2009年11月25日水曜日

セーフティ・スタッフの身の危険

海外の工事現場では、安全文化の違いから身の危険が生じることがあります。
仕事に熱心なあまり仕事の相手から殺されたらたまりません。

  以前、中部国際空港建設工事に絡み、某スーパーゼネコンの購買担当者が、下請工事の清算を厳しく査定したために、その下請会社の社長があまりにもひどい支払いをしたことに腹を立て、その購買担当者を殺し、その死体が名古屋港に浮かんだ事件がありました。購買担当者は会社の目標利益のため自分の業務を遂行したつもりが恨みを買ったのでしょう。

  海外工事では、安全文化が大きく違い、「安全をすべてに優先させる」の理念にしたがって、日本の労働安全衛生法や米国のOSHAを現地の人たちに何があろうと遵守させようとすると、必ず摩擦が生じます。 インドネシアでよく起こるトラブルは、足場工や鉄筋工にフルボディハーネスを使わせる場合です。彼らは今まで畑で仕事をしていたところ、近くでプロジェクトがあると建設作業員として集まってくるので、フルボディハーネスを着けるということを慣れていません。普段はスリッパで丸太をよじ登って作業しています。なぜ今まで通りやってはいけないのか、という疑問を持って作業しています。
だから、高所においてフルボディハーネスの使用をあまり強くし指導すると、場合によっては鉄筋棒を持って殴りかかろうとします。取っ組み合いのけんかになることもしばしばあります。
鉄筋出荷の鉄のプレートも剃刀代わりの凶器になります。バイオレ-ション(暴行)も現場におけるリスクであり、命あってのSafety Managerです。

  これは、安全文化の違いから起こる問題です。明らかに安全文化の違いがある場合、どちらかの安全文化に合わせた指導を行うのは間違いです。リスク低減対策遂行の厳しさと場合によっては安全ルールに対する寛容さが必要です。 また、安全文化のギャップを埋めるのはコミュニケーションしかありません。コミュニケーションなしになぜやらないんだ、ボーっと突っ立っているだけで何しているのだと言って怒鳴っても何の解決策にもなりません。フラストレーションが増すばかりです。

  それには日ごろから「声掛け」を通してコミュニケーションを図り、時間を掛けて、「やって見せ、言って聞かせて、ほめてやらねば人は動かず」(山本五十六)を繰り返すしかありません。それでもどうしても言うことを聞かなかったら、さらにごり押しするのではなく、身の危険を考えて一旦引き下がり、お互いに妥協できるラインを探るべきです。

いくら正しいと思うことでも、自分の命を失ってまで押し通すのは、もともこうもありません。

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