2009年10月1日木曜日

低山登山に用いる装備のリスク

低山登山に用いる装備は、使い方によって高い危険性が潜在するものがあります。
夏山登山といえど、雨に打たれると凍死することを、先日のトムラウシ岳登山ツアーで災害となって現れました。

登山用具別に危険性を分析してみました。
リスク(怪我をした場合の重篤度と怪我をする可能性の掛け合わせた危険性の度合い)の順にあげると、まず下着が一番危険度が高いです。

1.下着
 下着の選択次第で生死を分けるほど重要です。少し気温が低い状態で雨やみぞれに打たれ、さらに風が吹くと急速に体温を奪われ低体温症に陥り危険です。特に綿製品は、綿が水分を蓄える性質があり、どんどん体温が奪われ、最悪は凍死に至ります。
 昔は、山で使用する下着や靴下、手袋は純毛製品がよいと教えられてきました。最近では乾式アクリルやポリエステル素材のものが多く使用されています。羊毛や乾湿アクリルは濡れた場合でも保湿力がゼロになりません。

2.レインウエア
 雨具は、雨に濡れても中までしみ込んでこないものですが、逆に通気性が悪く体温が上がり汗で中が濡れてしまうのが欠点です。最近ではゴアテックスコーティンが内側に使用されており、雨の水分はしみ込んでこないが、体内の汗は発散するということになっていますが、運動量の多い人は汗の発散が追いつかず、結局びっしょり濡れてしまいます。通気をよくしたり、汗をこまめに拭いたりしたりして、自己管理しないと汗が冷えて体温を奪うことにもなりかねません。

3.登山靴
 登山靴はリスクを抱えたまま履かざる得ないので深刻です。問題は、最近、靴底に使われているポリウレタン製ミッドソールの剥離問題です。ポリウレタンは、軽量で耐摩耗性にすぐれ、適度な衝撃緩衝性を持つ特性から、登山靴のミッドソール(靴底)に使用されています。昔は堅くて重い革靴製の靴を履いていましたが、中高年登山者に最適の柔らかくてクッション性に富み、軽い靴が主流になってきました。
 ポリウレタンの劣化原因は、第一に考えられるのが加水分解で、水分がある状態の下では劣化速度が進みます。第二に熱(酸化)があり、高温下では劣化が急速に進みます。第三はカビやバクテリヤによる微生物劣化、第四に紫外線による光(酸化)劣化です。使用しなくても劣化は進行し、登山お後靴を手入れせず、濡れたまま風通しの悪い場所で放置したままにしておくと劣化の進行が早くなります。
 メーカーの説明では、一般的に製造後5年程度が寿命となっています。しかし保管状態が悪いと5年以内に突然靴底が突然剥がれるかもしれないリスクが潜んでいます。少々品質を落としてでも、なぜ劣化しない材料に置き換えないのか、メーカーは「消費者に安全な製品を提供する」という基本的な精神に欠けると思います。
 現在履いている登山靴は自己防衛するしかありません。まず濡れた靴は、ストーブなどで乾かさず、新聞紙に包んで水分を吸収させる。乾いたらブラシで汚れを落とし、メーカー推薦の養分補給剤をスプレーして陽の当たらない風通しの良いところに保管する。そしてなるべく履く機会を増やして新鮮な空気に触れさせることです。
 私は登山中、万が一靴底が剥がれたときのために針金とビニールテープ、靴紐の予備を持っています。

4.ガスストーブ
 ガスストーブによる事故も多いです。最近ではガスカートリッジ式のものが主流になっています。一般的にガスカートリッジにはブタンが充填されており、気化熱によりガスカートリッジが冷たくなるので、冬季用はより沸点の低いイソブタンまたはプロパンの混合が使われています。いろんなガスカートリッジが流通していて、LPGカートリッジを携帯ストーブに使用すると爆発の危険があります。
 また、大鍋や鉄板を長時間かけて使用していると、輻射熱でガスカートリッジが熱せられ爆発する危険があります。このような場合は五徳とガスカートリッジが分離したタイプを使う方がよいです。
 テントの中で使用する場合は、テントの中の酸素が少なくなり不完全燃焼による一酸化炭素中毒の危険もあります。テントの中では火災の危険もあるのでどうしても使わざる得ない時は、換気を十分取るべきです。
 最後に、ガスカートリッジを処分する際、中のガスを完全に抜いて廃棄しなければなりません。廃棄処分中に、爆発する事故も多発しています。

5.ガソリンストーブ
 昔は、ホワイトガソリンを使用するガソリンストーブ、「ホエブス」が主流でした。しかし、余熱と加圧が必要でメンテナンスが大変なこと、かさばって重いことで敬遠されました。ガソリンストーブの場合は、余熱と加圧不足による異常燃焼、過加圧によるパッキングからの出火などにより火災の危険がありました。よく問題になったのが、ガソリンを入れたポリタンクを水と間違えて飲む事故や、水と間違えて鍋にガソリンを入れる事故がありました。もう山にホエブスを持っていくこともないので、ひとまずリスクは低いといえます。

6.アイゼン
 雪渓や降雪期の低山では、滑り止めとしてアイゼンが必須です。しかし、慣れていないと爪が石等に引っかかって転倒することがあります。一番良くやる失敗が、片方の足で他方のアイゼンを引っ掛けてしまい転倒するというものです。高齢になると足が上がらなくなり、アイゼンを履いていなくてもちょっとした段差に引っかかってしまいます。足を上げるように心がけるしかありません。
 面倒くさくなって、アイゼンなしで歩行するのはもっと危険です。かっこつけてアイゼンなしで歩いて雪渓の割れ目に落ち込んで冷凍人間になるのが落ちです。

7.ストック、ピッケル
 ストックは、歩行時の左右への振れを極力する少なくするのに効果的な道具です。岩場をよじ上るようなときは邪魔になるのでザックに格納しないと、手のホールドをしっかり取ることができなくなるので危険です。
 また、電車の中では他人にけがさせる恐れがあるので、邪魔にならないように格納しなければなりません。
 ストックの使い方は、登山中は先端の保護キャップを必ずはめておくことも重要です。なぜならば、尖った先で土を突くと登山道がどんどん浸食されます。また、軟弱地盤に突き刺すと、先端部分が抜けてしまうこともあります。ゴムキャップをしていても滑ることはありません。

8.傘
 傘は、低山では役に立つでしょう。しかし、高山では風が強く役に立たないどころか、風に飛ばされる原因にもなります。また、落雷の原因にもなり使用は避けるべきです。

9.地図
 最近は、高度計やGPSが普及し、地図とコンパスを持って山に登る人は少なくなりました。しかし、これは登山の基本なの必ず実行してください。普段から地図を読む練習をして、現在地がどこか把握するように心がけることを進めます。昔は、地図の折り方を見ただけ山屋かどうか見分けがつきました。
 自分で、現在地が判らなくなり遭難する登山者は相変わらず多いです。
 また、地図の紙で手を切るといったリスクも小さいながらあります。

まだこれ以外にも低山登山におけるリスクはあるとおもいます。

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