2009年1月26日月曜日

職長教育は工夫が必要

建設業では職長に対し、職長・安全衛生責任者教育を2日間14時間、実施する必要があり、講師としてもかなりの労力が必要で、手を抜くことができない重要な教育です。
そして受講者が感心を示し、教育効果が上がる講習にするには熱意と経験を積むしかない。受講者が眠らないようにテキストの棒読みは避け、興味を持つような話題を探してくるのに事前準備に相当時間を割きます。

職長教育は工夫することが必要なのです。複数の講師で行うことでそれぞれの講師のノウハウが発揮されるでしょう。

★教育手法
このような教育では普通、災害の現状や職長の責務など堅苦しい話しから入ることが多いが、まず受講者を惹きつけるような話題から入るのが良いと思います。
最近は、ショッキングな災害の写真をいきなり見せることをやってみた。JR西日本の脱線事故やベトナム・カントー橋の事故の様子などを、全員が食い入るように見ていた。
教育手法はパワーポイントを使用するケースが多いが、講師としては時間管理が容易で教え易いが、受講する側は理解し易い反面、情報が頭の中を軽やかに通過していくだけでなぜか記憶に残りません。記憶に残るようにするには受講者に考え発言してもらうのが一番良い。
グループ討議のほかに、個人のヒヤリハット体験を発表するとか、ヒヤリハット教育シートを使ってみんなで「どんな危険があるか、どんな問題があるか」を徹底的に議論などの方法が効果的です。
これらの身近な情報からリスクアセスメントの説明や職長・安全衛生責任者の責務を説明していくと理解し易いでしょう。

★職長教育の重要性
職長教育の重要性を理解させるのも重要です。
これまで現場では協力会社から安全衛生責任者選任の報告を受けたが、選任された者は当然のように職長教育を受けている人達であり、それが当たり前でした。
しかし、最近は当たり前と思っていたことがそうでもないらしい。
建築工事では、重層下請が数次にも及ぶようになり、安全衛生責任者として選任された者で職長教育を受けたことがない人が多くなっています。最後次 に及んでは、一人親方になるケースがあり、名前だけの安全衛生責任者で、職長教育は受けておらず、安全の知識は相当低い状態です。
この傾向が、今後益々強くなるのではないでしょうか。
作業方法を決定し労働者を指揮監督するのは職長であるため、職長が安全衛生管理の要です。したがって職長・安全衛生責任者の安全意識を上げれば災害はぐっと減るでしょう。

★職長とは
労働安全衛生法の中では、労働者を直接指揮監督する者として、職長、安全衛生責任者、作業主任者がいますが、この区別を理解していない元請職員もいます。
職長とは、同じ事業主から雇用されている労働者を直接指揮監督する者です。したがって2次の安全衛生責任者が3次の労働者に 細部に至るまで直接指揮監督を行う場合、2次の安全衛生責任者は、職長ではありません。そして場合によっては偽装請負とされるかもしれません。
それぞれの役割は

ア.職長
1)役割 :労働者を直接指揮監督する者であり、労働災害防止活動を推進する最も重要な位置づけです。
2)選任基準 :規定なし
3)資格 :なし
4)事業者の責務 :事業者責任において所定の安全衛生教育を行わなければならない(法60条、罰則はなし)

イ.安全衛生責任者
1)役割 :統括安全衛生責任者及び後次請負人との連絡調整、混在作業による危険の有無の確認等
2)選任基準 :統括安全衛生責任者が選任される事業場の下請事業場(法16条・則19条、罰則は有り)
3)資格 :なし
4)事業者の責務 :建設現場では、職長が安全衛生責任者を兼務することが多く見られ、「職長・安全衛生責任者教育」の実施について行政通達が出されています。

ウ.作業主任者
1)役割 :当該作業に係る労働者の指揮、その他必要な業務
2)選任基準 :法令で定められている業務(法14条・令6条、罰則は有り)
3)資格 :法令で定める免許又は技能講習
4)事業者の責務 :職長教育は不要

★誰が教育するのか
職長教育は事業者の責任であり、元請けは教育の援助をするということです。事業者責任があるのに法令では罰則規定がないから行わないでは困ったことです。 事業者に責任を自覚してもらわないと、いつまでたっても職長の安全水準が上がりません。強いては現場の安全水準もあがりません。
こういうことを分かっていない元請け職員も増えてきました。建設現場では、職長教育を疎かにしてはいけません。
まず、元請職員が職長・安全衛生責任者教育の内容を理解することが先決でしょう。
そうです。元請職員が理解していないと効果のある指導はできません。
そこで、協力会社と元請職員が同席して一緒に教育を受けるのも一つの方法です。
今後は元請職員の社内教育も職長・安全衛生責任者教育の内容に統括責任者の責務を加えれば十分と考えます。


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