2011年9月28日水曜日

自転車運転者の法令無視

 自転車を運転する人に法令順守しない人が多すぎる。いや、それどころか法令等、ルールを全く知らないのだ。自転車はあくまでも車両であり、道路交通法の縛りを受ける。英国では、自転車は歩道を絶対に走ってはならないし、走った場合の罰則は非常に重い。歩行者優先は徹底されている。

日本では、のんびりと歩道を歩いていると、後ろからベルをけたたましく鳴らして追い立てられる。オバさん等止まり方も分からず、そのままぶつかってくる始末である。警察が取り締まりをしようとしないことも、法令がなしくずし的に無視される原因であろう。しかし、一度事故を起こすと莫大な賠償金を負わされることになる。

かつての事例では、
1. 女子高校生が夜間、携帯電話を操作しながら無灯火で走行中、前方を歩行中の看護師(57歳)の女性と衝突。看護師には重大な障害が残り、賠償金5,000万円を支払った。
(平成17年横浜)

2. 男子高校生が朝、赤信号で交差点の横断歩道を走行中、旋盤工(62歳)の男性が運転するオートバイと衝突。旋盤工は頭蓋内損傷で13日後に死亡し、賠償金4,043万円を支払った。
このような大きな代償を払うまで理解できないのである。

主な自転車に関する規制には以下のものがある。
 − 酔っ払いながら運転した(5年以下の懲役か100万円以下の罰金)
 − 一時停止の標識を無視し、安全確認をしなかった(3ヶ月以下の懲役か5万円以下の罰金)
 − 信号を無視して事故の遭った場合、無視をした自転車も罰則の対象になる(3ヶ月以下の懲役か5万円以下の罰金)
 − 車道の左側を通行して事故を起こした(3ヶ月以下の懲役か5万円以下の罰金)
 − イヤホンやヘッドホンをしながら運転をする(5万円以下の罰金)
 − 携帯電話を使いながら運転した(5万円以下の罰金)
 − 夜間やトンネルで無灯で走った(5万円以下の罰金)
 − ブレーキが利かないなどの整備不良の自転車で走行した 5万円以下の罰金
 − 傘を差しながら運転した(5万円以下の罰金−二人以上並んで走行した(2万円以下の罰金か科料)
 − 二人乗りで自転車に乗った(幼児用座席の幼児を除く(2万円以下の罰金か科料)
 − 歩道で徐行や一時停止せずにむやみにベルを鳴らして走行した(2万円以下の罰金か科料)

自分でも身に覚えのあることばかりだ。これぐらいのことを守れないと、安全教育の場で偉そうに「コンプライアンス」や「法令順守」などと言えないのである。

2011年9月21日水曜日

野外作業は落雷のリスク

かつて土佐高校のサッカー部員が落雷事故で障害を負ったことは、まだ記憶に新しい。

経過は以下の通りである。1996年8月、土佐高校サッカー部が大阪府高槻市体育協会主催のサッカー大会に出場した。午後から、上空には暗雲が立ち込めて暗くなり、時々雷が聞こえていたが3時過ぎには豪雨になった。試合が始まる直前に雨がやみ、上空は明るくなったが、依然雷鳴が聞こえ、稲光も確認できた。第二試合は午後4時30分に開始されたが、その直後に土佐高校のサッカー部員が頭部に落雷を受け、意識不明となり、その後重度の障害が残った。

2006年3月、最高裁は、事故当時、落雷事故を予防するための注意に関する文献上の記載が多く存在していたなどとして、指導教諭は落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であり、また、予見すべき注意義務を怠ったと判断し、高松高裁に差し戻した。
2008年9月、高松高裁は、指導教諭は試合中止や延期を申し入れたり、避難させたりして事故を回避できたのに、漠然と試合に出場させた過失があったとして、安全配慮義務の過失を認め、被告に賠償金の支払いを命じた。

このように悪天候での野外行事には落雷のリスクが伴い、管理監督者には危険を予見して事故を回避する義務がある。建設現場は野外作業が多く、同じように落雷のリスクがあることを忘れてはならない。発破作業では落雷のリスクを重要視するが、通常の土木工事では余りリスクと感じていないことが多い。

落雷は雷鳴が聞こえる距離(約10km)より離れた所でも生じることがある。 
対策は、雷鳴が聞こえたら、すぐに作業を中止して安全な場所に避難することである。そして、造成現場などで、高い木の下に逃げるのは危険である。落雷は高い木に生じることが多く、樹木よりも電気伝導率の高い人間の身体を通って電気が流れ感電死する可能性が高くなる。逃げる場合は、木の枝葉を含めて高い木から4m以上離れ、木の先端から45度の範囲外、かつ木が倒れても十分な距離に逃げなければならない。現実には、高い木は非常に危険で、早めに建物内や車の中に逃げることである。

海上では、起重機船のブームの先端や杭打船の櫓の先端に落雷し、船体表面(鋼板表面)を通って海中に電気が流れて行く。従って台船上に立っているのは危険で、船内に逃げるのが安全である。

建設工事に従事する職長や監理技術者は、落雷に対する予知と危険回避義務の責任を負い、稲光をただぼんやりと眺めていてはいけない。一刻も早く作業員を安全な場所に退避させる責任がある。

気候温暖かが進むと、今まで以上に落雷のリスクが高くなることを注意した方が良い。

2011年9月14日水曜日

登山携行品のチェックリスト

山に登る前日、ザックに荷物を何回も出し入れしてパッキングをするのは楽しいものだ。
何か忘れ物はないかといつも心配になるが、チェックリストがあると安心だ。チェックリストは、登山のリスクアセスメントの一部でもある。二泊三日の小屋泊まり山行だと、35〜40リットルのザックを担いで行くことになる。

まず、必要なのが二万五千分の一の地図とコンパスだが、最近は持って行く人が少ない。また、地図を読むことさえもできない。昭文社の山と高原地図だと等高線が薄くて、細かな地形を読むことができない。地図がないと道に迷い遭難するリスクがある。着替えの下着を詰め込むとき、ポリプロピレン製のTシャツかどうか確認する。もし雨に濡れた場合低体温症になるリスクがある。あれやこれやとリスクを想定しながら詰め込んでいく。

チェックリストは長年の失敗等から自分で作成した。最近なくてはならないものになってきたのが、ステンレスのワイヤーである。これは、最近の登山靴のソールがあまりにも早く劣化して剥がれてしまうので、いざという時のためにワイヤーでぐるぐる巻きにするために持っている。また、環境保全のため携帯トイレを持って行くことも常識になる日が近いであろう。今のところキジ撃ちで済ましているが、せめてトイレットペーパーを持って帰ることぐらいは守りたい。
チェックリストにはないが、山での軽い宴会のための酒とつまみのリストを作るのも、山へ行くまでの楽しみの一つである。山では、大酒は厳禁であるが、日が暮れるまで外のベンチで酒をちびりちびりやるのも楽しい一時である。山で事故を起こさずに楽しく酒を酌み交わせるのは天上の楽園に来た気分になる。チェックリストに従って準備し、心の準備をしっかりして安全な登山ができることを望む。

2011年9月7日水曜日

技術の空洞化

日本経済は、デフレ経済から脱却できないでいたところに、東日本大震災、福島第一原子力発電所による放射能汚染と電力不足、ドル安に絡む超円高の三重苦に直面する事態に陥った。輸出関連企業を中心に危機感が一段と強まっており、超円高がこのまま続けば、生産拠点の海外移転と国内産業の「空洞化」が加速すると予想される。9月以降の内閣改造後、増税も予想され企業や国民の負担がさらに重くのしかかる。

世界は、経済自由化の流れに乗って、韓国やASEAN諸国は自由化促進し経済を活発化させているが、日本は農業団体や建設団体が外資の国内乱入をかたくなに拒んできた経緯があり、いまのところ自由化には二歩も三歩も遅れを取っている。このままでは日本経済は孤立し、生産拠点の海外移転と国内産業の「空洞化」の加速度がさらに増すであろう。
国内産業の「空洞化」は、「技術の空洞化」にもつながる。ベテラン技術者の大量退職の時代を迎え、すでに技術の伝承が大問題となっている現状が更に悪化することが予想される。理科系離れが進み、国内のモノづくりが軽視されている。このままでは日本でモノをつくらなくなり、今ある先進技術は海外に流出していくであろう。

これは国の将来に危機的なことであるのに政府は無策である。いくら中国やASEAN諸国が世界の工場になったといえ、アメリカやEU諸国では今もモノづくりをやめていない。発展途上国ではできないモノづくりを行ない新しい産業を育てて技術者を育成することがこれからの日本にとって重要なことである。

そして国内の需要が急激に縮小するような産業、特に建設業は海外に出るしかない。韓国が通貨危機により国内経済が壊滅状態になったとき、建設業者は海外に出ざる得なかった。しかし、今では世界のトップ企業と肩を並べるまでになり、技術者も国際的に戦える状態まで成長した。それには、韓国政府のバックアップもあり、国内の仕組みの国際化を進めた結果である。

現在の日本の建設業は商社化してしまって、技術者の技術力が非常に低下している。効率化ばかり求めるのではなく、もう一度自らが機械や道具を使って技術を磨くべきである。いわゆる直営化の復活である。この技術力が伴わない限り海外へ進出して利益を上げることは無理である。

技術の空洞化を解消する方法は、技術者が身体を汚して働く泥臭いことからしか解決し得ない。