2010年11月24日水曜日

建設業の国際化

トヨタの車が世界中で走り回り、パナソニックの製品が世界中で販売されているため、日本企業はすでに国際化したように思ってしまうが、実はそうではないようだ。

日本企業の体質は完全に国際化に遅れてしまったいる。
特に、発展途上国が躍進するグローバル経済のなかで、日本企業の人材育成及び外国人の活用において国際化という面で完全に遅れをとってしまったことである。
「CE建設業界2010.10」のなかで成相修氏が「かすんでゆく日本の姿」として寄稿されていた。
今年の通商白書によれば、労働総人口に占める外国人の割合は、日本は1.1%と米国(16.3%)、ドイツ(9.4%)、英国(6.6%)に比べて圧倒的に低い。日本の企業はグローバルな人材活用が十分でないことを表している。もともと日本経済は基本的には内需に支えられ、国内経済だけで食っていくことができた。海外に進出する場合も、国内のやり方をそのまま持ち込み、ガラパコス的な文化を形成してきた。
また、社内で海外要員育成のための研修会を開いているが、そのアンケートにおいて若年層の海外志向の低下が顕著になってきている。通商白書で引用されている産能大学の調査によれば、新入社員のグローバル意識を2004年と2007年を比べると、「海外では働きたくない」とする割合が28.7%から36.2%へ増加している。さらに海外勤務を命じられても「拒否する」と回答する割合が21.8%から30.5%へ増加しており、この傾向は今日でも強まっている。

韓国企業は、金融危機により壊滅的になった国内需要では経済活動を続けることができず、海外に活路を見出した。特に日本が進出していない発展途上国で基盤を築いた。その際、欧米のシステムを取り入れ、外国人を活用し完全に国際企業として立ち直った。サムソンやLGなどの社内の共通語は英語だとも言われている。

日本企業はなぜ国際化に遅れてしまったのだろうか。それは国内需要だけで食っていけたからである。あえて欧米のシステムを取り入れる必要はなかった。いつの間にか日本は保守的になってしまった。
そして外国人は通訳でしか必要なかった。
建設業に関して言えば、これからは国内需要がさらに落ち込み、このままでは会社の経営を維持していくことが困難であることは明白である。かといって、いますぐに海外に進出しようにも、欧米のシステムになれていないため戦っていけないのである。

TPPへの日本の参加の是非が問われている。韓国はEUとFTAを締結し、欧州市場において日本は関税がかからない韓国に不利な戦いを強いられるようになった。このままいくと日本は世界経済から完全に後れを取るであろう。農業分野の打撃は多少あるかもしれない。農業の生産性改善に手をつけてこなかったことが問題である。自由貿易圏に加盟すると、当然、建設業にも他国から業者が入ってくる。欧州の先例を見るまでもなく、建設業界の再編淘汰が加速するであろう。

建設業の国際化は、早急に改善すべき課題なのである。

 

2010年11月17日水曜日

危険工種のPermit制度

PTWは、何の略かと言えば Permit To Work で作業許可制度のことです。

化学工場におけるアーク溶接(hot work)などの火気取り扱い作業の事前許可制度が該当します。海外工事では、その他にも密閉空間での作業(confined space)、潜水作業、深い掘削作業、重量物の吊り上げ作業、停電作業など危険を伴う作業はPTWとすることが一般的です。

PTWの該当作業は、リスクアセスメントによる危険度の高い作業ということができる。
従って、PTWのチェック内容はリスクアセスメントで挙げられている内容であり、連動していなければならない。

このPTWも内容をよく確認せずにチェックしていると、すぐ形骸化してしまう恐れがある。リスクアセスメントの結果をまとめたリスク評価表をよく目を通し、それに基づいてPTWのチェックリストをチェックして作業許可を出す。作業する時もそのチェック項目にに従ってTBMを行わなければ意味がない。PTWは、リスクアセスメントが基本になっている。

欧米の安全管理はすぐシステム化してしまう傾向にあるが、PTWも要領書(procedure)にまとめられ、PTW Coordinatorが管理するようなシステムが作り上げられてしまう。工場などではごく当たり前のことでも、建設業ではなかなかこのような制度を限られた職員でこなすのが大変である。

海外で工事する場合に、このようなシステムにすぐ対応できないのが日本の建設業である。
ごく簡単なことであるが、システム化されたときにまごまごせずに対応したいものである。

2010年11月10日水曜日

総持寺で安全祈願

最近、建設現場において死亡災害や重大災害が再び目立つようになってきたように感じる。現場力の低下や、社会環境の変化等、数々の原因が考えられる。
とにかく、安全祈願のため近所の総持寺に参拝した。

総持寺は、永平寺と並ぶ曹洞宗大本山で、元は石川県輪島市門前町にあったものが1911年に横浜市鶴見区に移転した。来年がご移転100年にあたり、現在境内のあっちこっちで改修工事が行われている。

境内に隣接して大学や高校があるため、学生が歩いている。

建物は、鉄筋コンクリート造りで比較的新しい。

なかなか凛々しい観音菩薩様です。

大祖堂は、開山堂と法堂を兼ね備えた本堂客殿で、歴代の諸禅師の頂相を安置し、あわせて諸尊牌を奉ひする霊場である。

安全祈願は、けっして仏様にお願いするものではない。
自分に誓うものである。その証人になってくださるのが仏様であろう。

2010年11月3日水曜日

ヒューマンエラーとエラーチェイン

作業員の予想も付かない行動によって起きるヒューマンエラーを、本人の責任で片付けてしまっても第二の異常行動がまた起きます。
とかく現場は、本人の責任にして自分達には責任がないという安易な気持ちになることがあるが、それはとんでもない間違いです。作業所長が、そのような気持ちを外に表すと、得意先や監督官庁から厳しい批判を受けます。

ヒューマンファクターによるミスは、工学技術が進んだ現在においても減らすことはかなりの努力を要します。むしろ、ストレス、高齢化、生活不安という新たなファクターが加わり、ヒューマンエラーは増える傾向にあると考えた方がよい。

ヒューマンエラーの対策は、作業員の安全教育ではなかなか効果が上がりません。災害分析ではよく「本人の安全意識が低い」、再発防止対策で「・・・・を徹底する」、「・・・・の教育を行う」などのことばがよくでるが、再発防止効果は低い。このような災害分析・再発防止策は務めて避けるべきである。

ヒューマンエラーの再発防止策の基本は、設備を改善して、間違った行動を起こしにくくする、間違った行動を起こしても設備側が安全に防御する(フールプルーフ)、突然機械が停止しても安全側に停止する設備(フェイルセーフ)が基本です。間違って通電された電気ケーブルにうっかり触れてしまっても、瞬間的に電源が切れるようなELCBが設備の対策に当たります。

次に管理面で対策を立てる。
これらの対策を立てる場合に、エラーチャインを作ってみると何が重要かということが明白になります。
災害は、いくつかの要因が連続して災害に至り、その中の一つでもなかったら事故に至らないという考え方です。ANAなど、航空業界が取り入れている手法です。

(管理者が正しく指示を出さなかった)−>(ケーブルの配線計画がなかった)−>(ELCBを取り付けていなかった)−>(本人の不安全行動)−>感電
これらの対策をきちっと採れば、大きな災害に至らずにすむ筈です。

本人の不安全行動だけでなく、それ以外の要素を重点対策としたほうが効果が上がることが明白です。
ヒューマンエラーの再発防止策としてエラーチェインは有効な手段といえます。