2010年2月24日水曜日

モーメントリミッターの謎

最近、移動式クレーンや杭打杭抜機の転倒事故が多発しています。
一昨日も、長野県駒ヶ根市にある県立病院立替工事で移動式クレーンが前方に転倒し1人死亡、3人重軽傷の災害が発生しています。
移動式クレーン転倒の原因は、定格荷重を超えた過負荷の状態になるか、地耐力がアウトリガーの接地圧に対して過小又は埋設菅を突き破ったりして機体のバランスを崩す、急旋回や埋設物を引き抜くなどしてなど反動が加わり転倒するなどが考えられます。
移動式クレーンには安全装置が装備されており、正しく使えば多くの事故を低減することができます。安全装置には
1)巻過防止装置(オーバーホイスト)
2)過負荷防止装置(モーメントリミット)
3)旋回ロック
4)安全弁
5)フックの外れ止め
などがあります。
このなかで最も転倒防止にかかわる安全装置は、過負荷防止装置です。これは吊上げ実荷重によるモーメント、ブーム自重によるモーメントなどを実際にブームに作用している総合モーメントを検出し、この負荷が記憶されている定格荷重を超えると直ちにブームの伸長、ブーム下げ、ウインチ巻上げなどの危険側への作動が自動停止するほか、または定格荷重を超える前に警報を発するものです。
しかし、過負荷防止装置のスイッチを切って作業するケースが多いようです。元請けから作業限界を超えた指示を強要されたり、オペレーターが定格荷重には多少余裕があるはずだからこのくらいなら大丈夫であろうという安易な気持ちで行う場合があります。その結果が転倒事故になります。長野の事故の正確な原因は分かりませんが、モーメントリミッターが正常に働いていたのかどうか疑問が残るところです。
現場では、過負荷防止装置のスイッチを勝手に切れないように鍵を事務所で預かっておく措置をしていますが、オペレータが機械内部の配線を付け替えたりする悪質な手口も発覚しています。
メーカーはオペレータが過負荷防止装置を切ることができないような移動式クレーンを製造すればいいのですが、いまのところタダノだけしか発売されていません。
また、オペレータが過去に過負荷防止装置を切って無理な作業を行なっていたかどうかも、過負荷防止装置に記憶されており、メーカーのサービスマンに依頼すれば調べることができます。
元請けはオペレータに無理な指示をしてはならないし、オペレータに対し安全指導もしなければならない。そのためには、元請け職員も移動式クレーンの仕組みをよく理解しておく必要があります。

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