2009年11月17日火曜日

ヘルメットのあごひも

  現場では必ずヘルメット着用とともにあご紐を締めることときつく指導されます。しかし、米国の映画などで出てくる場面では、あごひもをせずにヘルメットをかぶって作業しています。

欧米のヘルメットはラチェット式で後ろの部分でネジをまわして締め付けて固定するようになっています。一度被るとグラグラしません。欧米ではこのラチェット式が主流になっていて、あご紐はオプション販売になっているようです。

  なぜこのような違いがでてきたのかというと、日本ではヘルメットの目的は飛来落下、墜落・転落及び感電災害の危険に対する頭部の保護が目的であり、内装だけでは安定して被れないということと、墜落時もヘルメットで危険から頭部を守るという考えからあご紐をしっかり締めるということです。しかし、欧米では飛来落下に対する防護に重みをおき、ヘルメットで墜落・転落時の危険から頭部を完全には守ることができないという考え方の違いによるようです。したがって、欧米のラチェット式ヘルメットはかなりしっかり作られて、ラチェット部のネジをまわすとかなり固定されます。

  ヘルメットは個人の頭に合わせて調整して使うということになっていますが、日本のヘルメットは頭の形状に上手くフィットせず、使用中前にずれたりして困ることがあります。欧米のラチェット式ヘルメットのオプションのあご紐を装着すると、あごの先端に引っ掛けて固定するため、もうびくともしなくなります。
一方、あご紐がある方が安全なのかという疑問も一部にあります。野球のヘルメットはボールが当たったとき衝撃を吸収するためにあご紐はありません。 ただし、あご紐により墜落したときにヘルメットのお陰で頭部の損傷が軽くなり命が助かった例もあるので、あご紐は有効と考えるべきです。

  インドネシアの現場では、クライエント、日本人職員、ワーカーほとんどの人があご紐を締めていません。よく見るとラチェット式はわずかで、日本と同様のものが多いです。日本人職員は日本から持ってきたものを使用しています。これはヘルメットの機能に合わせて対応しているのではなく、ただ楽な方に流れているだけです。

  ヘルメットは個人用保護具(PPE)です。リスク低減措置の優先順位は、①危険な作業の廃止・変更、②代替措置、③設備的な対策、④管理的措置で、個人用保護具は⑤一番最後です。欧米の考え方はこの優先順位の高い者から対策をとることを徹底するのに対し、日本では相変わらず個人用保護具に頼ることが多いです。したがって個人用保護具に重点をおかれるのだと考えます。やたらとどこでも安全帯着用と言いまくる様子が端的に表しています。本来は安全帯を使わずに安心して作業できる環境を作らなければならないのに...

  ヘルメットの規格は旧労働省告知第66号で定められています。第4条で、飛来・落下による危険を防止するための保護帽は、帽体、装着帯及びあご紐を有し、かつ、次の各号に適合するものでなければならない。
1)装着帯のヘッドバンドは、着用者の頭部に適合するように調節することができること
2)装着帯の環ひもは、環の大きさを調整できないこと
3)帽体と装着帯のヘッドバンドとの間げきは5mm以上であること
また、5条では墜落による危険を防止するための保護帽は、帽体、衝撃吸収ライナー及びあご紐を有し、かつ、リベットその他突起物が帽体の外面から6mm以上突出していないものでなければならないとなっています。

とにかく、日本国内では法令で定められた場所ではヘルメットを正しく被りあご紐を締めなければなりません。

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