2011年11月16日水曜日

食料安全保障

2011年10月31日に世界人口が70億人に達したこと発表された。人口は産業革命以降急激に増え始め2050年には、93億人に達する見込みである。これほどの急激な速度で人口が増え続けるといろんな問題が予想される。まずは富が平等に分配されることはまず考えられず、貧富の格差が拡大して社会が不安定なる。次に食料問題である。現在でも米国では子供から大人に至るまで飽食で肥満が蔓延している一方、アフリカを中心に飢餓で苦しむ人々が多い。



国連人口基金東京事務所のウェブサイトより転載


現在、食料は先進国に十分行き渡っているが、地球温暖化が進み異常気象が発生する中で増加する人口をまかなうだけ穀物を増産することは難しいであろう。記録的なエルニーニュにより世界各地で大干ばつが発生したに1972年は、各国の穀物の生産が大幅に落ち込んだ。米国は1973年大豆禁輸措置をとった。飢餓で苦しむ人が多くいる中で米国の高官は「アメリカの消費者の夕食をまずは用意した」と語った。日本は、戦後の米国の政策により小麦、大豆、トウモロコシのほとんどを米国に頼らざる得ない状況に陥っており、少しでも米国人の満腹感を満たされないような状況に陥った場合、穀物が手に入らない事態に陥ることが予想される。


中国四国農政局ウェブサイトより転載

一方、日本の食料自給率は先進国の中で飛び抜けて低い。カロリーベースでみた食料自給率は、1972年において英国で50%、ドイツで72%、スイスで48%であったのに対し、2007年時点をみると、英国で65%、ドイツで80%、スイスで52%と向上している。一方、日本においては、カロリーベースでみて1972年に57%であったものが2010年は39%へと減少している。食料はエネルギーにつぐ国家の生命線であるため、現状の脆弱な状態は何とか改善の方向に向かわせなければならない。

TPPは、日本食料安全保障のうえで逆行し、米国が利するだけで日本の穀物確保は米国の言いなりになってしまう恐れがある。まずは、ASEAN+3に参加し、アジアでの立場を確立することが重要ではないだろうか。米国に対して何もかもオープンにしてしまうのはまだ時期尚早と考える。深刻なデフレ経済から脱却できず、世界経済が益々混迷を深めていく今こそ、食料問題について真剣に考える必要がある。

2011年11月9日水曜日

玉掛用具のSWL

SWLは、Safe Working Laodの略で、使用安全荷重のことである。

玉掛けに使用するワイヤーロープの種別・公称径の選定の選定方法には、⑴安全荷(SWL)表による方法、⑵吊り角度と張力係数による方法、⑶モード係数による方法がある。SWL表による選定は、条件を設定して表から選択するだけで非常に簡単である。しかし、あまり活用されているとは思えない。

シャックルやリング等の玉掛用具にもSWLがあり、JIS製品にはSWLが刻印されている。1996年にJISが改訂され、表示がSWLからWLL(Working Load Limit)に変更されているが、数値は同じである。

SWLはあまり理解されておらず、現場でメーカーからSWL表を取り寄せていないところが多い(インターネットでも簡単に入手できる)。
SWLが0.5tonのシャックルと、破断荷重が40kNのリングを連結して両端から引っ張った場合、どちらが先に破断するかという問題は、SWLを理解していないと解けない。

ワイヤーロープの基本安全荷重(SWL)は、1本のワイヤーロープで垂直に吊ることができる最大の荷の質量を表し、切断荷重(破断荷重;kN)を安全係数で割って求める。
SWL表には、2本吊りと吊り角度別の使用安全荷重も表示されている。難しい計算をする必要はなく、この表さえあれば容易にワイヤーロープの選択が出来るようになっている。

                                              荷重(破断荷重;kN)
基本安全荷重(質量;ton)=---------------------------------
                                                 9.8×安全係数

                                      ≒ 0.008×ワイヤーロープ径2(mm) : 簡易式

玉掛に使用するワイヤーロープの安全係数は、日本では6以上あるが、欧米では5以上を使用する。玉掛用吊りチェーン、シャックルは5以上を使用する。また、人に係わるワイヤーロープ、例えばエレベーターのワイヤーロープの安全係数は、10以上を使用する。

SWL0.5tonのシャックルの破断荷重は、0.5×9.8×5=24.5kNリングの破断荷重は40kNであるので、シャックルが先に破断する。

玉掛け用ワイヤーロープには、SWLの刻印または、タグを付けておけば、現場でもワイヤーロープの適否がすぐに確認することが出来る。日本国内では、このSWLによる管理が理解されていないのが現状のようだ。

2011年11月2日水曜日

室内安全教育の改善

災害などが発生した後、かならず安全衛生教育を行って再発防止の徹底を図っている。また、災害が発生した時は、誰もが二度と災害を発生してはならないという意識が高まるが、時間が経つに従って災害の記憶が徐々に薄れ、安全意識も低下してくる。そのために、定期的に安全教育を行って、安全意識の再度引き上げを図っている。安全意識を向上させるためにも安全教育は必要ということが判る。

しかし、効果的に安全意識を引き上げ、それを長い間持続できるようにする教育となると非常に難しい。ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線によれば、通常の人間は講義で学習したことを20分後には42%忘却し、1時間後には52%忘却し、1日後には74%忘却するとしている。

最近は、パワーポイントを使った講義方式の教育が多いが、パワーポイントは講義をする側にとっては、非常に楽に講義が行える反面、受ける側にとっては、画面が次々に変わっていき、全く記憶に残らない。また、教える項目があまりにも広範囲で量的に詰め込み過ぎる場合も、全く記憶に残らない。特に、パワーポイントを使った安全教育は、ヘルマン・エビングの忘却曲線以上に忘却すると思われる。
発言機会が少なく、メモを取らなくて済み、ただ受動的に聞いているためこのようになるのであろう。

また、参加型のグループ討議は、積極的に参加したものにとっては多少内容が記憶に残る。ただし、グループが大人数になると、そのグループの中で受け身になって発言しない者、グループでの発表内容を、結論からつくっていって討議を簡単に済ましてしまおうとするグループ(要領のいい人達)、グループ討議が間違った方向に向いていても講師の技量不足でそのままにしてしまい、目的に会った研修ができない場合等の問題がある。

安全教育は、出来る限り少人数で、受講者が他の受講者と意見をぶつけ合う形をとれば、その内容については強く記憶として残るであろう。講義は、議論を戦わせるための導入としての知識の提供に留める。そして、講師には、議論を旨く導く技量が必要になる。パワーポイントの講義は、資料を用意しておけばそれを説明するだけで終わるが、議論を上手く誘導するにはシナリオがないので、いろんなケースについて予め勉強しておかなければならない。

最近、上手く行ったケースとして、簡単な話題を2人で意見をぶつけ合い、結果の発表は求めない、というやり方で、このケースは絶対に受け身で入られない。結論をまとめる必要がないので遠慮無しに自分の意見を出すことが出来る。問題解決をグループ討議で行い意見をまとめる場合でも、あえて3人のグループにしてみると、全員がよく意見を出すようになった。

室内でも安全教育について、改善をしていきたいが、いい方法があったら教えて頂きたい。