2011年3月23日水曜日

スリーマイル島・原発事故

スリーマイル島原子力発電所の炉心溶融事故についてもう一度整理してみる。
この事故は、ヒューマンエラーが引き金になっている。

スリーマイル島原子力発電所は2つの原子炉を有し、事故を起こした2号炉は加圧水型原子炉(PWR)で電気出力は96万kWであった。東京電力の原子炉(沸騰水型原子炉 BWR)とは異なり、関西電力と同じ形式の原子炉である。

スリーマイル島原発の2号炉は、事故を起こすちょうど1年前に臨界に達して定格出力の97%で営業運転中であったが、当初から小さな故障が続発していた。
もともと原子炉を運営していた電力会社の経営状態が思わしくなく、いちいち小さな故障に対してその都度原子炉を停止するようなことは行わず、だましだまし運転し安全意識もかなり低下していた。その中で重大なのが、加圧器逃がし弁の不調である。この弁は、1次冷却系の圧力が高まったときに自動的に開いて冷却水を放出するものだが、圧力が低下した後も閉じないで「開固着」しやすい状態にあった。

さらに2次冷却系には万一に備えて冷却水を補給する装置が設置されているが、補助給水装置は非常時に直ぐに起動しなければならないものなので、そのバルブは常に開いていなければならない。ところが、数日前にこれを点検した際に、整備員が給水用のバルブを誤って閉じたままにしてしまったのである。

2次系の復水器の脱塩装置にあるフィルターが目詰まりを起こしため、当直のオペレーターは、圧搾空気を送り込んで解消しようとしたが、その作業の際に、溢れた水が弁を操作する部分に入ってしまい、2次冷却水を循環させる配管の弁が閉じたため、自動的に二次冷却水の主給水ポンプも停止することになった。この時点が、スリーマイル島原発事故の出発点と考えられる。

そのため蒸気発生器への二次冷却水の供給が行われず、除熱が出来ないことになり、一次冷却系を含む炉心の圧力が上昇し加圧器逃し安全弁が開いた。
このとき弁が開いたまま固着し圧力が下がってもなお弁が開いたままとなり、蒸気の形で大量の原子炉冷却材が失われていった。

このとき事態を決定的なものとする第一失策を行われる。オペレーターは、1次系が満水に近い状態にあると誤解してしまった。その原因として第一に加圧器に取り付けられていた水位計が誤って満水状態を指示していたこと、第二に、操作ボード上で加圧器逃がし弁に関する表示が、実際の状態を表すものではなく、開/閉の指令を指示するだけであった点が挙げられている。このため運転員が冷却水過剰と勘違いし、自動的に作動していたECCS(緊急炉心冷却装置)を手動で停止されてしまう。
その後も最も重大な加圧器逃がし弁の開固着には誰も気がつかず、オペレーターの意識は、最初にトラブルを起こした復水器や補助給水バルブのある2次系に集中してしまい、1次系の危機が認識されにくい状況になった。また、オペレーターには目の前のボードの操作に忙殺されて心理的余裕がなくなっていた。

次に事態を決定的なものとする第二の失策が行われる。2次系の主給水ポンプが停止してからほぼ1時間を経過した頃から、1次冷却水を循環させるポンプが音をたてて振動を始めた。これは、圧力低下と温度上昇の結果として水中に気泡が生じ、この泡がポンプ内部で破裂するために引き起こされた。オペレーターは、4基ある冷却水ポンプを手動で全部停止した。

この結果、冷却水が循環する過程でわずかに行われていた除熱がほとんど不可能になり、開きっぱなしになっていた安全弁から500トンの冷却水が流出し、燃料棒は炉心上部3分の2が蒸気中に露出してしまった。こうなると、熱の逃げ道がなくなって炉心が過熱し、最終的には溶融を始める(炉心溶融)。さらに、被覆材として用いられていたジルコニウムが溶け出し、これが水と化学反応を起こして水素ガスが発生して、水素爆発の危険が高くなる。もし、高熱や水素爆発によって原子炉の格納容器が破壊されると、放射性物質が大量に周辺にまき散らされることになり、もはや状況は大惨事の一歩手前まで差し迫っていた。ただし、1989年の調査では、圧力容器に亀裂が入っていたことが判明している。

このため周辺住民の大規模避難が行われた。その後、運転員による給水回復措置が取られ、事故は終息したが、炉心溶融で、燃料の45%、62トンが原子炉圧力容器の底に溜まった。給水回復の急激な冷却によって、炉心溶融が予想より大きかった。
放出された放射性物質はヨウ素555GBq(15キュリー)など、周辺住民の被曝は0.01 - 1mSv程度であり、住民や環境への影響はほとんど無かった。

スリーマイル島原発事故は、国際原子力事象評価尺度(INES)はレベル5としてIAEAに登録されている。現在の福島第一原子力発電所1〜3号機の事故について、経済産業省原子力安全・保安院は、暫定評価としてレベル5と報告している。ちなみにチェルノブイリ原発事故は最も深刻なレベル7であった。

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