2009年12月29日火曜日

飛行機の爆破未遂

再びアメリカで飛行機の爆破未遂事件が発生しました。

アムステルダム発デトロイト行きのノースウエスト機で、犯人が躰に巻き付けた爆薬を点火しようとしたが発火しただけで爆発に至らずに取り押さえられました。

空港の検査は何処も厳しいはずですが、それでもすり抜けることができるのが現状です。各地の空港を利用して日本の空港は管理が非常に甘いのがよくわかります。手荷物検査や身分確認は日本では一カ所だけです。チェックインを済まして出国審査を受ける前だけです。インドネシアの空港だと、空港の建物に入るのにチケットと身分証明書(またはパスポート)を提示し、荷物の検査をします。チェックインの後出国審査の前にまた同じように検査があります。そして搭乗口はウエイティング・ルームになっていてまた同じ検査があります。ここでは液体もすべて取り上げられます。一旦ウエイティング・ルームに入ってしまうとトランジットエリアに戻ることはできません。シンガポールの空港でも同様にウエイティング・ルームで厳しい検査があります。

検査でペットボトル入りの水を取り上げられるのは非常に辛いです。だけど、水は爆弾の原料にもなります。金属ナトリウムや微粉末アルミニウムは水和反応を起こして爆発します。このような組み合わせは他にも沢山あり、爆発物を作るのは比較的簡単だと思われます。

このような爆弾テロは根本原因を絶たなければ絶対に亡くなりません。アメリカによるアフガニスタン攻撃やユダヤ資本によるパレスチナ攻撃をまず止めなければ、恨みが恨みを生み続けテロはなくなりません。

飛行機に乗るたびに怖い思いをするのは残念です。

関西国際空港にて 

2009年12月26日土曜日

物忘れ・失念による事故

年をとると物忘れが激しくなります。

  しかし、あることに集中していると元のことをすっかり忘れてしまう場合があります。朝雨が打っていて傘をかけて出社したが、昼から晴れて帰るときにはすっかり傘のことを忘れてしまっていることは誰もが経験することです。

  先日、インドネシアのある現場で、場外ヤードからクローラクレーンをトレーラーで現場内に回送しているとき、現場に到着してオペレーターが降ろす準備をするためクローラクレーンの旋回ロックを解除した。しかし、現場内が混雑していて降ろすことができず、すぐに元の場所に戻すように指示された。トレーラーはすぐに方向転換してもと来た道を戻ったが、クレーンオペレーターは旋回ロックを忘れたため、途中のカーブでクレーンが旋回しトレーラの荷台からずれ落ちました。自分の考えていることと違うことを他人から急に言われると、最初に考えていたことを記憶の中から完全に外してしまいます。
典型的なヒューマンファクターの失念による事故(インシデント)です。

  安全管理をする上で、このようなケースは「本人の不注意」のヒューマンエラーで片づけてしまってはいけません。誰もが陥るヒューマンファクターを想定した対策を取る必要があります。戻るように指示した者も無責任にただ戻れというのではなく、その場で再度クレーンをトレーラーで回送する際の確認を自ら行うか、確認するように担当者に指示すべきです。

  対策は、鉄道等で採用されている「指差し確認」やお互いの「声掛け確認」などがありますが、建設工事ではあまり普及していません。出発時に使ったチェックリストを再度確認する習慣をつけ、「指差し確認」で確認を行ってから次の行動に移るのが最も良いと思います。また、指示を出す人も相手の身になって声を掛けることも必要です。思ってもいなかったことを急に指示されると、極度のストレスにもなり脳の反応が途切れてしまいます。

  年をとると自然に物忘れが多くなり、さらに瞬間的なストレスが加わると失念によるヒューマンエラーの確率が高くなります。周りの人たちのコミュニケーションとヒューマンファクターを考慮した安全管理の仕組みを作るしかありません。

2009年12月22日火曜日

安全帯使用の訓練

危険感受性訓練として安全帯の使い方の実地訓練があります。

二丁掛ランヤードは、慣れないとなかなか上手く使えません。慣れるために現場に訓練施設を作り、一人ひとり実際に安全帯を使用するのが効果的です。胸のD環にリクラクティング・ライフライン(セフティブロック)のフックを掛け垂直ラダーを登り、水平ライフラインにランヤードのフックを掛け、リクラクティング・ライフラインのフックを外して、残りのランヤードのフックを水平ライフラインに掛ける。そして水平移動して元に戻る訓練を何回も行います。 我々安全担当者も言うのは簡単ですが、いざ自分が行うとなると、なかなか身体がついてきません。

  今後さらに改造を加え、ロリップを使った昇降や、フルボディ・ハーネスでぶら下がってみる訓練、人形を落としてみるなど行って、危険感受性を高める必要があります。
フルボディ・ハーネスの場合、ランヤードを使わない場合の収納に工夫が要ります。だらんと垂れ下げると足に絡まったり、突起に引っ掛かったりします。実地訓練をすると足に絡みそうになったりする失敗も見受けられます。
広い場所がない場合、入り口に単管パイプを水平に連結して、ランヤードをそこに掛ながら入り口を通過して安全帯に慣れるようにしているところもあります。当たり前のようでも、基礎からもう一度使い方を確認するのは、安全意識を高める上で非常に効果が上がると思います。

2009年12月18日金曜日

現場で窃盗団に出くわしたら

建設現場では、深夜事務所荒らしに会うことがよくあります。しかし、そのとき窃盗犯人と出くわしたらどうすればよいか、危機管理として対策を立てておく必要があります。

最近、ある海外の現場で深夜に鉄筋の盗難がありました。しかし、ちょうどその時職員が現場を巡回していて不審な行動を発見し、注意をしたのですが、逆に窃盗団に殴られて負傷しました。現場の出入り口には守衛がいるのですが、警備員と窃盗団が繋がっていて、堂々とトラックに積み込んで持ち出そうとしたようです。

ここで危機対応として問題なのは、職員が一人で深夜に現場を巡回したこと、職員が正義感で注意したこと、警備員が信用できなかったことがあげられます。命があったことだけでも幸運というしかありません。銃や刀を自由に持ち歩いている国では、まず命を奪われていたと思われます。

対策としては、自分の命を守ることを最優先として、深夜は絶対に一人で行動しないことです。もし襲われそうになったら抵抗しないこと。不審な現場を発見したら、仲間の職員と警備員を呼んで大勢で対応することです。

以前、大手電機メーカーの工場建設現場で、白昼堂々と敷鉄板を盗んで持去る事件が発生しました。大勢の業者が入っていてお互いに隣の業者が何をしているのか把握できない状態であったと思われます。統括管理と業者間の連絡調整がしっかりしておればこのようなことが起きないはずです。

日ごろから、現場内のコミュニケーションを良くすることや、整理整頓、下請会社の教育をしっかりしておくことも、少しでもスキを作らないことにつながります。

2009年12月14日月曜日

発展途上国における中古機械の安全確保

発展途上国では、日本や韓国の中古建設機械が多く使われています。

しかし、クレーンの安全装置がほとんど付いていないか壊れています。
一応現場への持ち込み時には、持ち込み検査をしていますが、現地の安全担当者のチェックは可成り甘いようです。さらに、地元政府機関が行うクレーン検査など、クレーンについてほとんど知識のないものが行うので全く安心できません。その国自体に安全法令が整備されていない、新しい機械を下請けが買う資金的余裕がない、機械自体がない、修理のための部品が手に入らない等、どうしても安全装置のない古い機械を使わざる得ません。

先日見たクローラクレーンは、荷重計がない、過負荷防止装置がない、巻過防止装置がない、警報機がないような状態で、オペレーターがキャタピラの後部が上がるまで大丈夫というような勘で操作していました。このような状態において、何があろうと日本と同じような安全基準を守れと言っても仕事はできません。ある程度彼らの経済状態や機材の調達状態を考慮して、最低限の安全管理をしていかなくてはなりません。

まず、重機の基本性能を点検確認することです。いくらクレーンでもブームが折れそうな状態やメインのワイヤロープが切れそうな状態ではクレーンとしての機能を満足しません。また、車両系建設機械は、ブレーキがきかないと危なくて作業できません。
次に能力を落として作業計画を立てること。例えばクレーンなどは定格荷重を80%以下にして計画するなどの対策が必要です。

次に怖いのは老朽ダンプトラックやトレーラーです。ダンプトラックはあおりを高くして積載量を増やしていますが、車体フレームに亀裂が走り、荷台を上げたとたんにフレームが切断して横転する事故が耐えません。サイドブレーキが利かない車も多く、坂道で暴走したりします。なかなか細かな検査までできず、とにかく車に近づかないように徹底するしかありません。

日本では労働安全衛生法に従って作業をすれば最低限の安全は確保できますが、発展途上国では、守ってくれる法律もなく基本に戻って安全確保を考えていかなければなりません。

2009年12月10日木曜日

Karoshi

Karoshiは、日本語から派生した英単語です。

  なぜならば、「過労死」に対応する英単語が欧米社会には存在しません。しいて直訳すれば"death from overworks"または"work oneself to death"です。欧米社会ではあまりない現象で、日本の状況が特異な目で見られ報道されたため、そのまま"Karoshi"が単語として使われるようになったようです。
仕事のやりすぎで病気になって死ぬなんて、欧米人の人生観ではありえないのです。

  過労死とは、長時間残業や休日出勤などにより過重労働のため、精神的・肉体的な負担の結果、虚血性心疾患や脳血管疾患など致死的職業性疾病が発症したと判断されて労災認定がなされたものをいいます。厚生労働省のマニュアルでは、「過労死とは過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動脈硬化などの基礎疾患が悪化し、脳血管疾患や虚血性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働不能または死に至った状態をいう」と定義されています。最近では過労による自殺も増えています。

  欧米社会は、個人主義が基本であり、技術者もプロフェッショナルとして個人が労働契約を交わし責任と権限を持って活動しています。日本人は、帰属意識と同調性が強く、立場を維持するために必死で働こうとします。それは悪いことではありませんが、身体を壊しては何もなりません。

  日本以外の発展途上国でも過重労働は多く発生し災害や疾病に至る事例が多いと思われますが、日本のように取り上げられることはありません。それだけ日本社会が欧米社会から異常な目で見られているということでしょう。ベトナムやインドネシアの日本の建設会社の工事現場は、欧米人と現地人スタッフが定時に帰り、日本人職員だけが夜遅くまで残って残業をしている光景を良く見かけます。よく働くのは美徳ですが、自分の健康を省みず働きすぎるのも問題です。原因として日本人特有の責任分担と部下のコントロール、契約社会の不慣れ、会話力の低さ、趣味の無さ等が障害になっていると思われます。

 海外の建設プロジェクトで働く場合、日本の労働基準法の対象外となるため、時間制限は自主的に設定するしかありません。月200時間以上の残業が連続するケースもめずらしくなく、言葉のハンディを越えて仕事をこなしつつ、労働時間を短縮するのは並大抵のことではできません。常に思わぬトラブルや労働災害が発生し、日本の会社の今後の大きな課題です。

  Karoshiを商売にする人までがいます。ニンテンドーDSのソフトで「Karoshi Suicide Salaryman」で、サラリーマンが働き続けて最後自殺するパズルゲームです。このようなゲームをなぜ許すのか、この国のやることはよく分かりません。

2009年12月7日月曜日

安全の契り

毎朝、ゲートに立って作業員と挨拶を交わすのが日課になりました。
スラマッ パギー(インドネシア語)、グッド モーニング(英語)、お早う(日本語) と人によって使い分けます。

きっかけは、8月に災害が発生したことです。一日1500人前後の作業員、200人の職員が働く現場ではどうしてもコミュニケーションが悪くなり、安全方針や現場ルール、作業手順などがうまく伝わりません。8月の災害も作業手順が勝手に変わり、それを職員が良く確認していなかったことが起因しています。まず、コミュニケーションを改善することが安全管理業務の改善策として最優先事項でした。
作業員と職員の距離を縮めること、それにはまず、朝の挨拶、そして朝のツール・ボックス・ミーティングへの参加、ホワイトボードを使った目で見て判る説明などを行っています。

朝の挨拶は安全活動の第一歩です。しかし、この挨拶が日本人の若者は苦手なようです。日本でも「声掛け運動」を呼びかけても、なかなか普及しません。それは安全スローガンとして掲げるだけで、作業所長自らが実践しないからです。
挨拶は、職員が作業員から挨拶される前に、先に作業員に声を掛けた方がより効果が高いです。

海外では、声を掛けると握手を求めてくる習慣があります。今では毎朝作業員と握手をしています。握手をすると、やはり気持ちがこもってきて、「今日一日安全に事故を起こさずに終わってくれよ」と心の中で安全の「安全の契り」を結びます。我々は絶対に怪我させずに夕方家に帰してやるぞという気持ちになり、なんとなくその気持ちが作業員にも伝わるのでしょう。

おかげで一時暗いムードになっていた現場が明るくなってきました。また、ヘルメットの前の部分に名前のシールを張っているために、作業員が名前を覚えてくれます。休みの日に村の中を歩いていても多くの人が名前で呼んでくれます。今のところ、不安全行動が相変わらず発生しますが、なんとか災害に至らず踏みとどまっています。

次はコミュニケーションを良くするとともに指導・教育に効果を発揮することでしょうか。

2009年12月3日木曜日

危険感受性向上教育に玉掛実技訓練が有効

現場で室内での安全教育のほかに、野外で実機を使った玉掛の実技教育訓練を行いました。
もちろん、訓練する職員は無資格者ですが当該国にしかるべき資格保有者を配置しての訓練です。
実施したのは、シンガポール、ベトナム、インドネシアの現場で、使用した移動式クレーンはトラッククレーン25t吊り〜クローラクレーン150t吊りです。吊り荷は鋼管500kg、L=3.0mなどです。
ここで共通した現象が現れました。それは、
1)職員がその現場またはその国の玉掛け合図を理解していないこと。
2)玉掛け合図がみんなバラバラであること。
3)玉掛合図者が指示をしないのに勝手に吊り荷に手を出してしまうこと。
4)補助者が勝手にオペレーターに合図を出してしまうこと。
5)退避指示および確認を省略してしまうこと
などがあげられ、なかなか吊り荷の重心にフックをあわせることができず苦心している状態でした。
この現象が人間がつい無意識のうちに行ってしまう減少で、実際の作業においても現れています。
職員が実際に自分が行ってみて、何が危険で、何が問題か実感することが目的で、危険感受性向上教育の一環です。
玉掛でのもう一つの課題は、ワイヤロープの良否を職員が目で見て判断できないことが多いことです。玉掛と台付けの違い、ワーヤロープの廃棄基準、ワイヤロープの選定方法など目で見て教育することが効果的です。
リスクアセスメントを推進しているが、どこも形骸化していて有効に活用されていません。監査のために用意する書類になってしまっていて、せっかく労力が無駄です。原因は作業標準などから抽出して内容も分からないまま書類を作ったり、協力会社が作成した作業手順書をそのままファイルするだけで、何が危険か分かっていないことです。
危険感受性が備わっていないと、本来のリスクアセスメントができるはずがありません。これからは、リスクアセスメントと危険感受性向上の教育を同時に進めていく必要があるでしょう。