2010年6月30日水曜日

健康的飛行旅程

飛行機に長距離乗っていて体調を壊す人がいます。その対処法が機内説明書にありました。

乗物酔い :まず、飛行機に乗っていて体調が悪くなるものに「乗物酔い」があります。最近の飛行機は乱気流を避けるため高い位置を飛び機内の気圧も幾分下がります。乗物酔いにかかると吐き気を催します。その対処方法は、飛行機に乗る前に香辛料の利いた食べ物を控え、機内では脱水症を防ぐため十分水分をとる。吐き気を催し始めたら、できるだけ頭を揺すらないように静止し、座席を後方に倒して目を閉じます。

飛行中のストレス :ストレスを和らげる方法は、まず呼吸を整えることです。ゆっくり3つ数えながら、しっかりと息を吸い込み、15〜10分間、継続します。バイオフィードバック(自己制御)も効果的です。自分がリラックスしている状態を思い浮かべます。神経を集中させ足元、足、腿、腹部、胸部などの身体の各部を順番にリラックスさせる。数分後には脈拍と呼吸の回数は減少し、緊張が徐々に解消されます。

客室内の気圧変化 :客室内の気圧が低下するとまれに、小腸内の空気が膨張し軽症鼓しんによる不快感を引き起こします。長時間フライトの間は、適切な間隔で必ず飲食を取ります。また、常に水分を取り体内の水分量を十分に維持することが重要です。

深在静脈血栓症(DVT):いわゆるエコノミー症候群と言われているものです。DVTとは、ふくらはぎ及び足筋の深部静脈で発生する凝血です。この自然発生的な症状は通常、心疾患または老齢のようなリスクに面している人に、また、継続した一定のあいだ足を動かさなかった場合など、非常に高い確率で発生します。初期症状として、足筋の痛み及び圧痛、皮膚の発赤及び膨潤などがあげられます。凝血塊が肺に転移した場合は、呼吸困難が起こる場合があります。
対策は、フライトの間、継続して足筋の運動を行うことです。できれば、客席内を定期的に歩き回ることです。着席している間は、簡単な体操をします。

推奨する簡単な機内体操
2時間毎に以下の軽い体操をすることを勧めています。
① 首 :頭を右肩の方へゆっくりと傾けて止めます。同じように左肩の方に傾けて止めます。胸部の方へゆっくりと頭部を倒し、そのまま止めてゆっくりと息をします。この動作を3回繰り返します。
② 腕 :腕を伸ばして、肘のところでゆっくり曲げながら胸部に当てます。それを5回繰り返します。
③ 肩 :両肩をすくめて、そのまま止めてから、ゆっくりと、リラックスします。それを5回繰り返します。

以上の資料は、シンガポール航空の機内資料より抜粋しました。

2010年6月23日水曜日

ヒヤリハット報告の普及しない訳

製造業では活発に行われているヒヤリハット報告活動が建設業では、ほとんど板についていない。
その理由はなぜなのか?

建設業の特殊性が考えられる。事業場がプロジェクトごとの特定期間に、下請け業者の寄せ集め組織で、場所もその都度変わる。労働者が自分の大事な職場だという意識が希薄であり、わざわだしんどい目をして職場の労働環境を改善しようとする意欲が湧かないからである。
COHSMS(建設業の労働安全衛生マネジメントシステム)もそのことを踏まえてシステムがされているが、どうしても形式的な書類のみに終わっている。

ヒヤリハットは、リスクアセスメントを行ううえで、労働者の危険感受性を高める方法として非常に有効であり、安全に限らず職場に潜む問題を早期に解決する方法として有効な手段である。
ヒヤリハット報告活動を阻害する要因は以下のことが考えられる。

1.ヒヤリハット報告した者をマイナス評価してしまうこと。
2.ヒヤリハット報告の結果をうまく活用していないこと。
3.労働者にわずらわしい手間が増えること。

その対策として
1.ヒヤリハット報告をしたものをプラス評価し、表彰制度に組み入れること。そして、なぜ表彰に値するかの理由を説明すること。すなわち、問題が小さいうちに発見し、職場全体にその問題が再発しないように水平展開することができ、職場の改善に大いなる貢献をしたことを説明するのです。
2.ヒヤリハット報告をすぐその場で改善するような小集団活動を展開する。元請工事担当者を長とした担当部署の改善をしていく。
3.それぞれの部署で行ったヒヤリハット報告活動を作業所または支店全体でまとめ特定の固有名詞は省き、分析・分類して各現場にフィードバックし、リスクアセスメントやツールボックスミーティング、危険予知活動に活用する。
4.報告する書式はなるだけ簡略なものとする。報告されたヒヤリハットのうち、特に水平展開すべきと思われるものについてのみ、再度ヒヤリングを行い、詳しく原因分析と再発防止対策を立てる。
5.データベースは畑村洋太郎氏の失敗学データベースのような形でまとめ、水平展開の資料とする。
また、せっかく行うのであれば安全の問題だけでなく、環境、品質、工程上の問題など、現場に潜むあらゆる問題をすべて取り上げるのが良い。意外と根本問題は同じであることが多いからです。

形式的な労働安全衛生マネジメントシステムに陥らないようにするためには、かつてのTQCのような小集団活動をより簡略にして導入するのが良いかもしれない。

2010年6月16日水曜日

登山における危険源(Hazard)

ごく一般的な初心者向きの登山コースでも事故になる危険源(Hazard)は潜在しています。

低い山での事故原因は、落石、転落、落雷、道迷いからくる疲労、熱中症、降雨による低体温症、倒木、熊等の動物に襲われる、マムシに咬まれるなどがあります。事故現場を見ると、なぜこんな所で起こったのかと疑問に思いますが、逆に言えば、どんな所でも事故は起こりうるということです。

先日、丹沢の大山に登ったとき、死亡事故現場を2箇所確認しました。ここは、尾根筋にある見晴台ですが、1992年11月1日に木造四阿に落雷し、雨宿りしていた約25人の内、1人死亡、10人負傷しました。晴れている時は、大山を見ながらお弁当を食べてのんびりと休憩する所です。落雷の危険がある場合、平らな所にぽつんと建つ四阿や高い木の下は非常に危険であるということを知っていなければなりません。高い木の先端から45度の範囲の中から対比すべきです。ここの場合は林の中に逃げ込めば助かったと思われます。

ここは、おなじ大山の登山ルートで、見晴台からケーブル駅への道ですが、転落死した現場です。普通に歩いていればまず落ちることはありません。話に夢中になっていてよそ見していたか、写真を撮っていて足を踏み外したか、あるいは気分が悪くなってめまいをして転落したといか考えられません。登山ルートにすべて転落防止策を設けるのは不可能で、事故で責任を負うしかありません。

これは尾瀬の木道です。木道が雨で濡れて、その上に落ち葉が落ちている場合、歩きながらちょっとよそ見すると、ステンと見事に転びます。しかし、転んだときに両脇の杭に頭をぶつけると大事故になります。環境省の人から毎年何人かそのような人がいてヘリコプターで運ばれるそうです。何でもない安全そうな道にも危険源があります。

冬の武奈が岳です。京都の近郊にあり晴れた日は快適な雪登山を楽しめますが、吹雪になりガスに覆われると、踏み跡が識別できず方向を見失って遭難する可能性があります。最近は地図とコンパスを持たずに登る中高年登山者が多く、深田百名山の気分で登っている登山者の遭難が増えています。

登山にもリスクアセスメントは必要でしょう。安全登山の教育を受けずに登って遭難した場合、登山保険には加入できないようにする、捜索費用は全額遺族が負担するとすることも必要と考えます。

2010年6月9日水曜日

起重機船の安定度

移動式クレーンは本当にいとも簡単にひっくり返ります。
移動式クレーンは、水平で堅固な地盤に設置することを大前提として、安定度を十分確保する範囲で定格荷重が定められています。そして移動式クレーンの検査では、定格荷重の1.27倍の荷重を吊り上げ、機械そのものの強度と安定性と確認することになっています。
しかし、クローラクレーンを台船に搭載した場合はどうなるのか。
クローラクレーンを台船に搭載し、台船と固定して一体とした場合、「浮きクレーン」になり、あらたに「浮きクレーン」(起重機船)としての検査を受け安定性を確認する必要があります。

作業船設計基準「第4編港湾工事用起重機船」に起重機船の安定性が決められていて、それを抜粋すると
4.2.1 起重機船の安定度
起重機船は、静穏な水面で定格荷重に相当する荷重を吊った状態において、転倒端に置ける乾舷(上甲板から水面までの垂直距離をいう。)が、0.3m以上となるものでなければならない。
(1) 「静穏な水面」とは、波立たない平水面をいう。
(2) 「乾舷」とは、右図に示す距離をいう。
(3) 移動式クレーン構造規格第15条(浮クレーンの安定度)は、起重機船の安定度について以上のとおり規定している。
(4) 移動式クレーンの荷重試験及び安定度試験について、クレーン等安全規則第3章移動式クレーン第55条に以下のとおり規定されている。
 (a) 荷重試験は、移動式クレーンに定格荷重の1.25倍に相当する荷重(定格荷重が200トンをこえる場合は、定格荷重に50トンを加えた荷重)の荷を吊って、吊り上げ、旋回、走行等の作動を行うものとする。
 (b) 安定度試験は、移動式クレーンに定格荷重の1.27倍に相当する荷重の荷を吊って、当該移動式クレーンの安定に関し最も不利な条件で地切りすることにより行うものとする。
(5) 起重機船の転倒に対する要素は、陸上の移動式クレーンとはまったく異質のものである。

起重機船の安定度は、陸上の場合に比べ十分にあり、試験荷重時に喫水を計測して確認すれば十分です。
船の安定度については、船体の乾舷及び船体の傾斜角などを確認することでよい。そして船体傾斜角の許容範囲を以下のようにすることを推奨しています。
4.2.2 船体の傾斜角
非自航起重機船作業時の船体傾斜角の許容範囲は次のとおりとすることが望ましい。
(1) 縦傾斜角(トリム角)
   ・荷重吊り上げ直前(船尾に)  3°
   ・荷重吊り上げ時(船首に)  3°
(2) 横傾斜角(ヒール角)
   ・荷重吊り上げ直前(反対側に)  3°
   ・荷重吊り上げ時(荷重側に)  3°
ただし、いずれの場合においても最小乾舷300mmは満足されていなければならない。
台船にクローラクレーンを搭載し固定しない場合も、滑動防止措置をとり、台船が傾斜しない措置が必要です。そして安衛法(法38条、令2条3号、クレーン則85条)により変更届(変更検査)が必要です。変更検査には安定計算が必要になります。
ちなみに、私もクウートで起重機船転倒の経験があります。そのときは、台船の舷側に穴が開いていて、海水が中に入ってバランスを失い転倒しました。

2010年6月2日水曜日

監理技術者講習及び監理技術者証の廃止

政府行の行政刷新会議は、5月21日の事業仕分けで、建設業法で定める監理技術者制度の見直しの提言が出した。

その結論は、資格者証の交付は「廃止」、講習は「受講の義務付けを廃止」とする内容であった。監理技術者資格の認定に絡む2つの財団法人、「建設業技術者センター」と「全国建設研修センター」の公益法人にメスを入れた。

監理技術者資格者証の交付については、建設現場の安全・環境、品質管理の適性確保が重要であることは重要であり、不適格業者の排除も重要だとしているが、現在行われている内容が資格者証の交付に効果があるとは認められないとして廃止と結論付けた。さらに、「建設業には資格が様々ある。

また、監理技術者講習については、実施主体や手数料などの利用者負担を見直としており、義務としての監理技術者講習は廃止とするという結論を出した。

なぜこのようになったのか。監理技術者講習自体の考え方は正しいが、運営主体が国土交通省の天下りの受け皿となり、法外な手続き料を取ったため、OBの給料を捻出するための制度ではないかという批判が広がったため、実態にメスが入ったと思われる。
また、講習内容のレベルが低く、5年に一度ただ一日我慢して座っているだけで修了証がもらえるというのにも批判があった。
功のような状態が、技術者のレベル向上に役に立っていないという評価につながったと思う。技術者の能力向上教育には、CPD制度もあり、監理技術者講習だけに法的インセンティブを与える必要はないと考える。

さらに、総合評価方式の入札にCPDの実績を加点対象となるが、これも技術者を駄目にする制度である。点数稼ぎのために受講しているものが多く、施工管理技師会のCPDs講習の技術レベルは高くないものもある。本来の目的である技術の向上に結びついていない。これにもメスを入れるべきであるが、そこまでは手が回らなかったのであろう。

これらの制度は、日本の技術者を国際競争からかけ離れてガラパゴス化してしまう恐れがある。すでに韓国の技術者には大きく水をあけられている。国内市場はさらに縮小していく中で、もう少し技術者の能力を高め、国際市場でも戦える技術者を養成する必要がある。
それには、国土交通省のOBの受け皿機関ではなく、純民間機関がCPDの質の向上に努め第三者認証を受けながら、技術者自身の技術の向上に資するように行うべきです。