2012年12月18日火曜日

安全衛生担当者が装備すべき個人用保護具(PPE)

安全衛生担当者が現場巡視に行く際、最低限装備すべき個人用保護具(PPE)の代表的なものには、以下のものがあります。安全衛生担当者 は、他の者に対して見本となるべき存在であり、各現場においては下記の基準を満たしたものを装備するように指導する必要があります。(ENは欧州規格、ANSIは米国工業規格、JISは日本工業規格の略です)
  1. 安全靴: 土木の現場では、先芯があるもので、EN3451992 S5ANSI Z 41-1991JIS T  8101 S種いずれかの基準を満足するもの。安全靴は、牛革製であることも条件になっています。また、短靴を使用する場合はスパッツを併用する必要があります。
  2. 保護帽: 一般作業では、EN397ANSI Z 89.1、厚生労働省型式認定いずれかの基準を満足するもの。欧米の保護帽(飛来落下防止が主な目的)はラチェット構造で頭に固定し、顎ひもは標準装備されていません。その理由は、落下物が頭に当たった時、ヘルメットが脱落することによってエネルギーが分散し、頭への衝撃を緩和させるためです。野球のヘルメットと同じ考え方です。ただし、高所作業者は顎ひもが必要です。
  3. 保護めがね EN166:2001 クラス2ANSI Z 87.1JIS T 81472003いずれかの基準を満足するもの。日本では、着用の意識が極めて希薄ですが、欧米ではヘルメットと同じような感じで着用させられます。
  4. 高視認性安全ベスト EN471 クラス2ANSI 107 クラス2の基準を満足すもの(黄色)。日本には特に規格がありません。英国では、道路工事従事者には法令で義務付けられていて、昼間でも視認性を確保する仕様になっています。欧米では、一般工事従事者も着用することが一般的になっていますが、日本では反射チョッキが一部の事業者に採用されているだけです。
  5. 耳栓 EN352ANSI S3.19JIS T 8161いずれかの基準を満足するもの。 
  6. 使い捨て式防塵マスク EN149FFP2)NIOSH認定(N95)、厚生労働省大臣型式検定(DS2)のいずれかの基準を満足するもの。風邪用マスクは、防じんマスクには適しません。
  7. 手袋:皮手袋は、EN388:2004 の基準を満足するもの。その他作業状況に応じた手袋を使用する。綿製軍手は、回転する機械工具で使用すると巻き込まれる恐れがあり危険です。
  8. フルボディーハーネス EN358/EN361ANSI Z 351、「安全帯の規格」(厚生労働省告示第38号平成14225日)のいずれかの基準を満足するもの。欧米では、胴ベルト型安全帯は一般作業では使用禁止になっています。その理由は、胴ベルト型の場合、墜落した時の身体への衝撃が大きく、内臓破裂になるケースもあることから、墜落しても身体を守る思想が貫かれています。
  9. 救命胴衣 EN395USCG、国土交通省小型船舶用救命胴衣の型式承認試験基準(Type-A)のいずれかの基準を満足するもの。
  10. ホイッスル: 巡視中に作業員に危険が迫っているのを発見したとき、または自分自身に危険が迫ったときにまわりに知らせる必要があります。
また、使用に際しては、各国の規格/基準や事業所の安全基準を優先するか、または、それらの基準を上回ったPPEを採用する必要があります。全般的に、欧米の基準の方が日本の基準より遥かに厳しくなっています。まだ、日本は少しでも楽をしたいという消費者(労働者)の意見を優先するメーカーが多く、厚生労働省も労働者の安全を優先するというよりメーカーの販売戦略を優先する意見を尊重しているのではないかと思われます。

とにかく、安全衛生担当者は、きちんとした服装と装備で現場に出ましょう。

2012年12月16日日曜日

シニアエンジニアのストレス

五十歳半ばを過ぎると、今まで考えてもいなかった色んなストレスが増えてくる。

まず最初に物忘れが激しくなる。顔ははっきり覚えているのだがなかなか名前が出てこない。その名前が出てこないことでイライラしストレスになる。また、晩ご飯、何を食べたのか全て言えない。何か一つ思い出せない小皿などがある。私は現在、毎日全て思い出して書き留める訓練をしているが、これもストレスになっている。

仕事上のストレスは、パソコンです。マイクロソフト・オフィスがバージョンアップしたら、今までのボタンがどこにあるか判らない。勝手にボタンの位置を変えるなよ、と画面に向かって怒るが、画面は我々を全く無視したままである。それだけで時間が無駄に過ぎてゆきストレスになってくる。

さらに、この歳になって突然海外勤務に曝されることがある。その場合、英語とは全く無縁の職場からいきなり英語の職場に放り込まれる。最初は、言葉等気にしなくていいからと言われ、その気でその職場に行くと言葉ができなくては話にならないことが多く、手振りを交えてなんとか会話をするのだが、相手に意味が通じずストレスになってくる。ただし、言葉ができることより技術や職務内容が判っていることの方が重要だが....

退職後の生活の不安も、無意識のうちにストレスになっている。そして、体力の衰えがあるが、これはどうしようもないので、有酸素運動と筋力トレーニングに励むしかない。

最も大きなストレスは、人間関係であろう。これは、年齢に限ったことではないが、年を取ると人の話を聞かなくなり、わがままに自分の意見を押し付け周りから鬱陶しがられことが多いです。

これらのストレスをうまくかわさないと「うつ」になる恐れがあります。
エンジニアは、六十歳までは見習いで、六十歳以降が本番です。これらのストレスにへこたれているヒマはないのです。真のエンジニアを目指して、あともう少し修業に励もう。

2012年12月8日土曜日

技術者が情報発信してこなかったツケ

道を歩いていたら、
 突然、杭打機が倒れてくる
 道路際のB型バリケードが倒れてくる
 突然、建設中のビルの上から鋼材が落ちてくる

車を運転していたら
 トンネルで走行中、コンクリート版が落ちてくる
 突然、穴が開いて落ちる
 突然、目の前の橋桁が落ちる 

このような災害に遭遇した時、歩行者や運転者には何の過失もない。また当事者は建設作業の安全性や、出来上がった社会基盤の安全性を信じきっている。安全性が確保されていてこそ安心して社会生活を営むことができる。

最近顕著になった社会基盤の老朽化と、建設現場の不安全作業などにより、シビルエンジニアリングへの信頼性が低下している。技術者は、社会基盤の老朽化している様子をよく見て知っている。しかし、予算がないと何もできない。

なぜ、このようなことになってしまったのだろうか。
技術者が、もっと社会に正確な情報を強く発信してこなかったからだと考えます。

技術者個人では、行政や企業の思惑に左右されて何もできないと思われがちだが、技術者の集まりである技術士会や労働安全コンサルタント会と通して、市民の立場に立った社会基盤の安全性や、社会基盤を整備する際の安全確保について情報を発信して行かなければなりません。

今こそ、技術者の倫理が試されるときです。

2012年10月30日火曜日

安全標識のグローバルスタンダード

JIS規格には安全標識が制定されていて製造業では既に導入されているところが多いが、建設現場ではあまり採用活されていません。
「JIS Z 9101安全色及び安全標識・産業環境及び案内用安全標識のデザインの通例」です。
しかし、海外の建設現場では広く導入されています。どの国に行っても同じデザインで表示することによって、だれでもわかるようにするということでユニバーサルデザインが採用されています。

現在のJIS規格は2005年に改訂されたものであるが、ISOの最新版(2011年版)に準拠していないので、今のところ海外の現場の安全標識と整合性が取れていません。


日本の建設現場では、未だに左のような安全標識が多いです。建災防の統一標識も日本独自のものでグローバルスタンダードから程遠いデザインです。またそれぞれ安全用品会社の独自デザインで作成されていることが多く、グローバルスタンダードに合わせようとする文化も気迫です。

最新版は、ISO7010:2011(E)Graphical symbols- Safety colours and safety
signs- Registered safety signs
ISOのデザインは、色と形と単純なデザインで非常に判りやすくなっています。

    : 丸に斜線(赤色): 禁止
    : 四角(白抜き絵): 防火
    : 逆三角(黒色枠線/黄色地): 警告
    : 丸(青色地/白抜き絵): 指示・誘導
    : 四角(白抜き絵): 安全状態

日本の建設現場では、ISO安全標識を採用していないため、グローバルスタンダードから相当遅れていると言わざる得ない。

いずれ、日本国内だけでは事業を継続していくことができなくなると予想されるが、その時、日本の常識は世界の非常識となりかねない。
建設現場もガラパコス状態になりつつある。この状態から早く脱出しにと世界の孤児になってしまうだろう。

2012年8月16日木曜日

山の安全 伝承編

先日、火打山に登っていた時、上越森林管理署に人から頂いた資料に「山の安全のことわざ」について書いてあったので、いかに紹介します。

<気象と気候>
・赤焼けは天気、黄焼けは台風
・太陽が傘をかぶると雨が降る
・朝雷に旅立ちするな
・朝霧は天気が良くなる
・朝虹が立ったら川越するな
・朝焼けに傘を持て
・夜上がりの天気は長く続かぬ

<音と煙>
・音が近くに聞こえれば雨が近い
・煙が低く這うと雨

<動物>
・犬が居眠りすると雨
・鶏の夜ふかしぁ雨になる
・猫が顔を洗うと雨が降る
・朝から鳶が舞うと雨が降る
・雉が鳴くと地震がある
・キツツキがコツコツいわすと雨になる
・燕が下の方を飛ぶと雨が降る
・フクロウが鳴くと雨が降る

<身体>
・あかぎれが夜に痛むと天気が続く
・雨が降る前には神経痛が痛む

<昆虫>
・朝クモの巣に水滴つけば晴れる
・足長蜂が高い所に巣を作るとその年は雨年
・足長蜂が低い所に巣を作る年は台風が多い
・蟻が引越を始めた時は雨
・小さい虫が固まって飛んでいると雨

<魚と両棲類>
・青蛙が鳴くと翌日は雨が降る
・蛇が木に登ると雨が降る
・蛇やカニが出てきたときは雨が降る

登山のリスクアセスメントは、昔からの伝承も有益な資料として役立つでしょう。


2012年7月22日日曜日

体重減量作戦

5〜7月は、定期健康診断の時期です。そして、その結果に一喜一憂しているしているのもこの時期である。
毎年繰り返されるのが、肥満の増加と生活習慣病のリスクが叫ばれる。

日本人の肥満の割合は、31%です。働き盛りのかなりの人が肥満という実態です。

日本肥満学会基準によると、BMI が、
・18.5未満: 低体重
・18.5〜25.0: 普通体重
・25.0〜30.0: 肥満度1
・30.0〜35.0: 肥満度2
・35.0〜40.0: 肥満度3
・40.0以上: 肥満 4 度


ちなみに米国では

・Underweight(低体重)……18.5以下
・Normal weight(標準体重)……18.5~24.9
・Overweight(やや肥満)……25~29.9
・Obesity(肥満)……30.0以上



肥満は、生活習慣病の根本原因ともいわれ、ガンや循環系疾病に大きく係わっています。


私は、3月末に「ぎっくり腰」を煩い、体重の腰への負荷を思い知らされました。そして体重を落とすことを始めました。5月15日から減量作戦をはじめて2ヶ月が経過した。


減量する際の基本は、絶対に朝昼晩の食事を抜かいないこと。やや少し摂取量を減らすとともに運動量を増やすこと。特に行なったのが有酸素運動であるウォーキングと筋力トレーニングです。

その成果があって、体重は3kg減少し、BMI22.0、基礎代謝量1500kcalを維持しています。減量の秘訣は、毎日定時に体脂肪計(タニタのInner Scan)で測定すること、および活動運動量を活動量計(オムロンのCalori Scan)でした。計測することで、意外と食事や運動に気を使うものです。

米国のような肥満大国にならないように、がんばりましょう。

2012年5月2日水曜日

緊急時、パニックにならないために

東京電力福島第一原子力発電所事故の対応では、首相をはじめ東京電力社長までパニックに陥り、不合理な行動をとったように国民の目に映った。

緊急時、パニックに陥り何をして良いのか分からなくなってしまうことがある。恐怖と混乱が、有能な人間でさえも変えてしまい錯乱状態に陥る。

理性的な人々が一転、不合理な行動を取るようになる。このような状態に陥る前に、自分をコントロールすることが必要である。

そのためには、”S・T・O・P”という言葉を胸に刻んでおく必要がある。ナショナル・ジオグラフィックス発行の「世界のどこでも生き残る完全サバイバル術」の中で述べられているので紹介する。

S・T・O・P

Stop(やめる): 体を動かすことは避ける。座って呼吸を整え心拍数を下げる。数字を3つ数えながら鼻から息を吸い、そのまま3つ数え、また3つ数えながら、鼻あるいは口から息を吐き出す。この呼吸法は、心を落ち着かせ、脳にリラックスするように信号を送ることができる。

Think(考える): 落ち着いたら置かれた状況を見つめ、どう対処できるかを考えよう。呼吸が遅くなると、認知する機能が向上するからだ。

Observe(観察する): 周囲の地形や仲間の状態、特にケガをしていないか把握する。現状に向き合うため何を持ち、何がないのかを見極める。

Plan(計画する): 状況を把握したら、最も効率的な戦略を立て始める。必要に応じ、計画を修正することを忘れてはならない。

さらに5番目のステップも付け加えられるべきと言われている。
Act(行動する): どんな綿密な計画でも実行されなければ、役に立たないからだ。

技術者も常にS・T・O・Pを胸に刻み込んでおくべきであろう。

2012年4月18日水曜日

監督職員の災害

安全管理の指導的立場である監督職員がヒューマンファクターにより被災した場合の対応が一番苦慮する。

いつも朝礼で作業員に安全のコメントを喋っている監督職員が、こともあろうにクレーン台船から平台船に渡ろうとして転落し台船の間に挟まれた。当時やや波があり、渡ろうとした箇所には梯子もなかった。また、行く必要のないところに一人で行って、目撃者は誰もいない。

監督職員がルール違反を犯すと、協力会社や作業員に対し何も言えない状態になってしまう。それだけ監督職員の行動は慎重であるべきで、高い安全意識が求められる。

指導的立場の技術者には作業員の安全を確保するという安全に対する使命感と自ら安全のお手本を示すという指導者意識が必要である。これら意識を持たない者は技術者(エンジニア)とは言えず、指導的立場の職責を全うすることができない。

しかし、最近このような自称「技術者」が増えている。発電所工事やプラント工事等、大規模の建設現場には、専任の安全担当者が配置されていることがある。このような場合、監督職員が安全管理を自分の職務とは思わず、安全担当者に任しとけばよいという傾向に陥る。ライン管理とスタッフ管理の職責の違いを理解していないのである。

若い担当者には、技術者の基本職務は何なのか、もう一度考え直すことも必要である。

2012年4月1日日曜日

想定震度・津波高さの見直し

3月30日と31日、相次いで政府の関連部署から地震に関する情報が発表された。



30日、文部科学省プロジェクトチームより発表された東京湾北部地震(M7.3)の震度分布図です。東京23区及び横浜市の一部が震度6〜7の予想とになっている。この地震は、関東大震災級(M8級)が200〜300年周期で発生する期間の間に発生するM7級の直下型地震を想定している。関東平野に潜り込んでいるフィリピン海プレートがこれまでの想定より浅いことが分かり、今までの中央防災会議の予測を見直したものである。
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/24/03/__icsFiles/afieldfile/2012/03/30/1319353_01.pdf
www.mext.go.jp

31日、内閣府の「南海トラフの巨大地震モデル検討会」は、東海・東南海・南海地震が連動した場合(M9級)の最大の震度及び津波高さを発表した。今回は連動範囲を見直した結果、マグネチュードが東日本大震災やスマトラ地震と同規模となったものです。高知県黒潮町は最大津波高さ34.4mと予測されている。
http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/nankai_trough/15/kisya_3.pdf
www.bousai.go.jp


これらの情報から1これら、我々はどうしたらいいのか真摯に考えるいい機会である。もし、この予測通りの地震/津波が発生した場合、完全に防ぐ手当はないのは分かりきっている。しかし、少しでも災害を小さくする必要がある。減災の手を打っておくことである。


特に、産業や市民生活を支えるインフラストラクチャーやユーティリティーの減災対策は、最優先課題である。社会資本整備の投資は、この方面に重点配分すべきである。


東海道新幹線は営業開始してから48年経過し老朽化が進んでいる。一方、JR東海は、東京ー名古屋間のリニア新幹線を計画しようとしている。もし完成する前に東海地震で東海道新幹線が被災したら東京ー関西の交通が寸断され日本経済に大きな影響を及ぼす。利用価値の低い東京ー名古屋間のリニア新幹線は取りやめて東海道新幹線のリニューアルと高速/大容量化を進めた方が国民にとって良策である。


また、この震度予測図で真っ赤に染められているところにある中部電力の浜岡原子力発電所は、いくら中部電力が安全であると言っても市民は安心できない。無理してこのような立地に原子力発電所を維持する必要はなく、現在でも原子力発電所がなくてもやって行けるのであるから、今すぐにでも廃炉とするべきである。


一企業の利益誘導のためにインフラストラクチャーを整備するのではなく、市民の生活の安全・安心のために整備するように方針転換するべきと考える。もう企業経営者や政治家に、いい加減な想定外と言わせてはいけない。

2012年3月17日土曜日

本当の安全文化とは?

メコンデルタのある村で昼食をとったとき、他の客が従業員に目の前にあるヤシの実のジュースを飲みたいと言い出した。

従業員は、早速サンダル履きのままヤシの木に登り、ヤシの実を足で蹴って落としだした。高さ3mでの高所作業だが、安全靴、ヘルメット、安全帯ともに着けていない。昇降設備も命綱もない。日本では、到底考えられないような不安全作業だけれど、彼らにとっては全く夫安全な行為とは思っていない。日常の生活の一部でもある。 
日本の多くの人が彼らの行動を見て、この国はまだ安全文化が低いと言う。

それでは、日本は安全文化が高いのか。いや、とんでもない。
コストがかかるから、市民が反対するからという理由でリスク管理を怠り、挙げ句の果て、想定外であったと行って責任逃れをする。そして、放射性物質を拡散させ多くの人に精神的苦痛をしいて真の原因追及もしようとしない。このような現状を安全文化が高いと言えるのだろうか。

安全文化は一概に見た目だけで比較することはできず、労働者や市民がどこまで危険性を許容するのか基準が異なるのが当然と考える。
日本は、発展途上国の安全文化はまだ低い、というようなことを言っている場合ではない。自らの安全文化について考え直すときである。

安全文化を市民に考えてもらうためには、技術者がその時点で考えるリスクを包み隠さず、分かりやすく説明する必要がある。また、政治家や御用学者は利権を守るために技術者の意見を意図的に隠蔽したり、自分の都合のいいことだけを取り上げるようなことがあってはならない。

2012年3月10日土曜日

なぜ安全管理者に免許資格がないのか

建設業の労働災害は年々減少しつつあるが、最近ではその減少傾向も小さくなり、初歩的な原因の重大災害が多発してくる傾向にある。

原因として、経験ある技術者が退職して技術やノウハウの伝承が出来なくなってきたことや、災害が減少してきたことによるリスクマネジメントの実践経験が乏しくマニュアルに頼った技術者層が増えてきたことなどが考えられる。
また、安全を管理する管理者のスキルも低下しており、法令で定めている安全管理者や元方安全衛生管理者の能力の判定基準も見直す必要がある。

安全管理者は、厚生労働大臣が定める研修を終了した者又は労働安全コンサルタント、構成労働大臣が定める者となっている。この研修は、2日間(9時間)講義を聴いて、最後の簡単な効果確認試験があり、ほとんど参加者全員が講習終了証をもらうことが出来る。

選任要件は、次の業種で常時50人以上の労働者を使用する一定の事業場において選任が義務付けられている。
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業を含む。)電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器等小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備及び機械修理業
なかでも建設業で常時300人以上の労働者を使用する事業場は、専任の安全管理者を選任する必要がある。重層下請けが進んだ現在では該当するような建設現場はほとんどないであろう。

建設業では、元方事業者と協力会社の従業員合わせた数が50人以上の時、元方安全衛生管理者(法15条の2)を選任する義務がある。技術的な安全管理を担い、特定元方事業者が行うべき措置を実施する重要な立場にあるが、資格要件はさらに緩く、経験のみで選任することができる。実質資格要件がないに等しい。
したがって、建設業では、実質経験のない者が安全管理を行うケースも少なくなく、一定規模の建設工事については、安全衛生を管理する者の資格を引き上げる必要がある。
一方、衛生管理者は、免許が必要である。建設業では支店等に配置が必要になってくるケースがある。

今後、ますます安全管理の経験豊かな元方安全衛生管理者が少なくなり、とんでもない重大災害の発生が多くなると予想される。建設業においては、一定規模以上の工事の元方安全衛生管理者には、安全衛生管理能力を備えた新たな免許資格又は労働安全衛生コンサルタント、技術士総合管理部門を、一定規模以上の一般の事業所の安全管理者は、安全衛生管理能力を備えた新たな免許を資格要件とすることが望ましいと考える。

2012年2月24日金曜日

Phu My の華林寺で安全祈願

2月半ばから下旬までベトナムの現場の監査に来ている。

北部のハノイやタインホア省は、まだ冬で寒かったが、南部のバリア・ブンタウ省やサイゴンは、熱帯地方で夏です。フーミーの町では、毎朝散歩することにしている。
今日は、近くの高校やお寺のある方面を1時間ほど歩いた。今日は、週一度のアオザイ着用の日にあたったらしく、女子高生の白いアオザイ姿が目に付く。

高校の近くに仏教寺院があり入らせてもらった。ベトナム語では意味が分からないが、裏に漢字で華林寺と書かれていた。

このお寺はこじんまりとしていて落ち着いた感じであるが、境内には釈迦の誕生から悟りを開くまでの物語をいろんな像で表していた。
これは、有名な釈迦誕生の話である。釈迦は麻耶夫人の右脇から生まれ、その直後に7歩歩いて右手で天を指し、左手で地を指して、「天上天下唯我独尊」と言ったと伝えられている。
中には大きな仏様が鎮座し、お寺の方が線香を持ってきて下さった。線香は3本供えるのが正式で、3回頭を下げて工事安全祈願を行った。
隣にも大きなお寺があり以前お参りに行ったが、この寺の方がアットホームで気持ちが落ち着く。
カイメップ、チーバイ方面で工事をされる方は、この寺で安全祈願をして心を落ち着かせることをお勧めします。

2012年2月18日土曜日

建設現場におけるヒューマンエラー

2011年9月6日夜、那覇発羽田行きの全日空140便(ボイング737−700/乗客乗員117名)が、浜松沖を飛行中、重大インシデントが発生した。機体は左に大きく傾いてほぼ背面飛行の状態になり、約30秒間にわたって約1900メートル急降下した。

原因は、副操縦士が、トイレから戻った機長のために操縦室のロックを解除するスイッチを操作しようとして、誤って尾翼の方向舵を調整するスイッチを操作したことによるヒューマンエラーであった。操作ボタンを間違って押したもので、何か考えことをしていたのか、あせっていたのか、確認を怠ったのか、詳しいことは我々には判らない。設備が簡単に間違って操作しないような人間工学的な配慮がなされていなかったことは事実である。

建設現場では、このような種類のヒューマンエラーは比較的少ない。ヒューマンエラーには、「意図しないもの」と「意図するもの」がある。前者には、人間の能力の限界や能力の特性があり、後者には、無関心行為・無視や規則違反などが含まれる。

その中でも建設現場で一番多いのは、規則違反である。「分かっているけどちょっとのことだから」とついやってしまうケースです。中には確信犯も多い。ビティ足場をよじ上ったり、脚立から飛び降りたりするなど、決められたことをしないで災害にあうことが多い。再発防止対策を検討する際に本人の過失を責めるのではなく、なぜ決められたことが守られないのかを考えなければならない。昇降口が少なくて遠回りしなければならない、早く終わって帰る支度をしたいなど作業者を規則違反に駆り立てる原因が潜在しているはずです。特にベテランほど今までの自分の力を過信し、横着をして災害にあうケースが多い。

また、建設業に従事する労働者の高齢化もヒューマンエラーの一つの要因として大きな影響がある。ヒューマンファクターの中の人間の能力の限界に当たる。

建設現場を対象にしたヒューマンエラー対策は、規則違反と高齢化に絞り込むと効果が上がるであろう。その対策は、このようなヒューマンエラーを起こす作業員の目線で解決策を立てる必要がある。ただ規則を守れというのではなく、作業しやすい環境を作って「わざわざ規則違反をしなくてもよい環境」を整備することである。どうしても設備的な対策が取れない場合は、なぜ規則どおりに行なければいけないのかを分かりやすく説明することが必要である。

さらに今後は、経験ある作業員が少なくなることから、知識不足や技量不足といった要素のヒューマンエラーも増えていくことにも注意を払わねばならない。

2012年2月4日土曜日

揚錨船は移動式クレーンか

起重機船や浚渫船に付属する揚錨船は、移動式クレーンなのか動力巻き上げ機なのか迷うところである。

ポイントは、適用法が労働安全衛生法か、船舶安全法及び船員法なのかということである。

揚錨船は、明らかに自航できる船舶なので、船舶安全法及び船員法ということになるはずだが、現実は船舶であるが操船または操作している作業員は船員でないことが多く、船員でない一般作業員は労働安全衛生法の適用を受ける。

船員の場合、船員労働安全衛生規則第28条(経験又は技能を要する危険作業 )の適用を受ける。
要件の以下のいずれかに該当する者である。
   1) 当該作業を所掌する部の業務に六月以上従事した経験を有する者
   2) 国土交通大臣が当該作業について認定した講習の課程を修了した者
   3) 船舶職員及び小型船舶操縦者法第4条の規定により当該作業を所掌する部の海技免許を受けた者
   4) 同法第23条第1項の規定により当該作業を所掌する部の船舶職員(同法第2条第2項に規定する船舶職員をいう。)になることについての承認を受けている者
   5) 国土交通大臣が当該作業について認定した資格を有する者
ただし、当該作業の熟練者の指揮の下に作業を行わせる場合は当該作業を所掌する部の業務に三月以上従事した経験を有する者に当該作業を行わせることができる。

以上より 揚錨船に海技士免許所持者が乗っている場合、その指導があれば三月以上従事経験の船員でも可能である。

建設工事現場では、今では揚錨船に海技士免許所持者が乗船していないこともあり、また、荷を吊ったりすることもあるので注意を要する。
クレーン等安全規則(最終改正:平成一八年一月五日厚生労働省令第一号)の逐条解説書の第55条(製造検査)解説では、以下のように説明している。

「一般に揚錨船は、本来浚渫ポンプ船に付属して、アンカーを転置することを目的としており、船舶安全法及び船員法の適用を受けている。しかしながら、揚錨船に設置されているクレーンはジブを有し、本来の使用目的以外の用途(荷を吊り上げ運搬する)に供されることが多く、また船員でない者が扱うこともあるので、このような場合は、浮きクレーンとしての製造許可、設置届等の手続きを取ることが必要である。」

船舶職員以外の一般作業員が揚錨船を操作する場合
1) ジブを使用しない揚錨作業は、移動式クレーン作業に該当せず、動力駆動の巻上機の運転の特別教育 (安衛則36条11項)が必要になる。
2) ジブを使用した揚錨作業は、移動式クレーン作業に該当し、労働安全衛生法に規定された資格が必要になる。
・ つり上げ荷重1t未満の場合、特別教育(クレーン則第67条)
・ つり上げ荷重1t以上5t未満の場合、技能講習(クレーン則第68条)
・ つり上げ荷重5t以上の場合 運転士免許(クレーン則第68条)

2012年1月21日土曜日

メンタルヘルス不調

「ストレス」という言葉は、とかく悪いイメージがつきまとう。

日本人は、「リストラ」のように都合の悪い言葉はカタカナで言う傾向がある。よく本来の意味と違った特別な意味に使われてしまっている。
ストレスとは緊張のことで、人間はものごとに真剣に取り組むときは緊張が必要である。緊張がないと集中力に欠け十分な成果が出ないものである。しかし、心のストレスの場合はマイナスイメージばかり強調されているような気がする。英語ではMental Fatigueであり精神疲労という言葉のほうが適切であろう。

一方、職場におけるストレス性疾患は増加の一途をたどり、自殺者は1日あたり100人、自殺未遂者は1日あたり1000人に達している。ストレス性疾患のなかで、うつ病は身近な問題である。
うつ病の原因は、業務におけるストレスばかりでなく、業務外の要因および生物学的要因も関係している。とかく職場内の人間関係によるストレスばかりが注目されるが、生物学的要因である発症脆弱性も見逃せない。

過度なストレスを受けてもうつ病にかかりやすい人とかかりにくい人がいる。性格の問題であったり、ストレスの解消法が判らなかったりする場合がある。
また、組織あるいは社会全体の歪みも各個人に影響している。とくに景気の低迷は各個人に「職を失う」、「住むところを失う」リスクを伴い、自分だけは存続したいという本能が他人へストレスとなって現れていることも見逃せない。

厚生労働省よりメンタルヘルス対策について、労働安全衛生法第70条の2に基づき、事業場において事業者が講ずるように努めるべき労働者の心の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるよう「労働者の心の健康の保持増進のための指針」がだされている。
しかし社会が安定しないとメンタルヘルス対策もうまく機能しないであろう。経済的にも安定した社会を作ることが基本であるが、最後はセルフケアに頼らざる得ない。
問題が大きくならないうちに、うつ病発症脆弱性のある人へのフォローや自分自身でセルフケアをすることが必要と考える。

2012年1月7日土曜日

最も感心のある安全課題


あんぜん曼荼羅は2年を経過した。

幅広く労働安全衛生の話題を取り上げてきたつもりだが、関心を集めた話題は意外と基本的な内容が多かった。最もアクセス数が多かったのが、「送り出し教育」、つぎに「移動式クレーンの吊り走行」、「リスクアセスメントとKYの違い」等が続いた。

建設現場の安全管理は、形式的に進めていていることが多く、実質的な効果が上がっていないと思われる。建設現場の安全管理は形式的なものではなく、もう少し泥臭いものであるべきで、専門的な内容よりも、基本的な内容へのアクセスが多くなったのであろう。

アクセス先は以下の通りである。

1.送り出し教育の必要性
http://tomstar-world.blogspot.com/2009/02/blog-post_16.html

2.移動式クレーンによる吊り走行
http://tomstar-world.blogspot.com/2010/07/blog-post_21.html

3.リスクアセスメントとKYの違い
http://tomstar-world.blogspot.com/2010/03/ky.html

4.安全施工サイクルの工夫
http://tomstar-world.blogspot.com/2010/04/blog-post_14.html

5.エラーチェーンとSHELLモデル
http://tomstar-world.blogspot.com/2009/02/blog-post_21.html

今後も、泥臭い内容を中心に続けていきます。



2012年1月2日月曜日

初詣 @ 日吉大社

2012年の初詣は、滋賀県大津市坂本にある日吉大社。
日吉大社は、山王信仰の神社で、大山咋神と大物主神(または大国主神)を祭神とし、猿を神使とする。東本宮の大山咋神は、比叡山の山の神で、西本宮の大物主神は、奈良の三輪山より御神霊を迎えたものである。
神使の猿は、魔除けの象徴で、「魔が去る、何よりも勝る」に因んで大切にされ、「神猿(まさる)」と呼ばれている。
ここは、全国に約3,800社ある日吉神社・日枝神社あるいは山王神社の総本宮である。東京千代田区の日枝神社も日吉大社より勧請を受けた神社である。
いつもは東京の日枝神社に安全祈願に行くのだが、昨年は現場で災害が多く発生し、本宮で安全祈願を行なった。

日吉大社の鳥居は、独特の形で「合掌鳥居」といわれている。
まずは、西本宮に向かう。楼門は重要文化財で、本殿は国宝である。
参拝者がまばらなのがいい。
東本宮の本殿も国宝。だけど摂社の傷みがかなり進んでいたので修理の寄進を行なった。
日吉大社の狛犬は社殿の上に鎮座して、その顔も非常に穏やかだ。