしゃるとは思いもしませんでした。夕食も隣のテーブルで、何となく親しみを感じます。

「瀬戸内オリーブ基金」には、私も賛同し、ベネッセハウスにある募金箱や、ユニクロにある募金箱に多少ですが募金をしています。また、「瀬戸内オリーブ基金」が助成する緑化運動の一つでもある「男木島に日本有数の水仙郷をつくるプロジェクト」にも参加し、山の中に水仙を植えてきました。

「瀬戸内オリーブ基金」趣意書は、以下の通りです。(全文転載)

−美しいふるさとを次の世代に−

わが国最大級の産業廃棄物の不法投棄事件として注目を集めた豊島事件は、ただひたすらに「豊かな島を後世に残したい」と闘ってきた島民たちの25年にもわたる運動の末、今後は隣接する島の一つである直島に処理施設を設け、廃棄物を完全に撤去・無害化するという道筋を得ました。しかし、かつての緑あふれる豊かな島を取り戻すという産廃撤去よりも困難な新たな闘いはまだ始まったばかりです。
「豊かな海」瀬戸内海は、海上交易で文化や産業を育み、一方で一万年にわたって島々や沿岸の住民に海の幸をもたらしてきた世界でも有数な閉鎖性海域です。わが国は六千八百五十二もの島々からなっており、瀬戸内海にそのうちの一千ほどの島が点在しています。
都会では経済効率が最優先され、すでに町に緑の入り込む余地がなくなりつつある現在、瀬戸内海の島々が本来もつ、海と森との絶妙な関係や自然が共存できる環境は、都会が求める経済的豊かさとは異なる価値観を与えてくれています。
私たちはこの考えのもと、かつての緑あふれる自然の再生を目的とし、豊島及び直島から瀬戸内海周辺一帯を対象にオリーブの木をはじめとした緑化活動を行うため、内外の多くの方々に志を募ることを決意しました。

この運動は、そこで生活する人々と共に植樹し、育てつづけることによって、一人一人が環境を守り、自然と共に生きてきた人類の原点を見直す意識を促そうをするものです。そして、大きな打撃を受けた豊島をはじめとする瀬戸内海の島々を結び、次の世代へ美しいふるさとを託すことを目的としています。多くの方々にこの趣旨をご理解いただき、ご協力いただけることを心から願っています。
呼びかけ人
中坊公平
安藤忠雄

NPO法人「瀬戸内オリーブ基金」ホームページ http://www.olive-foundation.org/

「海の森」プロジェクトホームページ http://www.uminomori.metro.tokyo.jp/

次世代に瀬戸内海の緑を復活することが、我々世代の使命です。

2009年9月9日水曜日

プロフェッショナルとは?

 長年建設業を支えてきたプロの職人が大量に定年を迎え、技術を次の世代に伝承するのが課題となっています。

 そのプロの職人について、土質工学の権威である岸田隆夫博士は以下のことを業界紙で述べられています。
 プロフェッショナルは多くの知識を持っているだけでなく、それらを実際の仕事の上で活かす知恵を持ち合わせています。習得した知識や経験を、知恵のレベルまで転化して身に付けているため、初めて体験するトラブルにも即応できます。それらを転職得智(てんしきとくち)という言葉で表現されています。知識を知恵に転ずるポイントは、前向きな姿勢、思考の習慣、論理的な説明力、そして良好な人間関係など、その人の普段の生活様式にあるようです。

 安全担当者もセーフティ・エンジニアとしてのプロフェッショナル意識を持つ必要があります。当然資格や知識が必要ですが、なによりもプロフェッショナル意識を持って自己研鑽を行い指導して社会的責任を果たさなければなりません。法律や基準を守らせるだけの安全担当者では安全水準は向上しません。技術者として市民に対し公共の福祉や安全・安心を担保し、労働者のディーセント・ワークも追求していかなくてはなりません。技術者として最も重要な責務を担っていることを自覚して、次世代にプロフェッショナル意識を伝承することが当面の自己の課題です。

 技術士のプロフェッショナル宣言は、以下の通りです。
 われわれ技術士は、国家資格を有するプロフェッションにふさわしい者として、一人ひとりがここに定めた行動原則を守るとともに、社団法人日本技術士会に所属し、互いに協力して資質の保持・向上を図り、自律的な規範に従う。
 これにより、社会からの信頼を高め、産業の健全な発展ならびに人々の幸せな生活の実現のために、貢献することを宣言する。

 野球でもプロフェッショナル意識を醸成するためにスローガンを作っています。プロ野球の阪神タイガースの虎風荘の食堂には、プロフェッショナル十訓が掲示されています。
 一、プロとは仕事に命を賭ける人である。
 一、プロは不可能を可能にする人である。
 一、プロとは自分の仕事に誇りを持つ人である。
 一、プロとは先を読んで動く人である。
 一、プロとは時間より目標を中心に仕事する人である。
 一、プロとは高い目標に向かってまい進する人である。
 一、プロとは成果に責任を持つ人である。
 一、プロとは報酬が成果により決まるひとである。
 一、プロとは甘えのない人である。
 一、プロとは能力向上のために常に努力する人である。

 プロフェッショナル宣言は発表するのは容易いですが、実践するにはかなりの努力を要します。今後とも常にプロフェッショナル意識を持って行動することに努めましょう。

2009年9月5日土曜日

海の神様 馬祖

横浜には媽祖廟があります。

 媽祖は、中国沿海部、特に福建省、広東省、台湾などを中心に信仰を集める道教の女神です。媽祖は、北宋時代に実在した福建省・林氏の娘で、28歳の9月9日に終業を終え天に召された後も、赤い衣装をまとって海上を舞い、難民を救助する姿が見られたので人々が廟を建て護国救民の神様として祀るようになりました。
 媽祖は航海の安全を護る海の神としてのみならず、自然災害や疫病・戦争・盗賊から人々を護る女神として、現在でも広く信仰されています。(横濱媽祖廟の説明書より)
媽祖廟では媽祖様と、順風耳、千里眼のほかに、文昌帝君(学問の神様)、月下老人(縁結びの神様)、臨水夫人(安産の神様)、註生娘娘(子宝の神様)、福徳正神(金運招財・財産安全)の神様が祀られています
お参りをするには、中国式線香を購入し、線香を立てそれぞれの神様にお願いをします。口に出さなくて良いことになっていますが、住所、氏名、生年月日と願いことを心の中で唱えます。
多くの人が願い事を布に書いて結んでいました。
また、横浜には神戸と同じように関帝廟もあります。
横浜は観光客が多く、神戸のようにゆっくりとお参りする雰囲気にはなれません。

詳しくは、横濱媽祖廟のホームページを参照

2009年9月1日火曜日

建設業の今後は、自ら構造改革を

衆議院総選挙で民主党が勝利し、次期特別国会で政権が交代します。

この政権交代で、国政が大きく変わると思われます。その中で、景気がどうなるのか、財政はどうなるのか、建設業はどうなるのか気になるところです。民主党のマニュフェストから推測すると、今までの税金の無駄遣いを正すとさかんに主張していますが、公共事業がすべて無駄遣いなような表現をマスコミは慎んでもらいたいものです。

無駄遣いは徹底して削減することに賛成ですが、建設業は税金を浪費している悪者扱いする風潮には反対です。税金の無駄遣いを削減することにより公共事業の規模は大幅に縮小します。そして多くの建設会社が淘汰され、地方では失業者が増加します。その失業者の受け皿をしっかりと設ける政策、いわゆる雇用のセーフティーネットを充実してもらいたいものです。

民主党のマニュフェストを抜粋すると
1ムダづかい
1.現在の政策・支出を全て見直す
【政策目的】
○自民党長期政権の下で温存された族議員、霞が関の既得権益を一掃する。
○政策コスト、調達コストを引き下げる。
【具体策】
○「行政刷新会議(仮称)」で政府の全ての政策・支出を、現場調査、外部意見を踏まえて、検証する。
○実施方法・調達方法を見直し、政策コスト、調達コストを引き下げる。
○不要不急の事業、効果の乏しい事業は、政治の責任で凍結・廃止する。

28.国の出先機関、直轄事業に対する地方の負担金は廃止する
【政策目的】
○国と地方の二重行政は排し、地方にできることは地方に委ねる。
○地方が自由に使えるお金を増やし、自治体が地域のニーズに適切に応えられるようにする。
【具体策】
○国の出先機関を原則廃止する。
○道路・河川・ダム等の全ての国直轄事業における負担金制度を廃止し、地方の約1兆円の負担をなくす。それに伴う地方交付税の減額は行わない。

となっています。公共事業がさらに減少し、建設業の淘汰がまさに始まろうとしています。国土交通省も、建設業者の過剰感を解消するため、数々施策を発表しています。そのなかで、これからは国外で事業展開すべきで、国土交通省もバックアップする体制を整えていきたいとしています。

先日、国土交通省が主催する「建設業等の国際展開支援フォーラム」(座長は元三井物産の常務で現日本総研の寺島実郎氏、メンバーには高知工科大学の草柳教授他)があり、そのなかで施策が述べられています。
 わが国の重点政策が公共事業を中心とする社会基盤(ハード)の整備から、少子化対策・高齢者医療・介護(ソフト)の整備へと大きく舵を切り、日本の社会構造が大きな地殻変動を起こし始めています。戦後60年余にわたり日本の復興から発展へ多大な寄与をしてきたわが国建設業も、1990年代初頭をピーク(80兆円超)に徐々に減少に転じた国内建設投資を反映し、その勢いは漸減傾向をたどっています。特にこの数年を見るとこの傾向が一時的なものではなく(昨年度48兆円強)、まさに建設業陶汰の時代へ突入したといえます。今後は、わが国の建設会社が積極的に国際展開し、海外事業をこれまでの"従"たる分野から企業全体の"主"たる分野に転換を図る必要があるとしています。
 国土交通省のこのような発表は、今後の公共事業の縮小に対し、建設業に対し早急なる抜本的構造改革を求めています。

建設業は、民主党が政権を取ったからといってボヤクのではなく、遅かれ早かれ構造改革を行わなければ、産業として崩壊してしまいます。災害のない安全な現場で、良い品質のものを作るには、自ら構造改革をして健全性を保つ必要があります。

建設業も、今こそ改革を行うときです。

2009年8月31日月曜日

世界で最も危険な国

2009年8月10日、米外交専門誌フォーリン・ポリシーが発表した「世界で最も危険な10か国・地域」について国際在線が伝えた記事がありました。

それによると世界で最も危険な国は第一位が米国、第二位が中国です。記事の内容は、世界最強である米国は「正義を守る」ことを第一にしているが、実は過去10年間、最も攻撃性のある国家であったことは否めないと指摘。また、米経済のミスが全世界を金融危機に陥れたにも関わらず、いまだに有効的な解決策を示していないと指摘。(以上国際在線記事より抜粋)

テロの根を絶つためアフガニスタンやイラクを攻撃、パレスチナ占拠の支援は、自由の正義と民主主義を守るためなのか。米国企業家(特に石油資本)の利益を守るためだけの口実に過ぎないのかという気さえします。
安全管理でいう直接原因をいくら是正しようとしても、根本原因を絶たなければ解決しません。
米国の身勝手な資本主義、資本力に任せたウォール街の無秩序な投機が世界を蝕み、地域間格差を生み、人類に脅威を与えているのではないでしょうか。

海外で働く米国人は常に標的に不満を抱く人々の標的になります。日本も米国追従外交だと危険な国と思われようになります。そのためにも日本独自の道をポリシーを持って進めてもらいたいものです。

3位以下はパキスタン、ロシア、イラン、イスラエルとパレスチナ、ナイジェリアとコンゴ、欧州連合(EU)、イラクとサウジアラビア、ベネズエラの順です。

2009年8月26日水曜日

安全管理における言語と民族の壁

日本国内と海外の工事との安全管理の違いは原則としてありません。安全確保するために同じことをする必要があります。

ただし、日本の会社が海外で工事を行う場合、どうしても言葉の問題が生じます。通常現場組織は、日本人スタッフのほか現地人スタッフ、第三国人スタッフの混成チームですが共通語は英語です。でも日本人は英語が苦手で上手くコミュニケーションが取れないことが多く、やりたいこと、伝えたいことが相手に理解されないことが多いようです。

民間プラント会社が施主の場合、欧米人のHSEマネージャー(安全衛生・環境担当マネージャー)が常駐して強い権限で厳しい管理が行われます。内容は国内と同じようなごく当たり前のことを英語で指示されるものだから、パニックに陥るようです。

また、実際に働く作業員はほとんど英語をしゃべることが出来ず、指示を出すのに現地語に翻訳して伝える必要があります。日本語→英語→現地語という経路をたどるため、正確に意思が伝わらないのは当然です。その結果、安全管理は、ローカルスタッフのセーフティオフィサー(安全担当者)にまかせっきりになる傾向があります。しかし、ローカルスタッフの知識レベルが豊富な安全管理の知識を有しているとはいえず、現場の危険性を見逃す結果になっています。
言語はコミュニケーションの最低限のツールであり、避けて通れません。

もう一つの障害は、民族問題です。例えばローカルスタッフがフィリピン人やインド人(どちらも英語が堪能)で、作業員がインドネシア人などの場合、民族間の反感があり、指示に対して従おうとしないことがあります。地道に現地人スタッフを教育して英語力や技術力に堪能にする必要がありますが、時間がかかります。

このような状態で、安全管理を行うのは知恵が要ります。これから試行錯誤の状態が続きそうです。

2009年8月24日月曜日

電車運転中の盗撮行為

JR西日本の運転士が運転中に女性を盗撮したことがニュースで報じられました。

21日、JR西日本の姫路発敦賀行きの新快速電車で、湖西線のマキノと永原の間を時速120kmで走行中、イスに座ったまま後ろを向きカーテンの隙間から女性2人を携帯電話のカメラで盗撮していたことが判明しました。

JR湖西線は一般の在来線と違い、全線立体交差化され踏切が一切なく、最小半径1400km、最高速度130kmの規格となっています。また、ほくほく線のように高速信号システムやホームドアを導入すれば、特急サンダーバードを時速160kmで走行できるようになっています。
このような規格が通常の在来線と違って、安全装置に任せて運転すれば安全が確保でき運転の単調さが生じるのだと思います。

航空産業ではヒューマンエラーの分析が進んでいます。飛行機のパイロットほど単調な業務はありません。離陸と着陸の際は最も緊張しますが、巡航中は業務が極端に単調になります。人間の本来の特性として、攻撃性、同調性、好奇心があります。そのなかで好奇心は、あらゆる発明・発見、創造の根源をなすものです。しかし、パイロットや電車の運転士にとって好奇心は注意力を散漫にします。新快速電車の運転士は停車駅の間隔も長くずっと座りっぱなしで、退屈を紛らわせようとして働いた好奇心が大きな事故に発展する危険性があります。単調な業務そのものが不注意のもとになり、ちょっとした過ちが大惨事につながります。

JR西日本は、宝塚線脱線事故の再発防止対策として鉄道業界として始めてリスクアセスメントを導入すると発表しましたが、航空産業で取り入れているヒューマンエラー対策も導入すべきです。今回の事件は、単に運転士の規則違反で終わらせてはなりません。運転士の業務特性をヒューマンファクターの面から分析して、対策を立てる必要はあります。

強いストレスが続く時、セックスなどに気が散るのは人間本来の自然の姿かもしれません。根本原因のストレスの緩和方法や、運行本部との交信などで業務の単調性を改善する等、ヒューマンファクターへの対応が必要です。

2009年8月21日金曜日

新型インフルエンザの第二波

夏だというのに、インフルエンザ患者が急増しています。

通常7〜8月はインフルエンザ感染者が少なく、秋から春にかけて大流行します。
しかし、この新型インフルエンザは暑い時期でも感染者が増えていくようです。夏の暑さで体が弱っている状態と人々の移動が活発になることが感染を広める原因になっているのではないかと思います。

日本では、沖縄県が突出して感染者を多く出しています。また、東南アジアでも感染者が急増しています。タイでは新型インフルエンザ感染による死者がすでに100人に達したと報じています。インドネシアでも正確な数字がつかめていませんが感染者が急激に増加しているようです。

新型インフルエンザは今のところ毒性が弱く、致死率はカナダ・アメリカ合衆国で0.5%で、通常型インフルエンザの致死率0.1%の5倍程度と発表されています。しかし、東南アジアで感染が拡大して、再び豚などを介在して強毒性の鳥インフルエンザウイルスの遺伝子と融合し、強毒性の新型インフルエンザに変異する可能性もあります。

したがって、この第二波の感染拡大を注意深く対処する必要があります。ただし、マスコミによる「恐怖の扇動」だけは止めてもらいたいものです。

2009年8月18日火曜日

船員保険の労災保険への統合

平成22年1月に、船員保険の職務上疾病・年金部門の労災保険相当部分が労災保険に統合される予定です。
そして、労災保険に船員に相当する業種が追加されます。

船員保険は、船員法第1条に規定する船員として船舶所有者に使用される船員を対象とする社会保険庁が主管する社会保険制度で、船舶法に定める日本船舶等に乗り込む船長、海員、予備船員が対象となっています。
そのうち、5トン未満の船舶、湖、川または港内のみを航行する船舶、30トン未満の漁船の一部、スポーツ又はレクリエーションの用に共するヨットまたはモーターボートは除きます。

船員保険制度は一般の健康保険制度、雇用保険制度、労働者災害補償保険制度を一つの制度で行うものです。以前は年金制度も含まれていましたが、1986年に厚生年金へ統合されました。

今回の法改正は、(1)労働者災害補償保険法の適用除外対象から船員保険の被保険者を削除するもの、(2)厚生労働大臣から国土交通大臣に対し船員法に基づく措置を要求することができるもの、(3)その他所要の規定の整備を行うものとすることとなっています。

ところで、労災保険の適用事業除外となるのは以下のものがあります。
・国の直営事業 :国が自ら行う事業で、国有林野、印刷、造幣の3現業です。
・非現業の官公署 :国家公務員・地方公務員の事務部門で、現業部門は労災対象です。
・船員保険の強制被保険者

港湾工事に携わる建設会社は、今まで被船員保険者が被災した労働災害を災害統計から除外していましたが、今後は統計に算入することになります。
いずれの保険の対象になろうと災害を発生させてはなりません。一人親方も、すべて災害統計に組み入れないと真の実態をつかむことができません。

今回の統合は、すべての労働災害の把握と災害防止の第一歩です。

2009年8月16日日曜日

四国八十八カ所遍路の最終地、高野山

四国お遍路の最終地、高野山

今年の1月に四国88カ所お遍路を始め3月末に結願しましたが、やっと最終目的地の高野山金剛峰寺奥の院に行くことができました。

高野山は弘法大師(空海)が真言密教の聖地として816年に開かれ、835年3月21日に奥の院の山の中に入定され、今も修行を続けておられます。
English page is here.
奥の院に続く道は樹齢100年以上の杉が鬱蒼としています。
戦国大名の墓も、敵味方同じようにお大師さんにすがってお墓が建てられています。
御廟橋から先はお大師さまが現在も入定されているため、聖域とされ、脱帽、写真撮影禁止です。
金剛三味院は杉木立の中にあり、静かなロケーションで落ち着きます。
御影堂は、私の最も好きな建物の一つです。屋根に雪を被った御影堂は最高です。
ここは、標高1000mに近いので、いまだに紫陽花が咲いていました。

                     南無大師遍照金剛

2009年8月15日土曜日

災害復旧と技術者

駿河湾を震源とする今回の地震は、東名高速道路の路肩が円弧滑りを起こして崩壊し、東西の大動脈が寸断されました。

私も当日朝から車で横浜から浜松に寄って大阪へ戻るところでした。準備しているところ、5時過ぎ横揺れがあり、テレビをつけしばらくすると東名高速道路の通行止めが報道されていました。仕方なく大渋滞の中、国道1号線を走り静岡方面に向かいましたが、在来道路は大渋滞でした。早く新東名高速道路を開通させないと、さらに大きな東海大地震が発生した時、西日本と東日本を結ぶ経済の大動脈が完全にマヒしてしまい、復旧のためのアクセスすら確保できなくなります。

今回、被害状況の把握や災害復旧の初動について、政府、静岡県、民間企業ともに素早かったようです。
NEXCO中日本は、すぐに昼夜で復旧することを決めました。しかし復旧するといっても発注図面などありません。簡単なポンチ絵だけで、直接現場に立つ技術者の経験に基づいた判断が工事を左右します。未知の事業に対して、公衆が安全に利用できるものを、作業員にケガをささずに安全に、かつできるだけ早く合理的な手段で完成させる。このようなマネジメントを任されることは、技術者名利につきます。

私は阪神大震災の際、大阪新淀川堤防の災害復旧を担当しました。最初は図面などほとんどなく、周りのグシャグシャになった家を見て一日でも早く復旧しないといけないという思いで必死でした。

今回は東海大地震の対策として想定していたことの根底が崩れたことが大きな問題です。すなわち復旧のためのメインルートである東名高速道路がいとも簡単に寸断されてしまったことです。再度災害復旧計画を見直すべきです。

工程が延びますが安全を最優先して、工法を変更しながら進めていることは、技術者といて当選の選択だと思います。NEXCO中日本の作成した復旧案に対し、技術者としてだめなものはだめだと、相当議論があったことだと想像できます。安全性を貫くことこそ技術者です。今回、夏休み期間中にもかかわらず徹夜で復旧工事に当たられた大林組および協力会社の皆様、大変お疲れさまです。

なお、台湾高雄県や兵庫県佐用町でも多くの方が水害で被災され、亡くなられました。ご冥福を申し上げます。

2009年8月11日火曜日

熱中症の季節です

梅雨もようやく明けそうな気配ですが、熱中症の季節も到来します。

  東南アジアは赤道に近いので日本より暑く熱中症が多いように思われがちですが、意外と熱中症の発生は日本より少ないようです。

  赤道直下の国で熱中症が意外に少ないのは、躰が長年暑い気温にさらされていて、躰が暑さに対し順応していることです。一方我々日本人は、エアコンディショナーで冷やされた空間で生活することが多く暑さに躰が順応していません。したがって、暑い中で作業するとすぐに躰が異変を起こしてしまいます。

  最近では、そんなに暑いと思われていない気象条件でも、朝の早い時間に熱中症で異変を訴える人が増えています。夜更かしや深酒、下痢などの影響があるかもしれません。特にアルコールは躰のなかで分解するときに水分を消費するので要注意です。

  東南アジアでも作業中に水を飲むことを奨励していましたが、真水は要注意ということを知らない人が多いようです。真水を飲むと躰の中の浸透圧の関係から、躰の塩分が吸い出され塩分不足になることです。塩分が不足すると痙攣を起こしやすくなります。塩分補給の塩飴は美味しくなく好きになれません。スポーツドリンクがベストでしょう。

  おすすめのスポーツドリンクは
  ・エネルゲン(大塚製薬)
  ・メダリスト(アリスト)
  ・アミノバイタル(味の素)
  ・ポカリスエット(大塚製薬)
  ・バイオ茶(上水園)


Heat StressのなかでOSHA(アメリカ労働安全衛生庁)の発表する対策で特筆することは、水は15分にカップ1杯の間隔で飲むこと、アルコール・カフェインの入った飲み物・お腹に重たい食事は避けることを述べています。飲酒など個人の私生活に及んできますので、熱中症対策は個人の責務も大きいです。

2009年8月8日土曜日

高尾山薬王院

高尾山薬王院

JR中央本線高尾駅北口は、古風な木造駅舎で参拝者や登山者の道中安全を祈願して天狗が出向けてくれます。正式名は高尾山薬王院有喜寺で、真言宗智山派大本山です。創建当時は薬師如来を御本尊としていましたが、現在は飯縄大権現が御本尊です。
駅のすぐ横に神戸屋パンのショップが有り、チーズブレッドとカフェオレで一休み。バケットやクロワッサンを売っていて、朝早くからパン屋を捜したのが悔やまれました。
杉の巨木の間を進むと本堂に上がる最後の階段です。
いつも大勢の人でにぎわっています。工事安全祈願。
厳めしい修行者です。両脇に烏天狗と天狗が邪気を払っています。自由自在に飛翔する伝説上の生物です。一説にはインド神話の神鳥ガルダの流れがあるとされています。
後ろから見るとまるで天使様です。