2011年2月9日水曜日

山の基礎知識

最近、中高年登山者の基礎知識の無さがよく目につく。
マスコミによる深田久弥百名山に誘発された登山者が急激に増え、基礎知識もないままただピークを征服することだけに明け暮れている。

まず、地図を読めない。登山ツアーのリーダーの後をついて歩くだけで、地図とコンパスを持っていない。従って自分の現在地を確認しながら行動できる人が少ない。おまけにGPSの普及で、機械に頼りきりの人もいる。自分の位置をおおよそ把握できないということは、道に迷う危険性、残工程をたてられず疲労困憊に陥る危険性などがある。ペースは遅くても一定の速度で行動していれば、周りの地形と照合しながらおおよその場所が把握できる。道標があれば、自分の想定がどの程度誤差があるかも修正できる。

つぎに、最近はラジオの気象通報より天気図を作成しなくなった。昔は山に入る前から定時に天気図を作成し、行動中も天気図を作成していた。したがって、事前におおよその気圧配置が頭の中に入っていて、天気の急変をある程度事前に予想することができた。そして、先輩諸氏から観天望気の方法を行動しながら教わった。雲の形、山にかかる雲、風向き、鳥の飛び方、星の瞬きなど、自然を観察して天気の変化を予想するのです。最近は、山小屋で衛星放送を見ることができるようになったので、さすがに天気図を作成することはなくなったが、常に気象の変化に気を配らなければならない。そうでないと、悪天候の中を無理に行動したり、避難小屋に留まったりという判断ができない。

非常食を持たない人が多い。どんな低い山でも非常食は必要である。高カロリーのものを最低1食分は持っていたい。チョコレートやクッキー、カロリーメイト、それに水。したがって、非常食は山を下りるまで手をつけるべきでない。リーダーは、非常用にガスストーブと小さなコッフェルを持参し、低体温症に備えなければならない。

長期縦走登山の場合、万が一のビバークに備えてツエルトは必需品である。最近のツエルトは非常にコンパクトで軽く、持参してもほとんど苦にならないはずだ。緊急時は、ツエルトをすっぽり上から被り、雨と寒さを多少なり緩和することができる。道に迷うばかりでなく、メンバーの一人が足を怪我し、明るいうちに小屋や下界に到達できないケースも考えられる。暗くなってからの行動は危険を伴い、できる限り避けなければならない。

それでも、暗くなって行動しなければならないときに備え、ヘッドランプも必要である。最近のヘッドランプはLEDのため軽く、電池の消耗も少なくて性能が良くなっている。低い山でもこれもぜひ装備しておきたい道具である。

今年も多くの中高年登山者が遭難し、事故を起こした。山の基本に忠実に行動していれば事故にならなかったであろうと思われる。山の楽しみ方は、深田百名山の征服記録を作るのも良いし、のんびり景色を楽しむのも良いし、それに対してとやかく言うことはできない。ただ、山の基本をよく理解して、他人に迷惑をかけないようにしてほしい。

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