2009年3月12日木曜日

労働安全衛生マネジメントシステム導入の課題

労働安全衛生マネジメントシステムは導入されて日が浅く、どれだけ効果が上がっているか まだはっきり言える段階にありません。

労働安全衛生マネジメントシステムの導入に対する課題として以下のことがあげられます。

1.技術の継承(主に暗黙知)の断絶に対して、業務の流れをマニュアル化して誰でも分かるようにすること。災害体験など経験不足の対策として、主要工種の危険性・有害性とリスク低減対策のデータベース化があります。しかし、応用力に欠けるといったマニュアル化の弊害や経験不足によりデー タベースにはない新たな危険性・有害性を洗い出すことができない問題が出ています。

2.建設業では安全文化が未醸成である現実に対し、トップの安全衛生方針の表明と労働者の意見を聴き、全員参加によるシステムの運用がCOHSMSガイドラインにうたわれています。社長の安全衛生方針の表明はどこの会社でも行われていますが、作業所長による工事安全衛生方針の表明はまだ一般的になっていません。また、労働者の意見を聞くということに対し、職員が現場に出る時間が少なくなる傾向にあり、現場内のコミュニケーションに問題があります。

3.人と組織の関わりがギクシャクとしたものになりつつあり、職員や労働者に精神的な負担がかかっています。労働安全マネジメントシステムは労働者の健康について配慮することを強調していることが、ISと明確に違う点です。安全衛生委員会で審議する内容になっていますが、うつ病にかかる人は増える 一方です。

4.労働者の高齢化も、健康維持と労働災害に係わる大きな問題です。これから先も人口減少や所得減少が続き、現場から高齢者を排除するという考えは成り立たなくなります。

5.管理者の考え方がまだ後追い型安全管理から先取り型の安全対策に切り替わっていません。リスクアセスメントが店社の危険性・有害性特定表のデータベース→工事安全衛生管理計画書でのリスクアセスメント→作業手順書でのリスクアセスメントとして上手く流れていません。したがって形式だけになっていて、本当の意味での安全の先取りになっていないのが現状です。

建設業ではまだ労働安全衛生マネジメントシステムの効果がさほど上がっていないように思われます。「なぜ労働安全衛生マネジメントシステムが必要か」をうまく説明できていないところに問題があるように思われます。

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