2010年4月28日水曜日

技術者の国際化

日本の建設技術者や労働安全コンサルタントは、海外市場で本当に戦っていけるのだろうか?

かつてイラク・イラン戦争やイラン革命以前のオイルマネー特需による開発プロジェクトに多くの日本の建設会社が中東に進出して大損害を蒙ったケースが目立った。そして、現在も多くの日本の会社が海外に進出しているが、各地で苦戦を強いられている。その原因は、リーマンショックに代表される米国金融危機などの影響が大きいが、根本原因の根は深く、日本の建設会社は海外で堂々と戦っていく実力があるのかと疑わざる得ない問題を多く抱えています。

製造業は、当初国内市場が小さかったために、会社の生き残りをかけていち早く海外市場に進出し、海外市場で高い評価が得られるようになりました。海外の市場を調査し、海外スペックを取り入れ、契約社会にも順応していったからこそ、海外メーカーと互角に戦えたのだと思います。製造業でも国内市場が大きく、国内のメーカー同士で競争している業界、例えば携帯電話やパソコンメーカーなどは、国内市場に甘んじていたために、もはや海外で戦える力を備えていません。

同じように建設業も、国内市場で政府と建設会社の蜜月な関係を築き、政府主導の公共事業のパイを分け合って成長してきた。そこには、国際的な契約社会では考えられないような阿吽の呼吸が存在し、海外市場に本格的に取り組むことはなかった。
一方、欧州は近年に経済体制が劇的に変化した。EU諸国は、国境が取り払われ自由に経済活動ができるようになるとともに、政府は公共事業の執行に際しても自国以外の企業に開放した。そのため、建設会社も自国以外で活動することができるように体質を変えていった。隣の韓国は、自国の市場が小さいために活動の範囲を海外に置くようになり、今では日本を凌いでいる。

まず、日本の建設会社のハンディキャップとしてあげられるのが英語力です。しかし、これはコミュニケーションの一つの手段であり、お互いに理解し合う意思があればなんとか克服できます。しかし、日本語文書を英語に訳したりする手間は、余分な労力を強いられハンディには違いありません。

しかし、技術者として専門技術力がないと発注者やレジデント・エンジニアやセーフティ・エンジニアと対等に議論することができません。日本人技術者は大学卒業以来、技術力を切磋琢磨することよりも段取り師として下請けのケツを追い回すことに力を入れて会社で過ごしてきた。その結果専門的知識どころか基礎知識も保持していない技術者が多くなった。工事を下請けに外注することにより、技術者の「技術の空洞化」とが進んでいます。

さらに、日本の公共事業が契約に忠実に行われることがなく、契約とは関係なく受注業者無理を強いるような、国際契約約款とは程遠い環境に慣らされてきた。このような習慣が染み付いた技術者が欧米の契約社会になかなか追従することができないでいる。

日本人建設技術者は、特に安全衛生(OH&S)、環境(E)、品質(QC)、契約管理(QS)が苦手である。労働安全コンサルタントは、欧米のセーフティ・エンジニアと遜色ない安全衛生の知識を持っているがシステマチックなマネジメント力や契約に基づいた安全管理、レターのやり取りなどに慣れていないため、なかなかリーダーシップをとることができない。

日本の労働安全衛生コンサルタントを欧米と対等に渡り合えるように、国際水準の安全管理を目指して全世界に情報は発信をしていきたい。そのためにはCPDを活用した資格登録の更新制や海外諸国の資格との相互承認が必要であろう。

2010年4月21日水曜日

安全を最優先する航空業界

アイスランドのエイヤフィヤットラヨークトル火山が噴火して、欧州の航空管制機関ユーロコントロールによる航空制限で各国の空港に混乱が生じています。

その原因は、火山の噴火により火山灰が航空機の飛行ルートである高層まで達し、危険性が生じているからです。その危険性とは、火山灰が機体に高速でぶつかり、ちょうどサンドブラストのような状態で操縦席の窓ガラスをすりガラスのように磨耗してしまうこと、さらに最も危険な要素として、火山灰がジェットエンジンの中に吸い込まれ、中で熔けて排気口で冷却され付着し、排気口が塞がれて出力を低下させる恐れがあるからです。また、航空機の速度を計測するピトー管に火山灰が詰まって計測不能に陥る恐れも指摘されています。電磁波が生じて無線も通じにくくなります。

過去に火山灰によるインシデントも発生しています。1982年6月24日、マレーシアのクアラルンプールから
オーストラリアのパースに向かっていた英国航空9便のボーイング747-200は、
乗客247名乗員16名を乗せ、インドネシア・スマトラ島の南を巡航中、ジャワ島西部のグヌングン火山噴火の際に撒き散らされた火山灰により、高度11470mで
4基のエンジンが停止するという事態に見舞われた。同機は機長の冷静な判断により危機一髪でエンジンの再始動に成功し、ジャカルタ空港に緊急着陸した。

日本でも大規模噴火が懸念されている火山があり、航空機のトラブルが起こる可能性があります。気象庁によると関東の浅間山、鹿児島・桜島、口永量良部島が噴火警戒レベル3です。レベル3は、大きな噴火が発生する一ランクした下のレベルです。浅間山が大規模噴火すると、航空機の安全を確保するため、関東地区の空港は閉鎖され、日本経済に与えるインパクトは計り知れないものがあります。桜島が大噴火を起こすと関東以西は完全にマヒします。

今回の措置は、過去のインシデントを活かした判断で、止む得ない措置と思います。しっかりした安全確保に対する思想がないと、これほどまでの経済損失を被ってまで安全確保を優先することは出来ません。安全確保には一本筋が通ったポリシーが必要なのでしょう。

2010年4月14日水曜日

安全施工サイクルの工夫

安全施工サイクルは日本が誇るすばらしい安全管理手法です。

安全管理を施工管理とは別個のものとせず、施工管理の中で協力会社と一体となって安全管理を一日、週間及び月間のサイクルとして活動するものです。

1日のサイクルとしては、始業前の体操から始まり、安全朝礼、ツールボックスミーティング(TBM)、危険予知活動(KYK)、始業点検で作業が始まり、作業と途中の安全巡視、安全打合せで午前中の実績報告と反省及び翌日の予定と安全指示事項の確認、再び安全巡視、後片付け、就労確認、終了報告で終わり、翌日も同じことを繰り返します。

ただ、それぞれの目的を理解せずに行っているとマンネリ化に陥ります。朝礼やTBMでは元請けや職長からの一方的な発言に終わり、KYKでは作業員から意見はでず職長が事前にKYボードに記入しておいてそれを復唱するだけに終わってしまいます。また安全巡視とは名ばかりで、不安全設備や不安全行動を見てもその場では何も言わず、朝礼の場で突然発言するような対話がないことが多いようです。

海外の現場でも同じようなサイクルがあります。日本的な学校教育を思い起こすような一斉に整列してのラジオ体操や朝礼は少ないですが、まずTBMまたはSTARRT(Safety
Task Analysis and Risk Reduction Talk)ミーティングとJSA(Job Safety
Analysis)あるいはJHA(Job Hazard Analysis)を行います。
STARRTは、当該工事に該当するリスクや対応すべき事項をチェックリスト形式で、作業員に対し問いかけながら確認していくものです。
JSAは、簡単な作業手順とそれに対して予め行われているリスクアセスメントから危険性・有害性を抽出して確認するものです。
これらは、KYKに良く似ていますが、KYKは作業員から発言が出てこないことが多いのに対し、こちらは対話形式で行います。
作業中は幹部やSafety OfficerによるSafety Walk ThroughまたはSafety Walk
Aroundを行い、その場で是正指示をしていきます。
作業打合せにおいても安全指示を行なうのは日本と同じです。

どのような方法であれ、その手法を理解していないと形骸化してしまい、時間の浪費です。安全施工サイクルも形にとらわれるのではなく、本来の目的を理解したうえでその現場に合ったやり方で工夫する必要があります。

これからの安全は、「規則を何が何でも守らせる」という押し付けでなく、自分たちで「何が危ないか見つけて対策を立てさせる」方向でコミュニケーションを深めることではないでしょうか。

2010年4月11日日曜日

高尾の森植樹祭

我々の会社の仲間6人で、日本山岳会が主催する「高尾の森植樹祭」に参加した。
約700人に近い人が参加し盛況であった。


高尾山は我々のホームゲレンデでもあり、荒廃した森林の再生する活動に賛同し協力することにした。


English version are here.


植林作業にあたり、安全のためヘルメットと手袋の着用が徹底される
現場に行くにも、とにかく長い列だ

植樹する木は、広葉樹だ
カツラ、トチノキ、ムクノキなど、29種、1600本

植える場所はすごい傾斜地で、作業に苦労する

降りるのも危険だ

ちょうど目の前に、いつもの景信山が見える
いつもはあの上で酒を飲んでいる
でも今日は労働だ

English versuion are here.

2010年4月7日水曜日

神奈川県の受動喫煙防止条例

全国初の試みとして、神奈川県で受動喫煙防止条例が4月1日より施行された。

まずは第一歩として評価できますが、まだ既得権益者の保護が現れており、労働者の安全確保という面からはきわめて中途半端といわざる得ない。依然、喫煙可能な箇所が条件付で認められており、その中に入室する職員や従業員は、受動喫煙にさらされてしまうことが避けられない。

神奈川県の条例は、以下のとおりです。
1.禁煙の施設(第一種施設) :学校や病院、福祉施設、映画館・劇場、金融機関、百貨店、公官庁など公共性の高い施設。煙が外に流れない喫煙所を設けることができる。
 禁止区域でたばこを吸うと2万円以下の罰金、禁煙の対策を取らない施設の管理者には5万円以下の過料

2.禁煙か完全分煙を選べる施設(第2種施設)
:大規模な宿泊施設(延べ床面積700平方メートル超)や飲食店(100平方メートル超)、カラオケボックスをはじめとする娯楽施設。座席を単純に分けるだけでは不十分。煙が禁煙区域に流れないような仕切や空調を工夫しないといけない。
 禁煙か分煙の対策を取らない施設の管理者には5万円以下の過料

3.規制が「努力義務」の施設 :小規模な宿泊施設(700平方メートル以下)や飲食店(100平方メートル以下)、パチンコ店やマージャン店などの風営法の対象施設。

実際には、違反者には個人2千円、管理者には2万円が徴収されます。(朝日新聞の記事より)

厚生労働省の基本的な方向性は、今のところ「受動喫煙による健康への影響は明確であることから、多数の者が利用する公共的空間については原則として全面禁煙であるべきである。」という程度にとどまっています。しかし、従業員の受動喫煙防止のため、一般的なオフィスの禁煙化の義務付けは労働安全衛生法を改正して推進されるそうですが、飲食店・宿泊施設のような商業施設の禁煙化については利害調整が難しそうです。

一方、たばこを吸えなくなった人は野外でたばこを吸い、側溝にポイ捨てをするようになります。この行為は環境への影響がきわめて深刻です。吸殻が雨水とともに海に流れ、海洋生物や鳥が摂取して死に至る被害が増えています。海岸清掃を行っていて最も多いのが吸殻です。
まず最初に屋外での喫煙について、条件を設けて罰則を設けるべきです。
シンガポールでは、禁煙区域でのたばこの喫煙や投げ捨てはS$1000以下(約7万円)の罰金です。

受動喫煙防止は、労働者保護のために公共施設や商業施設での全面禁煙を実施し、環境保全のために路上喫煙禁止及び吸殻の投げ捨て禁止を同時に行うべきです。

2010年4月4日日曜日

池上本門寺の春詣

4月は花祭り、お釈迦様の生誕を祝う祭りです。

東京大田区の池上本門寺では、「春詣」と称して参拝者を迎えていた。
池上本門寺は、日蓮聖人が1282年10月13日に61歳で入滅された霊場です。

境内の桜は満開で多くの人が桜を見ながらお酒を飲んで花祭りを楽しんでいました。

東京は平坦なところと思っていたが大間違い
池上本門寺は一つの小山がお寺になっていました

大きなお堂です。
人によって祈願することは違います。
しかし、これは神頼みではなく、自分に誓うことでしょう。そうすることに、仏様もバックアップしてくれるものと思います。
努力しないことには、誰も味方しないでしょう。

般若心経 南無大師遍照金剛
為無事故無災害
(日蓮宗徒ではなくてすみません)

五重塔は開帳され、お釈迦様の誕生を祝う大法要が行われていました。
満開の桜の中で、まさに花祭りです。