2011年10月26日水曜日

セーフティポリス

店社の安全衛生部長の中には、未だに現場に法令順守を押し付ける人がいる。

労働安全衛生法を遵守することは、重要である。しかし、現場で働く労働者にとって、「労働安全衛生法の第○○条に決められているから守らなければならない」と言われても、法律に詳しい訳でなく、なかなか納得しがたいものである。そのような、労働者の知識レベルや気持ちを考えず、やみくもに法令に定められているから守りなさいと行っても反発されるだけである。

安全衛生部長は、労働安全衛生法を熟知しておく必要があるが、現場で指導するときはそれを前面に出さず、「もし今の状態で作業を行うと○○○の危険があるから、改善しよう」と労働者に分かりやすく説明する必要がある。店社の安全衛生部長は労働者に危険性を判りやすく説明できる能力が必要である。決して、法令を押し付けるセーフティポリスになっては行けない。

新しい時代の、安全衛生担当者は、社内では安全衛生管理の戦略を立てる者であると同時に工事担当者や労働者に対してセフティーコンサルタントであるべきである。

2011年10月19日水曜日

リスクの再評価

リスクとは、人体に危害や傷害を与えるような危険な事象または暴露の発生の「可能性」と、事象または暴露によって引き起こされる負傷または疾病の「重篤度」の組合せをいう。「可能性」と「重篤度」の掛け算または足し算の数値によって、L(低い)、M(中程度)、H(高い)と評価することが多い。

リスクアセスメントでは、まずハザード(危険性または有害性)を洗い出し、そのハザードによって生じるリスクを評価する。そしてリスク低減策を立て、それによってリスクがどの程度下がるか再評価してALARP(as low as reasonably practicable)領域にあるリスクを合理的、実行可能な範囲で低減できるリスクまで下げることを繰り返して事業場の安全性を高めていくことである。

リスクアセスメントで最も重要なことは、ハザードを漏れなく洗い出すことである。実際、リスクアセスメントの演習を行うと、ハザードの洗い出しが不十分であるにもかかわらず、リスク評価に時間が多くとられることが多い。しかし、演習の結果、各グループが発表すると、いかにリスク評価にばらつきが出るかということも判る。リスク評価は組織の持つ安全文化や個人の経験の差によりばらつきが出るのは当然であり、内部監査等でリスクの評価値がおかしいという指摘もどうかと思う。

ただし、リスクを再評価するときの考え方をしっかり把握しておく必要がある。リスク低減策を実施した結果、予想される災害や疾病の起因物そのものがもつエネルギーや毒性が減少することによって事象又は暴露によって引き起こされる負傷又は疾病の重篤度が低くなる場合は、「リスクの重篤度」は下がる。しかし、エネルギーや毒性が下がらないのに評価値を変えている場合が多い。リスク低減策により災害や暴露の可能性は下がるが、本質的なリスク低減策を行っていないと「重篤度」はあまり変わらない。
例えば、3mの高さの棚の最上段に20kgの機械が置いてあるが、安定が悪く落下して通行人の頭に当たり死亡する危険性があったとしよう。この場合、「落ちないように機械を固定した」では、落下する可能性は減少するが、もし固定が外れた場合、同じような死亡災害が発生する。しかし、この機械を高さ50cmの一番下の段に置いて固定する場合、「可能性」および「重篤度」ともに下がる。

リスク評価がM(中程度)、H(高い)となった場合はリスク低減策を立て、なおかつ再評価してH(高い)からM(中程度)以下にしないと作業を行ってはならないと社内マニュアルに記述している場合がある。これは労働安全衛生マネジメントシステムの内容どおりなので正しいことであるが、再評価がめんどくさいから最初からリスク評価をH(高い)にしないような評価や、先ほどの例のように「重篤度」が変化しないはずなのにM(中程度)にするために「重篤度」を下げているケースをよく見かける。特に建設業ではリスクの評価がリスクアセスメントの普及に害になっているのではないかと考える。

受容できるまで繰り返しリスク低減策を講ずるALARPの考え方は、非常に正しいが、建設業のような不特定の場所でいつも違う作業員が行うような場合は、リスク評価の部分をもう少し簡略化しないと普及しないと考える。リスク評価の辻褄合わせに走るようなリスクアセスメントは改善していかなくてはならない。

2011年10月12日水曜日

溶接ホルダーを握ったまま海に落ちると....

陸上で溶接作業をしていて、あやまって溶接ホルダーを握ったまま海に落ちると間違いなく死亡災害になる。

あり得ないようだが、いつ落ちてもおかしくないような足場や筏で鋼管杭の継ぎ手箇所の溶接や地盤改良船のケーシングパイプなどの修理をしているケースをよく見かける。

水中溶接ができるのだから、海に落ちても問題ないだろうと考えるのは大間違いである。水中溶接は、通常、直流電源を使用し電撃の危険性は交流電源の六分の一程度であり、溶接ホルダーも陸上用とは全く異なり絶縁性能もかなり高くなっている。しかし、陸上用溶接ホルダーは握り部分の直近が充電しており、ホルダーを握ったまま落水したとたんに感電死します。

そしたらどうしたらいいか、当然落ちないような足場や手すり、波を被らないような高さの足場にすること、絶縁手袋を着用して作業することなどです。

それでも溶接作業者が海に落ちてしまったら....そのときは運を天に任して溶接ホルダーを思い切り遠くへ放り投げるしかないであろう。人間は危険な状態に陥ると思いっきり何かを握ってしまう習性がある。それを離せというのは相当落ち着いてなければならない。水中部では充電部から同心円状に電圧が急激に降下し、50cmも離れると電圧はほとんどゼロに近くなる。そして接地の位置との関係により回路の中に入っていようと十分離れていれば問題がなくなる。

しかし、海に落ちたときのためにホルダーを遠くに投げる訓練をするのは愚の骨頂である。まずは、本質安全を図ること。すなわち溶接しなくてもよい工法を考えること、次に海中転落しないような安全な設備を設けることである。最悪のことを考える必要はあるが、まずは本質安全である。

2011年10月5日水曜日

労働安全コンサルタント試験の直前対策

10月19日(水)の労働安全衛生コンサルタント試験まであと2週間あまり、毎日過去問題に取り組んでいる人が多いと思われる。

試験の直前は、あまり多くの問題集本に手を付けず、基本に戻って「新しい時代の安全管理のすべて」を心を落ち着けて読み返すことをお勧めする。最初から最後まで読むだけで2週間経ってしまうかもしれないが、今まで気がつかなことに気がつき、問題集を解くよりも効果があると思われる。

今まで一度も読んでいない人は、自分の自信のある分野だけでも目を通しておくでしょう。また、Webサイトには、いろんな情報が飛び交っているので、余り気にとらわれない方がよい。土木技術者に苦手な化学物質名は、得意でなかったら無理に覚えなくてもよい。当日、このような問題は日本語として文章がまともかどうか、そのような観点から攻めてはどうか。

法令集を読み返すことも重要です。クレーン則やボイラー則、構造規格などは土木技術者の弱い所なので、よく理解しておく必要がある。

あと2週間しかないので、体調を整えることが最も大事です。そして、仕事が忙しい人は、時間がないとぼやかずに、少ない時間でも逆に集中力が増すので、ここが踏んばり時です。

さあ、がんばりましょう。