2010年9月29日水曜日

現場建設技術者のレベル低下

最近、東京で作業所長クラスに対する集合教育を行ったが、現場技術者のレベル低下が甚だしく嘆かわしい限りであった。
まず、現場における問題意識を常に持っていないことである。会社の経営の最前線にいるはずの当事者が、何も問題を感じていない。講習会の場で新たに考えて発表した問題点も、作業所長として考える内容でなく、一若手担当者と同じレベルである。日本の建設産業は、護送船団方式で国土交通省などの発注官庁の言うとおりにしていれば良かった。また現在は工事成績評価の項目にしたがって、点数が上がるように施工すればよい。いわばレールに乗ったことしか考えず、自分で何か新しい方法で切り開こうという意志がまるでない。
そして、自分の意志を表現するのがきわめて下手で、何を言おうとしているのかまるで分からない。自分の考えがないから自分の意志を表現することができないのかもしれないが、人に説明することが苦手になってきている。日頃はパソコン相手に仕事をしているため、雑談はできるが、物事を筋道立てて説明するという会話力が育たないのであろう。これほどまで自己表現力がなければ、協力会社にも自分の意志が伝わらないであろう。
草食男子が多くなったのと関係あるのだろうか。グループ討議になってもリーダーシップを発揮することができない。最悪なのは要領よく発表レポートをまとめあげてしまおうとすることである。討議するのではなく答えを先に考えてそれに旨く結びつくように発表を簡単に作ってしまおうとしてしまうことである。だから真剣に意見交換するのではなく、お互いにレポートを作ることに専念しているのである。
多分現場でも同じようなことをしているのであろう。現場全体で議論するようなことはせず、ひたすら答えを探し求め、それを部下や協力会社に旨く説明もせずに押し付け、結局内容が伝わらず手戻りが発生し、部下の責任にしたり協力会社の責任にしたりしているのではないだろうか。
大学学部生のレベル低下は以前から指摘されているが、今では大学院生のレベル低下、強いては社会人のレベル低下に波及してきている。このような状態が続く限り、日本の建設業に未来はないであろう。日本の建設会社の技術レベルも韓国に抜かれて久しいが、このままでは完全に国際社会からも取り残されるであろう。EUのように突然国境が無くなったとき、日本の建設技術者はどうするのだろうか......日本の建設産業にも黒船が必要だろう。

2010年9月22日水曜日

ベテランの感電災害

感電災害は、一般の作業員がうっかり触って感電するのではなく、意外と電気の知識が豊富な電気作業員が感電することが多い。

今回も同じケースでおこった。

被災者は、大学で電気工学を修め、民間企業で7年間も電気工事に従事したベテランであった。

しかし、なぜか220Vの電気ケーブルの接続部を軍手で直接ばらそうとして、充電ケーブルに触れて感電死した。夏のくそ暑い時期に、活きた電線を軍手で触るというのは、普通では考えられないことであるが、ベテランだからこそ犯す過ちであろう。意外とベテランは、低圧であれば、生きたケーブルを上手く処理することをたまにやるそうである。

今回は、分電盤はロックされていて勝手に触れないようになっていたが、ベテランが犯す「過信」というヒューマンファクターが働いて、さらに設備の不備が加わり災害に至った。

220Vの電線に1000Ωの抵抗の人間が触れると、220mAの電流が流れる。普通なら一瞬のうち弾き飛ばされ、流れる時間も一瞬でしに至ることは少ないが、握ってしまうと筋肉が硬直して離せなくなり、体内に電流が長い時間流れ死に至ってしまう。

感電は、体内を流れる電流の大きさと時間、経路によって被害の程度が大きく異なる。

人体に流れる交流電流の影響を下記のECの表で説明されている。


 AC-1(曲線a以下の領域): 通常無反応
 AC-2(曲線aとbの間の領域): 通常有害な生理的影響はない
 AC-3(曲線bと曲線c1の間の領域): 通常、器官の損傷は予期していない。電流が2秒より長く持続すると、痙攣性の筋収縮や呼吸困難の恐れがある。心房細動や一時的心停止を含む。

仮設電気作業の感電対策は、分電盤の出力部分に漏電遮断器を取り付けることです。日本国内ではIECの基準に準拠して感度電流30mAの漏電遮断器の取り付けを推奨されていますが、OSHAでは5mAを推奨しています。ただし、発展途上国では漏電遮断器はほとんど普及しておらず、入手も出来ないところがあります。

また発展途上国では、あってもかなり高価です。被災者の補償費用よりも高くなることが普及しない理由なのでしょう。

土木技術者は、電気についてあまり得意ではないことが多いです。でも最低限の知識は必要で、それが人の命、作業員の家族の幸せを確保することになるのです。決してお金で物事を測ってはいけない。

2010年9月15日水曜日

自らヒューマンエラー

最近、自分で大きなヒューマンエラーを起こしてしまった。

昨日は、山の中で自動車を運転中、横に川が流れていて抜群の魚釣りスポットだなと見た瞬間、道が若干カーブしていて、自動車の左側面をガードレールでこすってしまった。幸い物損だけで済んだが、もしガードレールがなければ、谷底に落ちて転落していたところであった。自動車を運転している時は、必ず前方を注意していなければならないことが分かっていながら、自分の興味を持つことに気を引かれると、一瞬の間、前方注意が頭から抜けてしまった。ヒューマンファクターの場面行動本能にあたります。

また数日前、風呂場の換気扇がおかしな音がするといって、ブレーカーを落としたりして確認し、家中で大騒ぎしましたが原因が分からず、翌日電気屋さんを呼んで調べてもらいました。電気屋さんも電気的な原因が分からず、風呂場をふと見回したところ、振動ひげ剃りのスイッチが入りっぱなしで、その音が風呂場で反響していたとのことでした。目の前に振動ひげ剃りが置いてあるのに気づかない。完全に思い込みと錯覚が作用しています。

以前は、電車に乗るとき急行と特急をよく間違えました。東急東横線渋谷駅は、電車が入線するとき、「急行」という表示のままはいってきます。関西では電車は入線するとき新しい種別の表示に変えて入ってきます。その感覚が残っていて、電車の入線したときの表示「急行」を自分の乗る電車の種類と思い込んでしまって、後で「特急」に変わり、ホームの種別表示や電車のアナウンスで「特急」といっても頭の中は変わらず、結局何回も止まると思っていた駅に止まらず通過する羽目にあいました。

ヒューマンエラーは、自分でもかなり気をつけておかないと、ついやってしまいそうです。
年を取るにつれこの傾向が強くなり、悲しいです。

2010年9月8日水曜日

登山用ストーブの危険性

キャンプや河原での焼き肉パーティなどでストーブ(コンロ)の爆発事故が多く発生しています。

ストーブの扱い方を知らない人が、知ったかぶりをして事故に遭うケースが多いです。
調理用のコンロには大きくガソリンストーブとカートリッジ式ガスストーブがあります。昔は灯油またはガソリンストーブが主流でしたがコンロが重いこと、バーナノズルがよく詰まりメンテナンスが大変であること、そして着火するために圧力をかけて予熱する手間がいることなど、扱いが大変であるため、今ではほとんど使われることがなくなりました。私は今でもホエブスを2台とコールマンストーブを1台持っていますが、もうしまい込んだままです。カヌーなどで車で出かける時ぐらいしか使いません。

今ではほとんどEPIのガスストーブに頼っています。カートリッジ式ガスストーブは軽くて着火が非常に簡単であることから広く普及しています。しかし正しい使用法を知らないことが多く爆発事故の発生が後を絶ちません。
ガスはノルマルブタン、イソブタン、プロパンの混合ガスが液化された状態です。ブタンが主です。液化ガスは気化した際、気化熱を奪いカートリッジが冷却され気化しにくくなります。したがって、高度登山になると気化温度が低いプロパンの割合が多くなります。

使用上、特に注意しないといけないことは次の点です。
・閉め切ったテント内で使用すると一酸化炭素中毒や火災の危険性があります。閉鎖空間で発電機を動かすのと同じです。知らぬ間に気が遠くなって倒れて、死に至ります。
・大きな金属鍋を上に載せてのんびりと鍋料理をしたり、二台並べて鉄板を置き、焼き肉などしていると、鉄板からの放射熱でガスカートリッジが暖まり爆発する危険性があります。一番多い事故です。
・網を載せて炭に火をおこしても、同じように炭の放射熱により爆発の危険性があります。
・熱がこもるようにとストーブの周りをアルミニウムの風防で覆っても同じようにカートリッジが暖まって爆発する危険性があります。
・海岸などで焼けた砂浜の上に置いて使用しても、砂の熱と直射日光とでカートリッジが暖まり爆発する可能性があります。
・閉め切った車の中に放置した場合もカートリッジが高温になるため爆発する危険性があります。
・ガスカートリッジはとにかく安定が悪く、鍋などを置くと転倒し、鍋の熱湯によるやけどや火災の危険性があります。
・バーナーとカートリッジの取り付けが悪い場合、ガスが漏れて火の気があると引火して爆発する危険性があります。
以上爆発の危険性は、寒冷地用カートリッジの方がプロパンの含有率が高く引火点が低くより危険性が高まります。夏場に寒冷地用を使用するのはあまり勧められません。

さらに危険な行為が、最近インターネット販売で出回っているニュージーランド製のガス詰め替え装置の使用です。アダプターを取り付けて家庭用ガスボンベを登山用ガスカートリッジに詰め替えるものです。もちろん違法行為で危険極まる行為です。

ガソリンストーブでもパッキングからのガソリン漏れへの引火や、圧不足や圧過多により火柱が上がったりする事故がありました。またホワイトガソリンをポリタンクに入れて運んでいたため、飲料水と間違えて飲みかける事故もありました。ただタンクの加熱による爆発の危険性はなく、いまでも鍋料理や焼き肉の場合は使います。

危険性を知らないで使うこと程、恐ろしいことはありません。

2010年9月1日水曜日

紙の大量消費

アメリカ人はハンカチを持たないということを聞いたことがある。

北米のある国のトイレに入るとペーパータオルが備え付けてあり、濡れた手をそれで拭いてゴミ箱に捨てている。お尻を紙で拭き手も紙で拭く。紙を消費しまくっている。
東南アジアでは、トイレにお尻を洗うビデを備えているところがあるが、意外と紙がないところが多い。ましてや手を拭くための紙などほとんど備えていない。アメリカはパルプを輸入して他国の森林資源を大量に消費しているのである。

トイレットペーパーも桁違いの大きさだ

手を拭くのもロールペーパー

ハンカチ一枚あればこんなに紙を使わなくて済む。

アメリカ人はなぜハンカチを使って、紙の消費を押さえようとしないのだろうか。
日本はほとんどの人がハンカチを持っているのでまだ健全なのであろう。ただし、企業におけるコピーの紙の使用量は凄まじいものがある。

電子化された文書は、画面上でミスを見つけることが難しく、つい印刷してしまう。また、日本の社会ではまだ書類に印鑑が必要な場合が多く、紙が必要となる。印鑑を電子認証することが、紙の使用量削減に不可欠であろう。

森林を大切にしない文明は必ず滅びる。ギリシャがそうであった。さらに、自国の森林を保護して他国の森林を消費するのは最低の文明である。