2011年3月30日水曜日

安全安心・環境、雇用、新産業の育成を確保する復興計画を

東日本大震災で今でも20万人以上の人が避難生活を強いられている。
一日も早く、安心して住める本格的な住環境が求められている。

復興事業を行う際、まず基本方針を策定すべきです。安全安心の確保および環境の保全、雇用の確保、新産業の育成がキーワードとなる。
(1)永遠に安心して住むことができること: 当たりまえのようで一番困難を伴うことである。三陸海岸は過去から何回も大津波の被害にあってきた。869年の貞観大地震は、大陸プレートが連続的に破壊し大津波が襲い日本史上最大の地震と言われている。その後何度も大地震と津波が発生していて1896年の明治大津波は高さ38.2mで大被害を出した。人々は震災にあった時は海岸付近には住んではいけないことを知るが、時間を経るにつれて震災の意識が薄れ便利な海岸付近に住みだす。
しかし、今度こそは都市計画をする上で、公共建物や復興住宅などの市街区域を高台に配置する必要がある。高台を造成するためには、土地を国家が買い上げて地権者の財産を保護するとともに地権者も供出に協力しなければならない。高台は、付近の丘陵地を造成するか、海岸部を浚渫してその土砂で高さ40〜50mの土地を造成する。山を削る場合は、土砂崩壊を起こすようであってはならない。

(2)環境に配慮した実験都市をつくり、将来の日本経済を牽引するような産業を育成する。それには、以下のような技術を導入する。
自立的な電力供給: すべての復興アパートには太陽光発電(ソーラーパネル/蓄電池型)と太陽熱利用温水器(集熱板/貯湯槽分離型)および外部電力(東北電力)のハイブリッドシステムを装備する。海岸部分及び造成地法面にはソーラーパネルを設置し、メガソーラー発電所を設置する。また、沿岸の山間部に風力発電を配置する。

先端配電網の整備: スマートグリッドシステムの導入し電気を効率的に配電する。また、送配電線網を利用した通信システムを各戸に導入するとともに、スカイプシステムを各戸に導入し、画像によるコミュニケーションを通して、民生委員が画像を見ながら高齢者の健康状態を把握し生活指導を行う。

亜臨界水による木材分解プラントとバイオ醗酵によるエタノール製造プラントの設置: 現在、小規模の亜臨界水による有機物分解プラントはある。震災で発生した木材殻を分解して、それをさらにバクテリアで分解してエタノールに変える大規模なプラントを海岸低部区域に建設する。全ての木材が片付いた後は、間伐材や籾殻、生ゴミなどを分解してエタノールにする。エタノールは自動車の燃料や小型発電機の燃料として利用する。海岸底部区域には等間隔に津波スクリーンを設置する。

低炭素社会を構築: 公用車や公共交通に使用する車は電気自動車とする。復興住宅をはじめ公共建物には急速充電装置を設置して、町中何処でも充電できるようにする。また、電気自動車を緊急時の予備電源として利用する。

ヒートポンプによる熱交換: 公共建物や道路の融雪装置においては、ヒートポンプによる冷暖房設備を導入する。投入した電気エネルギーの数倍のエネルギーとして取り出すことができ、CO2の排出を抑えることができる。さらに、冷媒としてCO2を利用する。

これらのシステムはすべて既存の技術であるが、まだコストがかかるという理由で普及していない。これらの技術を全面的に採用することにより、コストを下げ日本経済を牽引する産業に育てることに、この復興事業を活用してもらいたい。

(3)原子力発電所の安全性能の見直し: 全国の原子力発電所は安全性能を見直し、定期点検時に改修工事を実施する。また、40年を経過する原子力発電所は廃炉とする。当然、福島第一原子力発電所は、廃炉にしなければならないが、東海・東南海・南海地震の震源域に極めて近い中部電力の浜岡原子力発電所は速やかに廃炉とすべきである。
安全性を見直す際、技術者は「想定外」という言葉を安易に使ってはならない。それは政治家のみが言い訳のために使う言葉だ。 
復興地域に新設したLNGまたは石炭火力発電所にはCCS(二酸化炭素回収・貯蔵システム)を装備し、二酸化炭素を排出しない発電所にする。

(4)雇用の確保: 東北各県土木部と国土交通省東北地方整備局を統合した東北復興庁を設け、資金は国から拠出するが運営は地元を主導で行う。そして、復興に動員する技術者や作業員は、積極的に被災者を雇用する。また、復興後の地方分権の先導役となるように、各県の連携を強めた広域連合会議を設ける。

(5)海外への情報発信基地: 復興都市は海外からお手本となるような、環境を考慮した安全な都市とする。神戸のようにただ単に以前にあった施設を復元するというものであってはならない。復興都市を魅力あるものにして他の地域からも住んでみたいというものになればもっとよい。

現在の財政状態では被災したすべての街を以上のような復興都市にすることはできない。拠点都市を決めて、地域ごとに都市を集約する必要がある。それには政治的な軋轢が予想されるが、将来の日本が引き続き世界経済の中で戦って行くことができるには、大きな決断をしなければならない。

日本の未来は、安全安心・雇用の確保、新産業の育成にある。

2011年3月27日日曜日

鎌倉で復興祈願

東日本大震災から2週間が経ち、東北や北関東ではまだ多くの方が厳しい避難生活を送られているが、東京や横浜では東京電力による計画停電があるものの生活が以前の状態に戻ってきた。今日は天気が良く穏やかなので鎌倉のお寺に復興祈願をかねてお参りをした。

妙本寺では、東日本大震災の犠牲者諸霊追悼も行われていた。妙本寺は日蓮宗の本山格で十界曼荼羅を御本尊としている。山門には、「他人には親切に、自分には辛切に いつも心がけてください」と書いてあった。震災直後、近くのスーパーマーケットでは買い占めをする主婦であふれるなど非常に見苦しいものを見てしまった。日本全国で被災地を支援しようとしている一方で自分さえ良ければ好いというような主婦もいるようです。その人たちにこの言葉を読んでもらいたいものです。




妙法寺も日蓮宗のお寺で、苔むした石段があるところから苔寺とも呼ばれている。
長谷寺のように多くの観光客はいなく、静かな佇まいです。
今年は寒さが続いているせいか、染井吉野はまだ咲いていない。ところどこと寒緋桜が咲いていた。



日蓮が布教活動をしていた頃も、国土が荒廃した上に元が攻めてくるという日本の終末を心配して人々は不安になっていた。今回は東北と北関東が世界最大級の地震と津波に襲われ、それに追い打ちをかけるように東京電力の福島第一原子力発電所による放射線物質の汚染で復旧のめども立たない状態である。
国家財政の疲弊も甚だしく、日本経済をいかに立ち直らせるか、政府のスピーディな判断とリーダーシップが必要であろう。

2011年3月23日水曜日

スリーマイル島・原発事故

スリーマイル島原子力発電所の炉心溶融事故についてもう一度整理してみる。
この事故は、ヒューマンエラーが引き金になっている。

スリーマイル島原子力発電所は2つの原子炉を有し、事故を起こした2号炉は加圧水型原子炉(PWR)で電気出力は96万kWであった。東京電力の原子炉(沸騰水型原子炉 BWR)とは異なり、関西電力と同じ形式の原子炉である。

スリーマイル島原発の2号炉は、事故を起こすちょうど1年前に臨界に達して定格出力の97%で営業運転中であったが、当初から小さな故障が続発していた。
もともと原子炉を運営していた電力会社の経営状態が思わしくなく、いちいち小さな故障に対してその都度原子炉を停止するようなことは行わず、だましだまし運転し安全意識もかなり低下していた。その中で重大なのが、加圧器逃がし弁の不調である。この弁は、1次冷却系の圧力が高まったときに自動的に開いて冷却水を放出するものだが、圧力が低下した後も閉じないで「開固着」しやすい状態にあった。

さらに2次冷却系には万一に備えて冷却水を補給する装置が設置されているが、補助給水装置は非常時に直ぐに起動しなければならないものなので、そのバルブは常に開いていなければならない。ところが、数日前にこれを点検した際に、整備員が給水用のバルブを誤って閉じたままにしてしまったのである。

2次系の復水器の脱塩装置にあるフィルターが目詰まりを起こしため、当直のオペレーターは、圧搾空気を送り込んで解消しようとしたが、その作業の際に、溢れた水が弁を操作する部分に入ってしまい、2次冷却水を循環させる配管の弁が閉じたため、自動的に二次冷却水の主給水ポンプも停止することになった。この時点が、スリーマイル島原発事故の出発点と考えられる。

そのため蒸気発生器への二次冷却水の供給が行われず、除熱が出来ないことになり、一次冷却系を含む炉心の圧力が上昇し加圧器逃し安全弁が開いた。
このとき弁が開いたまま固着し圧力が下がってもなお弁が開いたままとなり、蒸気の形で大量の原子炉冷却材が失われていった。

このとき事態を決定的なものとする第一失策を行われる。オペレーターは、1次系が満水に近い状態にあると誤解してしまった。その原因として第一に加圧器に取り付けられていた水位計が誤って満水状態を指示していたこと、第二に、操作ボード上で加圧器逃がし弁に関する表示が、実際の状態を表すものではなく、開/閉の指令を指示するだけであった点が挙げられている。このため運転員が冷却水過剰と勘違いし、自動的に作動していたECCS(緊急炉心冷却装置)を手動で停止されてしまう。
その後も最も重大な加圧器逃がし弁の開固着には誰も気がつかず、オペレーターの意識は、最初にトラブルを起こした復水器や補助給水バルブのある2次系に集中してしまい、1次系の危機が認識されにくい状況になった。また、オペレーターには目の前のボードの操作に忙殺されて心理的余裕がなくなっていた。

次に事態を決定的なものとする第二の失策が行われる。2次系の主給水ポンプが停止してからほぼ1時間を経過した頃から、1次冷却水を循環させるポンプが音をたてて振動を始めた。これは、圧力低下と温度上昇の結果として水中に気泡が生じ、この泡がポンプ内部で破裂するために引き起こされた。オペレーターは、4基ある冷却水ポンプを手動で全部停止した。

この結果、冷却水が循環する過程でわずかに行われていた除熱がほとんど不可能になり、開きっぱなしになっていた安全弁から500トンの冷却水が流出し、燃料棒は炉心上部3分の2が蒸気中に露出してしまった。こうなると、熱の逃げ道がなくなって炉心が過熱し、最終的には溶融を始める(炉心溶融)。さらに、被覆材として用いられていたジルコニウムが溶け出し、これが水と化学反応を起こして水素ガスが発生して、水素爆発の危険が高くなる。もし、高熱や水素爆発によって原子炉の格納容器が破壊されると、放射性物質が大量に周辺にまき散らされることになり、もはや状況は大惨事の一歩手前まで差し迫っていた。ただし、1989年の調査では、圧力容器に亀裂が入っていたことが判明している。

このため周辺住民の大規模避難が行われた。その後、運転員による給水回復措置が取られ、事故は終息したが、炉心溶融で、燃料の45%、62トンが原子炉圧力容器の底に溜まった。給水回復の急激な冷却によって、炉心溶融が予想より大きかった。
放出された放射性物質はヨウ素555GBq(15キュリー)など、周辺住民の被曝は0.01 - 1mSv程度であり、住民や環境への影響はほとんど無かった。

スリーマイル島原発事故は、国際原子力事象評価尺度(INES)はレベル5としてIAEAに登録されている。現在の福島第一原子力発電所1〜3号機の事故について、経済産業省原子力安全・保安院は、暫定評価としてレベル5と報告している。ちなみにチェルノブイリ原発事故は最も深刻なレベル7であった。

2011年3月19日土曜日

原発の安全神話

安全に「絶対安全」という言葉はない。これは技術者の常識である。

原子力発電所は、人々に漠然たる不安がどうしても払拭されないにもかかわらず、発電所を立地する際に電力会社や政府は絶対安全だと住民に説明してきた。技術者が原子力設備は絶対に安全と思っていないにもかかわらず、絶対安全と言わざる得ないことが、これまでの不幸を生んだ。
住民に絶対安全と言ったために、事故が起きた場合はそれを公にせず内部で処理しようとし、不利なデータや情報は隠すようになり、さらには虚偽報告までしたために、社会からの信頼を大きく損ねてしまった。(「事故から学ぶ技術者倫理より」中村昌允著)

これまで発生した高速増殖炉「もんじゅ」の火災事故、動燃アスファルト固化処理施設火災爆発事故、JOC臨界事故、美浜原発3号機二次系冷却配管の破損事故など多くの原発事故は、技術者が本当の事象を説明しなかったことが問題の根底にあり、電力会社の企業倫理も大きく問われた。

今回の原発事故は、原発が未曾有の自然災害の遭遇したということもあるが、事故の対応が後手に回ったことは、やはり電力会社及び監督官庁の情報隠蔽体質が影響したものと思われる。

米紙ニューヨークタイムスは、18日付の社説で、東日本大震災で危機状況にある福島第一原発の事故をめぐり、東京電力と日本政府の対応について「心配になるほど不透明だ」と批判している。官房長官の記者会見は、国民に余計な不安を与えてパニックにならないように配慮する内容に終始し、逆に不信感を深めている。そのことが、米国が原発から半径80km以内の米国人の退去命令になったのであろう。

現時点では済んでしまったことをとやかく言っても仕方がない。現在どうするかが最も重要なことである。もう原発の安全神話は完全にくずれたのであり、危険のリスク情報は可能性の大小が明確でなくても、国民に開示していくべきであろう。

放射性物質が原発から漏洩している中で、東京電力、日立製作所、東芝、自衛隊、東京都消防庁などが、放水作業により決死の覚悟で原発と戦っている。これから大阪市消防局や横浜市消防局が加わる。日本のために命がけで戦っている。これらの人たちに二次災害が及ばないように、情報はすべて開示し国際原子力機関や欧米の原子力機関とともに一体となって解決に導いてもらいたい。

この結果は世界中が見守っており、世界のエネルギー政策を左右するほど重要である。
Never give up. We are one, all for JAPAN.

2011年3月16日水曜日

東北への支援物資の協力

地震・津波で避難されている方に、さらに東京電力(株)福島原発の放射線性物質拡散の影響で、避難されている人が増えて、避難所は大変なことになっています。
朝日新聞の17日発表では、避難されている方は42万人を超えています。被災地ではまだまだ支援物資が行き届いていないようです。

山屋、カヌーイストの皆さん、モンベルで支援物資の協力を呼びかけています。
テント、寝袋、山用ガスストーブ、ガス缶、食品(生ものは除く)、その他を募集しています。協力をお願いします。

私も、寝袋を送る予定です。

詳細は、下記のウェブサイトを参照してください。

mount-bell 震災支援アウトドア義援隊(募集終了)
http://www.montbell.jp/generalpage/index.php?general_id=141

スノーピークでも支援物資の協力依頼をしています。

スノーピーク (募集終了


Hope for TOHOKU. My thoughts and sympathies are with you.

2011年3月14日月曜日

東日本大震災、今後教訓は活かされるのか

今回の東日本大震災の状況をテレビで見ていると無力感を感じる。

三陸沖の地震は以前から指摘され、発生確率も東海・東南海・南海地震の発生確率より高く99%と言われていた。ただし、今回の地震はスマトラ沖地震と同様に広い範囲に渡って海底地盤が連続的に破壊し、巨大な津波を発生させた。東海・東南海・南海地震では、このような連続的な発生と規模を想定してシュミレーションも行われているが、三陸沖ではそこまで想定されていなかったらしい。

地震災害を防ぐことができるか、それは不可能である。今は、減災といって災害にあった場合、少しでも被害を少なくする対策を予めとる政策がとられている。しかし、こんな大津波が押し寄せてきたら、何をやっても不可能ではないかと感じてしまう。津波を防ぐ防潮堤を築くとすれば、日本の海岸を高さ30m以上の万里の長城で囲むしかない。

それでも今回の災害や阪神・淡路大震災を教訓として、少しでも減災が考えられる。
地震が発生してから、津波が来襲するまでほとんど逃げる時間がない。外にいて地震情報を入手できなかったら、津波が来るまで気がつかない。津波の危険性がある所では、鉄筋コンクリートの避難所を一定の範囲毎に配置するしかない。
また空港は、鉄道や道路など交通が寸断された場合、非常に重要な施設となる。立地場所は、外洋に面している地域では海岸から離すべきである。仙台空港や松島基地は津波に教われ使用不能状態である。基幹空港として本格復旧する場合は、内陸部につくった方が良いであろう。

一方の重大な問題は原子力発電所の管理不能状態である。今回は、米国スリーマイル島の事故に近い炉心冷却用の送水ポンプが故障し燃料棒の溶融が一部で起こったようである。この原因はFMEAなどにより原因を突き止め、他の原発での再発防止に役立てなければならない。日本のエネルギー供給の根本を揺るがす大問題である。近い将来発生する可能性が高い東海・東南海・南海地震の対象地域になる浜岡原子力発電所は、即刻廃炉すべきと考える。

原子力発電所の停止は、電力供給に深刻な問題が生じ、日本経済に重大な影響を与える。日本全体で電気消費の節約に協力しなければならない。企業においては就業時間の削減、休憩時間の消灯、野外広告の停止、不要な移動の自粛などの協力を進めなければならない。

今回は、日本にとって戦後最大の危機といっても良いであろう。マスコミは災害に対応している人たちの足を引っ張るような発言や報道を控え、我々国民はできることは何でも協力していきたい。

東京地区の皆さん、トイレットペーパーやカップラーメン、電池などの買占めは控えましょう。本当に必要な人たちに行き当たらなくなります。

東日本大震災に関する総合情報がグーグルより提供されている。
http://www.google.co.jp/crisisresponse/

THE NEW YORK TIMES

2011年3月9日水曜日

炭素利用社会への移行

地球温暖化防止対策として温暖化効果ガスの削減や二酸化炭素排出の削減が叫ばれています。

国連人口基金から2010年版の世界人口白書が発表され、世界の人口は今年中には70億人に達するという。
現在世界でもっとも人口の多い国は、中国の13億5410万人、次いでインドの12億1450万人が続く。さらにインドは、2020年代には中国を追い越して人口世界一になる見込みだといわれている。
一方でこれらの国は、Bricsと呼ばれ経済発展が著しく、それに伴い二酸化炭素の排出も急激に多くなると予想される。

人口増加と経済発展に伴い、地球全体の二酸化炭素排出量の増加は避けられないのが現実である。それでも、地球温暖化のスピードを少しでも緩和するためには、二酸化炭素の排出を押さえた低炭素社会に移行するが叫ばれている。しかし、低炭素社会の実現には大きな経済負担を伴い、国際競争社会の中で政府や企業は、二の足を踏んでいるのが現状である。逆に、この経済負担のハードルを克服すれば、経済的にすごい武器になる。

それにはまず、産業の基本材料を製造段階で炭素を大量に排出する鉄鋼からCFRP(炭素繊維強化プラッチック)に移行することである。
まだ、CFRPは非常に高価でゴルフのシャフトや航空機のボディに使わているのにすぎず、大衆消費材にはまだ大量に採用されていない。これを製鉄所のような大規模な工場で生産し炭素繊維のコストを下げ、自動車などに採用することにより成型コストを下げて鋼板と同程度までコストを下げることです。また、CFRPも超臨界アルコールを利用したリサイクルにより炭素繊維を再度CFRPに利用することができる。このような材料を採用することにより、電気自動の軽量化が可能になり、走行速度も大幅に増加し、二酸化炭素の排出を抑制することができる。

一方、電気自動車は、静電誘導方式により簡単に充電できる装置を各パーキングエリアごとに設置すれば、普及に弾みがつく。太陽光発電を電気自動車の充電に使えば、発電所の負荷も低減する。また、製造段階で排出される二酸化炭素はCCS(二酸化炭素の回収・貯蔵)により、回収することも、現在すでに実用化されている。

これらの技術は、すべて既存の技術であり政府がやる気になり予算を集中的に投下すれば、世界経済をリードすることも可能である。宇宙開発に膨大な予算を注ぎ込むのか、それとも眠っている技術を世界経済の牽引役として予算を注ぎ込むのか、この問題に早く取り組んだ者が勝者になるであろう。いかに二酸化炭素を大気に放出しないで炭素を利用するかがこれからのキーポイントとなると確信する。

資源の乏しい日本にとって、これから生きる道はまだ余力のある資金を環境問題を解決する技術に集中投資し、経済的優位を確保するしかない。
絶えず首相を引きずりおろして交替するようなことばかり繰り返している暇は、これからの日本にはない。

2011年3月2日水曜日

酸素欠乏症と酸素分圧の関係

酸素欠乏症は、一瞬にして多くの人の命をなくす怖い疾病である。

平地の空気の酸素濃度は、通常21%程度であり、人間はこの環境下で普通に生活していける。しかし、工事現場等のConfined space(閉鎖空間)では、酸素濃度が21%より低くなることがある。建設工事の中では、
・船や台船の鋼材の腐食(酸化)により船艙の酸素が消費されえる場合、
・建設中のマンションの部屋に内燃機関を持ち込んで酸素を消費するとともに一酸化炭素を発生する場合、
・井戸を掘削中に土中の鉄分に酸素を消費された低酸素の空気が流入した場合や硫化水素が発生する場合、
・実験室等でヘリウムが充満し、酸素が追い出されてしまう場合
   ・汚水や醗酵するものが入っている場合、
などがある。

通常、人間は酸素濃度が低くなると以下のようになる。
 ・18%: 安全限界
 ・16%: 呼吸、脈拍の増加、頭痛、悪心、はきけ
 ・12%: めまい、はきけ、筋力低下、体重支持不能脱落(死につながる)
 ・10%: 顔面蒼白、意識不明、嘔吐(吐物が気道閉塞し窒息死)

それでは、なぜ酸素濃度が低くなると人間に影響が出るのか、それは酸素分圧を理解しなければならない。
酸素分圧は、流体の体積あたりの酸素量を現す指標で、気体中の酸素分圧は、気圧×酸素濃度(純酸素を1.0として)であらわされる。平地(1気圧)の大気圧は760mmHgで、酸素濃度は、160mmHgである。
気道に入った空気について、大気圧から飽和した水蒸気分圧47mmHgを差し引いて酸素分圧をもとめると150mmHgとなる。肺胞には二酸化炭素が多く(40mmHg)、酸素分圧は100mmHg程度となる。さらに動脈中の酸素分圧は常に若干低いので、酸素は分圧の高い方から低い方に流れ、血液のヘモグロビンと結合して運ばれる。次に、体組織の細胞周囲の酸素分圧は20~30mmHgであり、動脈血と酸素分圧に差があるため、末梢の毛細血管では酸素が血液から組織液に移る。

したがって、大気圧で酸素濃度が16%の場合、肺胞内の酸素分圧は、
(760 - 47) X 0.16 - 40 = 74 mmHg
となり逆に体内の酸素を奪われるようになり息苦しくなる。    


高山病も同じ原理である。
標高3000mでは、気圧が529mmHgになるため、酸素濃度が同じで水蒸気を無視しても酸素分圧は、
529 X 0.21 − 40 = 71 mmHg 
となり息苦しくなる。その対策としては、酸素ボンベなどで酸素濃度を上げればよいことになる。
3000m級の山でも高山病にかかる人がいるのは、同じ酸素濃度でも気圧が下がるために酸素分圧が下がるからである。高度順化は、酸素分圧の低下を、赤血球の増加により、酸素の吸収量を補おうとする自己防衛反応である。しかし、平地に降りることが確実で安全な対策であることがわかる。ちなみに高度8,848mのエベレスト頂上で酸素分圧は、平地(高度0m)の大気の酸素分圧の33%しかない。

人間は、非常に限られた条件でのみ生存できるということがわかる。