2012年12月18日火曜日

安全衛生担当者が装備すべき個人用保護具(PPE)

安全衛生担当者が現場巡視に行く際、最低限装備すべき個人用保護具(PPE)の代表的なものには、以下のものがあります。安全衛生担当者 は、他の者に対して見本となるべき存在であり、各現場においては下記の基準を満たしたものを装備するように指導する必要があります。(ENは欧州規格、ANSIは米国工業規格、JISは日本工業規格の略です)
  1. 安全靴: 土木の現場では、先芯があるもので、EN3451992 S5ANSI Z 41-1991JIS T  8101 S種いずれかの基準を満足するもの。安全靴は、牛革製であることも条件になっています。また、短靴を使用する場合はスパッツを併用する必要があります。
  2. 保護帽: 一般作業では、EN397ANSI Z 89.1、厚生労働省型式認定いずれかの基準を満足するもの。欧米の保護帽(飛来落下防止が主な目的)はラチェット構造で頭に固定し、顎ひもは標準装備されていません。その理由は、落下物が頭に当たった時、ヘルメットが脱落することによってエネルギーが分散し、頭への衝撃を緩和させるためです。野球のヘルメットと同じ考え方です。ただし、高所作業者は顎ひもが必要です。
  3. 保護めがね EN166:2001 クラス2ANSI Z 87.1JIS T 81472003いずれかの基準を満足するもの。日本では、着用の意識が極めて希薄ですが、欧米ではヘルメットと同じような感じで着用させられます。
  4. 高視認性安全ベスト EN471 クラス2ANSI 107 クラス2の基準を満足すもの(黄色)。日本には特に規格がありません。英国では、道路工事従事者には法令で義務付けられていて、昼間でも視認性を確保する仕様になっています。欧米では、一般工事従事者も着用することが一般的になっていますが、日本では反射チョッキが一部の事業者に採用されているだけです。
  5. 耳栓 EN352ANSI S3.19JIS T 8161いずれかの基準を満足するもの。 
  6. 使い捨て式防塵マスク EN149FFP2)NIOSH認定(N95)、厚生労働省大臣型式検定(DS2)のいずれかの基準を満足するもの。風邪用マスクは、防じんマスクには適しません。
  7. 手袋:皮手袋は、EN388:2004 の基準を満足するもの。その他作業状況に応じた手袋を使用する。綿製軍手は、回転する機械工具で使用すると巻き込まれる恐れがあり危険です。
  8. フルボディーハーネス EN358/EN361ANSI Z 351、「安全帯の規格」(厚生労働省告示第38号平成14225日)のいずれかの基準を満足するもの。欧米では、胴ベルト型安全帯は一般作業では使用禁止になっています。その理由は、胴ベルト型の場合、墜落した時の身体への衝撃が大きく、内臓破裂になるケースもあることから、墜落しても身体を守る思想が貫かれています。
  9. 救命胴衣 EN395USCG、国土交通省小型船舶用救命胴衣の型式承認試験基準(Type-A)のいずれかの基準を満足するもの。
  10. ホイッスル: 巡視中に作業員に危険が迫っているのを発見したとき、または自分自身に危険が迫ったときにまわりに知らせる必要があります。
また、使用に際しては、各国の規格/基準や事業所の安全基準を優先するか、または、それらの基準を上回ったPPEを採用する必要があります。全般的に、欧米の基準の方が日本の基準より遥かに厳しくなっています。まだ、日本は少しでも楽をしたいという消費者(労働者)の意見を優先するメーカーが多く、厚生労働省も労働者の安全を優先するというよりメーカーの販売戦略を優先する意見を尊重しているのではないかと思われます。

とにかく、安全衛生担当者は、きちんとした服装と装備で現場に出ましょう。

2012年12月16日日曜日

シニアエンジニアのストレス

五十歳半ばを過ぎると、今まで考えてもいなかった色んなストレスが増えてくる。

まず最初に物忘れが激しくなる。顔ははっきり覚えているのだがなかなか名前が出てこない。その名前が出てこないことでイライラしストレスになる。また、晩ご飯、何を食べたのか全て言えない。何か一つ思い出せない小皿などがある。私は現在、毎日全て思い出して書き留める訓練をしているが、これもストレスになっている。

仕事上のストレスは、パソコンです。マイクロソフト・オフィスがバージョンアップしたら、今までのボタンがどこにあるか判らない。勝手にボタンの位置を変えるなよ、と画面に向かって怒るが、画面は我々を全く無視したままである。それだけで時間が無駄に過ぎてゆきストレスになってくる。

さらに、この歳になって突然海外勤務に曝されることがある。その場合、英語とは全く無縁の職場からいきなり英語の職場に放り込まれる。最初は、言葉等気にしなくていいからと言われ、その気でその職場に行くと言葉ができなくては話にならないことが多く、手振りを交えてなんとか会話をするのだが、相手に意味が通じずストレスになってくる。ただし、言葉ができることより技術や職務内容が判っていることの方が重要だが....

退職後の生活の不安も、無意識のうちにストレスになっている。そして、体力の衰えがあるが、これはどうしようもないので、有酸素運動と筋力トレーニングに励むしかない。

最も大きなストレスは、人間関係であろう。これは、年齢に限ったことではないが、年を取ると人の話を聞かなくなり、わがままに自分の意見を押し付け周りから鬱陶しがられことが多いです。

これらのストレスをうまくかわさないと「うつ」になる恐れがあります。
エンジニアは、六十歳までは見習いで、六十歳以降が本番です。これらのストレスにへこたれているヒマはないのです。真のエンジニアを目指して、あともう少し修業に励もう。

2012年12月8日土曜日

技術者が情報発信してこなかったツケ

道を歩いていたら、
 突然、杭打機が倒れてくる
 道路際のB型バリケードが倒れてくる
 突然、建設中のビルの上から鋼材が落ちてくる

車を運転していたら
 トンネルで走行中、コンクリート版が落ちてくる
 突然、穴が開いて落ちる
 突然、目の前の橋桁が落ちる 

このような災害に遭遇した時、歩行者や運転者には何の過失もない。また当事者は建設作業の安全性や、出来上がった社会基盤の安全性を信じきっている。安全性が確保されていてこそ安心して社会生活を営むことができる。

最近顕著になった社会基盤の老朽化と、建設現場の不安全作業などにより、シビルエンジニアリングへの信頼性が低下している。技術者は、社会基盤の老朽化している様子をよく見て知っている。しかし、予算がないと何もできない。

なぜ、このようなことになってしまったのだろうか。
技術者が、もっと社会に正確な情報を強く発信してこなかったからだと考えます。

技術者個人では、行政や企業の思惑に左右されて何もできないと思われがちだが、技術者の集まりである技術士会や労働安全コンサルタント会と通して、市民の立場に立った社会基盤の安全性や、社会基盤を整備する際の安全確保について情報を発信して行かなければなりません。

今こそ、技術者の倫理が試されるときです。