2012年2月4日土曜日

揚錨船は移動式クレーンか

起重機船や浚渫船に付属する揚錨船は、移動式クレーンなのか動力巻き上げ機なのか迷うところである。

ポイントは、適用法が労働安全衛生法か、船舶安全法及び船員法なのかということである。

揚錨船は、明らかに自航できる船舶なので、船舶安全法及び船員法ということになるはずだが、現実は船舶であるが操船または操作している作業員は船員でないことが多く、船員でない一般作業員は労働安全衛生法の適用を受ける。

船員の場合、船員労働安全衛生規則第28条(経験又は技能を要する危険作業 )の適用を受ける。
要件の以下のいずれかに該当する者である。
   1) 当該作業を所掌する部の業務に六月以上従事した経験を有する者
   2) 国土交通大臣が当該作業について認定した講習の課程を修了した者
   3) 船舶職員及び小型船舶操縦者法第4条の規定により当該作業を所掌する部の海技免許を受けた者
   4) 同法第23条第1項の規定により当該作業を所掌する部の船舶職員(同法第2条第2項に規定する船舶職員をいう。)になることについての承認を受けている者
   5) 国土交通大臣が当該作業について認定した資格を有する者
ただし、当該作業の熟練者の指揮の下に作業を行わせる場合は当該作業を所掌する部の業務に三月以上従事した経験を有する者に当該作業を行わせることができる。

以上より 揚錨船に海技士免許所持者が乗っている場合、その指導があれば三月以上従事経験の船員でも可能である。

建設工事現場では、今では揚錨船に海技士免許所持者が乗船していないこともあり、また、荷を吊ったりすることもあるので注意を要する。
クレーン等安全規則(最終改正:平成一八年一月五日厚生労働省令第一号)の逐条解説書の第55条(製造検査)解説では、以下のように説明している。

「一般に揚錨船は、本来浚渫ポンプ船に付属して、アンカーを転置することを目的としており、船舶安全法及び船員法の適用を受けている。しかしながら、揚錨船に設置されているクレーンはジブを有し、本来の使用目的以外の用途(荷を吊り上げ運搬する)に供されることが多く、また船員でない者が扱うこともあるので、このような場合は、浮きクレーンとしての製造許可、設置届等の手続きを取ることが必要である。」

船舶職員以外の一般作業員が揚錨船を操作する場合
1) ジブを使用しない揚錨作業は、移動式クレーン作業に該当せず、動力駆動の巻上機の運転の特別教育 (安衛則36条11項)が必要になる。
2) ジブを使用した揚錨作業は、移動式クレーン作業に該当し、労働安全衛生法に規定された資格が必要になる。
・ つり上げ荷重1t未満の場合、特別教育(クレーン則第67条)
・ つり上げ荷重1t以上5t未満の場合、技能講習(クレーン則第68条)
・ つり上げ荷重5t以上の場合 運転士免許(クレーン則第68条)

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