2011年7月6日水曜日

海外派遣者帰国時検診

最近、海外派遣者帰国時健診で、病原性寄生虫を指摘されるケースが増えてきた。

具体的には、東南アジアからの帰国者の中で検便の結果、アメーバ赤痢とジアルジア症の原因となる原虫のシストが検出されている。アメーバ赤痢およびジアルジア症は、感染症新法において第四類に分類され、全数把握することになっている。世界的には感染者数が多く、日本でも戦後の一時期まで広く蔓延していたものである。

アメーバ赤痢の原因となる赤痢アメーバは原虫であり、卵に相当するシスト(嚢子)を介して人間に感染する。この原虫の生活史は、栄養型とシストからなり、シストは、直径10-16ミクロンで、卵の殻に相当する外壁に守られて水や食物の中でも数日から数週間は生き延びることができ、水や食物などと一緒に赤痢アメーバのシストが摂取される。症状は赤痢または下痢症状を呈し、イチゴゼリー状の粘血便を排泄することがある。

一方の、ジアルジア症は、ランブル鞭毛虫という原虫の感染が原因で、赤痢アメーバと同様にシストを介して感染する。この栄養型虫体は、長径10〜15μm、短径6〜10 μmの大きさである。シストは外界の環境に強く、水中で3カ月以上生存といわれている。主な症状は、非血性で水様の下痢、衰弱感、体重減少、腹痛、悪心や脂肪便などが挙げられる。

どちらも、経口感染で、水、食品およびシストが付着した手から感染する。東南アジアでは、まだ水道の水が安全とはいえず、水の中に含まれている可能性もある。熱帯地方では生ものを食べないのが普通であるが、ベトナムのフォーなど生野菜(パクチーなど)を麺のなかに入れて食べるので、生野菜に付着しているケースもある。

対策は、生ものを食べない、水道の水を直接飲まない、手を良く洗うことに尽きる。経済がグローバル化してくると、今まで日本であまり見かけなかった病気が簡単に入ってくるようになる。業務に伴って発症する感染症なので、衛生管理者は、つねに海外の感染症について勉強する必要がある。

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