2009年12月26日土曜日

物忘れ・失念による事故

年をとると物忘れが激しくなります。

  しかし、あることに集中していると元のことをすっかり忘れてしまう場合があります。朝雨が打っていて傘をかけて出社したが、昼から晴れて帰るときにはすっかり傘のことを忘れてしまっていることは誰もが経験することです。

  先日、インドネシアのある現場で、場外ヤードからクローラクレーンをトレーラーで現場内に回送しているとき、現場に到着してオペレーターが降ろす準備をするためクローラクレーンの旋回ロックを解除した。しかし、現場内が混雑していて降ろすことができず、すぐに元の場所に戻すように指示された。トレーラーはすぐに方向転換してもと来た道を戻ったが、クレーンオペレーターは旋回ロックを忘れたため、途中のカーブでクレーンが旋回しトレーラの荷台からずれ落ちました。自分の考えていることと違うことを他人から急に言われると、最初に考えていたことを記憶の中から完全に外してしまいます。
典型的なヒューマンファクターの失念による事故(インシデント)です。

  安全管理をする上で、このようなケースは「本人の不注意」のヒューマンエラーで片づけてしまってはいけません。誰もが陥るヒューマンファクターを想定した対策を取る必要があります。戻るように指示した者も無責任にただ戻れというのではなく、その場で再度クレーンをトレーラーで回送する際の確認を自ら行うか、確認するように担当者に指示すべきです。

  対策は、鉄道等で採用されている「指差し確認」やお互いの「声掛け確認」などがありますが、建設工事ではあまり普及していません。出発時に使ったチェックリストを再度確認する習慣をつけ、「指差し確認」で確認を行ってから次の行動に移るのが最も良いと思います。また、指示を出す人も相手の身になって声を掛けることも必要です。思ってもいなかったことを急に指示されると、極度のストレスにもなり脳の反応が途切れてしまいます。

  年をとると自然に物忘れが多くなり、さらに瞬間的なストレスが加わると失念によるヒューマンエラーの確率が高くなります。周りの人たちのコミュニケーションとヒューマンファクターを考慮した安全管理の仕組みを作るしかありません。

0 件のコメント: