2009年3月31日火曜日

手摺先行足場

ある日の安全パトロールでのことです。

 港湾工事のコンクリートケーソン製作現場で「手摺先行式足場」を採用していました。組み立て中の最上段はきっちりと立ち入り禁止になっていて一見申し分のない管理をしているように見えました。
 しかし、よく見ると組み立て中の最上段のコーナー部分や昇降階段の部分に手摺が全くない箇所があり、それを放置していました。

 この現場は、「手摺先行式足場」を採用した意味を全く分かっていないのです。
 「手摺先行式足場」は組立作業中の災害を防ぐために前もって手摺を付けておく方法です。したがって、どうしても前もって手摺を付けることができない隅角部や昇降部分は足場を設置した時に即取り付けるべきです。それを何もしないで放置しておくのは問題です。

 土木現場では、国土交通省の指導の成果が上がり「手摺先行式足場」を採用するケースが多くなっっています。特にケーソンでは躯体との隙間が無いように歩み板が設置され幅木も取り付けられ完璧に近くなっています。
 しかし、建築現場では手摺先行式足場の採用はまだ低調です。この土木と建築の安全文化のギャップを何とかして埋めなければなりません。

2009年3月30日月曜日

高速道路の割引開始

 緊急経済対策の高速道路料金割引が始まりました。

 大阪近郊、東京近郊を除いて高速自動車道をどこまで走っても上限1000円、本四連絡橋も1000円で通行でき破格の安さです。私も四国にいて2年間何回も明石海峡大橋・鳴門大橋を渡りましたが来月引越しとなり、利用出来ないのが残念です。

 この高速道路料金割引は将来のために本当にいい政索だったのでしょうか。
 
 対象が乗用車と自動二輪なので物流価格を下げる効果が無く、製造業に経済効果が及びません。地方への人の流れが増えて地方の消費が増えるというのが目的と思います。しかし、一次的に都会人による地方への行楽が増えるでしょうが、次第にストロー効果が顕著になると考えます。
たとえば、徳島の人が徳島駅前のそごうデパートに行くのではなく、車で神戸に出て大丸百貨店に行くとか、熊本や大分から福岡の阪急百貨店(新規出店)に買物や仕事に行くなど 地方の経済の落ち込みがますます加速すると思われます。

 また、政府がなぜ高速道路だけ値引きのための補助を行うのか不思議でなりません。
乗用車は燃料効率が船や鉄道に比べて悪く、同じ数の人や物を運んでも燃料を多く使いCO2を多く排出します。
 地球温暖化防止やエネルギー資源の節約が叫ばれる中、どうせ実施するなら、エネルギー効率の良い新幹線や離島を結ぶフェリーに補助金を投入すべきです。一方でCO2削減や化石燃料の節約を推進しなければならないはずなのに、やっていることがちぐはぐです。
これは選挙対策としか思えません。

 個人的には高速道路の値下げは助かりますが、数年後財政赤字となって負担しなければならないようなことだけは避けてもらいたいものです。


 

2009年3月29日日曜日

結願成就、 再び善通寺へ

 1月初めに第75番札所善通寺からお遍路を始め、88ヶ所すべてをまわり、先週第74番札所甲山寺をお参りして結願(けちがん)しました。そして今日は発心(ほっしん)の寺である善通寺を再びお参りして四国を完全に一周したことになります。

 善通寺は賑わっていました。高速道路が安くなったせいでしょうか、多くのバスが駐車場に止まっていました。

 サラリーマンなので休みが取れず歩き遍路ができなかったのが残念です。「バス遍路や自動車遍路はスタンプラリーだ」などと批判される人もおられますが、その人それぞれ事情がありできる範囲でお参りして、心を込めて般若心経を読経すれば、それはそれで良いと思います。また時間が取れるようになったら、ぜひ歩き遍路を行います。

 結願成就したことによって、なにか達成感が生まれました。これから仕事で難しい局面にぶつかるかもしれませんが、そんなときはお大師さんが一緒にいて下さる、同行二人(どうぎょうににん)であるという心の支えで何事にも立ち向かっていけそうです。


 昼食に丸亀の一鶴に行って、結願成就祝いをしました。香川県は「さぬきうどん」と「そうめん」が有名ですが、もう一つ「骨付き鳥」があります。鳥の足にニンニクをすりつけ、塩と胡椒でこんがりと焼いたものです。車なのでビールを飲めないのが残念ですが、結願の喜びで最高の味でした。

 4月1日から東京へ転勤するので、高野山へのお礼参りはいつになるか目処が立ちませんが、早いうちに行きます。今回は歩き遍路ではなく自家用車で回ったので、高野山へはぜひ九度山から約20kmの町石道を登って、金剛峯寺と奥の院に参拝してお大師さんに報告したいです。そのあと京都・東寺にお礼参りに行きます。

 また、昔から続けている写経を結縁である奈良・薬師寺に納めます。東京にも薬師寺・東京別院があるので休日には写経を続けて行こうと思います。
                             
                                 南無大師遍照金剛  

2009年3月28日土曜日

人間の注意力に頼るのは限界がある

私の登山の話しです。

 大学時代はワンダーフォーゲル部に入部しました。
最初に新入部員を鍛えるために錬成合宿というのがあり、当時、1人50kg位の荷物を背負わされました。ザックに入れる荷物は、大鍋かテント、水の入ったポリタンク、それに重量調整用の石です。出発する前にバネ秤による重量チェックがありました。

 昔は、運動中水を飲んではいけないという考え方が一般的で、水を飲まず休憩も取らず歩かされました。
錬成合宿は北陸本線今庄駅から夜叉ヶ池に至るコースです。
苦し紛れに歩きながら木の葉についた朝露を舐め、私の足の爪は剥がれかけ血で真っ黒になりました。

 錬成合宿の目的は自分自身が己の体の限界を知り、極限を知ることによって山で遭難したときに冷静に行動できるようにするというものでした。まるで軍隊です。
こういう体育会系では新入部員も集まらなくなります。

翌年の錬成合宿が恵那山で行われた時、とうとう事故が起こりました。新入部員が意識朦朧として登山道に倒れました。すぐに日陰で寝かせ水を与え、服のボタンを外して扇いで体を冷やしました。意識はありましたが歩くことができません。すぐに合宿を中止して、山から降ろすことにしました。

被災者は、やや太っていておんぶして降ろす体力は我々にはなかった。さっそく、登山道脇の真っ直ぐな木を選んで切り、担架を作ります。一番簡単な担架は、上着を4〜5着ほど用意し、左右の腕にそれぞれ木を通します。細引きで服を固定して被災者を寝かせます。4人で担いで坂道を降ろしましたが、意識がしっかりしていない人間を担ぐと凄く重く感じます。なんとか夕方までに林道まで降ろすことができ、すぐに病院へ搬送しました。
重い熱中症であったため、回復したあと肝臓に障害を残しました。

我々が卒業した翌年の錬成合宿は伊吹北尾根で、とうとう熱中症による死亡災害が発生しました。水を飲むと早くばてるという間違ったことを叩きこまれていたために、同じような方法でしごきをおこない再発防止が徹底できなかったようです。今では考えられないトレーニング方法です。

自分たちだけの狭い世界で、精神論のみを優先した結果でしょう。
労働安全も、「労働者の注意力に頼る」ような方法はもう時代遅れです。

2009年3月27日金曜日

型枠残材の処理方法は明確に

 躯体工事で木製型枠の残材(木くず)が発生したので専門工事業者に持ち帰らせることがよくあります。

 元請会社が専門工事業者にゴミとして持ち帰り、焼却処分させる場合、木くずは明らかに産業廃棄物となり、元請会社は産業廃棄物の排出事業者となります。そして専門工事業者が収集運搬の免許を持っていなければ廃棄物処理法違反になります。

 専門工事業者が残材等を「資材など」有価物として再利用する場合は、産業廃棄物とならないので廃棄物処理法は適用されず処理業許可を有さない専門工事業者が持ち帰ることに問題ありません。このあたりを曖昧に処理していることが多く、注意が必要です。

後々問題が発生しないように、元請業者は絶対に木くずを持ち帰ることを専門業者に強制してはならないし、専門工事業者が自主的に作業所から搬出する際には「有価物」として搬出する旨を書類で確認するよう心掛ける必要があります。

2009年3月26日木曜日

リスクアセスメント規定の罰則

平成18年の労働安全衛生法正で第28条の二において、リスクアセスメントが努力義務化されました。

ただし、この条文には罰則規定がありません。
では、リスクアセスメントを実施しなければ、法的に何のお咎めも無いのでしょうか。

よく法令を読んでみると
 安衛法第10条(総括安全衛生管理者の職務)の五 労働災害を防止するための必要な業務で、厚生労働省令で定めるものとして、安衛則3条の2の二
危険性又は有害性の調査及びその結果に基づき講ずべき措置が規定されている。<50万円以下の罰金>

 安衛法第11条(安全管理者の業務)法10条各号の業務を行うこと。 <50万円以下の罰金>

 安衛法第17条(安全委員会)1項 調査審議事項として 三、労働者の危険の防止に関する重要事項として 安衛則第21条
二、危険性又は有害性の調査及びその結果に基づき項ずる措置のうち、安全に係るものに関すること。 <50万円以下の罰金>

 これらを遵守しないと明らかに罰則が科せられるのは明白です。
しかし、法的にどのような場合に違反となるのか明白に規定できないので罰則を外していると思われます。
 しかし、民法上の企業の安全配慮義務が、労働契約法のなかで条文に盛り込まれました。

 労働契約法第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。これまで裁判の判例により判断していたのもが成文化されたものです。

その内容は
1)危険予知の義務 :職場における危険、特に働いている人の周りにある危険を予知して発見する。いわゆる「予見可能性」といわれるものです。
2)結果回避の義務 :リスクを除去したり、低減させる。残留したリスクに対して作業者にその存在などを示し、日々の活動で危険が顕在化しないように対策を取ること。
これらの具体的な対策は、危険予知活動とリスクアセスメントです。

 リスクアセスメントは、予防安全の考え方と企業の安全配慮義務を安衛法に取り込んだものであり、これを実施していないと何らかの法的処分があるのは間違いありません。また、民法の企業の安全配慮義務にも抵触し、訴訟上不利になるのは間違いありません。
 労働契約法の解説では、企業の労働者に対するリスクアセスメントの説明責任を述べています。

リスクアセスメントを努力義務ではなく、絶対に履行しなければならない義務という認識を持つべきです。

2009年3月25日水曜日

技術者としての誇り

技術系安全衛生責任者として職務に誇りを持っていますか?

安全衛生担当者というと、よく会社の主流から外れた生産性と相反することばかり言う間接部門とみられ、職務にひけ目を感じている人がいるのではないかと思います。

それはとんでもない話しです。
安全は、技術者として最も重要な達成すべき使命です。

技術者は、最終的に何を達成しようとしているのか。
技術者の使命は工学技術を屈指することによって市民の生活が安心でき豊かな環境を創造し、かつ安全で快適な職場環境を確保することです。その過程で利益確保、品質確保、工程確保、環境の保全などを併せて追求するに過ぎない。
このことを分かっていない技術者や経営者が多いようです。

技術系安全衛生担当者は、その最先端にいます。
今の技術者に欠けている部分を補う重要な立場ではないでしょうか。
日本技術士会の技術士倫理要綱には、「技術士は、公衆の安全、健康および福利の最優先を念頭に置き、その使命、社会的地位、および職責を自覚し、日頃から専門技術の研鑽に励み、つねに中立・公正を心掛け、選ばれた専門技術者としての自負を持ち、本要綱の実践に努め行動する。」とあります。
また、アメリカ土木エンジニア協会(ASCE)倫理規程の冒頭にも「エンジニアは公衆の健康、安全、福利を最優先する」ということが掲げられています。

技術者は、人々の安全、健康および福利を確保しなければならない。まさに我々技術系安全衛生担当者の職務であり、プロフェッショナル・エンジニアとしての誇りを持つべきです。
誇りを持ち続けるためには、自己研鑽を継続していくことも必要です。

2009年3月24日火曜日

労働安全・衛生コンサルタント合格者の発表

本日、厚生労働省から平成19年度の労働安全・衛生コンサルタント試験の合格者発表がありました。

合格された方にはおめでとうございます。またそうでなかった方はあきらめず来年度挑戦してください。

厚生労働省に登録された方は、日本労働安全衛生コンサルタント会に入会されることをお勧めします。本部に入会すると自動的に各県支部に入会することになります。
最近、企業内コンサルタントが増えていますが会費が高いということで、入会せずに名刺にコンサルタントであることを印刷している方が多くなっています。

労働安全・衛生コンサルタントは名誉資格ではありません。安全衛生のプロフェッショナルです。試験に合格したのは、プロフェッショナルのスタート台に立っただけです。これから自己研鑽を積み重ね、若い現場技術者に正しく指導できるようにならなくてはなりません。
コンサルタント会ではCPD(自己研鑽)を義務付けていて、まず最初にコンサルタント会が実施する登録時研修を受けてください。

また、コンサルタント会は異業種の安全衛生担当者と交流する機会が多く、知識を深めることができます。建設業の問題を解決するには他業種の情報を得ることが非常に役に立ちます。

合格を機にコンサルタント会に入って活躍されることを期待します。

2009年3月23日月曜日

巻き上げ機の事故報告の必要性

先日、事故報告の義務について教育を行ったところ、巻上げ機の事故についてうまく質問に答えることができませんでした。

そこで労働安全衛生規則を調べてみました。すると以下のような条文があります。
(事故報告)
第九十六条 事業者は、次の場合は、遅滞なく、様式第二十二号による報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
一 事業場又はその附属建設物内で、次の事故が発生したとき
イ 火災又は爆発の事故(次号の事故を除く。)
ロ 遠心機械、研削といしその他高速回転体の破裂の事故
ハ 機械集材装置、巻上げ機又は索道の鎖又は索の切断の事故
ニ 建設物、附属建設物又は機械集材装置、煙突、高架そう等の倒壊の事故

その中で、巻上げ機(ウィンチ)のワイヤーやチェーンが切れた事故が報告義務になっていますが、作業船(船舶法対象外のもの)のアンカーワイヤーの切断事故はこれに該当するのかどうかということです。揚錨船や潜水士船の揚重装置のワイヤー切断事故は船舶法との関係でどのような取扱いになるのかという質問でした。

いろいろ調べた結果、明確に説明している条文はありませんが、荷を吊っている状態の巻上げ機が該当するらしい。したがってアンカーを巻上げ機を使って緊張するような場合は該当しません。

また、揚錨船や潜水士船の揚重装置の巻上げ機は、船舶の付属物であるため船舶法ではなく安衛法の対象となり、この条文に引っかかってくるという見解です。二股のシアがついている場合はクレーン則にも該当します。

どちらにせよ、労働災害のなる危険性に及ぶ恐れがあるものは対象になると考えて間違いないようです。

2009年3月22日日曜日

自然は偉大

四国霊場第65番札所から第74番札所甲山寺へ

四国霊場88ヶ所では老大木に会うことが多いです。第67番大興寺の楠はどっしりして何百年もお遍路さんの姿を見守っていたのでしょう。
お大師さんは、人間は宇宙を構成する中の一つに過ぎず、山の木や岩や動物も宇宙を構成する要素であり、人間は自然のなかでうまく調和して生きていくべきだ とといています。自然に感謝する気持ちが重要で、人間が自然環境をコントロールするのではなく、自然とうまく付き合うことが大切なのでしょう。
もう桜が咲き始めていました。1月に善通寺をスタートした時はまだ寒さが厳しくジャンパーを着ていましたが、四国を一周して善通寺に近づくにつれ桜が先始めるというのは、何か感動的です。
お納札には、「工事安全」のお願いをしました。しかし、これは御本尊にお願いしたのではなく、御本尊に自分の誓いを伝えたに過ぎません。「これから ~をやるぞ」という意思がより強くなりました。
第73番札所出釈迦寺の背後にある我拝師山です。いつかこの山に登ろうと思っていたのですが、とうとう登る時間がなくなりそうです。4月1日から東京に転勤です。
出釈迦寺からみる丸亀・坂出方面の景色です。昔はすぐ近くまで海岸線が迫っていたのだと思います。

善通寺まであと少し。

2009年3月21日土曜日

土木はおもてなし文化

四国霊場第46番札所浄瑠璃寺から第64番札所前神寺へ

88ヶ所お遍路、伊予の国は菩提の道場です。暖かくなってきたのでバスで回る団体お遍路さんが増えて着ました。学生さんは自転車で回っている人も見受けられます。
サラリーマンは、歩き遍路をしたいという願望がありながら時間の都合でマイカーお遍路です。
歩き遍路だけが正式な遍路だということはないと思います。心を込めて本堂と大師堂で納経し、祈願をして般若心経を読経すれば、お寺に行く方法は現実的に可能な手段を選べばいいと思います。

第51番札所石手寺は道後温泉の奥にあります。このお寺ではタイ・ビルマ難民支援や四川省震災支援などを行っていました。
お遍路の道中、お接待を受けます。四国お遍路はもてなしの文化と言われています。自分はお遍路できないので、お遍路している人にお接待することで布施をして功徳を積ませてもらう、身代わり巡拝を頼む気持ち、先祖供養のためのお接待返しという想いがあるそうです。
見返りを欲しない行為は気持ちがいいものです。
第58番札所仙遊寺への道からは、しまなみ海道が見えます。世界に誇る土木構造物と四国霊場、ミスマッチなようですが技術者は儲けのために仕事をしているのではない。市民の幸福に貢献することにエネルギーを注いでいる。技術者とは、もてなしの文化に通じるのではないでしょうか。
こんなお大師さんが迎えてくれました。思わず握手、もちろんお願いは無事故無災害です。
ふもとは菜の花で黄色でパッチワークになっているのに第60番札所横峰寺は雪でした。これも修行と思いひたすら安全祈願をしました。

2009年3月20日金曜日

形だけの始業点検

設備によっては法律で始業点検を行うことを義務づけられています。
しかし、建設現場では形だけの始業点検で済ましていることが多いです。

現場の安全パトロールに行くと、各項目にきっちり○をつけた設備点検簿が出されます。朝礼から参加した場合どのように始業点検を行っているか注意深く見ていると、KYを行った後そのまま作業場に向って仕事を始めています。おそらく点検簿は安全パトロールのためにまとめて安全衛生責任者がチェックを付けたものと思われます。

また、玉掛ワイヤーロープも点検をしてビニールテープを巻くのが一般的ですが、点検せずにただ巻いているケースも見受けられます。

これらのように、形だけの始業点検は意味がありません。テンプラ書類ばかり増やして、おまけに無駄な書類が多いと不満をいうのは、何か間違っているような気がします。

このように始業点検が形骸化するのは、始業点検のやり方に無理があるからです。
安衛則では始業点検をすることを義務づけていますが、記録を残すことを義務付けていません。元請けは企業防衛のために始業点検の記録を求めているに過ぎません。

改善策としては、始業点検のやり方を簡素化することです。法令で求めている最低限やらなければならないことに絞って指差呼称で点検を行い、重機に点検したことをマーカーで書き。紙の記録は省略する、チェック項目を携帯型カードにして朝礼後関係者で指差呼称で確認して紙の記録は省略する、など本当に始業点検を行う仕組みを作るべきです。

始業点検は予防型安全管理を行う上で重要な要素です。なんとか実のある管理にしたいものです。

2009年3月17日火曜日

経済発展を確保しながら自然環境を維持することの難しさ

瀬戸内海も見納めになりそうです。

瀬戸内海国立公園の中に巨大な橋を作ることに、賛否両論があったと思います。自然のままの景観を残すか、利便性を獲得するか大きな選択です。四国島民にとっては生きていくためにはある程度、自然環境を犠牲にすることは止む得ないという選択肢を選んだのでしょう。

瀬戸大橋のおかげで、本州と四国を結ぶ足は大変便利になった。いまでは高松から岡山まで50分ほどで結んでいます。また、三ノ宮へは鳴門大橋と明石海峡大橋経由で高速バスが2時間30分ほどで行けるようになりました。
この海岸は沖縄ではありません。直島の海岸も沖縄と変わらないぐらい美しいです。ひょとしたらポニョがいるかもしれません。
                  「崖の上のポニュ」のポスターより転載今でも高松と宇野をフェリーが結んでいます。高松のすぐ沖合いにある女木島から行き交う船を見ていると気持ちが落着きます。古代海人族のDNAを受け継いでいるのかもしれません。

男木島の燈台です。AISの普及で燈台の役割もなくなったと言われていますが、電子機器に頼らずアナログの設備は残すべきです。高松で私の一番好きなビューポイントです。海から見る高松市内は近代的なビルが立ち並んでいるように見えますが、自然海岸が無くなってしまっていることが残念です。港湾計画は岸壁やバースを作ることばかりで、自然海岸を復元するようなことはまれです。経済性に乗らないと東京の中央政府が予算を出さないからです。

2009年3月16日月曜日

労働安全衛生法の用語の定義

「事業場」や「労働者」の定義は、基本中の基本であるにもかかわらず、曖昧である場合が多いようです。

 つい最近、現場の作業員が自分が労働者なのか事業者なのか全く理解していないケースがありました。自分で営業して人も使って稼いでいる人は事業主として認識しているはずですが、営業もせず長年指示を請けながら仕事をして「請け取り」でお金をもらっていたために、世の中これが通常の支払い方法だと思っていたというのだから無知というしかありません。その人は自分は従業員と思い事業主保険や一人親方の保険に加入していませんでした。

 事業場についても建設業では重層下請構造が定着し、1社で従業員を50人以上も抱える現場はほとんどなくなり、法律の条文に定められている「労働者を50人以上の事業場は安全管理者を選任しなければならない」というような実態が合わない部分が多く、建設業は独自に体制を整え対応しています。建設業は現状に合わせて労働安全衛生法の用語の定義を修正していくべきでしょう。

我々の周りでは、曖昧なまま物事が進んでいることが多く、基本用語の定義はとことん議論して、現状に合わせた対応を考えていくべきです。

2009年3月15日日曜日

安全文化とリスクアセスメント

安全文化が育っていないと、リスクアセスメントは形だけのものになるのではないか。

鉄道事業者は、リスクアセスメントをまだ導入を表明したばかりです。
2005年4月、死者107人を出したJR宝塚線脱線事故に対する新安全計画についての提言では「リスクアセスメント」の導入などが柱になっています。
なんと、鉄道事業の安全管理へのリスクアセスメントの導入は日本初らしい。
この例でも分かるように、リスクアセスメントはまだ普及しているとはいえません。

導入の理由は、建設業でもあげられている「過去の事故への対応を主体とする安全対策からの脱却が必要」とし、後追いの安全管理から先取りの安全管理の必要性を説いています。
形だけのリスクアセスメントでは意味がなく、真の安全衛生管理の意味を理解して普及させるにはかなりの努力が必要と思われます。また、施設の改修や速度基準の変更
の際、過去の事故などを参考に危険を事前に数値化し、点数の高い順に対処する方法をとるといっていますが、経済性と安全性のトレードオフをどのように調整するか、安全文化が育っていないとどうしても経済性を優先するように流れてしまいます。

リスクアセスメントを推進するには、組織の安全文化が育っていないと形だけのものになってしまいます。「安全をすべてに優先させる」という基本方針を掲げていても、本音では利益を優先するような場合、リスクアセスメントはなかなか効果を上げられないでしょう。

2009年3月14日土曜日

四国の最果てへ

四国霊場第37番札所岩本寺から第45番札所岩屋寺へ

高松から四国最南端の足摺岬をまわって愛媛の山奥の岩屋寺までは二日がかりの超ハードスケジュールです。土佐は修行の道場と言いますが、まさに修行です。歩き遍路の人達は、何日もかけて黙々と遍路を続けてられるのを見ていると、車で回るのは修行にならないかもしれません。
金剛福寺は足摺岬の東大のすぐ近くにあります。藪椿のトンネルを抜けると太平洋が開けます。見えるのは空と海だけです。その昔観音浄土にいちばん近い所と信じられ、修行僧が補陀洛へ渡ろうとここで激しい修行をしたそうです。

観自在寺からは伊予国(愛媛県)です。伊予は菩提の道場です。「発心」、「修業」、「菩提」、「涅槃」の道場とは、仏教の悟りの境地や世界観を絵図にした胎蔵界曼荼羅」になぞらえたものだそうです。
岩屋寺は岩にへばりついて本堂が建っています。その本堂の上の岩に上がるはしごがあり登ってみたのですが、下を見たらちょっとびびります。建設現場では安全帯を着用しセーフティーブロックを使用して上り下りする所ですがそのようなものはありません。巡拝者が落ちて怪我をした場合安全配慮義務はどうなるのか心配になりました。
ここまできても般若心経をまだうまく読経することができません。意味が分からないのでどこで息継ぎをしていいのか分かりません。サンスクリット語(古代インド語)の音を感じに当てはめただけですが、それなりに意味のある文字を当てはめているので感心します。

まだまだ修行が足りないようです。

疲労とヒューマンエラー

災害が起こるとよく被災者の個人的なミスを原因にあげることが多いです。

簡単にヒューマンエラーを原因にして、組織の管理は問題なかったとし片付けてしまうものです。
これはとんでもない間違いで、このような対応を取っても災害は無くなりません。
ヒューマンエラーの背後要因を見つけ出し、組織的な欠陥を是正しなければなりません。

また、ヒューマンエラーは、人間が本来持つ特性であるヒューマンファクターに起因しています。
また、疲労が蓄積したとき起こしやすくなります。そこで、一般的に人間はあるリズムで眠気を感じ、疲労を覚えます。一日のうちでは、15時頃が最大のピークになります。その他にも10時、深夜にもピークがあります。年間を通じると、8月が最大のピーク、そして4月のピークです。食後では、3時間経過した時に最大のピークを迎えます。

逆に言えば、このピークに一人作業や車の運転は絶対避けた方がよいでしょう。ここ数年、災害発生が安全週間の7月よりも8月に多く発生しています。このような人間の特性を作業計画に組み込むことにより災害を減らすことができます。

安全担当者は、一人で車を運転してパトロールにいくことが多くなりますが、現場で起きる災害のリスクより、車を運転して交通事故に合うリスクの方が高く感じます。
ひとごとではありません。

安衛則の一部改正は現状の追認

平成21年6月22日に労働安全衛生規則のうち足場関係が一部改正されます。

この改正は今更という面もあります。
「枠組足場以外の足場にあっては、高さ85cm以上の手摺及び高さ30cm以上50cm以下の中桟を設けること」となっていますが、なぜ85cmなのかという疑問が沸きます。多くの建設会社の社内基準では手摺の高さが90cm以上または95cm以上になっています。

また、アメリカにおいてはOHSA安全規則で墜落・転落防止の規制が定められており、高さ6ft(1.8m)以上の高さで作業を行なう場合は防護柵、安全ネット、落下防止システムなどで防護する必要があるとされています。防護柵の高さは、床面から42±3in(110±8cm)としています。今回の改正である85cmはいかにも中途半端と言わざる得ません。

一方、中桟と幅木の設置義務ですが、足場の外側と躯体側の両方設けないといけないかどうかという疑問が生じますが、法的には外側も躯体側も区別はないと思います。転落の危険性はどちらも同じだからです。
すなわち転落防止措置ですから内側に安全ネットや開口蓋のような転落防止措置が取れて、転落の危険性が極めて低ければ中さんや幅木は必要ないと考えます。

国土交通省のケーソン建設現場では各社とも既に行なっていので新たな対応をとる必要はありませんが、民間建築現場では安全ネットなどをよく指導しないといけないと思います。

2009年3月13日金曜日

山でのインシデント

 今まで、登山中に事故や遭難にあったことはありませんか。
最近、中高年者の登山ブームで、山での事故が増えています。 

 重大なインシデントとして、会社の仲間5人パーティーで剣岳に登ったときのことです。
大阪から夜行バスで室堂に入り雷鳥沢を経由して別山乗越の剣御前小屋に泊まりました。翌日、剣岳を目指して一服剣を登っているときです。小さな沢状になっている急な登りの所で、前後に大勢の登山者が連なっていました。我々パーティーの先頭から2番目を行く上司が直径40cmぐらいの石に足をかけたところ、その石が浮石になっていて、重心をかけた瞬間に動き出しました。最初はまるでスローモーションビデオを見るような感じで落ちだして行きましたが、それがどんどんバウンドしだし、下から登ってくる登山者の列の中に飛び跳ねて落ちて行きました。すぐに「ラーック」と叫んだのですが、下のようすはガスに包まれていて判りません。

 剣岳頂上に着いて休憩しているとき、周りのようすを耳をダンボにして伺いましたが、怪我人が出たようすはなかった。石が落ちていったときは、怪我人が出るのは間違いないなと確信して覚悟していましたがホッとしました。
こういうときは、その上司が実行行為者として業務上過失致死傷で罰を受けるのか、我々も上から石が落ちてきて怖かったといってとぼけて逃げるのか、今となってはぞっとする話しでした。

 登山は業務ではないので、事業者責任は存在しません。自己責任が原則です。したがって、自分の身は自分で守らなければなりません。
そのためにも、登山における危険予知の基礎を身に付けていなくてはなりません。 

2009年3月12日木曜日

労働安全衛生マネジメントシステム導入の課題

労働安全衛生マネジメントシステムは導入されて日が浅く、どれだけ効果が上がっているか まだはっきり言える段階にありません。

労働安全衛生マネジメントシステムの導入に対する課題として以下のことがあげられます。

1.技術の継承(主に暗黙知)の断絶に対して、業務の流れをマニュアル化して誰でも分かるようにすること。災害体験など経験不足の対策として、主要工種の危険性・有害性とリスク低減対策のデータベース化があります。しかし、応用力に欠けるといったマニュアル化の弊害や経験不足によりデー タベースにはない新たな危険性・有害性を洗い出すことができない問題が出ています。

2.建設業では安全文化が未醸成である現実に対し、トップの安全衛生方針の表明と労働者の意見を聴き、全員参加によるシステムの運用がCOHSMSガイドラインにうたわれています。社長の安全衛生方針の表明はどこの会社でも行われていますが、作業所長による工事安全衛生方針の表明はまだ一般的になっていません。また、労働者の意見を聞くということに対し、職員が現場に出る時間が少なくなる傾向にあり、現場内のコミュニケーションに問題があります。

3.人と組織の関わりがギクシャクとしたものになりつつあり、職員や労働者に精神的な負担がかかっています。労働安全マネジメントシステムは労働者の健康について配慮することを強調していることが、ISと明確に違う点です。安全衛生委員会で審議する内容になっていますが、うつ病にかかる人は増える 一方です。

4.労働者の高齢化も、健康維持と労働災害に係わる大きな問題です。これから先も人口減少や所得減少が続き、現場から高齢者を排除するという考えは成り立たなくなります。

5.管理者の考え方がまだ後追い型安全管理から先取り型の安全対策に切り替わっていません。リスクアセスメントが店社の危険性・有害性特定表のデータベース→工事安全衛生管理計画書でのリスクアセスメント→作業手順書でのリスクアセスメントとして上手く流れていません。したがって形式だけになっていて、本当の意味での安全の先取りになっていないのが現状です。

建設業ではまだ労働安全衛生マネジメントシステムの効果がさほど上がっていないように思われます。「なぜ労働安全衛生マネジメントシステムが必要か」をうまく説明できていないところに問題があるように思われます。

2009年3月11日水曜日

根本的原因は同じ

以前、ある現場で重大な不安全行動がありました。

悪いことに作業所長が職長に指示をしていた。元請職員が協力会社職長に違法な指示をしたことが問題になりました。

当時、原因分析を行ったところ、事前に協力会と作業手順の打ち合わせを行っていなかったこと、作業所長が作業手順を理解していなかったこと、協力会社任せにしていたことなどが判りました。

これは仕事を進めるうえで基本的なことですが、経験が浅いのにプライドだけが高い元請職員に多い傾向です。

災害が発生するのも、品質不良が発生するのも、工程が遅れるのも、赤字に陥るのも根本的原因は同じです。そして安全に起因する問題が最初に現れます。安全だけの問題として安全担当者だけに任せていると大きな問題に発展しかねません。組織全体で対応すべきです。

その後、この現場は対応が後手になり大きな品質不良が発生し、工程が大きく遅れ、大赤字になりました。

安全担当者は、最初に現場の異変を感知する重要な役目があります。技術者であるからこそできることです。

2009年3月10日火曜日

安全管理の基本はライン管理

年度末になり、人事考課を受ける人が多いと思われます。

ところで安全担当者の人事考課はどのように評価されているでしょうか。
災害が発生し、目標度数率を下回ると安全担当者の評価を下げることが多いようです。
しかし、安全管理はライン管理が基本ではなかったでしょうか。

建設業であれば、土木部長や建築部長がラインの長であり、作業所長は人事考課者であり直属上司であるライン長の指示に従います。逆の言い方をすれば、安全衛生管理は工程管理や品質管理、原価管理と一体でラインが推進しなければなりません。
それなのに、安全に関しては安全担当者だけが評価を下げられます。それも原点方式です。

安全文化ということばがよく使われますが、安全文化が醸成されている組織はライン管理がしっかり成されています。安全担当者のみが評価されるあいだは、まだ安全文化が醸成されていないと見るべきでしょう。

2009年3月9日月曜日

一人親方は建設現場の弱者

ある現場で作業員が脚立から転落して怪我をしました。
早速現場へ駆けつけていろいろ話を聞くと、その作業員は一人親方でした。

その作業員は、新規入場のとき〇〇工務店の従業員ですと申告していました。本人は嘘をついているのではないということも後で分かりました。本人は未だに自分は材料持ちで仕事をしているわけでないので一人親方ではないと思っていました。

したがって、一人親方の特別労災に加入していません。建設国保に加入していただけで、労働災害に対して保険が出ません。
しかし、お金の受け取り方は平米当たりいくらでの請負いでした。実態を調べてみると、雇用保険を支払わず、仕事の大小に合わせて都合のいいように給料が支払われているだけで、本人はその会社に完全に従属していて営業活動もせず、指揮命令を受けて仕事をしていました。

最近の建築工事はデベロッパーが強引に工事価格を押し下げ、そのしわ寄せが下請への支払金額に影響しています。下請会社も労働者を抱えきれなくなって拘束している労働者を請負契約で給料を支払い、経費を圧縮しているのが現状です。特に型枠大工、鉄筋工、タイル工など、末端の作業員にしわ寄せが来ています。

請負契約の末端にいる一人親方は、重層下請の弱者であり、安全面においてもフォローしていかなければなりません。

2009年3月8日日曜日

海上安全の船魂観音

第31番札所竹林寺から第36番札所清龍寺までの土佐の修業です。

途中、第32番札所禅師峰寺は、高知新港を見下ろす高台にあります。
お寺の略縁起によれば、大同2年に弘法大師が一字を建て海上安全祈願のため自刻の十一面観音菩薩象を当時の本尊として、安置せられ四国八十八ケ所のうち第32番札所と定められたそうです。
藩政時代、藩主が浦戸港出帆の際必ずこの寺の観音に海路平安を祈ったことから船魂観音と呼ばれています。

海上安全を祈るのは当時としては切実な想いでしょう。
山門をくぐると、まず不動明王が迎えてくれます。不動明王は古代インドの破壊神であるシヴァ神が仏教に取り入れられたもので、その破壊力によって煩悩を焼き尽くし、己の魔を破壊し、涅槃の境地を得るそうです。
地蔵菩薩の遥か向こうには、高知新港の防波堤工事を施工中の起重機船が見えます。船魂観音さんが工事の安全を見守ってくれているようです。

土佐は文旦の出荷が真っ盛りです。お寺の境内で文旦を売っています。お接待ではありませんでした。

2009年3月7日土曜日

元請職員には理解されていない玉掛け方法

安全担当者になって現場の安全パトロールで指摘することは多くなりましたが、今一つ説得力に欠けることがあります。

言うのは簡単ですが無責任な言動ではだれもついてきません。実際やる人ので視点で考えて指導する必要があります。すなわち、安全担当者は実際に職人のやることを理解しておく必要があります。

そういう訳で、安全担当者には技能講習の資格が必須と考えます。
玉掛方法もあや掛けやあだ巻きなど、どのように掛けるのか実際自分でやってみないと仕事のこつが分かりません。

ワイヤーロープの選定についてもシャックル4点吊りの場合は、4点同時に荷重がかからないので3点吊りとして計算し、4点半掛け吊りの場合は4点同時に荷重がかかるので4点吊りとして計算します。

意外と理解されていないことの一つです。

2009年3月6日金曜日

職長教育の重要性

以前は、協力会社から安全衛生責任者が選任の報告を受け、選任された者は当然のように職長教育を受けている人達であり、それが当たり前でした。

しかし、最近は当たり前と思っていたことがそうでもないらしい。
建築工事では、重層下請が数次にも及ぶようになり、安全衛生責任者として選任された者でも職長教育を受けたことがない人が多くなっています。最後次に及んでは、一人親方になるケースがあり、名前だけの安全衛生責任者で、職長教育は受けておらず、安全の知識は相当低いケースがあります。
景気後退と競争激化でこの傾向が、益々強くなるのではないでしょうか。

労働安全衛生法の中では、労働者を直接指揮監督する者として、職長、安全衛生責任者、作業主任者がいますが、この区別を理解していない元請職員もいます。

それぞれの役割は、
1.職長
1)役割 :労働者を直接指揮監督する者であり、労働災害防止活動を推進する最も重要な位置づけです。
2)選任基準 :規定なし
3)資格 :なし
4)事業者の責務 :事業者責任において所定の安全衛生教育を行わなければならない(法60条、罰則はなし)

2.安全衛生責任者
1)役割 :統括安全衛生責任者及び後次請負人との連絡調整、混在作業による危険の有無の確認等
2)選任基準 :統括安全衛生責任者が選任される事業場の下請事業場(法16条・則19条、罰則は有り)
3)資格 :なし
4)事業者の責務 :建設現場では、職長が安全衛生責任者を兼務することが多く見られ、「職長・安全衛生責任者教育」の実施について行政通達が出されています。

3.作業主任者
1)役割 :当該作業に係る労働者の指揮、その他必要な業務
2)選任基準 :法令で定められている業務(法14条・令6条、罰則は有り)
3)資格 :法令で定める免許又は技能講習
4)事業者の責務 :職長教育は不要

これらの中でよく理解されていないこととして以下のことがあげられます。
まず第一に、職長とは、同じ事業主から雇用されている労働者を直接指揮監督する者であるということです。二次の安全衛生責任者が三次の労働者に細部に至るまで直接指揮監督を行う場合、三次の安全衛生責任者は、職長ではありません。そして場合によっては偽装請負とされるかもしれません。

第二に、職長教育は事業者の責任であり、元請は教育の指導・援助をするということです。事業者責任があるのに法令では罰則規定がないから行わないでは困ったことです。事業者に責任を自覚してもらわないと、いつまでたっても職長の安全水準が上がりません。強いては現場の安全水準もあがりません。

こういうことを分かっていない元請職員が増えてきました。建設現場では、職長教育を疎かにしてはいけません。
まず、元請職員に職長教育の内容を理解させることがまず先決でしょうか

2009年3月5日木曜日

ナチュラル・キラー細胞

笑いがあると健康になり職場は活性化するといいます。
その理由の一つに、ナチュラル・キラー細胞があります。

ナチュラル・キラー細胞(以下NK細胞という)は、白血球を構成するリンパ球の一つです。若い人でも、健康な人でも身体の中では1日約3000~5000個のがん細胞が発生し、それらのがん細胞を破壊するのがNK細胞です。生まれついての殺し屋で、殺傷力が高く、常に体内をパトロールしてがん細胞やウイルス感染細胞を見つけると単独で直接やっつけてしまいます。

NK細胞の活性を高めるには
1) 喫煙を控える
2) 適度の飲酒を心がける
3) 質の良い睡眠を取る
4) 無理のない適度な運動をする
5) 笑う
6) 充分な休養などでストレスをためない
7) 体温を下げない
8) バランスの良い食事を心がける

ここで最も効果的なのが笑うことです。
職場において大声で笑える環境をつくることが、心身とも健康を保ち作業の能率向上に効果が上がります。そのための方法は、「声掛け運動」の推進が最適です。

明るく、楽しく、おもろい現場を目指しましょう。

2009年3月4日水曜日

リスクアセスメントの課題

 リスクアセスメントは労働安全衛生マネジメントシステムの中核をなすものですが、先取り型の安全というものの、建設業においては形だけが先行してまだ効果が上がっている段階とはいえないようです。

何が問題なのでしょうか。
1.リスクアセスメントを実施する上での課題
1)店社で実施するリスクアセスメントが、過去の災害事例等をデータベース化しリスクを点数化されたものが多く、作業目前の具体的な危険性・有害性で表現できず抽象的な表現になっていることが多いようです。
2)工事量の減少に伴い現場担当者の経験が乏しくなり、安全知識の低い職員や職長では、的確な危険性・有害性の洗い出しができなくなっています。いわゆる技術の空洞化現象の影響が現れています。
3)リスクアセスメントの主旨が理解されておらず、また手順を理解していない場合、リスクアセスメントが表面的、一過性の実施に陥りやすい。したがって刻々変化する現場のリスクの変化に対応できません。また、現場担当者の負担と疲労感だけが残ることになります。
4)建設現場は有期事業であり、重層下請構造の混在作業であるため、リスクアセスメントに参加する労働者はその都度場所と参加者が変わり、ある特定の者だけで実施するリスクアセスメントになりがちです。

2.リスクアセスメントの理解不足
 職長教育におけるリスクアセスメントの教育内容を知らない元請職員は、協力会社をうまく指導することができません。

 法令でいう職長教育におけるリスクアセスメントの内容は以下の通りです。
 1)リスクアセスメントの実施手順
 2)作業手順書の作成とリスクアセスメント
 3)作業員の適正配置(職長・安全衛生責任者の役割とリスクアセスメント
 4)危険予知活動とリスクアセスメントの方法
 5)機械・設備の具体的改善方法(機械設備の本質安全化とリスクアセスメント
 そんなに難しい内容ではないのですが、ISOの二の舞を恐れて深く係わろうとしないのではないでしょうか。

3.リスクアセスメントの最も重要な実施時期が不明瞭
 リスクアセスメントの手順には、5つのステップがあります。
・ステップ1 :危険性又は有害性の洗い出し
・ステップ2 :危険性又は有害性の見積もり
・ステップ3 :危険性又は有害性の評価
・ステップ4 :危険性又は有害性の除去・低減対策の検討と実施
・ステップ5 :実施内容の記録

 製造業では、工場の各ラインについて関係者を集めてこの5ステップで行えばいいことがすんなり分かります。しかし、建設業の場合は店社があり、現場は有期事業であり、重層下請構造の混在作業であるため、全体を取りまとめる人が必要です。統括安全衛生責任者がリーダーシップを発揮しないとできないのです。

 そして、リスクアセスメントがどの時点で重点的に行わなければならないか、意外に理解されていません。当然、当該作業が行われる直前が最も重要です。しかし、現実には工事安全衛生管理計画書を作成する時に行って、そのままということはないでしょうか。工事計画時に、危険性・有害性の危険性が完璧に洗い出しできるわけありません。作業手順書を作成するときに危険性・有害性の危険性を漏れなく洗い出すことが最も重要です。

 建設業で行われているリスクアセスメントの方法は
①店社で主要工種の危険性・有害性の特定表を作成する
       ↓  ↓  ↓
②店社版特定表をもとに、工事安全衛生管理計画書で現場独自の危険性・有害性の特定表を作成し、重点管理項目を決定する。
          ↓
③工事安全衛生管理計画書で現場独自の危険性・有害性の特定表を協力会社安全衛生責任者に提供し、それを参考に作業単位ごとの危険性・有害性を特定し、見積もり、評価及びリスク低減対策を立て、当該作業の作業手順書を作成する。
          ↓
④当該作業を実施する前に作業手順の周知会を開く。
          ↓
⑤当日の朝、作業手順書のリスク評価を参考に危険予知活動を実施する。
          ↓(作業の実施)
⑥工事終了時、工事反省会を実施し新たな危険性・有害性及びリスク低減対策を店社のデータベースへ反映させる。

 実際に作業する労働者が危険性とリスク低減対策を理解していないと、いくら立派な工事安全衛生管理計画書を作っても意味がありません。

 また、作業手順書がただ形式的になって、どこに重点をおいてやれば最大の効果が上げることができるか明確になっていないことが多いようです。

 リスクアセスメントを普及させるにはISOのときのような関係者の疲弊を招いてはいけません。

2009年3月3日火曜日

定期健康診断の再検受診率

定期健康診断の受診率は高くても、再検診受診率が低いことがよくあります。

「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成8年10月1日 公示)があり、健康診断の結果、二次健康診断の対象となる労働者には二次健康診断の受診を勧奨するとともに、診断区分に関する医師の判定を受けた当該二次健康診断の結果を事業者に提出するよう働きかけることが適当であるとしています。

したがって、法的に強制はしていません。二次検診対象者はこのような内容を知ったうえで二次検診を受けないのではないと思います。
ただめんどくさい、そんなにたいしたことない、体調に問題ない、プライバシーに係わらないでほしい、時間がないなど単純な理由だけだと思います。
しかし、問題を後延ばしにすると、後々健康上の問題が発生し、すべて自分に跳ね返ってくるということを本人に理解させる必要はあります。

また、事業者としては二次検診対象者が受診しないからといって放置しておくのも問題です。本人がどうしても受診しない場合は、受診を勧奨した書類を残し事業者としての責務を果たしていることを記録しておく必要があります。

一時検診は事業者の費用負担ですが二次検診については法律の定めがなく、ほとんどの会社が個人負担であることが二次検診受診率の低さとなって現れてくるのでしょう。

2009年3月2日月曜日

焼き鳥をいつまでも食べれるように

27日、ベトナム保険省が北部ニンビン省の男性(32)が病気の鳥を食べて鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に感染し、ハノイの病院で治療を受けていたが死亡したことを発表した。ベトナムで鳥インフルエンザによる死者は2人目です。
鳥→人の感染であり、まだ人→人の感染ではありません。

日本でも愛知県でウズラがH7N6型鳥インフルエンザに感染していることが確認されています。弱い毒性とされていますが強毒性に変異する直前であったようです。

私は鳥が大好物です。四国には美味しい鳥を多く産し、香川の「讃岐コーチン」、高知の「土佐ジロー」、徳島の「阿波尾鳥」、愛媛の「伊予赤どり」、「伊予路しゃも」、「姫っこ地鶏」、「奥伊予地鶏」などがあります。また、香川には「さぬきうどん」とともに「骨付き鳥」が美味です。

鳥インフルエンザの感染地域は中国南部ですが、日本との人・モノの交流が活発であり、H5N1型ウイルスが新型インフルエンザウイルスに変異するのも時間の問題と思われます。なんとしても焼き鳥が食べられなくなるのだけは防ぎたいものです。

2009年3月1日日曜日

こんぴら参り

毎年3月1日はこんぴらさんにお参りすることにしています。
なぜかといえば、かつてこの日に作業船が大きな事故を起こし、事故の反省を風化させないためです。

こんぴらさんは四国霊場88ヶ所ではありませんが、航行安全や海上安全を祈願して多くの人が訪れます。

こんぴらさんは元はお寺です。旧称は象頭山松尾寺金光院 金毘羅大権現 琴平神社です。
金毘羅大権現とは宮毘羅大将であり薬師如来をお守りしている薬師十二神将の筆頭の仏さまで、真言では オン クビラ ソワカです。 ガンジス川の鰐神クンビーラが仏教に取り入れられたものです。

明治政府による廃仏毀釈で松尾寺が廃寺となり、貴重な仏像や仏教美術が散逸して行ったようです。明治政府が徳川家による幕政から天皇を中心とした中央集権国家を樹立するために国家神道を組織し、国民の意識を変えようとしたことに対し、失われた文化も多かったであろうと思われます。
      随神門も以前は仁王さんが迎えてくれた山門であったでしょう。

      旭社は旧・松尾寺本堂です。ご本尊は十一面観音だったそうです。

お寺と神社がもともと一体であり、相互に補完する文化を築いていた。最近、関西では神仏習合の信仰の復興を目指す神仏霊場会が発足し、伊勢神宮から延暦寺までの巡礼コース「神仏霊場巡拝の道」が設定され、関西2府4県の151の社寺が参加しています。
明治政府によりねじ曲げられた文化を自然な姿に戻すいい機会でしょう。