2011年2月23日水曜日

飲酒運転の同乗者に対する実刑判決

2008年2月に起きた交通事故により9人を死傷させた事故で、運転者だけでなく同乗者も実刑判決が下された。

2月14日、さいたま地裁で、交通事故の際、泥酔した運転者の車に同乗していた2人に対し、懲役2年の実刑判決が言い渡された。遺族側は、同乗者を危険運転致死傷罪の共犯で告訴し、さいたま地検は危険運転致死傷の幇助罪で起訴していた。
運転者は、すでに危険運転致死傷罪で懲役16年が、酒を提供した飲食店経営者は、道路交通法違反(酒類提供)の罪に問われ、懲役2年執行猶予5年が確定している。

同乗者は、会社では運転者の上司にあたり、同乗者が直接指示しなくても、同乗者が何も言わなかったら黙認して、直接指示したのと同じ状況と考えてもおかしくないであろう。今回のケースは、運転者の上司であるため、同程度に責任が重い思う。運転者の会社の上司であれば、当然飲酒運転を止めなければならない立場にある。社会的影響を考えると、共謀罪で懲役16年でも当然だと考える。今後の控訴審で正しい判決が出ることを期待する。

一方、飲食店はいくらお客様に飲酒した人の車の運転を控えることや、車を運転する人には酒を提供しないと説明しても、お客様がいい加減な返事をして勝手に飲酒運転することも考えられ、飲食店による抑制には限界を感じる。

建設現場でもあってはならないことだが、たまにゴミ箱から空缶ビールが見つかることがある。昼休みに飲んでいるのか、仕事が終わった後に飲んでいるのかはわからない。現場の所長は、毅然とした態度で現場内では絶対に飲酒させないようにしなければならない。また、現場の近くの食堂でも、昼食時にビールを飲んでいる作業員を見かけることがある。近くの飲食店にも昼食時にビールを提供しないように協力を求める必要がある。

以外と飲酒については甘かったのが今までの日本である。
これからは、飲酒に起因する事故に対しては、厳罰に処す必要がある。海外では、ドラッグの問題も深刻で、現場の新規入場者教育でははっきりと飲酒およびドラックの禁止を教育している。
日本でも当たり前である一般常識を、今一度教育する必要がある。

2011年2月16日水曜日

エンジニアのCPD

先週、日本技術士会のCPD認定技術者の更新を済ませたところです。最近の資格は、CPD(継続研鑽)が義務づけられている。

日本の資格は、一度取得すれば永久資格として有効であるが、欧米の資格では更新制度が取り入れられており、技術者及び資格の質の低下を防いでいる。日本の資格を各国と相互認証しようとしたところ、この問題が引っかかり、日本の制度を変える必要からCPDが導入されたが、まだ更新制度を取り入れる資格は少ない。また、CPD制度もペナルティー規定がなく、CPDを行わなくても資格を剥奪されることはない。

政府もやっと、昨年末に監理技術者講習の廃止を決定した。この講習は高い受講費が必要だが、大きな講堂に多人数を詰め込み、ただ座っているだけで修了証がもらえるというものであった。各学協会がCPD教育を開催している中で、国土交通省関連の団体の維持のための行事で、継続研鑽の内容から程遠かった。

技術者制度検討会(座長: 小沢一雅・東京大学大学院教授)が発表した廃止の主な理由は、
・講習会等で一律に質を確保することは困難。
・参加すれば修了証が取得できる現状は見直すべき。
・専門工事の新技術に関する講習は乏しい。
・専門技術は講習で実施する形式にはそぐわない。
・法改正等を的確に業務に反映するには、5年周期ではなく、自ら希望して必要な講習が受講できる仕組みが必要。
・ 自主性に任せつつ、監理技術者として最低限必要な法制度、施工技術等を適時に効率的に学習する機会は必要。
・自主的な取組を支援、後押しするインセンティブが必要。
・CPDと連携したしくみ(ポイント獲得が目的化しない工夫)。 
・技術力の確認のため、技術者の更新プロセスが必要。

労働安全衛生コンサルタントもCPD制度があるが、資格保有者でCPDを行っている人は少ない。米国のCSP制度をモデルにしていて、CPD250時間達成したらCSP( Certified Safety Professional )を名乗るための申請をすることができる。今のところ、CPDを行わなくてもなんら業務に支障はなく、中途半端な制度である。国際的に相互承認しうる資格にするためには、思い切って資格の更新制とCSP制度を導入すべきである。

このままでは、日本の技術士も労働安全コンサルタントもガラパコス化するのではないだろうか。国際経済の自由化の流れで、技術者の国家間移動の障壁がなくなったとき、日本はどうするのだろうか。

2011年2月9日水曜日

山の基礎知識

最近、中高年登山者の基礎知識の無さがよく目につく。
マスコミによる深田久弥百名山に誘発された登山者が急激に増え、基礎知識もないままただピークを征服することだけに明け暮れている。

まず、地図を読めない。登山ツアーのリーダーの後をついて歩くだけで、地図とコンパスを持っていない。従って自分の現在地を確認しながら行動できる人が少ない。おまけにGPSの普及で、機械に頼りきりの人もいる。自分の位置をおおよそ把握できないということは、道に迷う危険性、残工程をたてられず疲労困憊に陥る危険性などがある。ペースは遅くても一定の速度で行動していれば、周りの地形と照合しながらおおよその場所が把握できる。道標があれば、自分の想定がどの程度誤差があるかも修正できる。

つぎに、最近はラジオの気象通報より天気図を作成しなくなった。昔は山に入る前から定時に天気図を作成し、行動中も天気図を作成していた。したがって、事前におおよその気圧配置が頭の中に入っていて、天気の急変をある程度事前に予想することができた。そして、先輩諸氏から観天望気の方法を行動しながら教わった。雲の形、山にかかる雲、風向き、鳥の飛び方、星の瞬きなど、自然を観察して天気の変化を予想するのです。最近は、山小屋で衛星放送を見ることができるようになったので、さすがに天気図を作成することはなくなったが、常に気象の変化に気を配らなければならない。そうでないと、悪天候の中を無理に行動したり、避難小屋に留まったりという判断ができない。

非常食を持たない人が多い。どんな低い山でも非常食は必要である。高カロリーのものを最低1食分は持っていたい。チョコレートやクッキー、カロリーメイト、それに水。したがって、非常食は山を下りるまで手をつけるべきでない。リーダーは、非常用にガスストーブと小さなコッフェルを持参し、低体温症に備えなければならない。

長期縦走登山の場合、万が一のビバークに備えてツエルトは必需品である。最近のツエルトは非常にコンパクトで軽く、持参してもほとんど苦にならないはずだ。緊急時は、ツエルトをすっぽり上から被り、雨と寒さを多少なり緩和することができる。道に迷うばかりでなく、メンバーの一人が足を怪我し、明るいうちに小屋や下界に到達できないケースも考えられる。暗くなってからの行動は危険を伴い、できる限り避けなければならない。

それでも、暗くなって行動しなければならないときに備え、ヘッドランプも必要である。最近のヘッドランプはLEDのため軽く、電池の消耗も少なくて性能が良くなっている。低い山でもこれもぜひ装備しておきたい道具である。

今年も多くの中高年登山者が遭難し、事故を起こした。山の基本に忠実に行動していれば事故にならなかったであろうと思われる。山の楽しみ方は、深田百名山の征服記録を作るのも良いし、のんびり景色を楽しむのも良いし、それに対してとやかく言うことはできない。ただ、山の基本をよく理解して、他人に迷惑をかけないようにしてほしい。

2011年2月2日水曜日

アセチレンボンベの検査

ガス溶接作業に使用する溶解アセチレンボンベは、通常メーカーからガスが充填されたものを調達するためどのような管理になっているのか良く知らないことが多い。

溶解アセチレンボンベは圧力容器であるため、高圧ガス保安法(経済産業省主管)の規制を受ける。また、構造規格はJISの規格(B-8265、8266)にも規定されている。

まず、容器の使用期限は、ガス保安協会で容器製造後38年という自主ガイドラインを設けている。容器には製造年月(型式試験の検査合格)の刻印がされている。しかし、容器保安規則((昭和41年5月25日、通商産業省令第50号)により再検査が義務づけられていて、再検査に合格しない容器や期限を越えた容器はガスの充填をしてはならないことになっている。

1998年の規則改正で、溶接容器500リットル以下(アセチレン・プロパンガスボンベ等)の場合、製造後20年未満の場合は5年ごとに、20年を経過したボンベは、2年ごとに再検査を受けることになっています。

容器のところに刻印が押してあるが、すべて管理されている数値である。
したがって、型式検査の期限切れのものについては使用しないのが法の趣旨である。現場では、なかなかそこまで見て管理できないであろうが、ガスを充填したまま長期間保管することはまれであるので、倉庫に残っていた古いものを使うときは要注意である。

また、容器の内部にはアスベストを使用しているものもあり、勝手に処分することはできない。

現場からの質問に答えるため調べたが、普段何気なく使っているものも規制と危険性が潜んでいるのを知った。