2011年9月21日水曜日

野外作業は落雷のリスク

かつて土佐高校のサッカー部員が落雷事故で障害を負ったことは、まだ記憶に新しい。

経過は以下の通りである。1996年8月、土佐高校サッカー部が大阪府高槻市体育協会主催のサッカー大会に出場した。午後から、上空には暗雲が立ち込めて暗くなり、時々雷が聞こえていたが3時過ぎには豪雨になった。試合が始まる直前に雨がやみ、上空は明るくなったが、依然雷鳴が聞こえ、稲光も確認できた。第二試合は午後4時30分に開始されたが、その直後に土佐高校のサッカー部員が頭部に落雷を受け、意識不明となり、その後重度の障害が残った。

2006年3月、最高裁は、事故当時、落雷事故を予防するための注意に関する文献上の記載が多く存在していたなどとして、指導教諭は落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であり、また、予見すべき注意義務を怠ったと判断し、高松高裁に差し戻した。
2008年9月、高松高裁は、指導教諭は試合中止や延期を申し入れたり、避難させたりして事故を回避できたのに、漠然と試合に出場させた過失があったとして、安全配慮義務の過失を認め、被告に賠償金の支払いを命じた。

このように悪天候での野外行事には落雷のリスクが伴い、管理監督者には危険を予見して事故を回避する義務がある。建設現場は野外作業が多く、同じように落雷のリスクがあることを忘れてはならない。発破作業では落雷のリスクを重要視するが、通常の土木工事では余りリスクと感じていないことが多い。

落雷は雷鳴が聞こえる距離(約10km)より離れた所でも生じることがある。 
対策は、雷鳴が聞こえたら、すぐに作業を中止して安全な場所に避難することである。そして、造成現場などで、高い木の下に逃げるのは危険である。落雷は高い木に生じることが多く、樹木よりも電気伝導率の高い人間の身体を通って電気が流れ感電死する可能性が高くなる。逃げる場合は、木の枝葉を含めて高い木から4m以上離れ、木の先端から45度の範囲外、かつ木が倒れても十分な距離に逃げなければならない。現実には、高い木は非常に危険で、早めに建物内や車の中に逃げることである。

海上では、起重機船のブームの先端や杭打船の櫓の先端に落雷し、船体表面(鋼板表面)を通って海中に電気が流れて行く。従って台船上に立っているのは危険で、船内に逃げるのが安全である。

建設工事に従事する職長や監理技術者は、落雷に対する予知と危険回避義務の責任を負い、稲光をただぼんやりと眺めていてはいけない。一刻も早く作業員を安全な場所に退避させる責任がある。

気候温暖かが進むと、今まで以上に落雷のリスクが高くなることを注意した方が良い。

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